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2019年11月29日

【読解力?】『「頭がいい」の正体は読解力』樋口裕一


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「頭がいい」の正体は読解力 (幻冬舎新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中で、人気だった知的生産術本。

小論文の指南で広く知られる樋口裕一先生が、最近話題となっている「読解力」の鍛え方について述べてらっしゃいます。

アマゾンの内容紹介から。
あらゆる物事を正確に読み取り、理解する力=読解力。文章を読んで自分の考えをまとめたり、会話で相手の意見に反論するときなど、現代社会を生きる上で不可欠な力だ。しかし読解力のない日本人が増えている。読書量の不足やネット記事・短文SNSの普及による「長文を読み解く耐性がない」「言葉の辞書的な意味は知っていても使いこなせない」ことが主な原因だ。本書では、問題を解きながら実際に言葉を使い、文章を書くことで「語彙力」「作文力」「読解力」の3ステップで鍛えていく。飛ばし読みや資料の要約、会話やコミュニケーションにも役立つ、現代人の必須スキルを磨く一冊。

なお、中古がまだ定価の倍近くしますから、お得なKindle版がオススメです!





Nathan Setting The Tone For The Exam / rileyroxx


【ポイント】

■1.クレーマーの原因は読解力不足か?
 それまで、私は「クレーマー」と呼ばれるのは、何かを得たいために、自分でも無理だとわかっていながら、あえて激しく抗議する人々だと思っていた。
 もちろん、そんな人もいるだろう。だが、一定程度、私の出会った若者のような人間もいるのではないか。読み取りができないために、自分が正しいと信じ、周囲の常識的な読み取りが理解できずに、孤独な攻撃をしているのではないか。クレーマーといわれる人たちに読解力テストをしたら(もちろん、してもらうのは大変難しいが!)、 惨憺 たる結果が出るのではないか。
 クレーマーが増えているといわれる。もちろんそれには、読解力のない人も発信する手段を得たこと、以前は片隅で押し黙っているしかなかった人が権威に対して発信してもよいという意識を持つようになったことなどが原因として挙げられるが、もう1つ、読解力の低下という問題もあるのではないか。
 逆に言えば、読解力をきちんとつけ、文章を読み取れるようになれば、状況も人の心も今より読み取れるようになり、多くの人が周囲と健全なコミュニケーションが取れるようになるのではないか。


■2.「言い換え力」を鍛える
 私が、言葉を使えるようにするために鍛えているのは「言い換え力」だ。
 人は言葉によって人の能力や人柄を読み取る。その際、手掛かりになるのは、ほぼ同じような内容をどのような表現を用いて語るかだ。
「俺、そんなこと知らねえよ」というのと、「僕、そんなこと、知らないです」「私はそのようなことを存じ上げません」「私はその件についての知識を持っておりません」というのでは、まったくニュアンスが異なる。
 人はそのような文体を使い分けて生きている。同じ人間でも、状況によって、相手によって、自分の気持ちによって、表現を使い分ける。その場にふさわしい言い方をする。そして、話している相手にそのような自分をアピールする。
 あるいは逆に、そのような言葉を聞いて、人は他人を判断する。そのような表現によって、その意味内容を理解するだけでなく、「この人は気さくな人だ」と思ったり、「下品な人だ」とか「知的な人だ」と思ったり、「油断できない」と思ったりする。


■3.まとまった文章を書くときの「樋口式四部構成」
第一部:問題提起
設問の問題点を整理して、イエスかノーかの問題提起をする。全体の10パーセント前後が好ましい。
第二部:意見提示
「確かに……。しかし……」という言い回しにすると書きやすい。タレントの政治的発言に反対だと主張したい場合には、「確かに、タレントの政治的発言にも好ましい面がある。たとえば……。しかし、私は反対だ」というように書く。そうすることで、視野を広め、客観的な論にする。全体の30〜40パーセントが普通。
第三部:展開
自分の意見の根拠を示す。なお、ここでは「こちらのほうが便利」「こちらのほうが私にとってトク」ということではなく、社会にとって、これからの日本にとってプラスになるかどうかという方向で考える。「理由は2つある」と始めると、書きやすい。全体の40〜50パーセントほどを占める。基本A型・B型をここに用いるつもりで書くとうまくいく。
第四部:結論
もう一度全体を整理し、イエスかノーかをはっきり述べる。努力目標や余韻を持たせるような締めの文などは不要。イエスかノーか、もう一度的確にまとめればよい。


■4.3WHAT3W1Hを考える
 文章は5W1H(WHEN、WHO、WHERE、WHY、WHAT、HOW)を考えて書けといわれる。しかし、小論文を書く場合には、3WHAT3W1Hを考えてほしい。
 3WHATというのは「それは何か(定義)」「何が起こっているか(現象)」「何がその結果起こるか(結果)」。3Wとは、WHY(理由、根拠)、WHEN(いつからそうなのか、それ以前はどうだったか=歴史的状況)、WHERE(どこでそうなのか、他の場所ではどうなのか=地理的状況)。そして、1Hとは、HOW(どうやればいいか=対策)。
 これらの項目についてざっと考えることによって、大まかにであれ、状況を認識し、考えを深めるためのヒントを得ることができる。


■5.四部構成の型で読む
 文章を読んで、まず構成を論理的に解きほぐし、どのような構成で書かれているかを探る必要がある。その場合、小論文の基本である四部構成を考えて読むとよい。
 第3章で説明した四部構成の書き方もまた、たんに書く場合に使えるだけではない。読むときにも使える。
 論文ふうのものはほぼ100パーセント、それ以外でもかなりのものが問題提起、意見提示、展開、結論という四部構成になっていると考えてよい。
 たとえば、新聞の社説なども多くの場合、政治的な動きが説明され、そのような行動が好ましいかどうかを問題提起する。それから、「確かに、この行動にはこのような意図があるのだろう。しかし、それには問題点もある」と続けて、その内容を吟味する。そして、最後の結論を示して、今後の方向性を提示して終わるだろう。
 学術論文も同じような形をとっている。最初に研究課題を示し、その後、先行論文についての検証をする。この部分は大まかには、「確かに、先行論文はこの点で功績があった。しかし、不足があった」などとまとめられるだろう。そして、次に自説の検証に入って、最後の結論を示す。
 このように、多くの文章がこの「型」を用いている。それを意識して読むわけだ。


【感想】

◆思えば新井紀子先生のこの本の大ヒットのおかげで。

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【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

参考記事:【AI読み?】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(2018年11月21日)

「AI読み」というフレーズとともに、読解力が話題となることが多くなった気がします。

ちょうどたまたま数日前のNHKあさイチでも、読解力がテーマとなったらしく、私のTwitterにもこんなツイートが流れてきたのでした。
その後に本書を手にした私は、上記ポイントの1番目のクレーマーの話を読んで、「まさに同じやん」となった次第。

これは本書の第1章「なぜ日本人の読解力が落ちているのか」からのものなのですが、樋口先生は結論として、「読書量の決定的な不足」を挙げてらっしゃいます。

結局、SNSやらメッセ等で、それなりの量の「文字」は読んでいるものの、ある程度のまとまった「文章」を読まないと、読解力は付かないよう。


◆そこで本書では読解力をつけるべく、まずは第2章にて「語彙力」を鍛えます。

ただしこれは「難しい言葉を覚える」というようなことではなく、「言葉を自分のものとする」ことや「使えるようにする」こと。

そして樋口先生が真っ先に挙げたのが、上記ポイントの2番目の「言い換え力」です。

実は本書では、練習問題を豊富に収録しており、それらを通じて、どのような「言い換え」が求められているのかが分かる仕様(同じような練習問題は他の章も同様です)。

ただし、「問題」が4問くらい出された直後に、「出題意図」とそれぞれの解答例、さらには「解説」まで付されているため、ボリューム的にとても上記ではご紹介しきれませんでした。

とはいえ、何も説明しないのもどうかと思うので、内容を簡単に言うと、話し言葉で書かれた文を堅めな文にしたり、カッコ内にそれまでの文章をまとめる言葉を入れたり、などなど。

ユニークだったのが、「直接的な表現を婉曲な表現に改める」練習で、
あなたは口が悪いので、女性に嫌われている。
という文を
率直にお話しになりすぎるので、女性からは疎ましく思われているかもしれませんよ。
なんていうのに改めるモノもありました。

……これは実生活でも役立ちそうなw


◆一方意外だったのが、続く第3章にて、かなりのボリュームを割いて「文章力」を強化していたこと。

樋口先生いわく「読解力をつけるために文章を読んでいるだけでは、いつまでたっても限界がある」のだそうです。
 文章もまずは書いてみる必要がある。書いてこそ、正確に読み取れるようになる。文章を書かないまま、文章を読み取る練習をしているのは、いってみれば、サッカーを実際にはプレイしないままサッカーの見方を習っているのに等しい。それで力がつくはずがない。
……サッカーの世界では、むしろ「名選手、必ずしも名監督にあらず」が定説(誰とは言いませんが)ですし、サッカー未経験者やプロ未経験でも一流の監督になっていたりしますから、例としては微妙なのですが、読解力についてはそうなのでしょう。

では、どんな文章を書けばいいのか、というと、樋口先生が推奨されているのが、先生お得意の「小論文」です。

その際、「型」に沿って書くと良いとのことで、その中の1つが上記ポイントの3番目の「樋口式四部構成」。

これは先生が35年前に開発したもので、世の中にはその「亜流」が広まっているのだとか。

なお、文中の「A型」とは簡単に言うと「結論⇒具体例」のパターンで、「B型」はその逆になります。


◆さらには上記ポイントの4番目の「3WHAT3W1H」も、この第3章からのものなのですが、私は初めて知りました。

……というか、極めて読みにくいので、「3WHAT/3W/1H」みたいに分けていただきたいところ。

この「3WHAT/3W/1H」は、書く時のみならず、第4章の「読解力を鍛える」でも再登場します。

要はこの「型」を意識して読むと良いそうなので、ぜひ参考にしてみてください。

ちなみに、この第4章の練習問題は、いずれもそこそこ長文なので、あらかじめご留意いただきたく。

さりげなく(?)先生の著作も登場しますが、それ以外の3つの長文は、かなり歯ごたえがありました。


「文章力」をベースとした「読解力」が身につく1冊!

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「頭がいい」の正体は読解力 (幻冬舎新書)
第1章 なぜ日本人の読解力が落ちているのか
第2章 語彙力を鍛える
第3章 文章力を鍛える
第4章 読解力を鍛える
第5章 読解力を使いこなす


【関連記事】

【読書術】「差がつく読書」樋口裕一(2007年06月15日)

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【AI読み?】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(2018年11月21日)

【読解力】『できる子は本をこう読んでいる 小学生のための読解力をつける魔法の本棚』中島克治(2017年01月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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