2019年11月18日
【英語学習】『日本人のための英語学習法』里中哲彦
日本人のための英語学習法 (ちくま新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて大人気だった英語勉強本。河合塾の人気講師である里中哲彦さんが、タイトル通り「日本人向け」の英語勉強法を指南してくださいます。
アマゾンの内容紹介から。
文法、会話、単語、音読、シャドウイング、多読、精聴…日本語と全然違う英語を勉強するのに、日本人はどう学習したらよいのか?そもそも、どうして英語の力が伸びないのか?上達しない人の学習法には、いったい何が足りないのか?三〇年以上にわたって英語を教えてきた人気講師が、その経験から、着実に上達する方法や、つまずきやすいポイントを解説する。やみくもに学ぶのはもう終わり。この本で最適な方法を見つけ、自分ならではの英語を手に入れよう。
現時点で、中古が定価の倍以上のお値段ですから、お得なKindle版がオススメです!
useful! / lindsay.dee.bunny
【ポイント】
■1.英語トレーニングの3つの基本事項ひとつは、「実践の場に身をおく」こと。
コミュニケーションのための英語は、アウトプットしてこそインプットした意味があります。英語を使う機会があったら、臆せず、積極的に利用してください。中途半端な状態であっても、実践の場へ出かけたほうがいい。経験を積めば積むほど、あなたの英語はより磨きがかかります。
ふたつめは、「持ちすぎない」こと。
社会人は、準備を万端にしてしまいがち。ついつい英語教材を買い込んでしまい、どれも途中で放り投げてしまうのです。(中略)
1冊を丁寧に仕上げる。ほかの教材を同時進行させない。そのためには、買いすぎない、持ちすぎない。このことを念頭においてください。
最後は、「まわりの人と自分を比べない」こと。
まわりの目を気にして、劣等感を持ったり、うらやんだりすることには、ひとつもよいことがありません。
■2.音読をしよう
では、「まだ英語で考えられない人たち」が、英語で考えられるようになるためには、どんなことをしたらいいのでしょうか。
ずばり、「音読」(reading out loud)です。
意味のよくわかった英文をくりかえし声に出して読むことで、日本語による返り読みのクセが消えて、徐々に英語で考えることができるようになっていきます。
「音読」により、身体に言葉を記憶させること、つまり内在化(internalize)させることができます。口や舌を動かすだけでなく、目と耳も同時に使うので、英語表現のしくみとコロケーション(連語関係)、リズムとフロー(流れ)を体で覚えることができます。
「音読」を継続していると、まとまりのある慣用句や構文が自然と頭のなかで活動を始め、そのうち頭であれこれと考えなくても、注いでいた水がグラスからあふれだすように口をついて出てくるようになります。日本語が頭に浮かばないのに、ふと英文の意味がイメージとして浮上してくるのです。そのとき、あなたは「これが英語で考えるということなのか」と実感することでしょう。
■3.「精聴」+「ディクテーション」で英語耳を鍛える
なんの苦労も努力もせずに英語が聞き取れるようになる──英会話教材を売り込むための、こうした宣伝文句が巷にあふれています。
邪道です。というのは、そのような教材で「英語が聞き取れるようになった」という人に、ただのひとりも会ったことがないからです。
では、リスニングの王道はどこにあるのか。
リスニングに関して言うと、漫然と聞き流すことはせずに、集中して音源を何回も聞くという精聴(intensive listening / deep listening)をやり、そのあとそれを真似て声を出すトレーニングがもっとも効果があるようです。こうすることによって、「意味を聞く」ことができます。これは多くの英語の使い手たちが身をもって語っている、いわば“実証済み”の学習法です。
「精聴」とは「音声にじっくり耳を傾ける」ことですが、同時にディクテーション(dictation:聞き取れた語句を紙に書き出すこと)をやることで、さらに英語の耳は鍛えられます。
■4.単語はコア・ミーニングをつかむ
“work”という単語を眺めてみましょう。
単語集を見ると、5つもの「異なった意味」を載せています。そこで英和辞書を引いてみると、「働く」「(機械が)動く」「(計画が)うまくいく」など、動詞では12の意味、名詞では11の意味を収載しています。
しかし、“work”を「さまざまな意味をもつ動詞」として捉えているネイティヴ・スピーカーはいません。
英語を母語にしている人にとって、“work”の基本イメージはひとつです。それは「主体(人・物)が本来の役割を果たそうとする」というイメージです。
主語が労働者であれば、“work”は「働く」ですし、学生ならば「勉強する」、機械ならば「動く」、計画ならば「うまくいく」、薬ならば「効く」という具合なのです。要するに、主語と、しかるべき役割を結びつけてイメージしているのです。
また、名詞の“work”は「仕事」や「作品」などの意味をもちますが、本来の役割を果たす活動(=仕事)、役割がもたらした成果や産物(=作品)と考えてみれば納得がいくでしょう。
単語に関しては、コア・ミーニング(core meaning:中核的意味)をつかむことが大事です。コア・ミーニングを覚えることによって、学習効率もまた高めることができます。
■5.英語では「相づち」はほどほどに
日本人は、英米人に比べると、相づちの頻度が高いことをご存じでしょうか。
日本人は声に出して「へえ……はあ……うん……そうなんだ……」と相づちを打ったり、首をタテにふってうなずくなど、相手の話を聞いているというサインを頻繁に出しあって、会話が成り立っていることを確認する習慣があります。
それを英語での会話にも持ち込んで、Uh-huh.(うん)/Right.(そう)/ Oh, really?(ほんと?)/ Yes.(そうですね)と、さかんに繰りだしてしまうのです。ひっきりなしに連発される相づちは「会話の障害物」(conversation stoppers)になってしまいます。(中略)
もちろん英米人も話の途中で相づちを打つことをしますが、日本人に比べると、その頻度は極端に少ないのです。一説によると、日本人はアメリカ人のおよそ2倍の相づちを打っているとか。
相づちは日本語で話しているときの半分ぐらいにするのがよく、言葉による相づちの代わりに、適度に頭をタテにふってうなずいたり、アイコンタクトをとるのが英語のマナーです。
【感想】
◆英語本は結構久しぶりでしたが、かつてないほど大量にハイライトを引きまくりました。さすが著者の里中先生は「河合塾の人気講師」でいらっしゃるな、と。
おかげで、どれを抜き出してご紹介するか、かなり迷った挙句、選んだのが上記5つのポイントです。
もちろん、読む人によっては「何でこれが漏れてるのか?」と思われるかもしれませんが、過去に読んだ作品やら、本の構成やらを考慮した上ですので、お許しください。
ただ、割愛した中で、本書の第1章の最初の方で言われている「目標を明確に持つ」というお話は、耳イタイ人が多いかも。
「英語で自分の世界を広げたい。広い視野をもった国際人になりたい」との夢を語ってくれた若いビジネスパースンもいらっしゃいました。具体的には「1年後に自社製品のプレゼンテーションができるようにする」「1年後に合気道の魅力について語れるようにする」というように、「期限を設定した具体的な目標」を立てる必要があるそうです。
結果、どうだったか。
ほとんどの人が長続きしませんでした。
どうしてでしょう。
それは「明確な目標」がなかったからです。
マシュマロのような淡い願望は学習持続の原動力になりませんし、明確な目標を掲げない人は“夢追い人”のまま終わる可能性がひじょうに高いのです。
◆というわけで目標を立てたら、まずは上記ポイントの1番目の「英語トレーニングの基本事項」からご確認を。
なお、類書でも言われていることなのであえて載せませんでしたが、最初のうちは「『質』より『量』」!
最初は「質」のことを考えない。質のことばかり考えていると、まとまった時間を確保しなくなり、蓄積もまた薄っぺらなものになりがちです。具体的な時間数は、レベルや人によって違うでしょうが、里中さんは「英語の基本を身につけるには3000時間、高いレヴェルの英語を獲得するには5000時間必要」と言われています。
とにかく時間を捻出しましょう。
ちなみに中学から大学まで学校で習う時間が、約1000時間だそうなので、足りない分については、通勤中でも朝の早起きでもいいので、捻出する必要がある模様。
……この時点で、「明確な目標」だけでなく「強い意志」もないと、挫折しそうなのですが。
◆では、実際にどう勉強するかについて、第2章で挙げられていたのが「音読」です。
なお、その前提となるのが、英語上達には「英語で考える必要がある」のですが、そもそも英語ができないから英語を勉強しているのに、英語で考えられるわけがありません。
そこで「まだ英語で考えられない」状態でもできて、かつ、行うことによって「英語で考えられる」ようになるのが「音読」とのこと。
では、どのくらいすればいいか?
英語の使い手たち(30人)に聞いてみました。な、なるほど(大汗)。
「30回から50回程度」と答えた人が全体の90パーセントでした(500回以上と答えた人はひとりもいませんでした)。「10回程度」と答えた人はひとりで、「10回以下」と答えた人はひとりもいませんでした。
本書ではさらに「音読6カ条」と題して、具体的なトレーニング方法についてもまとめられているので、詳しくはそちらをご覧ください。
ちなみにこの第2章では、ほかにも「辞書を選ぶ際の5つのポイント」「多読の3原則」といった、それだけで記事1本書けそうなネタがありましたので、お見逃しなく。
◆続く第3章では「リスニング」についての言及が。
そこでまずバッサリと言われているのが、「英語をシャワーのように浴びる」というのは、まったく役に立たないということです。
周りの人にもたずねてみたのですが、意味のわからない英語を「シャワーのように」浴びて、「聞き流す」だけで、「いつのまにかわかるようになった」などという話は、いまも英会話教材の宣伝以外では聞いたことがありません。海外で生活をしている子どもなど、一部の例外を除けば、この方法はまったく効果が期待できません。要は「意味のわかっている英文を意識的に聞かなければ、何回聞いても無意味」ということ。
それどころか、「ムダな時間だった」とぼやく人のほうが圧倒的に多い。じっさい、「シャワーのように浴びる」学習法は、耳が英語に慣れるどころか、別にほかのことをやっていればその邪魔になるだけで、どちらにとってもきわめて効率が悪いのです。
代わりに推奨されているのが、上記ポイントの3番目にある「精聴」と「ディクテーション」の組み合わせです。
なお、割愛しましたが「『精聴』の5つの心得」も、ぜひ押さえておいてください。
◆一方、第4章では「語彙」と「文法」がテーマ。
上記ポイントの4番目の「コア・ミーニング」という考え方は非常に重要なようなので、一緒に推奨されていたこの辞典をご紹介しておきます。
Eゲイト英和辞典
何でも「コア・ミーニングはもちろんのこと、視覚的に見やすい図を数多く載せて、教育的な工夫を数多くほどこしています」とのことですから、気になる方は中古でいいので(多分)ご確認ください。
他にもこの章では、語源から覚えるやり方や、「接頭辞」「接尾辞」についても触れられており、この時点でお腹いっぱい。
さらには、文法についても、その必要性はもちろんのこと、オススメの文法書までレベル別に紹介されていますから、抜かりありません。
ちなみにこちらが初級用になります。
マーフィーのケンブリッジ英文法(初級編)第3版 (Basic Grammar in Use)
◆なお第5章では、文法をさらに掘り下げているのですが、もはや個別の論点のお話になるので、今回は割愛しました。
たとえば「冠詞の考え方」とか「『可算名詞』と『不加算名刺』」「前置詞」等々。
また、第6章も「マナー」や「文化」の話になるので、本書のタイトルでもある「英語学習法」とは若干違う気がしないでもありません。
とはいえ、上記ポイントの5番目の「相づち」は、日本語では一般的に「多めにした方が良い」と思われていますから、英語で話す際はご留意を。
他にも「そばにいる知人を"he"や"she"で呼ばない」とか、「"know"を日本語の感覚で使わない」(著名人を知っているかどうかを聞くのに"Do you know〜?"は使えない)辺りは、私は素で知りませんでした(恥)。
英語学習を3000時間しない方でも、この最終章はお目通しいただいた方が良いかもしれませんね。
真剣に英語を学びたい方なら、必読の1冊!
日本人のための英語学習法 (ちくま新書)
第1章 「自前の英語」を身につけよう―英語に対する「心がまえ」
第2章 できる人がやっていること―「音読」と「読み書き」
第3章 コミュニケーション英語のために―「話す」と「聞く」のトレーニング
第4章 話すために必要なこと―「語彙」と「文法」を身につけよう
第5章 文法の極意―「勘どころ」へのアプローチ
第6章 社交する英語―「英語のマナー」と「日本文化」
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。脳は、なぜあなたをだますのか ──知覚心理学入門 (ちくま新書)
当ブログでも著作をご紹介したことのある妹尾さんの新書は、中古に送料を足した金額よりは、Kindle版の方がお得。
音楽はどこへ消えたか? 2019改正著作権法で見えたJASRACと音楽教室問題
一時話題となったテーマの著作権本は、Kindle版が400円以上お買い得となっています。
【編集後記2】
◆昨日の「早川書房 秋のビジネス書フェア」の記事で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。ハーバード式「超」効率仕事術
参考記事:社会人なら押さえておきたい『ハーバード式「超」効率仕事術』(2013年07月10日)
国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(下)
スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術 (早川書房)
会議でスマートに見せる100の方法 (早川書房)
参考記事:【ネタ?】『会議でスマートに見せる100の方法』サラ・クーパー(2016年12月20日)
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