2019年11月11日
【起業】『さらば! サラリーマン 脱サラ40人の成功例』溝口 敦
さらば! サラリーマン 脱サラ40人の成功例 (文春新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「文藝春秋秋祭り」の中でも人気の1冊。ノンフィクション系の著作の多い溝口 敦さんが、脱サラ起業家40人に迫った作品です。
アマゾンの内容紹介から。
人生は一度きり。定年までいまの会社にしがみついたままでいいのか。ノルマに追われ、上司と部下の人間関係に悩み、リストラに怯えるくらいなら、自分の好きなことをしたほうがいいのではないか―。サラリーマンなら誰もが一度は抱く脱サラの夢を実現した「起業の先人」たちが語るビフォーアフターの物語。
中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が実質400円弱、お得な計算です!
Falconer / ragesoss
【ポイント】
■1.三菱系建機会社定年後に竹林ビジネスで起業全国の竹林は統計上16万ヘクタールとされるが、実際には侵食でその3倍にも拡大している。竹は地表下50〜60センチにびっしり根を張り、豪雨時にはそれ以下に雨水を浸透させない。そのため地滑りや土砂崩れの原因にもなり得る。竹は「害草」なのだ(小杉山基昭著『竹を食う』の表現)。
竹林は竹材としての活用やタケノコの食用によって手入れされてきたが、近年、竹材はプラスチックに、タケノコは中国産に押されて放置され、今や竹林が他の樹林帯や里山を侵食、壊滅状態にまで追い込んでいる。
竹の猛威を阻止するには「竹は儲かる」が常識となるほど竹の経済価値を高める必要がある。そのための技術の前提がまず高速竹粉製造機なのだ。(中略)
中でも注目すべきはプラスチックへの竹粉添加だろう。竹粉を50〜70%の高濃度で溶融させることが可能と判明、その結果、プレス成形どころか射出成形が可能になり、曲げ弾性率が4倍に、荷重たわみ温度が1.5倍になるなど、目からウロコの結果を得た。
■2.東大卒の元予備校講師が「乗換案内」で大成功
「乗換案内」開発のきっかけはこうである。エス・ジー社時代、横浜市水道局のシステムづくりを担当して、水道管を最短ルートで結ぶという課題をグラフ理論で解決できた。そのとき、これは都市間交通にも応用できると感じた。が、思うだけで手をつけないうち、88年ヴァル研究所が路線・運賃早わかりソフト「駅すぱあと」(首都圏版)を発売した。佐藤さんはこれを知り、猛烈に口惜しくなったという。
「俺たちも考えていたソフトだ。これからは受託もいいけど、自社ブランドをつくっていかなければと開発に踏み切りました。キーボードなし、マウスだけで使えるソフト、せっかちなビジネスマンの用に足りるソフトというコンセプトです。今思えば販売も知らない人間が無謀なことをやったと思いますけど、94年3月に東京乗換案内、同年12月には全国版の発売に漕ぎつけてます」
■3.亡き父の田でドローン操る次世代の稲作
農家を始めて2年目に農家の当主から田を引き継ぎ、耕作面積は合計11ヘクタール(約11町歩)になった。昔で言えば大地主の規模だろう。同時に農機具もその当主から農協の査定価格240万円で譲ってもらった。
3年目の15年には農水省が農業用ドローン(マルチローター)を認可した。数馬さんは早速、操縦法をドローン会社で習い、指導教官を任されるほど熟達した。無人ヘリは約1500万円もしてとうてい買えなかったが、ドローンは本体が約250万円、バッテリーやプロポ(プロポーショナル。送・受信機、スピードコントローラーなど)を合わせ300万円ちょっとかかったものの、こちらは購入できた。播種や除草剤の散布で省力化や作業時間の短縮に威力を発揮している。
■4.ペットショップの中間管理職が鷹匠に
鷹匠は今も存在している。それは分かるが、鷹狩りは実際に稼働しているのか。せいぜい何かの催事の際、客集めで鷹を上空に飛ばしている程度ではないのか。
現代の鷹匠である吉田剛之さん(株式会社鷹丸社長、45歳)を石川県小松市に訪ね、お話を聞く前には正直そう思っていた。だが、吉田さんの話によれば、鷹は実用に使われている。それも工業生産の第一線、工場で実際に働いているという。驚いた。
「工場は屋根が高く、冬も暖かい。出入りできる空間も多い。そのためドバトが巣づくりして工場内に入り込みやすい。出来上がった製品に 糞 を落とせば出荷できないし、金属を腐食させる。カラスも工場をねぐらにして糞害を引き起こすことがある。
で、こうした鳥は害鳥になるわけで、これを追い出すとなると難しい。目玉型バルーンを上げたり、有刺用具やネットを張ったり、薬剤を撒いたり、それぞれ工夫をこらしても効果がなく、最後、私どものところに『どうにかならんやろか』と打診がある。もちろん喜んでやらせてもらいます。鷹を放てば効果抜群ですから」
■5.富士通の部長が高齢者専門の美容師に
「五十歳になり、定年まで後8年。よーし、定年後、何をやるか準備しようと、会社の近くだったもので、よく東京商工会議所の図書館に行きました。あそこにはたいていの業界紙や雑誌が揃っている。会社の仕事はコンピュータでしたが、ソフトとか、関係する業種は考えなかった。人生は二毛作。やるならこれまでとまったく違う仕事を、と思ってました。
そういう中で人物欄にも目を通しましたが、『マラソン完走百回目』とか、自己満足じみたものが多く、どうせやるなら人の役に立つことをしたい、と。たまたま、施設で寝たきりになっていた八十何歳の婦人が美容師にカットしてもらったら、その日のうちに歩いておしゃべりするようになったという記事を読んだ。医者にもできないことを、すごいなと思いました。ちょうど自分の母親も歩けなくなっていましたから、自分がカットできたら母親も喜ぶだろうと3カ月間ずーっと考えていました」
藤田巖さん(71歳)は福祉美容師に着眼したいきさつをこう振り返る。当初から美容師単体でなく、それと介護を結びつけていた。今では横浜市栄区で福祉美容室「カットクリエイト21」、世田谷区用賀で「出前美容室若蛙」を経営し、43人の美容師を抱えるほど業容を拡大している。
【感想】
◆そもそも本書は、独自企画というわけではなく、月刊誌『ウェッジ』での連載「さらばリーマン」を元にしたもの。約300本の中から、タイトルにもあるように40人の起業家を選んでまとめられています。
ですから、新書にしてはやや厚い280ページあるとはいえ、目次を考えると1人分が7ページ弱ということ。
一方、同じ溝口さんでも、何度かセールでご紹介しているこの本は、「240ページで9人」です。
闇経済の怪物たち〜グレービジネスでボロ儲けする人々〜 (光文社新書)
一人当たりのボリュームが少なく、必然的に掘り下げ方も浅めなのは、しょうがないでしょう。
もっともその分、さまざまな「起業ケース」を知ることができるのが本書の魅力です。
「目からウロコ」なビジネスモデルは少ないのですが、「なるほど、こういうやり方もあるのか!」といったケースは多々ありました。
◆たとえば本書の第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の「竹林ビジネス」。
竹といえば、その繁殖力が驚異的なことが、時折話題になることがありますが、このような工業的な活用方法があるとは知りませんでした。
もちろん、農業でも成果が上がっており、「サツマイモと白菜の試験では化学肥料と竹粉の組み合わせで収量がそれぞれ1.2倍、1.4倍になった」のだそうです。
また、上記ポイントの2番目にあるように、「乗換案内」の誕生に「グラフ理論」の考え方が活かされていた、というお話もユニークでした。
なるほど、ここにあるグラフの図を見ると、駅や路線に見えなくもなく。
グラフ理論 - Wikipedia
まさに「グラフ理論」が「ノード(節点・頂点)の集合とエッジ(枝・辺)の集合で構成されるグラフに関する数学の理論」なわけですから、それも当然なのでしょうね。
◆一方第2章では、いわゆる「Uターン起業」が登場。
上記ポイントの3番目の「ドローン稲作」のお話では、事故で亡くなられたお父さんの田んぼの面倒を見る人がいなかったことから、当初田んぼの面倒をみていてくれた農家に弟子入りした上で、スタートしています。
ただし、「これからの農業は無人ヘリの時代」と考えていたところ、上記でも触れたようにドローンが解禁。
実際にこの機種かは知らないのですが、こういう動画を観ると、生産性が一気に向上している気がします。
飛び道具(?)でいえば、第3章から抜き出した、上記ポイントの4番目の「鷹匠」もユニークかと。
当初は、神社仏閣や公園から、ハトの駆除を依頼されるかと思っていたところ、フタを開けてみたら、工場からの依頼が圧倒的に多かったのだそうです。
◆また、第4章ではテーマが「趣味を活かす」ということで、元来の鉄道マニアの方が、自腹で訓練費700万円を払った上で、いすみ鉄道の列車運転士になるお話もありました。
……ちなみにこれって「何テツ」と言うんでしょうか?
ただ、元いた会社を辞めたとはいえ、社員(契約社員)になったワケですから、脱サラとは違う気がw
そして最後の第5章からは、「人の役にたちたい」というテーマどおり、上記ポイントの5番目の「福祉美容師」のお話を紹介しました。
なお、この方、美容技術を身に着けるために、自分の子どもほどの年齢の学生に混じって美容専門学校に通ったそうですから、頭が下がります。
それが今や、「43人もの美容師を抱える」ほど繁盛しているのですから、立派なもの!
「脱サラ起業」をお考えの方なら、要チェックです!
さらば! サラリーマン 脱サラ40人の成功例 (文春新書)
第1章 起業の夢を実現する
第2章 故郷で第二の人生を
第3章 職人として生きる
第4章 趣味を活かす
第5章 人の役に立ちたい
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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