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2019年10月17日

【超生産性?】『反常識の生産性向上マネジメント』小林裕亨


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反常識の生産性向上マネジメント


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる日本経済新聞出版社さんの「秋の大型施策 1000点以上ポイントバックセールからの、当ブログ向きと言える1冊。

昨日の前日ランキングでも、8位と健闘していましたから、それを見てお求めになった方もいらっしゃるかもしれません。

アマゾンの内容紹介から。
思い込みを捨て、組織の力を解き放つ!現場のがんばりに依存した「おもてなし」や「職人気質」至上主義から脱却し、経営や組織の変革を通して実現する“令和時代の生産性向上”を、豊富な実例とともに解説する。

中古に送料を加えると定価を超えますから、今日中であればこのKindle版が、1000円以上お得な計算です!






Performance or Time / Epha3 Lab


【ポイント】

■1.生産性向上は経営者の仕事
 私たちは、新しい過去の成功体験の枠にとらわれない新たな思考パターンを作るときに来ている。この新しい思考パターンを作り出し組織に根付かせていくのは経営者の仕事である。「生産性向上=効率化=現場の仕事」から、「生産性向上=新しい思考パターン=経営者の仕事」へと切り替えるべきときが来ている。
 まずは生産性のとらえ方からだ。「生産性」は、よく引用される統計値としての労働生産性(就業者1人当たりのGDP(国内総生産))だけではない。もっと広義な「1円投資したらいくら儲かるか?」という視点で生産性を考えるべきだ。労働生産性を向上させようといった瞬間に、対象は労働者になり、施策は働き方や作業にピントがあわされてしまう。
 人手不足になり、ロボットが工場だけでなくオフィスにも投入される時代にあっては、1人当たりの生産高を上げていく努力は当然のことだ。だが同時に、生産性を労働者視点だけで積み上げるのは、競争力の観点では十分ではない。生産性は現場の問題ではなく、経営の問題なのである。


■2.ポテンシャル拡張のためにメンタルモデルを変える
 私たちの行動は、自分なりに築き上げた自分にとっての常識・物の見方に基づいている。このすでに作られてしまった思考パターンのことを、「メンタルモデル」という。組織学習の始祖といわれるピーター・センゲによって提唱された概念で、行動を変えるには既成のメンタルモデルを変える必要がある。逆にメンタルモデルが変わらないと行動は変わらない。
 たとえば、「お客様のニーズにすぐ応えるには常に余裕を持った生産・在庫が必要」というメンタルモデルがあると、在庫を抱えたオペレーションが思考の原点になってしまい、ジャストインタイムの発想は生まれない。
 まだジャストインタイムが米国で知られていなかったころ、米国の自動車メーカーがトヨタの工場を視察した結果、“本物の”工場は見せてもらえなかったと述べたという逸話がある。彼らは、工場とは在庫を山と積んである場所だ、というメンタルモデルがあったので、実際のトヨタの工場をそのように認識できなかったのだ。メンタルモデルがいかに人間の思考や行動に影響を及ぼすかを、よく表している。
 生産性のポテンシャルを拡張する際には、まず自らのメンタルモデルを理解する必要がある。本気で自分や自社に向き合うことでしか、自分がどんなメンタルモデルをもっているのかを明確に把握することはできない。


■3.「3つのR」を機能させる
「正しい課題をタイムリーに選び果敢に解決していくプロセスを自律的に進める体質を備えた組織」になるという難しいミッションを実現するためには、「3つのR」というシンプルなコンセプトが極めて有用だ。
・Right Issue 正しい経営課題を正しいタイミングで選ぶ
・Right People 適任な人材を選び課題解決に充てる
・Right Methodology 適切な課題解決の考え方・手法を共通言語化する(中略)
 3つのRを機能させるためには、構造論と運動論の2つの視点が有用だ。構造論とは、現場から経営までの組織階層を貫いて課題解決の方向性や実効性を規定する役割分担や責任の在り方に関するものだ。一定の緊迫感を保ちつつ考え方や方向性をブレさせないためのマネジメントの型といってもいい。構造論の要素は、方針展開、責任体制、マネジメントプラットフォームだ。運動論とは、3つのRの回転スピードを徐々に上げながら組織の中に広げていくための知恵だ。運動論の要素としては、ロードマップ、世代計画、課題解決手法があげられる。

(詳細は本書を)


■4.供給能力に合わせて需要をコントロールする
 需要をコントロールするためのダイナミックプライシングは、旅行(交通機関・宿泊)、電気・通信料金、閉店間際のスーパーでの叩き売り、などすでに広く受け入れられている。電車の混雑を解消するために朝7時以前に改札を通ればポイントを付与、というサービスをしている電鉄会社もその一例といえるだろう。
 たとえばホテル業界では、以前からオフシーズンかハイシーズンかで値段が大きく違ったが、最近では日替わり、時には時間帯により変化するようになった。通常数千円の部屋を繁忙期に3万円台にしたビジネスホテルが大きな話題を呼んだが、現在はどのホテルでもメリハリの利いたプライシングが普通になった。短いサイクルで変動幅の大きな大胆なプライシングが普及しはじめた背景としては、インターネットの利用によりさまざまな選択肢がオープンに比較できる環境が進んだとともに、価格帯によって宿泊客がどのように反応するかをホテル側が把握できるようになったことで、宿泊客とホテルの間で透明性の高い市場が成立したからと考えられる。


■5.供給能力を追加投資なく拡張させる
 もう少し複雑な、たとえば、業務の繁閑が異なる仕事が混在している職場のケースがある。業務ごとの担当分けをあまり進めてしまうと、要員を右から左へと融通できないため非稼働部分=供給過剰が生じ生産性が低下してしまう。多能工化しておけば、業務量がピークを迎えた仕事に必要に応じて担当者をあてることができるので、一時的に供給能力を高めたのと同じ効果が得られる。理屈としては知っていてもどれだけ実行できるだろうか? 星野リゾートを見てみよう。
 星野リゾートでは、たとえば、朝はフロント、夜はレストラン、日中は清掃、といったように他のホテルではなかなか見られない多能工型の業務担当制をとっている。ホテルの中では時間帯によって業務量のピークを迎える仕事が変わっていくので、多能工化(マルチタスク化)が進んでいると忙しい時間帯にその仕事に柔軟に人を配置することができる。宿泊客にとっても、さまざまな場所でスタッフと交流する場面が増えるため、親近感が高まる効果もある。


【感想】

◆いかにも「コンサルタントさんによって書かれた」感じのする1冊でした。

私自身、著者の小林さんのことを全然存じあげなかったのですが、実際にアマゾンの著者紹介もほんの2行でサラッと書かれたもの。
ジェネックスパートナーズを共同創業し代表取締役を務めたのち、現在Celonis株式会社代表取締役。Celonis(本社:ミュンヘン、ニューヨーク)はプロセスマイニングというデータアナリティクス技術を核にシーメンス、ボーイングなど500社超のグローバル企業顧客を有する。
最初の「ジェネックスパートナーズ」は、経営コンサルティングの会社であり、現在(発売時点)の「Celonis株式会社」というのは、プロセスマイニングを行う会社。

どうも「世界最大手の独Celonis(セロニス)」の日本法人のようです。

プロセスマイニング世界最大手の独Celonis(セロニス)、日本法人を設立し、本格的な事業展開を開始|Celonis株式会社のプレスリリース

このプレスリリースが先月終わりに出ているのですが、本書の発売は、それに先立つ6月なので、アマゾンの著者紹介ではあまり細かく書けなかったのかも?

いずれにせよ、プレゼン等で使われそうな非常によくできた表やグラフがバンバン収録されており、それらは当然上記ポイントでは引用できませんから、実際の本書は、もっと数段分かりやすいと思っていただきたく。


◆一方、本書のタイトルにある「反常識」というのは、ざっくり言うと、そもそも「生産性」に関する考え方の違いによるもののようです。

たとえば上記ポイントの1番目でも
よく引用される統計値としての労働生産性(就業者1人当たりのGDP(国内総生産))だけではない。もっと広義な「1円投資したらいくら儲かるか?」という視点で生産性を考えるべきだ。
と言われており、それがゆえに、現場だけでなく「生産性向上は経営者の仕事」である、とのこと。

どうも労働生産性以外にも、「TFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)」という概念もあるらしいんですよね。

全要素生産性(ぜんようそせいさんせい)とは - コトバンク

そして現代のビジネス実態を反映しているのは、このTFPの方。
たとえばサービス業には運輸業などの資本集約的な業態も多く、その場合は労働生産性だけでは適切な評価はできないからだ。
結果、「戦略的な投資や、ブランド戦略などが影響する」ことになりますから、確かに「経営者の仕事」というのもうなずけると思います。


◆では、どうしたら生産性が向上できるのか、という問いに対する答えの1つが、上記ポイントの2番目の「メンタルモデルの転換」。

つまり現場での非効率を対処的に何とかするのではなく、その非効率を生む原因にある「メンタルモデル」を変えることが大事なワケです。

分かりやすいところでは、自社ですべてまかなうよりも、アウトソーシングする方が、効率的だったりしますし、「お客様第一」と言っても、過剰なサービスをすることが、必ずしも結果に結びつくとは限りません。

ちなみに、このポイントの2番目は本書の第1章からの引用であり、続く第2章以降が、それぞれ「外向きへの転換」「自律型組織への転換」「産業化への転換」「質の成長への転換」と、それぞれの「メンタルモデルの転換」に対応している次第です。

また、上記ポイントの3番目の「3つのR」のお話と、その「構造論と運動論」の計6つの要素については、第3章にて細かく解説されていますので、詳しくはそちらでご覧いただければ、と。

正直、図やフローチャートが多用されているため、ここでは説明しきれませんでした。


◆逆にイメージしやすいのが、上記ポイントの4番目や5番目でしょうか。

これらはいずれも第4章からのものであり、ともに具体的な事例が紹介されていますから、腑に落ちやすいと思います。

なお、ポイントの5番目の方の星野リゾートの例を読んで思い出したのが、サイゼリヤの「多能工化」のお話。

サイゼリヤでは、キッチンとフロアの人員を分けていないため、どちらかが手待ち状態になることなないのだそうです(それも作業を単純化したからこそできたのですが)。

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おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ

参考記事:【スゴ本】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦(2011年07月24日)


◆さらには巻末の付録として、こうした生産性向上活動に有効な「ツール」や「コンセプト」を収録。

正直、ここだけで記事が1本書けそうなんですけど、ここがまた当然のように表やグラフが多用されているので、泣く泣く割愛しました。

ちなみに、本書全体としてコンサルチックに「MECE(モレなく、ダブりなく)」で書かれているものを、部分的に引用したり言及してこのエントリーを書いていますから、果たして本書の内容や魅力が、正しく伝わっているか疑問なワタクシ。

とあるアマゾンレビューに「さらっと読み流せるかと思ったら、教科書並みにものすごく内容が濃い」とありましたが、最後まで読み終えた今、その意見に同意します。

個人的には、せっかくテーマが王道なんですから、もうちょっと売れ線狙いで軽めに書いてもらった方がいいと思うものの、この実直さが日本経済新聞出版社さんという版元らしいのかもしれませんねw


「生産性向上」を包括的に目指すために読むべし!

B07TV4SS9C
反常識の生産性向上マネジメント
第1章 生産性向上は経営の転換である
第2章 外向きへの転換
第3章 自律型組織への転換
第4章 産業化への転換
第5章 質の成長への転換
第6章 新しい日本的経営に向けて
付録 継続的生産性向上にむけた組織変革のツール&コンセプト


【関連記事】

【スゴ本】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦(2011年07月24日)

【生産性?】『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』熊野英生(2019年01月21日)

【KPI?】『最高の結果を出すKPIマネジメント』中尾隆一郎(2019年01月06日)

【生産性向上?】『チームの生産性をあげる。―――業務改善士が教える68の具体策』沢渡あまね(2017年07月20日)

【生産性】『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』隅田 貫(2017年12月08日)


【編集後記】

◆昨夜深夜に気が付いたのですが、本日終了のセールに、こんなものもあったようでして……。

https://amzn.to/2qjCi8Q

Amazon.co.jp: 秋の読書フェア: Kindleストア

カドカワさん中心なので、てっきりニコカド2019のことだと思って、素で見逃しておりました。

実際、一部かぶっているものもあるようですが、「ビジネス・経済」「趣味・実用」辺りくらいは、ご覧いただけたら、と……。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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