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2019年09月29日

【オススメ!】『「マニュアル」をナメるな! 職場のミスの本当の原因』中田 亨


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「マニュアル」をナメるな! 職場のミスの本当の原因 (光文社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも一番人気だった作品。

新書は一足先に発売されていたのですが、Kindle版がやっと一昨日配信されたので読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から。
ミスに悩む企業の多くで、マニュアルに深刻な欠陥を抱えているが、気づかれずに放置されている例が多い。駄目なマニュアルを使っているから、仕事の効率が落ち、ミスや事故が多発するのだ。優秀な人材を集めても職場がうまく回らないなら、マニュアルを疑ってみるべきである。分かりやすいマニュアルを生み出すには、作文だけでなく、作業の全体的かつ総合的な改善が必要だ。本書ではまさにこの点について、長年、人間のミスの研究を続けている著者が、具体的な成功例・失敗例を挙げながら解説。マニュアル作りに悩んでいる読者のために、すぐに使えるテクニックを紹介する。消費税の軽減税率制度の導入に役立つ早見表の例も掲載。

ちなみにKindle版は、本日で終了となる「Kindle本ポイント還元キャンペーン」の対象作品ですから、お求めになるなら今日中がお得です!






Macintosh User Manual - Saving / peterme


【ポイント】

■1.レシピ調で説明する
 料理のレシピ本は、競争が激しいだけあって、非常に優秀なものが多い。優れたレシピ本を真似して、自分の職場のマニュアルを書くだけで、ずいぶん使いやすいマニュアルが書けるはずである。
 レシピ本は工程を一手一手、順を追って記述している。まずこうする、次にこうすると、時系列で手順を指示している。
 これも、マニュアルなら当たり前ではないかと思われるであろうが、こうなっていないダメなマニュアルが多いのである。
 ダメなマニュアルは、ルールブックのような体裁である。「第1条、熱湯を注ぐことは、蓋が開いているカップラーメンならば許される。第2条、作業員は未開封のカップラーメンの蓋を開けることができる。」という風に、行動の許可と不許可を、手順を無視して羅列してある。読者は全条読み通して、自分は何をどの順ですればよいのかを逆算せねばならない。


■2.「注意する」のような曖昧な言葉は禁句
 注意とは心の中での行動である。体を大きく動かすわけではないし、具体的な結果も残りにくい。このように漠然とした行動を指示しても、読み手は何をすればよいのか分からない。
 本当に注意をさせたいのならば、「メーターを指さして、数値を声に出して読め」という指示になる。
 だが、注意するだけで十分ということは、実際にはありえない。注意した結果、何かをすべきはずなのだ。「メーターを指さし確認し、値を記録帳に書き取る。40度以上ならば、ヒーターの電源を切る。」という、注意と行動のセットで指示するのが正式である。行動の中身が自明ならば、注意の指示だけでも誘導はできるが、セットでの指示の方が確実である。


■3.大和言葉を使う
 単語は、簡単で直感的な言葉を選ぶ。漢語ではなく大和言葉を使う。 「歩行する」ではなく「歩く」と言えば分かりやすい。「歩く」と言えばいいところを、「歩行する」や「歩行を行う」「歩行行動を発生させる」「歩行行動の実行を行う」などと持って回った言い方にしてはならない。 「行う」という語は禁句である。ためしに、職場にあるマニュアルで「行う」の使用回数を数えてみるとよい。多いマニュアルは、書き方に難があるとみなしてよい。
 漢語にはいろいろとメリットがあるので、使いたがる人が多い。
 たとえば「見る」を、あえて「視認する」と書くと、高級そうに見える。また、敬語を使うのが苦手な人が、「ご覧になってください」という表現を思いつかなくても、「目視してください」と書けば、一応の格好はつく。
 漢語はこうして文章の格調をそこそこ整えてくれるが、その引き換えに、読みにくくなる。


■4.フローチャートではなく早見表を使う
 フローチャートの致命的な欠陥は、くねくねと長い矢印を引っ張ることをいとわなければ、次の手順をどこにでも指定できてしまうことである。その結果、論理の流れをグジャグジャに描いてしまうことがしばしばあり、読みにくい上に間違いも多いプログラムを作ることにつながる。
 論理を表すには早見表の形式が使われる。(中略)
 早見表は、手順の段取り構造を、表の中の層として見せてくれる。その層を把握することこそが、手順習得の核心である。仕事に慣れてきた人とは、自分が今、仕事の全体の段取りのどこにいて、次はどの層に取りかかるべきか、心の準備ができている人である。つまり、頭の中に早見表ができることが「習得」なのである。
 早見表は、マニュアルの更新や検査がやりやすい。各要素が、上下左右に意味関係をもって配置されている。すると、たとえば、ある欄の値が右隣と大きく違いすぎると目立つのである。こうして間違いを発見しやすい。


■5.行為の自己申告より、結果の味見
 検査は、行為の結果に対して目を向けるべきであり、行為の有無を問うてはならない。「砂糖を入れましたか? 塩を入れましたか?」と問うのではなく、「味見しなさい」と指示するべきである。結果を検査する方が確実である。結果は動かぬ証拠である。
 行為の有無は、物体ではないのですぐに消え失せてしまうため、確認しにくい。また、行為をやり終えた直後の作業者に、「やりましたか?」と尋ねることは、かったるい。この尋問を立て続けにされると、作業者は検査を馬鹿馬鹿しく感じて軽視してしまう。
 また、「やりましたか?/やっていませんか?」という質問は、非常に問題があり、検査の信頼性を下げる。やったつもりになっている人は、本当はやっていなくても、「やりました」と答えるものだ。誤答を物理的に阻止できないのである。


【感想】

◆ビジネスパーソンにとっては、非常に学びが多いであろう作品でした。

もちろんハイライトも引きまくり!

結果、新書としては、かなり多いハイライト数にはなっているのですが。図表あってこそのTIPSですと、なかなか引用しにくいのが難しいところです。

……こういうとき、版元さんの方で、アマゾンのページに図表の画像をアップしておいてもらえると、レビュアーとしては助かるのですけどね。

逆に何を思ったか、目次部分を画像にしてアップしている作品もたまにあったりします。

ぶっちゃけそういう部分は、テキストで目次ページにガッツリ載せていただければ、そちらの方が引用もできますし、よほど助かるのですが……。


◆そんな中、画像を見繕ってこれたのが、上記ポイントの4番目の早見表。

フローチャートは皆さんご存知だと思うのですが、それに対応するような早見表がどんなものだか、ピンと来ない方もいらっしゃると思います。

実際、よく使う早見表と言ったら、「和暦西暦早見表」みたいな簡単なものが多いですし。

そこでご覧いただきたいのがこちら。



これはSlideShareにあった、本書の著者である中田亨さんのものなのですが、まさに本書と同じ事例の図が使われています。

ヒューマンエラー対策 (Human Error Prevention)

フローチャートで表すと、左の図のように分かりにくい(それ以前にぼやけて分かりにくいのですが)ところ、早見表だと、右のように階層ごとにすっきり整理できる次第。


◆このポイントの4番目を含め、今回多くの引用の元ネタとなっているのが、本書の第2章の「マニュアルの文章作法」です。

たとえば、上記ポイントの1番目の「レシピ調」というアドバイスも、この第2章からのものであり、個人的には腑に落ちまくり。

とにかく可能な限り手順を時系列に書く、というのは、分かりやすいマニュアルの条件のようです。

逆に否定されているのが「ルールブック調」なのですが、こちらは作成する側にとっては「楽に」「短く」書けるため人気(?)らしく。
道路交通法は200足らずの条文しかないが、世の中のあらゆる交通シーンでの許可される運転を指定できている。これをレシピ調で書こうとすると、許可される運転を実現する手順まで書かねばならず、その説明は膨大になる。
確かに運転レシピを作ったら、とんでもなく分厚いものになりそうですが。


◆また、上記ポイントの2番目の「注意する」という指示も、私は今まで普通に、生活シーンや仕事上で使っていました。

それはたとえば、「後ろから車が来ないか確認し、道の端に寄る」という意味だったり、「『諸会費』という科目はデフォで不課税になっているが、クレカの会費は課税だから、課税に直して入力する」という意味だったりするのですが、ひと言「注意する」で終わらせていたという……。

本書ではズルい例として、高校野球の監督が部員に「相手投手のカーブに注意しろ」という指示を出したお話があったのですが、これなら手を出して凡退したら「だから言ったじゃないか」、うまくヒットを打ったら「ちゃんと注意して打ったな」と言えて、自己正当化できますし、だからこそ、こういう言い方をするのかな、と。

もちろんマニュアルはこれではだめで、あいまいな指示をなくして、次に何をすべきかをはっきり断言しなくてはなりません。


◆一方分かりやすさから言ったら、上記ポイントの3番目の「大和言葉」も意識しておくべきかと。

確かに「行動する」みたいな漢語の方が、字面的に格式高く見えるんですよねw

同時に幅広い意味を内包出来て、論点をぼかすこともできるという。

これまた書く側からしたら、いろいろと便利なものの、読む(使う)側にとっては不便なことこの上ありませんから、簡単で直感的な大和言葉を使うようにしなくては。

この第2章では他にも「本質を表す名前を付ける」「単文で書く」「一発退場方式で読者を早期解放する」といったTIPSが紹介されていますから、ぜひ本書にてご確認ください。


◆さて、本エントリーでは、この第2章ばかり掘り下げてしまいましたが、本書は他にも読みどころが満載です。

たとえばそもそものお話として、作業内容や手順に不備があったら、それを完璧なマニュアルに仕上げたところで意味がないのは当然のこと。

そこで第4章以降では「正しい作業手順の作り方」を指南してくれています。

ちなみに上記ポイントの5番目は、チェックについて触れた第6章からのもの。

本書ではこれに関して、現場で使われているチェックリストが掲載されているのですが、確かにやったかやらないかの「行為の自己申告」をさせるよりも、「結果がどうなっているか」を問う方が確実だと、そのチェックリストを見て思いました。

また同じ第6章では、2人で検査する「ダブルチェック」に意味がない(むしろ「有害」)と断言されており、これも目からウロコ!!

いずれにせよ本書は、マニュアル以前の作業の部分から、マニュアルの作成さらには運用まで含めて言及されており、ビジネスパーソンなら一読すべき作品だと思います。


これはオススメせざるを得ません!

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「マニュアル」をナメるな! 職場のミスの本当の原因 (光文社新書)
まえがき
第1部 マニュアルの文章術
第1章 マニュアルの目的
第2章 マニュアルの文章作法
第3章 マニュアルのあり方

第2部 正しい作業手順の作り方
第4章 手順の全体構造
第5章 作業は「型から型へ」で組む
第6章 チェックは「節目で味見」を
第7章 作業の意味論

第3部 練習問題
問題1: 「ルールブック調マニュアル」を手順主義に書き直す
問題2: 消費税の軽減税率早見表をつくろう
問題3: センター試験問題配布ミス事故


【関連記事】

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【効率化】「テンプレート仕事術」信太 明(2010年04月21日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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タイトルや書影は煽り系っぽいですが、レビューを読む限り、むしろ基本的な投資&節約ネタの作品のよう。

そのせいか意外と中古が値下がりしておらず、送料を足した中古よりも、Kindle版が800円弱お買い得です。


【編集後記2】

◆昨日の「Kindle本ポイント還元キャンペーン」の記事で人気だったのはこの辺の作品でした(順不同)。

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ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45

参考記事:【スゴ本!】『ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45』鈴木 祐(2019年09月21日)

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セール自体はいよいよ今日までですが、よろしければご参考まで。


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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