2019年09月25日
【マネジメント】『世界基準の「部下の育て方」 「モチベーション」から「エンゲージメント」へ』田口 力

世界基準の「部下の育て方」 「モチベーション」から「エンゲージメント」へ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、明日セール終了となる「KADOKAWAビジネス&実用本フェア」でも、既に多くの方にお求めいただいているマネジメント本。著者の田口 力さんは、以前読んだ『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本』(こちらもセール対象です)が良かっただけに本書も期待していたのですが、予想通りのクオリティでした。
アマゾンの内容紹介から。
世界最強企業GEでは、新規ビジネスの決裁、リーダーとしての評価、社員のその後のキャリアまで、あらゆることが「プレゼン」で決まります。いいプレゼンによって、意思決定のスピード化、本質的な思考の加速、あらゆる仕事の生産性向上ができるからです。
セール開始時よりも中古が値上がりしたため、送料を加味するとこのKindle版が500円以上お買い得です!

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【ポイント】
■1.部下や他人が近寄りやすい人になる部下はもちろんのこと他者にとって近寄りやすい人であるということは、包容力のあるリーダーとして基本中の基本です。
逆に部下や他者があなたに対して「注意深く」(Careful)近づいてきていたら、それはあなたの包容力に対する注意信号です。
自信と謙虚さを兼ね備えていない人間が管理職になってしまうと、ありもしない威厳を示そうとして「偉そうな」態度を取ります。
あなたもそうした人の1人や2人、思い当たる人がいるはずです。そしてその人が醸し出している雰囲気が、職場の雰囲気に大きな影響を与えることも知っているはずです。
こうしたことを研修で教える者として私自身が実践していたことは、パソコンのモニターの横に鏡を置いて、自分の表情をチェックするということです。
■2.「双方向の共感」ができるようになる
部下を持つあなたの「共感能力」について考えるときに、もうひとつ大事なことがあります。それは、「相手にあなたの心の動きをつかみ取ってもらう(共感してもらう)」能力です。
信頼関係を築くためは、一方通行の共感ではなく双方向の共感が必要だからです。
つまり、ここでいう共感能力は、心の動きを「つかみ取る」「つかみ取ってもらう」という2つの方向の能力を意味します。(中略)
部下に共感してもらうには、「感情の伝播」という特性を活用します。周囲からポジティブ(ネガティブ)な感情表現を刺激として受けた人は、ポジティブ(ネガティブ)な感情を抱きがちになる──というのが、感情の伝播です。
また、感情は言語表現よりも、「表情」「声のトーン」「身ぶり手ぶり」「体の接触」「対話者との物理的距離」など、非言語的表現を通じて伝播する側面が強いことがわかっています。部下と接するときには、これらの非言語的表現に注意してください。
■3.部下の「能力・やる気・機会」を分析する「AMO理論」
日本企業ではほとんど知られていない一方、世界基準として知られている理論のひとつに「AMO理論」があります。
これはアッぺルバウムらが2000年に発表した理論で、高業績を挙げている職場のシステムを研究した結果、個人の業績は「A」「M」「O」の3つの変数による関数であるとしたものです。
方程式で表せば、P = f (A, M, O)となります。
PはPerformance(業績)を、AはAbility(能力)、MはMotivation(やる気)、OはOpportunity(機会)を表します。
この3つの変数についてのポイントは次の通りです。・アビリティー…… その職務を果たすのに必要なスキルや知識を持っているか
・モチベーション……その職務をしたいというやる気や熱意があるか
・オポチュニティー…… 仕事をするために必要な支援が得られるような職場環境が整備されているか(たとえば、問題が起きたときにそれを聞き入れてくれる窓口があるか、対処するためのテクノロジーが備わっているか、能力を発揮する機会があるかなど)
■4.フィードバックを与えるときの7つのポイント
(1)推論・判断ベースは不適切
(2)観察したことに基づく。描写的に
(3)発言・行動ベースで。具体的に
(4)率直に
(5)自分のことは棚に上げて
(6)改善点を話して(ネガティブで)終わる
(7)ポジティブなことをネガティブなことの前に3つ言う
(詳細は本書を)
■5.基本能力はキャリアの早期から育成する
グローバル・ビジネスをけん引するリーダーたちに共通して見られる際立った能力があります。それは、自己認識能力、共感能力、洞察力、胆力そして影響力です。
これらの能力は、たとえ現在グローバルなビジネスに携わっていないとしても、パソコンの基本ソフトのように、すべてのビジネスパーソンに求められるものでもあります。こうした基本ソフト(能力)がインストールされて初めて、実務能力などのアプリケーションソフトが機能するようになるのです。(中略)
企業によっては、経営幹部になったときに初めて基本能力を強化しようと研修を行ったりしますが、それでは「時すでに遅し」で、ほとんど無駄な努力に終わります。そうした企業は、これらの基本能力は上級幹部になってから求められるものと勘違いしていて、若手や中間管理職の段階で育てるべき能力とは考えていません。
世界基準に照らし合わせて見ると、高度にグローバル化した企業では、こうした基本能力をキャリアの早期から徹底して育成しています。
なぜなら基本能力は一朝一夕に開発できるものではなく、ある程度の年月が必要ですし、本人が早期から自覚して意識的に取り組んだほうが大きく開発されるからです。
【感想】
◆冒頭でも申し上げたように、予想通り、いえ、予想以上の出来でした。おかげでKindleでは、ハイライトを引きまくることに(同じくらいのページ数の作品と比較して2〜4割増し)。
確かに、マネジメント系の作品は、他の定番ジャンルと比べると、当ブログでは少なめです。
カテゴリー:マネジメント:マインドマップ的読書感想文
とはいえ本書は、国内企業よりもワンランク上の「世界基準」であるGEの、「部下育成」のエッセンスを踏襲したもの。
つまり本書のマネジメントスタイルこそが、グローバル企業の標準なのでしょう。
◆さて、第1章のテーマは「“自己の成長”を忘れた上司は会社を去れ」ということで、上司自らの姿勢について指南。
本書曰く、「部下育成」の前に、自分自身が積極的に学ぶ姿勢を見せ、「良き模範」になる必要があるそうです。
何でも著者の田口さんがGEにいた頃、30万人の社員の中で最も熱心に学んでいたのは、CEOのジェフ・イメルトだったのだとか。
具体的なエピソードは割愛しますが、確かにCEOがそんな姿勢だと、社員も学ばねば、となりますよね。
なお、上記ポイントの1番目の「近寄りやすい人になる」というのは、この第1章からのもの。
モニター横に鏡を置くなんて女子社員みたいですが(?)、初めは意識して表情を和らげてしまうものの、そのうち意識が向かなくなり「素」の表情がみられるのだそうです。
◆続く第2章では「エンゲージメント」がテーマ。
ここで割愛した中に、「部下を鼓舞する3つのポイント」というものがありましたので、ご紹介しておきます。
(1)上司である自らがワクワクして仕事をしている様子を示すただ、これを当たり前のようにマネジャーは多くないのだそう。
(2)部下と正面から向き合い、関心事や価値観などの内面を知る
(3)好奇心を駆り立てるような挑戦的課題を与える
さらにあまり意識したことがなかったのが、上記ポイントの2番目の「双方向の共感」です。
自分が相手に共感することの必要性は理解していましたが、その逆も考えなくてはならなかったとは!?
◆一方、第3章では「部下の価値観」を掘り下げていますが、この「価値観」も非常に重要となります。
なぜなら人は、「自分の価値観」にあった仕事をしていると、パフォーマンスが大きく好転するから。
実際本書では部下を「知る」ことを強調していますし、割愛した中にも「『部下が会社に居続ける理由』を問うための4つのポイント」が紹介されていました。
また、これに関連して、部下を分析するためのTIPSが、上記ポイントの3番目の「AMO理論」です。
上記ポイントで触れられているように、日本では一般的ではないのか、あまり良いサイトがヒットしないものの、この第3章では「AMO理論」を適用した演習が収録されていますので、ご参考まで。
この章では他にも「キャリア・フィット・モデル」や、「キャリア・コーチング・フレームワーク」といった育成方法のTIPSも興味深かったのですが、ボリュームの関係でご紹介できず……。
◆また、上記ポイントの4番目の「フィードバック」に関するお話は、第4章からのもの。
これだけだと分かりにくいと思いますが、本来は個々のポイントごとに、ちゃんと説明されていますから、本書にてぜひご確認ください。
たとえば、(6)の「改善点を話して(ネガティブで)終わる」なんて、これだけ見たら、「?」ですし、私ならフォローしちゃいますけど、それはNGな模様。
さらに逆側からの「フィードバックを受ける作法」というのもポイントが7つあって、私は本書で初めて知りました(詳細は本書を)。
なお、最終章にある「100日」というのは、企業を合併・買収した際に、その後の経営統合(いわゆるPMI)において、最初の100日間が非常に大切なことからきているようです。
つまり、この100日間の手法(通称「100日プラン」)は、PMIに限らず、転職してきたり、新しく配属されてきた部下にも使えるということ。
駆け足で見てきましたが、本書は実際、最初から最後まで捨てネタのない濃い作品だと思います。
世界基準のマネジメントを身につけるたいなら読むべし!

世界基準の「部下の育て方」 「モチベーション」から「エンゲージメント」へ
序章 「なぜ、部下を育てないといけないのか」
1章 「“自己の成長”を忘れた上司は会社を去れ」
2章 「あなたは部下を“エンゲージ”できているか」
3章 「部下の“人生の価値観”を把握する」
4章 「OJD&フィードバック&コーチング」
5章 「今日から100日で部下を育てよ」
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【編集後記】
◆「KADOKAWAビジネス&実用本フェア」同様、明日で終了となるセールにはこんなものもありまして……。Amazon.co.jp: 【40%OFF以上】高額書籍フェア: Kindleストア
「高額」だし「40%OFF」だし……と思ってスルーしてましたが、よく見たら「50%OFF」の本もザクザクありますし、定価が2000円程度の作品(=セール価格は1000円強)でも対象となっていますから、こちらはチェックすべきでした(今さら)。
今日の夜の記事にはもう間に合わないので、明日、当ブログ向きの作品だけでもリストアップするかもしれません。

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