2019年09月12日
【オススメ!】『面白いとは何か? 面白く生きるには?』森博嗣
面白いとは何か? 面白く生きるには? (ワニブックスPLUS新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも相変わらず人気だった森 博嗣さんの最新作。今回のテーマは「面白さ」ということで、クリエイティブ系の方向けのようですが、私たちみんなの生き方についても触れられています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
人気作家が「面白さ」のメカニズムを考察。
仕事で面白いアイディアが必要な人、人生を面白くしたいすべての人に役立つヒント。
中古が定価の倍以上のお値段ですから、お得なKindle版がオススメです!
FUN! / Jonathan Rolande
【ポイント】
■1.小説のジャンルでミステリィを選んだ理由ほかのジャンルの小説だったら、読者が「面白い」と感じるものを書かなければならない。そうしないと、最後まで読んでもらえないし、悪い評判が立てば売れなくなる。それ以前に、編集者が駄目だと判断して、本にはしてもらえないだろう、と想像ができた。
ミステリィは、謎が提示され、最後には意外な展開があって、その謎が解ける、という構造を持っている。謎があれば、読者は答を知りたいから、最後まで読んでくれる。
したがって、トリックや意外性を考えれば良い。クイズを作るようなものだし、ある意味、数学の問題を作るような作業である。実は、僕は大学の工学部の教官だったので、数学や物理の問題を作ることは何度も経験していたのだ。(中略)
ミステリィの面白さは、小説の面白さに比べて、非常に特定的というか、狭い範囲に的が絞られているから、その面白さを作る側にとっては、何を考えれば良いのかが明確で取り組みやすい、と僕は考えたのだ。
■2.最近流行の「面白さ」は「共感」
もともとは、そういったほかのユーザ(読者や視聴者)の動向に対して共感するしない、ではなかった。そうではなく、作品の中のキャラクタに、受け手個人が共感したのだ。そこで描かれた心情が、「身に染みて」わかるような状況を「共感」といった。楽しさ、寂しさ、悔しさ、悲しさ、あるいは怒り、憤りのようなものが心に伝わってくる、という意味での「共感」だったのだ。
それが、子供のときからネット社会で育った世代は、「みんなで感じる」という意味で「共感」という言葉を使っている。 穿った見方をすれば、自分で感じたいのではなく、感じることで他者とつながりたい欲求が優先されている。そうなると、みんなが笑うから可笑しい、みんなが泣くから感動できる、という価値観になる。その結果、ネットの評価に過敏になったり、「いいね」の数を気にして、日常生活にまでその影響が表れる。
■3.適度な「ズレ」が「可笑しさ」の条件
「待っているところへボールが来なかった」と書いたが、まったく取れないような大暴投では笑えない。あまりに外れすぎていると、驚きや呆れが大きくなり、あるときは嫌悪感も抱いてしまうから、笑うことができない。
笑いを誘うギャップとは、「適度なズレ」であることが1つの条件といえる。この微妙な手加減ができる人が、人を笑わせる名手となる。ただ、受け手によって、このズレがどれくらいまで許容できるのか、が異なっているので、相手を見て、合わせる必要があるだろう。このあたりが、「可笑しさ」を作ることの一番の難しさになる。
「微妙」という言葉は、もともとは褒め称える表現だった。今は、「今一つ」という意味で、残念な印象を伝えるときに使う場合が増えている。可笑しさのズレというのは、本来「微妙」なものだった。加減をし、適度にずれているものが一番面白い。その僅かさが、最大の「面白さ」を生んだのである。
■4.「面白さ」の理由は達成感にある
この「簡単」という方向性も、また「面白さ」にブレーキをかける。逆なのだ。
何故なら、「面白さ」は簡単になるほど面白くなくなるからだ。「面白がりやすい」という言葉が聞かれないように、簡単に面白さを感じることはできない。そういうものは、面白くない。簡単だというだけで、「つまらない」ものになってしまうのである。これは、「面白い」の定義であるし、人間の感覚がそうなっているのだから必然といえる。
「面白さ」は、容易に得られないものでなければならない。たとえば、簡単なクイズでは面白くない。すぐに犯人がわかってしまうようなミステリィでは楽しめない、ということだ。
人間の満足というものが、なにかを成し遂げたあとに得られるからであり、そもそも、その「達成」が「面白い」と感じられる。何故、山に登るのか、という疑問と同じだ。山は高いから登るのが面白い。登るのが大変だから、面白いのだ。登りやすい山では、楽しめないのである。
■5.抽象的な「面白さ」を素材にする
そう、ゼロからだ。それは、たしかにそのとおり。
ただ、ちょっとした抜け道がないわけでもない。
それは、周囲にある「面白さ」、過去にあった「面白さ」から、本質を取り出す行為によって生まれる。
何故面白いのか、どこがどう面白いのか、ということを考えていくと、その具体的なネタから、抽象的な「面白さ」が抽出できる。これができるようになるためには、ものごとを客観的、抽象的に捉える目が必要だ。しかし、慣れれば自然にできるようになる。
さて、抽出した「面白さ」とは、言葉にはならない。「こんな感じのもの」「こんな雰囲気のもの」といった茫洋とした雲の塊のような素材である。
だが、そこから、幾つかの「面白さ」を作り出すことができる。ゼロから作るよりも、数段容易だ。一日中考えていれば、1つくらいは必ず出てくる。
【感想】
◆色々と考えさせられた作品でした。そもそも「面白さ」とは何か?
今まで自分なりに「面白い作品」なり「面白い体験」や「面白い人」に、数多く巡り合ってきたものの、いったいそれらの「何が面白さの根源なのか」までは考えたこともありませんでした。
それを本書では、もろに理系脳である森博嗣さんが、「あれも」「これも」と挙げ連ねていくワケです。
つまり「面白い」と言っても、色々な意味で用いられていますし、その理由も数多くあるということ。
「可笑しい」「夢中になれる」「楽しい」「夢中になれる」「満足できる」……等々。
本書ではそのそれぞれについて、いかにも森さんらしい分析がなされている次第。
◆まず第1章では、そういった色々な「面白い」を俎上に載せます。
そこで紹介されているのが、上記ポイントの1番目の森さんの戦略。
元より森さんは、趣味(模型工作)にお金がかかるため、その資金稼ぎのために作家になったという極めて稀な方です。
その才能もさることながら、ミステリィというジャンルの構造的な「面白さ」に目を付けたところは、さすがとしか言いようがありません。
ちなみに、この「面白さ」と世間の「評価」に関して、森さんはAmazonレビューと自分の作品の売れ行きについて調べたことがあるそうで、結論から言うと「『負の相関』が顕著だった」とのこと。
つまり、評価が低いほうがむしろ売れていたのだそうです。
どうしてこんなことになるのかというと、売れていない本ほど、熱心なファンが割合として多く買っているから、評価が高くなる。売れる本は、好意的でない人にまで広く知られる結果になるので、マイナスの評価をする人の割合が増える、ということだ。なるほどこれは、目からウロコ!
◆続く第2章では、「面白さ」の中でも特に「可笑しい」といわれるものについて言及されています。
要は「笑える面白さ」。
「いないないばぁ」から「芸人のギャグ」まで広範囲に考察されているので、お笑い好きの方なら、この章は楽しめると思います。
上記ポイントの3番目もこの章からなのですが、たとえば「昔のギャグ」が笑えないのは、この「ズレ」が適度でないから。
森さんは「そういった環境の変化に、作り手は敏感でなければならない」と言われています。
もし、笑わせることが仕事ならば、それを長く続けるためには、いつも自分の方法を修正する必要があるだろう。笑わせることが、泣かせたり、怒らせたりするより、ずっと難しいのは、このような理由からである。これは芸人さんのみならず、制作に係わる人は意識しておきたいところかと。
◆一方第3章ではさらに広範囲な「面白さ」が挙げられていて、私なんぞは指摘されて「それもそうだ!」と改めて気が付いたくらいです。
たとえば「ほのぼの」「アクション」「興味深い」等々。
また「SF」だと、「ロボットが登場する、地底世界がある、宇宙人が攻めてくる」といった、その「設定」自体が面白かったりします。
ちょうど今、無料キャンペーンをやっている『進撃の巨人』もそうですね。
Amazon.co.jp: 【連載10周年企画】『進撃の巨人』最終回まで一緒に読もう!キャンペーン: Kindleストア
もちろん、「設定」だけでは足りなくて、「展開」も面白い必要が出てくるのですが、「設定」が宣伝で明かして惹きつけられるのに対して、「展開」はネタバレになるため「意外な結末」「予想外の展開」等しか言えない、という指摘も確かにその通りだな、と。
さらには、「反社会的な面白さ」(ブラックジョーク等)や「役に立つ面白さ」(テレビのバラエティ等)も、森さんらしい分析がなされています。
◆この辺を読んで、ブログやSNSでアクセスや「いいね」を集めるヒントになるな、と思っていたら、すこし飛んだ第7章では、「自撮り」や「インスタ」といった「アウトプット」についても言及がありました。
つまり大昔のネットは「インプットのためのメディア」だったのが、最近は「個人がアウトプットするメディア」になったということ。
今のところ、「いいね」などのサインを出し合って、お互いに「インプットしていますよ」という仮想を抱いているようだ。まるでお金のように「いいね」が世間を巡っているけれど、実際のところ、ほとんどの人は他者のことをしっかりと見ていない。インプットしている者はほとんどいない。きっつーw
また最終章となる第9章では、これまでの内容を総括しつつ、創作のヒントまで述べられています。
たとえば「アート」と「エンタテインメント」の「面白さ」の違いや、「宣伝」と「売れ行き」の関係等。
くわえて「秘伝」(?)とも言えるのが、上記ポイントの5番目です。
これは、純粋に何もないところから「面白さ」を生み出すヒントなのですが、詳しくは本書にて。
……すいません、森さんお約束の(?)「質問コーナー」や、後半にあった「面白く生きる生き方」辺りを、ごっそり割愛してしまいましたが、それだけ他の部分が、文字通り「面白かった」ということで(言い訳)。
「面白さ」について「意識的」になれる名著です!
面白いとは何か? 面白く生きるには? (ワニブックスPLUS新書)
第1章 「面白い」にもいろいろある
第2章 「可笑しい」という「面白さ」
第3章 「興味深い」という「面白さ」
第4章 「面白い」について答える
第5章 「生きる」ことは、「面白い」のか?
第6章 「面白さ」は社会に満ちているのか?
第7章 「面白く」生きるにはどうすれば良いか?
第8章 「面白さ」さえあれば孤独でも良い
第9章 「面白さ」の条件とは
【関連記事】
【夢の実現】『夢の叶え方を知っていますか?』森 博嗣(2017年01月20日)【仕事考】『「やりがいのある仕事」という幻想』森博嗣(2013年05月13日)
【オススメ】『常識にとらわれない100の講義』森 博嗣(2012年08月20日)
【濃厚!】『読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか』藤田和日郎,飯田一史(2016年10月22日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。敵とのコラボレーション――賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法
「敵と協働」するとは、なんとハードルの高いことかと!?
中古に送料を加えるとほぼ定価並みとなりますから、Kindle版が1000円以上お得です!
【編集後記2】
◆本日で終了となるKindleセールにはこんなものもあります。Amazon.co.jp: 出版社合同プログラミング書 サマーセール(9/12まで): Kindleストア
テーマ的に当ブログでは難しいのですが、興味のある方は急いでご確認ください!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「アイデア・発想・創造」へ
この記事のカテゴリー:「自己啓発・気づき」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
12月16日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです