2019年08月28日
【成功への旗印?】『川上から始めよ──成功は一行のコピーで決まる』川上徹也
川上から始めよ (ちくま新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、とある方からオススメ頂いたコピー本。コピーとは言っても、末端の「売らんがため」のものではなく、その会社の本質を表すものを「川上コピー」と呼ぶのだそうです。
アマゾンの内容紹介から。
「川上」とは、仕事のそれぞれの場面において、一番上流にあり、川中、川下を決めていく背骨になるもののことだ。そこで旗印として掲げる言葉は長くなればなるほど伝わらない。企業の「理念」を一行に凝縮したフレーズを「川上コピー」と名付けた著者が、経営、マーケティング、プロジェクト、リーダーシップなどにおける「川上」の重要性と、成功に繋がる一行のコピーのつくり方、それをどう川中、川下に生かしていくかについて解説する。
中古は値下がり始めていますから、お得なKindle版がオススメです!
Tio Steve / marcopako
【ポイント】
■1.Appleの「Think Different」のインパクト当時、Apple社内で事前にこのCMが試写された時には、ほとんどの社員がその価値をまったく理解できず、営業サイドからは強い反対があったそうです。倒産の危機にある時に、こんなよくわからないCMを莫大なお金を使って流している場合かと。
しかし実際は、このキャンペーンからAppleは大復活を果たします。
クレージーと言われながらも現状を打破し、自分が世界を変えられると本気で信じている人たちの映像が、Appleの価値と重なったのです。それは同時に、そんなApple製品を使っているユーザーたちの価値とも重なりました。Apple製品を使うことにどんな価値があるかは、何万字をかけて論理的に説明しても無理でしょう。しかし、ジョブズは、Think Different.というたった2つの単語によって表現したのです。
■2.壮大な目標や挑戦を語る「ムーンショット」の3つの要素
(1)人を魅了し、奮い立たせるものであること(inspire)ケネディの演説のように、士気を高揚させるものである必要がある。前年対比〜%増のような売上の目標では、従業員の士気は高まらない。優れたムーンショットは、達成した時のビジュアルを思い浮かべるとワクワクするようなものでなければならない。(2)信憑性があること(credible)ケネディの演説は、非常識で過大な目標だと思われた。しかし実際は、ヒアリングを重ね、うまくいけば目標達成の可能性があることを確認した上で語っていた。優れたムーンショットは、ただ荒唐無稽なだけではダメで、信憑性が必要である。(3)想像力あふれる斬新なものであること(imaginative)ケネディの宣言は、それまでの宇宙開発の延長線上にあったものではなかった。ソ連と争っているレベルを超えて、一気に月への有人飛行を打ち上げた。優れたムーンショットには、過去からの意義ある断絶が欠かせない。
■3.ソニーの大ヒットしたラジオの「川上コピー」
井深は、ラジオのサイズをガラっと変えることを考え、技術者たちに以下の商品コンセプトを伝えました。「ポケッタブル(ポケットに入る) ラジオ」英語には「ポータブル(持ち運びができる)」という言葉はありましたが、「ポケッタブル」という言葉はなく、井深らが作った和製英語です。アメリカでは既に「ポータブル」と称するラジオは出てきていたので、それではインパクトがない。より小さくポケットに入るくらいのサイズである「ポケッタブルラジオ」を開発するんだと、川上の商品コンセプトを明確にしたのです。
ポケットに入るラジオいうことになると、一家に一台から一人一台に、さらには簡単に持ち運びができて外で聴くこともできる。
一目で、今までと違う革新的な商品であることがわかります。
世界のどこの会社もまだやったことがないことを、敗戦国の小さな町工場がチャレンジしようとしたのです。技術者たちはその目標に燃え、トランジスタのポケッタブルラジオを開発しようと夢中になりました。
■4.刺さる川上コピーの書き方7カ条
(1)「大義」を具体的に語る
(2)具体的な数字を入れる
(3)常識の逆をいいながら真理を語る
(4)普通は合わない言葉を組み合わせる
(5)現状の違う場所に向かうことを明確にする
(6)なるほどという比喩で表現する
(7)語呂をよくする
(詳細は本書を)
■5.理念の「ぬか床理論」
私は講演などで、「理念はぬか床のようなものである」という比喩をよく語ります(これを「ぬか床理論」と名付けています)。
野菜(商品・サービス・従業員) を、理念という「ぬか床」につけてきっちりまぶすことで味わいが出て、おいしい「お漬物」になり、より高い価値を生みます。
その結果、おいしいメシ(利益・売り上げ) が食べられるようになるのです。
ただし、お飾りの「ぬか床」ではダメです。すべての商品やサービスにきっちり「ぬか」を刷り込み、しみこませてこそ価値が生まれる。また商品やサービスだけでなく、従業員や接客などにもきっちり「ぬか」をしみこませる必要があります。(中略)
そして残念ながら、一度腐った「ぬか床」は再生するのは難しい。もったいないけれど、新しい「ぬか床」をまた作り直すしかありません。「理念」も同じです。一度腐った「理念」を再生するのは難しい。
そんなことにならないよう、「理念」を凝縮した「川上コピー」を一度作ったら、毎日毎日、商品・サービス・従業員にまぶしながらかき混ぜ続ける必要があります。
きちんと手入れさえしていれば、ひとつの「理念」で半永久的にメシを食うことは可能です。
【感想】
◆以前、8月初旬の未読本のチェックをした際に、この本も目視しておりました。ただタイトルと著者名から、てっきりダジャレなのかと思い、内容紹介まで読まずに反射的にスルーしていたという(ダジャレが少々苦手でして)。
もちろん、ここで言う「川上」とは、冒頭でも触れられているように、「川上、川中、川下」の「川上」であり、「一番の上流」を意味しています。
川上さんいわく、成功しているプロジェクトの多くは、「川上」における「言葉」が明確である、と。
そしてそれは、長くなればなるほど伝わりにくく、「できれば15字以内」が望ましいのだそうです。
◆本書ではその「川上コピー」を、各分野ごとに解説。
まず第1章は、企業運営における「経営」や「事業」が対象分野です。
有名なところでは、Googleの「邪悪になるな」や、Amazonの「地球上で最も顧客中心の企業になる」等々。
上記ポイントの1番目の「Think Different」もその1つであり、このCMから1年以内に、Appleの株価は3倍に跳ね上がったのだそうです。
もちろん、日本の企業だけでなく、サントリーの「やってみなはれ」やニトリの「お、ねだん以上」等も登場している次第。
◆続く第2章では、「プロジェクト」における「川上コピー」に言及されています。
有名どころとしては、故ケネディ元大統領の「私たちは10年以内に月へ行くことを選択する」。
この「アポロ計画」になぞらえて、ここ数年シリコンバレーでは「かなり困難だけれども独創的で、もし実現したら大きなインパクトやイノベーションをもたらす壮大な目標や挑戦を語ること」を、「ムーンショット」と呼ぶようになっているのだそうです。
なお、上記ポイントの2番目の「3つの要素」は、マーケティングディレクターのスコット・アンソニーが「ハーバードビジネスレビュー」で提唱し、それを川上さんが翻訳したもの。
本書では北海道の旭山動物園が、廃園寸前から日本有数の人気動物園に生まれ変わった際の「ビジョン」に、この「3つの要素」が含まれていたことを検証していますから、こちらもぜひご確認ください。
この章ではほかにも、箱根駅伝で有名な、青山学院大学陸上競技部監督の原晋氏や、かつてラグビー日本代表の監督を務めたエディー・ジョーンズ氏の「川上コピー」が紹介されていました。
◆一方第3章では、「川上コピー」の「マーケティング」的側面を。
上記ポイントの3番目はソニーのケース(ソニーはほかにも「ウォークマン」が登場)ですし、そのソニーを目標としていたAppleは、「iPod」の「ポケットに1000曲を」が有名ですね。
さらにはサウスウエスト航空の「空飛ぶバス」や、ドミノピザの「熱々のピザを30分以内にお届け。間に合わなかったら代金無料」といったコンセプトは、なるほど「川上コピー」の面目躍如だな、と。
ちなみに「川上コピー」は、ジャンルによってコンセプトの組み立て方は微妙に違うものの、「それまでの一般常識では見えてなかった部分にサーチライトで光を当てて、それを指し示すこと」という共通部分があります。
……という考え方を提言しているのがこの本なのですが。
〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考
なぜかKindle版が「408円」と激安(何かのセールかは不明)なので、興味のある方はご検討を。
◆そしていよいよ第4章では、具体的な「川上コピーのつくり方」がテーマ。
上記ポイントの4番目は「どう言うか(How)」のお話であり、本書では7つの書き方それぞれについて事例を挙げて解説しています。
たとえば、(2)なら、iPodの「ポケットに1000曲を」がそうですし、(4)ならAKB48の「会いに行けるアイドル」等。
さらには出来上がった「川上コピー」をチェックするための「5つのポイント」がこちらです。
・覚えやすいか?もちろん、そもそもの「何を言うか(What)」のアドバイスも述べられていますから、ご安心ください。
・意志が感じられるか?
・何かしらの新しい発見や哲学があるか?
・羅針盤になる1行になっているか?
・その旗を見てワクワクする未来を感じるか?
成功を目指す方なら、読んでおきたい1冊!
川上から始めよ (ちくま新書)
第1章 「経営」「事業」は川上から始めよ
第2章 「プロジェクト」は川上から始めよ
第3章 「マーケティング」は川上から始める
第4章 川上コピーのつくり方
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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