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2019年08月24日

【オススメ】『岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。』ほぼ日刊イトイ新聞


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岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先月末の「未読本・気になる本」の記事の編集後記で軽く触れた作品。

Kindle版がなかったので、様子見していたのですが、いつのまにか配信が開始されていたので、さっそく読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
ほぼ日刊イトイ新聞に掲載されたたくさんのインタビューや対談、そして任天堂公式ページに掲載された「社長が訊く」シリーズから重要なことばを抜粋し、再構成して1冊にまとめました。
天才プログラマーとして多くの名作ゲームを生み出し、任天堂の社長としてニンテンドーDSやWiiなど革新的なゲーム機をプロデュースした岩田聡さんの、クリエイティブに対する思いや経営理念、価値観、ポリシー、哲学などが凝縮された本です。
岩田聡さんを誰よりも深く知っている、任天堂の宮本茂さんとほぼ日の糸井重里の特別インタビューも収録。
「岩田さん」を、盟友のふたりがたっぷりと語ります。

このKindle版は、新書版とほとんどお値段変わらないのですが、版元の関係でセールがあまり期待できませんから、気になる方は迷わずぜひ!






In Our Own Words – Who Satoru Iwata Was To Us / BagoGames


【ポイント】

■1.ボトルネックがどこなのかを見つける
 たとえば、「もっとプログラムを速くしてください」というときには、ボトルネックになっている部分がかならずあって、それが全体を遅くしているんですね。
 プログラムの世界では、よく、「全体のなかの1%の部分が、全体の処理時間の7割から8割を消費している」などといわれるぐらい、そこばかり何回も処理しているということがあり得ます。ですから、そのボトルネックになっているところを直さない限りは、そうじゃないところをいくら直しても意味がないんですね。
 ところが、人は、とにかく手を動かしていたほうが安心するので、ボトルネックの部分を見つける前に、目の前のことに取り組んで汗をかいてしまいがちです。そうではなくて、いちばん問題になっていることはなにかとか、自分しかできないことはなにかということが、ちゃんとわかってから行動していくべきです。


■2.続けるためにはご褒美が必要
 ゲームって、すぐにやめちゃうゲームと「なんかやっちゃうんだよね」っていうゲームがあるんです。同じように丁寧に仕上げたゲームでも、本質的なおもしろさとは別の次元で、続くゲームと続かないゲームがある。このことと、いろんな習慣が継続するかということは、すごく似ているんですよ。
 共通することがなにかというと、人は、まずその対象に対して、自分のエネルギーを注ぎ込むんですね。時間だったり、労力だったり、お金だったり。そして、注ぎ込んだら、注ぎ込んだ先から、なにかしらの反応が返ってきて、それが自分へのご褒美になる。
 そういうときに、自分が注ぎ込んだ苦労やエネルギーよりも、ご褒美のほうが大きいと感じたら、人はそれをやめない。だけど、返ってきたご褒美に対して、見返りが合わないと感じたときに、人は挫折する。
 これは「やめずに続けてしまうゲーム」の条件としても成り立ちますし、「英語を学ぶときに挫折しないかどうか」も、同じ理屈で説明ができると思うんです。


■3.コミュニケーションがうまくいかないのは自分のせい
 プログラムの世界は、理詰めです。だから、もしも完動しないとしたら、原因は全部、プログラムしたこっちにある。
 わたしは、人と人とのコミュニケーションにおいても、うまく伝わらなかったらその人を責めずに、自分の側に原因を探すんです。コミュニケーションがうまくいかないときに、絶対に人のせいにしない。「この人が自分のメッセージを理解したり共感したりしないのは、自分がベストな伝え方をしていないからなんだ」と思うようにすると決めたんです。
 それはきっと、プログラムをやっていたおかげですね。だって、システムが動かないときは、絶対に間違ってるんですよ、プログラムが(笑)。
 だから、人と話してうまくいかなかったら、「わからない人だな」と思う前に、こっちが悪かったんだろうと思う。うまくいかないのならば、自分が変わらないといけない。この人に合ったやり方を、こちらが探せば、理解や共感を得る方法はかならずある。いまでも、コミュニケーションがうまくいかなかったら、自分の側に原因を求めています。そう思えるのは、きっと、過去に組んできたプログラムのおかげですね。


■4.アイデアとは複数の問題を一気に解決するもの
 ゲームの話についていうと、多くの場合、おもしろさが足りなくて悩むわけです。当然ネタがたくさん仕込まれてるほど、おもしろいわけだし、人は満足してくれる。でも、一方で、つくるのに割り当てられる人材の量や時間は有限です。有限のなかで「多いほどいい」って言われたって、解決できないわけですよね。
 ところが、ときどき、たったひとつのことをすると、あっちもよくなって、こっちもよくなって、さらに予想もしなかった問題まで解決する、というときがあるんですよ。
 そういう「ひとつのこと」を、宮本さんは「ないか、ないか」って、いつも考えてるんです。ものすごくしつこく、延々と。(中略)
 ひとつ思いついたことによって、これがうまくいく、あれもうまくいく……。それが「いいアイディア」であって、そういうものを見つけることこそが、全体を前進させ、ゴールへ近づけていく。
 ディレクターと呼ばれる人の仕事は、それを見つけることなんだって宮本さんは考えているんですね。


■5.みんなをハッピーであることを実現したい
 思えば岩田さんはずっとそう言い続けてるんだけど、みんながハッピーであることを実現したい人なんですよ。自分がハッピーであること、仲間がハッピーであること、お客さんがハッピーであること。「しあわせにする」とかじゃなくて、「ハッピー」ってカタカナなのがいいね、なんていうことをぼくも言ったかな。そういう気持ちは、ぼくもまったく同じだったから、うれしかったですね、なんだか。
 ああ、つまらないことを憶えているもんだなと思うけど、あの、岩田さんってね、「ハッピー」って言うときに、こうやって両手をパーにするんだよ(笑)。こういうふうに、「ハッピー」って(笑)。そんなこと、忘れないもんだねぇ。
 あの日は、よかったな。ふたりっきりで、長々としゃべって。(糸井重里氏)


【感想】

◆冒頭の内容紹介にもあるように、本書はすでにウェブ(「ほぼ日刊イトイ新聞」)にて掲載されたインタビュー等がそのほとんどをなします。

私自身、おそらく半分以上はすでに読んだことがありましたし、キチンと「ほぼ日」をチェックされている方なら、もっと既読部分が多いのではないか、と。

それでも生前に、岩田さんが著作を出されなかった以上、こうして1冊の本にまとめられたことは、大きな意味があると思います。

もちろん、これから岩田さんのことを知る人にとっては、ウェブに点在する記事をいちいち追うよりも、本書を通して読めば、その人となりや生き方、考え方を手軽に知りえるでしょうし。


◆さて、本書の構成ですが、第1章から第5章までと第7章が、岩田さんへのインタビュー

第6章だけが他と違い、岩田さんをよく知る、任天堂の宮本茂さんと、糸井重里さんが、岩田さんを回顧する内容になっています。

そしてそれらの章の間には、「岩田さんのことばのかけら」と題した、岩田さんの名文句等を収録。

たとえば
名刺の上ではわたしは社長です。
頭のなかでは、わたしはゲーム開発者。
しかし、こころのなかでは、わたしはゲーマーです。
なんて有名な一節も含まれています。



ただこれらが、普通のテキストではなくて、扉絵のごとく非常に小さな文字で書かれた画像なので、ハイライトができないのが少々惜しまれますが(ちなみにこのせいだけで「星2つ」をつけているレビュワーがいます)。


◆個々に章を見ていくと、まず第1章が「岩田さんが社長になるまで。」。

高校時代のプログラム電卓との出会いや、大学時代にはデパートのパソコン売り場で同好の士と仲良くなったり、そこの店員さんがつくった会社に誘われてバイトを始める等。

……ってその会社というのが、実はHAL研究所でそのまま居ついて入社し、そこの社長にまでなってしまうのですがw

また、任天堂との出会いや、HAL研究所が息を吹き返す契機となったのが、ムスコも大好きな『星のカービィ』だったというのも初めて知りました(元が「ティンクルポポ」というキャラだったことも!)。

続く第2章と第3章では、「リーダーシップ」と「個性」という、岩田さんの人となりがうかがえるお話が登場。

上記ポイントの1番目が第2章で、2番目と3番目が第3章からなのですが、これら以外でも、この2つの章が一番ハイライトを引いています。

ただ、この辺は私も確か「ほぼ日」で読んだ記憶がありましたから、読者の方にとっても既知のお話が多いかも。


◆一方、第4章では岩田さんが語る、周囲の人の人物像のお話が。

上記ポイントの4番目は、文中にもあるように宮本茂さんについてであり、やはり宮本さんとは任天堂で非常に良い関係を築かれていたようです(第6章で宮本さんも同じように言われていますが)。

また今回は割愛しましたが、「宮本さんの肩越しの視線」のお話も、クリエイティブに携わる方なら、きっと参考になるハズ。

この章ではほかにも、糸井重里さんとの出会い(有名な『MOTHER2』の「いちからつくり直していいのであれば半年で」という発言含む)や、その後糸井さんにHAL研究所の顧問になってもらうために、お願いにあがるお話も登場します。

その際、岩田さんは自分の仕事観を糸井さんに語り、「まわりの人が喜んでくれるのが好き」という岩田さんに、「オレもそうだ」と答える糸井さん。

実際この一件は、糸井さんにとっても非常に印象深い出来事だったようで、第6章でも再び登場するのでした。


◆さて、その第6章ですが、ここでは宮本さんと糸井さんのお二人が岩田さんの逝去後に、各々岩田さんを語るものとなっています。

まず宮本さんは、社内での岩田さんの素顔や仕事のやり方についての回想を。

……どうでもいいことなのですが、長い会議の際に岩田さんがお菓子をどんどん食べるので、皆が「カービィ」と呼んで、岩田さんの前にお菓子を積んでいたのだそうw

一方糸井さんは、やはり『MOTHER2』のくだりや、その開発が夜遅くまで及ぶと、山梨に帰る岩田さんを、糸井さんが新宿駅までよく見送りにいった思い出を語られています。

さらに上記のHAL研究所の顧問をお願いされた際のエピソードが登場するのですが、実は上記ポイントの5番目はここからのもの。

そこだけ抜き出して読んでもピンとこないと思いますが、私は岩田さんが「ハッピー」と言いながら両手をパーにする仕草を思い浮かべて、思わず目頭が熱くなりましたよ……(涙目)。

もちろん、ゲームをやらない私がこれだけインパクトを受けているくらいなのですから、アマゾンレビューがすべて星5つ(上記の星2つのレビュアーを除く)なのも納得の1冊。


これはオススメせざるを得ません!

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岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス)
第1章 岩田さんが社長になるまで。
第2章 岩田さんのリーダーシップ。
第3章 岩田さんの個性。
第4章 岩田さんが信じる人。
第5章 岩田さんの目指すゲーム。
第6章 岩田さんを語る。
第7章 岩田さんという人。


【関連記事】

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【編集後記】

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ご声援ありがとうございました!

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