2019年08月16日
【リーダー心得】『リーダーになる前に知っておきたかったこと』小林慎和
リーダーになる前に知っておきたかったこと
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、意外とお求めいただけているリーダー本。著者の小林さんは、国内外で起業経験のあるシリアルアントレプレナーとして注目されている方です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
新たにチームを任せられた人、すでにリーダーとして多くの問題に直面している人、これから起業しようという人……リーダーを目指したいすべての人、必読!
野村総研、グリー出身。海外勤務を経て、国内外で7社を起業。
ブロックチェーンテック起業でも注目の著者が教える「リーダーシップの磨き方」
現時点で、中古がほぼ定価と同額ですから、2割引きのKindle版がお買い得です!
Leadership vs management / ocd007
【ポイント】
■1.互いの理解を深めるために、ハシゴを降りてみるそもそも、人の思考過程はおおよそ3段のハシゴによって表現できます。1段目は情報の選択、2段目は情報の分析、そして3段目は結論であり考察です。その結論にしたがって、人は行動を起こします。(中略)
互いの理解を深めるためには、一度ハシゴを降りてみることが近道です。そうすることで、互いの違いを認識できます。違いが認識できれば、なぜ違う行動をとったかについても素直に受け止めることができます。
違う行動をとる相手とは、互いがどういう結論や考察を持っているかをまず話し合ってみる。違う結論に至っている場合は、どういう分析を行ったのかを確認し合う。分析のやり方が違う場合には、どんな情報を選択したのかを示し合わせる。選択した情報すら違う場合には、互いが活用可能だと思っている情報を並べて比べてみる。
ここで重要なのは、「どこが同じなのか」を確認することではなく、互いの「どこが違うか、どう違うのか」を理解することです。
違いを理解することこそが、互いを理解する第一歩となります。
■2.膝詰め議論の賞味期限は翌朝まで
実は、膝詰めで議論して合意したとしても、多くの場合、その賞味期限は翌朝までなのです。
そもそも、そこまで膝詰めして議論しなければ前に進まない問題とは、どういう性質のものか。それは、それを問題と感じている人の心の内面、もしくは、価値観そのものから出てくるものである場合が多いのです。
つまり、その間題と感じることは、その人にとっては、自然とそう感じるほどのことなのです。その人の人間性の自然な状態が、問題と感じること。それは、1日や2日、膝詰めで議論したところで、変わりません。人間もしくは、人格を変えようとするようなものだからです。
では、どのように立ち向かえばいいか。
その間題をチーム内で抱えたまま、ゴールに向かって走るのです。そもそも、問題が完全になくなることはありません。問題は出番を待っています。問題を完全になくそうとすると、チーム内に疲弊を生みます。なぜなら完全になくなることはないからです。膝詰めでの議論でプロジェクトは進みます。しかし、たとえ翌朝になりまた同じ問題が勃発しても嘆く必要はありません。
■3.失敗を受け入れる覚悟を持つ
私たちが普段取り組んでいるビジネスの世界は、どの程度失敗するものなのでしょうか? 新規事業はよく千三つといわれます。1000個の事業アイデアで、ものになるのは3つ程度という意味です。しかし、これも正確な統計データがあるわけではありません。
プレゼンは何回に1回勝てばいいか? 投資家からの出資を取りつける場合は? 役員を説得し決裁を受ける場合は? テレアポを取る場合は? 商談でサービスを売り込む場合は? 何回に1回成功すればいいのでしょうか?
失敗する確率を事前に把握することなく仕事に励んでいるビジネスマンは少なくありません。たとえば、「10回トライして1回成功すれば想定どおり」と考える――そうした思考の転換が必要となります。
さらにいえば、9回トライして9回とも失敗しているときに、「よし、この調子でこのままがんばっていこう」と思えるくらいの精神的な強さが、リーダーには求められます。
■4.課題設定の深掘りをする
リーダーがやらなければならないこと。それは、立ち上げようとするサービスの課題設定の深掘りです。違う言い方をすれば、「ビジョンの設計」ともいえるでしょう。
なぜ、そのサービスが必要なのか。なぜ、このチームがそれに取り組むべきなのか。なぜ、この会社が存在するのか。なぜ、社会がそれを必要とするのか。
0から1のサービスを立ち上げるとき、創業者や立ち上げメンバーの胸の中には、否応なく、どうしようもなく、そのサービスを世の中に届けることで解決したい課題があります。その課題とは何か。なぜその課題を解くことが重要なのか。
0から1のフェーズにおけるリーダーに求められることは、事業の推進やメンバーのタスク管理などよりも(それらも大変重要な仕事ですが)、チームが立ち向かうべき社会課題をより深く理解し、それを繰り返しメンバーに伝え、議論すること。それこそが何よりも重要です。
■5.部下のモチベーションが上がらない理由はリーダーにある
そもそも、人はどういうときにモチベーションが湧くのでしょう。それは、「重要なものに取り組むとき」、そして「必要とされているとき」。その2つ以外にありません。
部下に任せているタスクがいかに重要なものか。プロジェクト全体の中の何に影響し、それがプロジェクトの命運をどのように握っているのかを伝えましょう。そして、その命運の鍵を握るのが自分(部下)であり、タスクが完了しなければ困る(つまり、必要とされている)ということを理解してもらうのが重要なのです。
タスクは変わりません。やる必要があるタスクです。部下の現時点でのスキルも変わりません。部下のスキルは、プロジェクトを通じて初めて向上していきます。
タスクを任せている部下が思うように動かないという状況を変えることができるのは、リーダーだけです。そして、その原因はリーダーの言動にあるのです。
【感想】
◆本書を読むまで、お恥ずかしながら著者の小林さんについて存じてなかったのですが、「野村総研やグリーを経て、国内外で7社起業」というのは、起業家としてもかなりのもの。そのいくつかの創業時のお話も本書には登場しており、「リーダー」うんぬん以前に、「起業本」としても読みどころが多かったです。
たとえば、上記ポイントでは割愛しましたが、創業期と成長期と拡大期の、それぞれのメンバーの対立のお話等々。
この辺の対処方法は、さすが何社も立ち上げたアントレプレナーだからこそ分かりえるものだな、と。
実際には7社どころか、もっとアイデアがあったものの、アイデアを話したときの周りの反応が悪くて、起業に踏み切らなかったもの(「クラウドファンディング」もその1つ)もあったそうなのですが。
◆さて、本書の第1章では、コミュニケーションについて言及。
上記ポイントの1番目も、その第1章からのものなのですが、このポイント部分を読んだときに、真っ先に思い浮かんだのが、昨日ホッテントリ入りしていた、こちらのエントリーでした。
中国の現状 / Current situation in China P. R. - ソースは俺的老婆
中国本土にいたら情報操作されているでしょうから、香港の現状について知らないどころか、誤った認識を持っているのは分かります。
ただ、海外に旅行に出ているなら、本当のことに気が付かないハズがない、と思っていたのですが、それにしたって彼らにしてみた「ハシゴを降りる」必要があるわけで。
同じことが、今の日韓の対立にも言えるような気がしないでもないのですが。
◆続く第2章では、問題解決がテーマです。
上記ポイントの2番目もここからで、「膝詰め議論」というのも、小林さんは何度も体験されているのだろうな、と。
個人的には、問題に「属人性」があるというか、「問題は出番を待っている」という指摘が「目からウロコ」でした。
そしてそういう問題に対応・解決し続けるのが、リーダーの役割なのですね。
同じく上記ポイントの3番目も第2章からなのですが、これは問題解決というより失敗のお話。
一定の失敗を織り込むのはいいのですけど、それを踏まえて「このままがんばっていこう」と言える「精神的な強さ」が必要なのだとは!?
◆一方第3章では、チームビルディングについての言及が。
たとえば上記ポイントの4番目の「課題設定の深掘り」は、創業時の「0から1のフェーズ」で、もっとも大事なことの1つでしょう。
ちなみに本書では、それを怠ったがために、イベントが失敗しかかった小林さんご自身のエピソードが紹介されていますのでご参考まで(詳細は本書を)。
また上記ポイントの5番目は、もっと大きな規模の企業でも当てはまるお話です。
こちらも、如何に与えたタスクが重要で、かつ必要なのかを、部下に伝え続ける必要がある次第。
……これは子育てにも言えそうですね。
◆ところで本書の巻末には「長いあとがき」と題された、ちょっと変わったパートが付されています。
ここでは小林さんの3人目のお子さん(次男)の誕生と、それ以降の小林さんの苦闘ぶりが描かれているのですが、これがなかなかに壮絶。
というのも、その次男君が身体障害と知的障害を持っていたからで、ただでさえ大変な会社の立ち上げと並行して、そのお世話をするのは、並大抵のことではありません。
特に当時小林さんはシンガポールにいたため、ただでさえ物価が高い国での生活費に加えて、入院費や通院費が数百万にのぼったそうですから、まだ売上が満足に立ってないであろう「海外起業家2年目」の身にとっては「絶望的になるほど苦しい」というのもうなずけます。
さらには急激な熱性痙攣によって、真夜中に緊急治療と入院を余儀なくされたところ、その費用が150万円という……。
もちろん、海外で起業すること自体も大変で、そちらも十分読みごたえがありましたから、ここはぜひお目通しいただければ、と。
「子」や「部下」を導く必要がある方は要チェックな1冊!
リーダーになる前に知っておきたかったこと
第1章 そもそもコミュニケーションを分かっていなかった
第2章 そもそもリーダーとして問題の解決にどう向き合うべきかを分かっていなかった
第3章 そもそもチームビルディングを分かっていなかった
第4章 リーダーシップをどう磨いていくのかを分かっていなかった
長いあとがき リーダーとして生き抜くことで学んできた3つのこと
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50
以前何度かセールでご紹介したことはありましたが、「68%OFF」という激安設定は初めてかも。
また、中古も以前より値上がりした結果、送料を加算するとKindle版が1100円弱、お買い得となります。
【編集後記2】
◆昨日の「Kindle本夏のセール PHP編」の補足記事で人気のあったのは、この辺でした(順不同)。深く考える力 (PHP新書)
参考記事:【思考術】『深く考える力』田坂広志(2018年05月29日)
筋トレは必ず人生を成功に導く 運命すらも捻じ曲げるマッチョ社長の筋肉哲学
なるほど納得! 問題解決の極意 常識を打ち破りスゴい成果を生み出す方法
ビジネスで騙されないための論理思考
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ご声援ありがとうございました!
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