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2019年07月24日

【オススメ】『誰もが嘘をついている〜ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性〜』セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ


B07CG63YCS
誰もが嘘をついている〜ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性〜


【本の概要】

◆本日ご紹介するのは、明日で終了となる「光文社50%ポイント還元フェア」の中でも、以前から読んでみたかった作品。

セール終了ギリギリで読んでみたところ、『ヤバい経済学』辺りの流れを汲む、非常に面白い作品で、思わず大量にハイライトを引いてしまいました。

アマゾンの内容紹介から。
グーグルの元データサイエンティストが、膨大な検索データを分析して米国の隠れた人種差別を暴くのを皮切りに、世界の男女の性的な悩みや願望から、名門校入学の効果、景気と児童虐待の関係まで、豊富な事例で人間と社会の真の姿を明かしていく。ビッグデータとは何なのか、どこにあるのか、それで何ができるのかをわかりやすく解説する一方、データ分析にまつわる罠、乱用の危険や倫理的問題にも触れる。ビッグデータ分析による社会学を「本当の科学」にする一冊!

元々Kindle版は「22%OFF」設定なので、さらに「50%ポイント還元」が加わり、送料を加算した中古よりも、500円以上お買い得です!





Big_Data_Prob / KamiPhuc


【ポイント】

■1.米国大統領選と最も相関性の高い要因とは?
 予備選の初期、ネイト・シルバーは、トランプが勝つ見込みはないに等しいと宣言した。予備選が進みトランプが広範な支持を集めていることが明らかになるにつれて、シルバーは何が起きているのかデータで検証することにした。いったいどうしてトランプはこんなに快調なのか?
 その結果、トランプが最も優位な地域をつなぎ合わせると、奇妙な地図ができることがわかった。北東部、中西部工業地帯、そして南部で勢いがあり、西部では不振を極めていたのだ。シルバーはこの勢力図を説明できる変数を探した。失業率か? 宗教か? 銃所有率か? 移民率か? 反オバマ率か?
 そしてシルバーは、共和党候補予備選挙でドナルド・トランプの支持に最も相関性の高いある要因を見出した。それは私が4年前に見出した判断の手がかりだった。トランプ支持が最も強かった地域は、「ニガー」という語を最もよく検索していた地域だったのだ。


■2.貧困家庭の一流選手という神話
 私が検証した疑問は「貧困家庭と中流家庭のどちらで育ったほうがNBAで成功しやすいのか」だった。
 たいていの人は前者だと思うだろう。10代のシングルマザーの元で育つという苦労が、この競争の激しいスポーツで抜きんでるために必要な根性を養う役に立つというのは、一般通念になっている。(中略)
 そこでNBA選手の家族構成を、報道やソーシャル・ネットワーク類から調べてみた。この調査は非常に手間がかかるので、対象を1980年代に最も多くの得点をあげたトップ100人の黒人NBA選手に限った。するとNBAの優秀な黒人選手がシングルマザーの家庭で育った率は、米国黒人の平均よりも30%少なかった。つまりトップ黒人NBA選手の出身家庭環境を調べた限り、恵まれた環境であることは成功の強い追い風であることがわかる。


■3.暴力的映画は犯罪を誘発するのか?
 研究の鍵となったのは、暴力的な映画(『ハンニバル』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』など)がヒットした週末と、非暴力的な映画(『プリティ・ブライド』や『トイ・ストーリー』など)が当たった週末があることだった。
 このため彼らは、暴力的なヒット作が公開された週末に起きた殺人、レイプ、傷害事件の数を、平和的なヒット作が公開された週末のそれらと比較することができた。
 では結果はどうだったか? 暴力的な映画が公開されると、いくつかの実験が示唆したように、暴力犯罪は増えるのか? それとも影響はないのか?
 人気のある暴力映画が公開された週末には、実際には犯罪は 減っていた。
 そう、人気のある暴力映画が公開され、無数の米国人が残虐な犯罪シーンを目にしている週末には、犯罪は大きく減っていたのだ。


■4.大学ランキングと収入の関係
 ステイシー・デールとアラン・B・クルーガーのエコノミストコンビは、一流大学の卒業生の将来の収入の因果関係を調べる妙手を考案した。使ったのは、高校生のその後について記録した膨大なデータセットだ。そこにはどこの大学に出願し、どこに合格し、どこに進学したかや、出身家庭、成人後の収入などのデータが含まれていた。
 標本を実験群と統制群に分けるため、彼らは同等の家庭の出身者で、同じ大学に合格しながら、別の大学に進学した学生たちに注目した。ハーバードに合格しながらペンシルベニア州立大学に進学した学生たちもいるのである。(中略)
 ではこの2つの集団――いずれもハーバードに合格したが片やペンシルベニア州立大学を選んだ――のその後はどうなったか? 結論はスタイベサント高校の研究に負けず劣らず衝撃的だった。両集団とも、職業生活を通じておおむね同じ収入を得ていたのだ。将来の収入を基準とするなら、同様な一流大学に合格しながら別の学校に入学した学生たちは、結局同じ職場に行きついていたのである。


■5.借金を返す人と踏み倒す人の言葉遣い
 次に挙げるのは、融資申し込みの際に用いられていた最も一般的な10単語である。その内5つは返済にポジティブに関係していた(その言葉を使っていた人は実際に債務を履行した)。残り5つはネガティブに相関していた(債務を履行しなかった)。換言すれば、5つは信用できる人の使う言葉であり、5つは信用できない人の使う言葉だ。どれがどちらか見分けがつくだろうか?
神(God) 約束します(promise) 負債なし(debt-free) 
最低支払額(minimum payment) 低利率(lower interest rate) 
お返しします(will pay) 学卒者(graduate) ありがとうございます(thank you) 税引き後(after-tax) 病院(hospital)
 もしかすると、丁寧でいかにも敬虔な人々がちゃんと借金を返すと思った、あるいは少なくともそうであれと願ったのではないだろうか。だが事実は違う。この手の人物は、データが示すところ、借金の返済率において平均を下回っている。(詳細は本書を)


【感想】

◆「ビッグデータ」というテーマもさることながら、実際に登場する事例の豊富さと、その「ヤバさ」が興味深い作品でした。

冒頭で『ヤバい経済学』を挙げたのも、私がそう感じたからなのですが、実際著者のセス・スティーヴンズは、大学卒業時に『ヤバい経済学』を読み「これだと思った」のだそう。
大風呂敷を広げさせてもらえば、本書は実際、強化版『ヤバい経済学』だ。同書と本書が採録する研究の大きな違いは野心である。レヴィットが名を売った1990年代、データはまだあまり手に入らなかった。レヴィットはデータが手に入る奇妙な領域を追求し、データが手に入らない大きな疑問は、ほぼ素通りした。しかしおよそどんな話題についても膨大なデータが手に入るようになった今日、人間存在の核心に迫る大きな、そして深遠な問題を追求する意義がある。
ちなみに本書内には、『ヤバい経済学』を彷彿とさせる性的なネタが山ほど登場します。

つまり、Facebookには書き込めないことでも、人は密かに検索をかけるということ。

とはいえ、つい先日Google先生からお叱りを受けてしまった私としては、自重せざるをえず……。 ぶっちゃけ性的なテーマこそ、検索の醍醐味だと思いますので、 この辺は本書にてご確認いただければ、と。


◆このようなご紹介できないネタをバッサリ削ったとしても、本書内には意外な真実を証明するお話が多々。

上記ポイントの2番目の「貧困家庭の一流選手」というお話も、もっともらしく広まっていますが、実際にはむしろ逆とのこと。

確かにアメリカの4大プロスポーツの中でも、アイスホッケーなどはプレイすること自体にお金がかかりますし、ある程度裕福なのは理解できます。

ただ、本書内では触れられていませんが、ブラジル辺りのサッカー選手まで範囲を広げたらどうだったんでしょうかね……?

ブラジルで売出し中のジェズス(マンチェスター・シティ所属)のこの話辺りを読むと、「貧困家庭の一流選手」を地で行っていると思いますが。

テレ朝POST ≫ 貧困のスラム街からスターに。ブラジルの新星・ジェズスを支えた母の厳しさと愛


◆イメージと逆という意味では、上記ポイントの3番目の映画の話も同様です。

本書ではその原因も探っているのですが、まず非暴力的な映画が流れている週には、潜在的に暴力的な人々は、映画館に行かず、バーやクラブ、ビリヤード場等の暴力犯罪の発生率が高い場所に行くからである、と。

さらに映画館内では、ほぼどこの映画館でもアルコールを提供していません。

つまり、たとえ暴力的な映画を観ても、シラフならばその後に何も起きないということ。

もちろんこうした調査にも限界があって、直後の影響は観察できても、ある程度長期間となると、どこまで影響があるかはわかりませんが……。


◆なお、最後のポイントの5番目は、本書の第8章「やってはいけないこと」からのもの。

調査対象となった融資サイトでは、借金を申し込む際に融資が必要な理由や返済等の見込みを短い文章で記入する必要があるのだそうです。

そして上記の10単語のうち、ある「5つ」を使う人は、返済しない人とのこと(ネタバレ自重)。

つまり、あらかじめその「5つ」を使う人に対して融資をしない、ないしは利率を高くすることができるワケです。

ただし、1つだけネタ明かしをすると、「病院」は返済しない方の単語(嘘か本当かは不明)。

とはいえ、本当に病院に行くために借金したい人に「融資をしない」という選択をすることが、倫理的に許されるのか否か……。

この辺は企業のあり方として、深く掘り下げる必要があるかもしれませんね。


◆他にもハイライトを引いたものの、泣く泣く割愛したお話がたくさんありました。

簡単にご紹介しておくとこんな感じです。
・大成する競走馬を的確に見抜く方法とは?

・栽培期間の天気から算出する、ワインの競り価格の計算式とは?

・2度目のデートに到達できる初回のデートの言葉遣いとは?

・大リーグのベテラン選手の盛りが過ぎたかを見抜くデータとは?

・宝くじが当たると近所の人が破産する?
うーん、なんだか割愛した方が面白そうな気がしてきましたが、気になる方は本書にてご確認を。

実際、本当は抜き出したくても、ボリュームの関係でできないことも結構あるので、お許しください。

なお、上記の宝くじの話は、当たった人の方が不幸になると言われています(私もそう信じていました)が、本書によるとそれは「おおむね誤り」とみなされているそうです。


『ヤバ経』好きにはオススメせざるを得ません!

B07CG63YCS
誰もが嘘をついている〜ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性〜
序章 いま起きているビッグデータ革命

パート I 大きなデータ、小さなデータ
 第1章 直感は裏切り者

パート II ビッグデータの威力
 第2章 夢判断は正しいか?
 第3章 何がデータになるのか――驚くべき新データの世界
 第4章 秘められた検索
 第5章 絞り込みという強力な手法
 第6章 世界中が実験室

パート III ビッグデータ、取扱注意
 第7章 できること、できないこと
 第8章 やってはいけないこと

結びに ここまで読み通して来た人は何人?


【関連記事】

ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)

【出会い系?】『ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実』クリスチャン・ラダー(2016年08月08日)

【野球】『ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法』トラヴィス・ソーチック(2016年04月07日)

【オススメ】『競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法』ジェフリー・マー(2012年05月04日)

すぐに使える『ヤバい統計学』テクニック7選(2011年03月05日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B01LXJCXLL
おいしいロシア (コミックエッセイの森)

レシピも付いているという、ロシア料理のコミックエッセイ。

以前よりも中古が値下がりしていますが、送料を加えれればKindle版が300円強お得となります。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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