2019年06月05日
【ストックビジネスとは?】『中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル』小泉雅史
中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「ビジネス・実用書フェア」の中でも一番人気である企業経営本。今年3月に出たばかりで、アマゾンレビューも14個すべてが星5つという、かなりの高評価作品です。
アマゾンの内容紹介から。
外資系・日系大企業、中小・零細企業から個人事業まで、さまざまな規模・業種の会社で事業立ち上げや投資・M&Aに携わってきた著者が教える、「継続的な売上が入ってくる」ビジネスのノウハウ。
相変わらず中古価格が定価を上回っていますから、このKindle版が800円以上お買い得な1冊です!
see's candies macau / goodiesfirst
【ポイント】
■1.2つのストックビジネス参入法ストックビジネスの参入法は、「社内リソース活用型」と「社外リソース獲得型」の2つの戦略タイプに分かれます。(中略)
社内リソース活用型はあくまで「内製化」にこだわる企業に最適です。具体的には、自社の既存事業をストックビジネスに転換していく「(1)ストック化」と、新たにストックビジネスを事業開発していく「(2)立ち上げ」に分かれます。(中略)
一方、「社外リソース獲得型」は、そのような経済環境変化に合わせて発達してきた比較的新しい経営戦略といえます。具体的には、社外の成功しているストックビジネスの知的財産やノウハウを戦略的に使用していく「(3)投資」と、ストックビジネスをまるごと買収してしまう「(4)M&A」に分かれます。
(詳細は本書を)
■2.手堅い「ニッチ独占型ストックビジネス」
具体的には、あるサプリメント成分の国内製法特許を持つOEMメーカーに特定ターゲット市場向けの自社オリジナル商品の製造を委託し、ネット通販で販売するメーカー直販型ストックビジネスです。とくに、サプリメントのような定期購入型商品を「単品」に絞って通販する「単品リピート通販」というジャンルのビジネスとなります。
この単品リピート通販は非常に効率がいいストックビジネスモデルです。
なぜなら、ターゲットを絞ったニッチ市場に対して、自社ブランドのオンリーワン定期購入型商品を、一点集中した単品で、ダイレクトに販売することで、無店舗販売・在庫の最小化・集中マーケティングの実現・定期購入コースによる継続売上・予測可能な出荷計画など、非常に経営効率が高いストックビジネスが実現するからです。すでに10年以上も同じ単品商品で事業が継続できているのも、ニッチ独占型ストックビジネスにフォーカスしてきたからだと実感します。
■3.ユニークな「貸しコンテナ倉庫ビジネス」
貸コンテナ倉庫ビジネスは、海上輸送用コンテナを借地に置き、一般客や小規模事業者などに対して、物品の収納スペースとして貸し出すビジネスです。いわゆる倉庫業のため、毎月賃料収入が入る典型的なストックビジネスです。
一方、土地は基本的に借地を利用するため、土地を購入する必要がありません。また、初期投資額は上物のコンテナだけでいいため、少ない資金でも参入しやすいのです。
貸コンテナ倉庫は、一度利用者がつくとほとんど入れ替えもなく、ほぼ賃料回収作業だけで、長期にわたって安定したキャッシュフローを生み出してくれる優れたストックビジネスです。不動産のように内装の修繕などもなく、台風や地震などの災害にも強く、しかもコンテナ自体は修繕することで20年ぐらいは使用可能ですので、追加設備投資もかかりません。ネットビジネスのような変化が激しい事業ではないので、何年たっても安定した賃料を生み出してくれるのがコンテナ倉庫ビジネスです。
■4.BS型経営者を目指す
通常、多くの経営者は損益計算書(PL) を見ながら売上と利益の最大化を目標に経営を行うPL型経営者です。しかし、ROIC経営を実践するには、PLだけではなく、貸借対照表(BS) も見ながら投資家的に経営できるBS型経営者が必要です。
これはROICが「事業利益÷使用資本」のため、売上と利益を伸ばすだけでは、使用資本の視点が欠如しているからです。(中略)
ストックビジネスの投資・M&Aによる多角化経営においても、BS脳の養成が不可欠です。PL型からBS型経営者に移行するコツは「投資リターン」を意識することです。改めて、ウォーレン・バフェットの言葉を思い出してください。
「1ドルを投資するのは、1ドル以上の長期的な市場価値を生む場合だけである」
まさにその通りです。しかし実際は1ドル以上の価値を生み出せないものにお金を使っている経営者が多すぎるようです。
■5.先行投資で利益が下がるため、必ず「メインビジネス」を持つ
これまで述べてきたように、ストックビジネスはフロービジネスのように一気に売上計上できるものではなく、売上の分割払い的な要素が強いビジネスです。
たとえば、新車を販売する場合とカーリースの比較を思い出していただきたいのですが、新車の場合には販売価格をそのまま期中に売上計上できますが、カーリースの場合は、使用した期間の分割利用料だけの売上計上となります。
よって、ストックビジネスの場合には、一気に売上が増加することはなく、むしろ段々積み上がっていきます。その割には、はじめに設備投資などの初期投資が先行しますので、当初は利益が下がりがちです。よって、ある程度の潤沢な手元資金か、または潤沢なキャッシュフローを生み出すメインビジネスを持ちながらストックビジネスへの投資・M&Aを進めていくべきです。この辺りの初期投資と回収のベストサイクルは、事業ポートフォリオの構成比率やストックビジネス多角化経営用PPMのフレームワークに照らしつつ、事業のライフサイクルを考慮して、バランスを取りながら進めていく必要があります。
【感想】
◆本書は中小企業が「ストックビジネス」に参入するために、必要と思われることがギッチリ詰め込まれた1冊でした。おかげでハイライトも引きまくり。
ページ数の違いもあるので、一概には比較できないのですが、今年読んだ本の中でも上位1割には入る量のマーキングとなりました。
さて、まず第1章では、その「『ストックビジネス』とはなんぞや?」についての解説が。
冒頭の内容紹介にあるように「継続的な売上が入ってくる」のが特徴なのですが、一番分かりやすいのが「不動産賃貸業」辺りでしょうか。
いったん契約すると、毎月賃料が入ってくるという「ストックビジネス」の典型でもあり、同じ不動産でもその真逆とも言える「不動産販売業」と比較すると、その違いが良く分かると思います。
ただし、本書で定義している「ストックビジネス」は、もうちょっと範囲が広くて、継続購入が見込まれる生活必需品(コカ・コーラやケロッグ等)も含まれますので、ご留意を。
◆というわけで、その「ストックビジネス」の参入方法について触れられているのが、上記ポイントの1番目。
ここでは「ストック化」「立ち上げ」「投資」「M&A」とだけ挙げられていますが、本書の第2章では、それぞれについて、メリット・デメリットにも触れられています。
まず「ストック化」というのは、たとえば「新車販売」だったのを「車両リース」にしたり、売り切りだったソフトウエアを、月額課金型で提供するようなもの。
既存事業の転換ゆえ、社内リソースが使える反面、ある意味「売上の分割」となりますから、売上高自体は減少することになります。
一方「立ち上げ」は、社内における新規事業ですから、業種や形態を自由に選べるものの、ゼロからのスタートですから失敗に終わる可能性もそれなりにあるという。
また、「投資」というのは、本書に置いては「フランチャイズビジネスに参入すること」であり、一瞬抵抗があったのですが、個人でコンビニをやるのとは違い、複数拠点の「メガフランチャイジー」にまで伸ばせる利点もあります。
最後の「M&A」は、ストックビジネスをやってる会社を買ってしまうことで、古くはJフォンを買収したソフトバンクが有名でしょう。
◆このうち本書では、中小企業を前提におくゆえ、「投資」と「M&A」を推奨。
というのも、既存ビジネスを転用する「ストック化」では売上減が避けられないですし、失敗する可能性が高くリソースを食われる「立ち上げ」は難易度が高いからです。
そこで本書の第3章以降は、主に「投資」と「M&A」についての参入方法や、ビジネスの選択方法、さらには注意点等々について解説。
たとえば上記ポイントの2番目の「単品リピート通販」というジャンルは、中小企業でも実践しやすく、手堅く継続的な売上が望めることがわかります。
また、上記ポイントの3番目の「貸しコンテナ倉庫」というビジネスは、初めて知りました。
ちなみにこの「貸しコンテナ倉庫」は、「不動産」ではなく「動産」なので
出店している商圏の需要が変化した場合でも、現在の借地契約を解約して、動産であるコンテナをトラックに積んで新たな借地へ引っ越してしまうことができるというのがスゴイです。
さらには、普通の建物と違って耐用年数も短いので、減価償却による節税効果もあるという(詳細は本書を)。
◆なお上記ポイントの5番目は、第6章の「ストックビジネス参入の注意点」からのもの。
ここでは「準備フェーズ」「実行フェーズ」「経営フェーズ」に分けて、気を付けるべきことが述べられています。
このポイントの5番目以外にも、特に「M&A」の場合は、いい会社を安く買えるかが一番のキモですしね……。
なお、本書においては、企業価値の算定方法については、さすがに深掘りしていませんから、その辺は別途専門書をお読みいただきたく。
いずれにせよ、「ストックビジネス」に関して特徴並びに、長所、短所、その他広範囲の情報を、一気読みできるのが本書のありがたいところ。
サブスクリプションも広まりつつありますし、時流に置いていかれないためにも読んでおきたい1冊です。
「ストックビジネス」を検討したい方なら要チェック!
中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル
序章 ストックビジネスが会社を救う
[第1部 基礎編]
第1章 あれもこれも、じつはストックビジネス
第2章 2種類のストックビジネス参入法
[第2部 応用編]
第3章 失敗しないストックビジネス参入ノウハウ
第4章 ストックビジネス参入・多角化 5つの成功法則
第5章 自社に合ったストックビジネスの見つけ方
第6章 ストックビジネス参入の注意点
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【編集後記】
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