2019年06月04日
【第3の報酬?】『評価の基準 正しく評価される人が何気なくやっている小さな習慣』國武大紀
評価の基準 正しく評価される人が何気なくやっている小さな習慣
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「ビジネス・実用書フェア」の中から、個人的に読んでみたかった「働き方本」。本書は、著者の國武さんが、都市銀行、JICA(国際協力機構)、OECDといった組織に属した経験と、組織心理学の知見をベースに、「正しく評価されるための習慣」を指南してくださっています。
アマゾンの内容紹介から。
心理学を紐解くと、「正しく評価されていない」という悩みには、「自分の存在が認められていない」という心理的欠乏状態を表しています。人事評価での数字で得られるのは「金銭的報酬」「地位的報酬」だけであり、心理的欠乏感を満たす「心理的報酬」は得ることができません。
では、「自分が必要とされている」「自分がしっかり貢献できている」「自分が成長できている」という心理的報酬を手にするために、組織で何をすべきか?どうあるべきか?
こうした悩みに応える処方箋を対人関係を軸にまとめました。
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OECD/NEA (01112361) / IAEA Imagebank
【ポイント】
■1.「認めてほしい」という前に上司を認めるたとえば仕事のことで質問を聞いたとき、上司が「そんなことも知らないのか」とばかりに、何かを教えてくれたとしましょう。多くの部下はこのとき、「わかりました」とか「ありがとうございました」と上司に言うでしょう。礼儀としてはそれで正解ですが、それでは上司は「自分の説明が役立ったこと」を確信できません。
そこで、「ありがとうございました」だけでなく、上司が「自分は役立っている」と感じられるようなひと言を添えるのです。コーチング用語を使うなら、「相手の自己重要感を満たす言葉」になります。
たとえば「なるほど、そういうことだったんですね。とても勉強になりました!」という具合ですね。
ちょっとした言葉なのですが、このひと言があれば、「よかった。こういう説明で部下を動かせるのだな」と相手は納得します。
どんなに実務能力をもった上司でも、自分が他人にどれだけ影響を与えられるかに自信がないのです。だから「あなたの言葉は、私にとって、とても価値あるものでした」と示してあげると、相手は自信をもち、非常に仕事がしやすくなるわけです。
■2.最後の一筆だけは相手に入れてもらう
たとえば報告書のような書類でも、完璧につくりあげるのですが、あえて結論部分だけ書かずにおいて、締切前に相談するような形で提出します。
「報告書はほぼ仕上げたのですが、最後をどうまとめようか迷っているんです。私はこのような意見を述べておこうと思っているのですが、課長はそれについてどう思いますか?」
すると上司のほうも、自分の出番をつくれます。
「それはいいんじゃないか。あとはこういうことも加えておいたらどうだろう?」
「さすがです! では、その部分を加えて、明日提出します」
結果、すんなり報告書は通り、修正もしなくて済む。上司も「自分の意見を取り入れた書類」として、満足して受け取ることになるでしょう。
こうしたやり方を、ずる賢く思う方もいるかもしれません。
しかし間違っていけないのは、あなたは上司を頂くチームで働いている社員であり、あなた個人が提出する書類であっても、会社の仕事としてやる以上は「チームで提出する文書」になるのです。上司にとっては、それを自分抜きで完成させるのであれば、仕事をしていないのも同然になってしまいます。
■3.部下を理屈で説得するより、体験で共感させる
上司が部下に何かを伝えるとき、効果的なのはその言葉を聞いて、部下が「よし、やってみよう」とか「この人の期待になんとか応えたい」と仕事のモチベーションが上がり、人間関係も強くなることです。
そのために必要なのは「君だから期待している」とか、「あなただから頼りにしている」という相手との「つながり」を意識することです。これに部下が共感すれば、コミュニケーションは非常にうまくいきます。
だから上司は抽象的な理屈で部下を説得するより、まずは自分の事例や過去の体験を開示し、それを部下とシェアするようにすればいいのです。(中略)
「昔、某国でこんな人に会ったけど、そのときはこうしたな」とか、「某国との交渉では、先方の警戒心を解くために、面前ではメモを取らないほうがよい」などという情報を教えたほうが、よほど参考になるでしょう。
どんな仕事でも、これは同じだと思います。「体験をシェアする」という形で、上の人は下の人に見本を提示してあげればいいのです。
■4.会議では「違和感」に対して敏感になる
会議などに参加したとき、重要なのは「違和感に気づく」ということだと私は考えています。
「違和感」とは、とくにその場にいる人の表情に表れるものです。明らかに賛成していることに対して「イエス」の表情が出ていない人がいたり、滞りなく議論が進んでいるように見えて、下を向いていたり、無表情な人がところどころにいる……など。
会議のように人が集まる場では、「バンドワゴン効果」(ある選択肢が大勢に受け入れられている場合に、「自分も賛成しなきゃ」と、その選択肢への支持が強くなること)や「傍観者効果」(ある物事に対して自分以外に傍観者がいる場合、反対の立場だと、「どうでもいいや」と積極的に行動しなくなること)などの心理が働きます。
だから参加者が心から賛成しているわけでなく、面従はしても、じつは大きな不満をもっているケースもあるのです。このような場合、会議で決定されたことが実行に移されると、どこかで問題が発生することも多くなります。
参加者の表情を見たときの違和感に気づけば、そんな問題をあらかじめケアすることができるでしょう。
■5.自分の「得意」より相手のニーズを優先する
得意な仕事、苦手な仕事。どちらをやりたいかといえば、多くの人が得意な仕事と答えるでしょう。得意なことなら結果を出せるし、ストレスもなく、自由にできる。得意な分野の得意な仕事をやり続けられるなら、仕事はとても楽しいかもしれません。
でも、どんなに自分の得意要素が多い業種だったとしても、現実には得意なことばかりで仕事を続けることはできないのです。むしろ苦手なことや煩わしいことのほうが、ダントツで多くなります。
組織での仕事は相手のニーズに応えることが第一で、そこに「得意」とか、「得意でない」というのは問題ではありません。
逆に言えば、得意でない課題をどんどん乗り越えることに、仕事の醍醐味があるのです。(中略)
そもそも「得意」というのは、「その仕事をどのようにやるか」という部分の問題であり、どこの業務だから発揮できるとか、どの部署だから能力が封じられてしまうというものではありません。
たとえばクリエイティブ系の仕事が得意な人が、営業職に回された。人とコミュニケーションをとるのが大好きなのに、事務職に配属された。ならばクリエイティブな発想を生かして営業をすればいいし、事務職にコミュニケーションを生かしていけばいいのです。方法はいくらでも考えられるでしょう。
【感想】
◆ガチガチの「出世指南本」なのかと思ったのですが、むしろ「コミュニケーション本」に近い内容でした。そもそも会社における「評価」というのは、給料やボーナスの「金銭的報酬」、昇進・出世等の「地位的報酬」が考えられますが、実はこれとは別に「働く生きがい」ともなる「第3の報酬」なるものが存在するとのこと。
「第3の報酬」とは、組織人にとって働く原動力ともなる、欠くことのできない大切な「心理的報酬」 のことです。そして本書においては、この「心理的報酬」がどういうもので、どのようにすれば手に入るのかを見ていく次第。
具体的には「一体感」「承認」「貢献」「成長」という4つの要素を実感できる場が存在していれば、私たちは「正しく評価されている」という実感を得ることができるのだそうです。
◆というわけで、まず第1章では「上司から評価されるためのTIPS」が登場。
たとえば上記ポイントの1番目にある「上司を認める」という視点は、私にとっては「目からウロコ」でした。
むしろこういう「認める」という行為は、上司から部下にするものだと思っていましたし。
同じく上記ポイントの2番目の「最後の一筆」も、この第1章からなのですが、やや抵抗を感じる方もいらっしゃるかも。
自分ひとりでできる仕事なのに、上司に花を持たせる(というほどでもないですが)のはどうなの、と私自身感じます。
ただ、「あなた個人が提出する書類であっても、会社の仕事としてやる以上は『チームで提出する文書』になる」という指摘は、なるほど確かに。
チームで提出する以上は、上司の責任下の書類なワケですから、最後を任せるのもある意味当然なのかもしれません。
◆一方第2章は、第1章とは逆に「部下や後輩から評価されるためのTIPS」が紹介されています。
この辺はむしろ「マネジメント本」の内容と、かぶってくる感じですか。
ただ、上記ポイントの3番目にある「体験で共感させる」というのは、あまり見た記憶がありませんでした。
また、こうした自身の体験の事例をデータとして共有することで、「困ったときのサンプル集」にもなる、とのこと。
本書ではそれをさらに進めて、グループメールのようなもので、定期的に自分の経験を配信することを推奨しています。
確かに一度文章にしてしまえば、以降はデータベースになりますから、汎用性も高まるかと。
◆続く第3章は、上下関係なく「大勢の人に評価されるためのTIPS」が登場。
上記ポイントの4番目もその1つなのですが、確かに会議がスムーズに進んでいるのに、浮かない顔をしている人がいたら、それは何か思うところがあるでしょう。
もともと日本では、会議で反対意見を言うのがしにくい風潮がありますから、「参加者の表情に注意する」というのは心がけたいところです。
また、上記ポイントの5番目では「得意でない課題をどんどん乗り越えることに、仕事の醍醐味がある」という指摘に大きくうなずいたワタクシ。
どんな仕事も「自分の得意なこと」に関連付けていきたいものです。
「評価される働き方」をするために読むべし!
評価の基準 正しく評価される人が何気なくやっている小さな習慣
序章 結果を出しているはずなのにいまひとつ「正しく」評価されないのはなぜか?
第1章 「あいつに任せよう」を引き出すための小さな習慣
第2章 「この人について行きたい」と人をひきつけるための小さな習慣
第3章 「あの人やるね! 」と周りの見る目が変わるための小さな習慣
第4章 「自分にYes! 」を出すための小さな習慣
おわりに
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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