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2019年05月23日

【発想法】『ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題』狩野みき


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ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも人気だった1冊。

著者の狩野さんの作品は、結構前に1冊ご紹介したことがありましたが、本書もそれに負けず劣らず濃厚な作品でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
・ダボス会議でも、これから必要なスキルとして「クリティカルシンキング」や「創造性」が、上位に入るようになってきています。今までのように「正確にやる」だけではなく「自分で考えて何かをはじめる」「自分で法則を見つけて、仮説を立て、実行する」ということが、より必要になってきています。
・本書はハーバードの教育学部で提唱されている「子どもの考えるスキル」を磨くためのトレーニングをもとに、スタンフォード大で出された「考える力」を解く問題、また著者がそれらをもとにして作成した問題などをまとめたもの。言語化スキル、創造力など、これから必要な「考える力」が手に入るようになっており、大人から子どもまで楽しく読むことができます。

なお、未読本記事の時点ではなかったKindle版も配信されましたので、私はそちらで読了しました!





Thinking / Creative Ignition


【ポイント】

■1.「普通そういうもん」を疑うことで、独自の視点が生まれる
 きまりならしょうがないと思う反面、ふと、人は知識や経験が増えるにつれて「そういうもん」と片づけることが増え、その結果、「疑問に思う力」をますます失うのかもしれない、とも思いました。「そういうもん」と片づけることが悪い、と言っているのではありません。いちいち「なんで」と悩んでいたら仕事もはかどりません。でも、ときには、「そういうもん」という大前提を疑問視してもいいのではないでしょうか。
 たとえば、「飛行機って機内食が出るもんでしょ」という前提を疑えば、「機内食をなくして、より安い移動手段としての飛行機が作れるのではないか」と考えることもでき、LCC(格安航空会社) が生まれますし、また、「ジュースって色がついているものだよね」という前提を覆したのが、一時期流行った透明の飲料なのだと思います。
 疑問は、声に出す必要はありません。でも、自分の中では言葉にするべきです。そうしないと、そもそも疑問を感じられなくなり、いざというときに質問できなくなります。「そういうもん」を疑うことで独自の疑問、独自の視点が生まれるのです。


■2.説得力のある根拠の見抜き方
 たとえば、「日本人は英語を勉強すべきだ」の根拠として、以下のものを思いついたとします。
・グローバル対策のため
・視点が増えるから
・転職や海外に移り住むなど、いざというときに生き抜くスキルになるから
 それぞれの根拠にどんなツッコミを思いつきますか。たとえば……
・グローバル対策のため → 機械翻訳がもっと発達したら、英語力は要らなくなるんじゃない?
・視点が増えるから → 英語以外の言葉でも視点は増やせるよ
・転職や海外に移り住むなど、いざというときに生き抜くスキルになるから → 生き抜くためには英語以外のスキルも必要
 それぞれにツッコミを入れたら、今度はツッコミだけを見て、「納得のいくツッコミかどうか」を考えます。「機械翻訳がもっと発達したら、英語力は要らなくなる」「英語以外の言葉でも視点は増やせる」については、「そうかもなあ」と思ったとします。ツッコミに納得がいくということは、もともとの根拠は説得力があまりないということです。

(詳細は本書を)


■3.型から考えるのではなく「型」を見つける
問題 あるお店で以下の3つの状況が起こりました。
(1)なわとびが売れ出しました。
(2)お弁当が以前ほど売れなくなりました。
(3)パート募集の広告を出す必要がなくなりました。
この背景には「   」があったのです。
「   」に入るものを考えてください。
 世の中のルールというものは常に変わっていきますが、今ほど変化が激しい時代もないのかもしれません。終身雇用はもはや「常識」ではありませんし、良い学校を出て良い企業に就職すれば安泰、ということもなくなりました。変化の激しい時代だからこそ、「これからは◯◯がルールになるのではないか」と予測して行動することには特別な意義があります。
 しかし、残念ながら、自分でルールを見つけ出す力は、日本人はあまり得意ではありません。また、ルールを見つけたとしても、それを効果的に伝えるのは難しくて……という人は多いと思います。
 先ほどの問題はまさに「自分でルールを見つけ出す力」を鍛えるものです。


■4.効果的な質問を作る8つのステップ
ステップ1 状況を理解する
ステップ2 質問を書いて、書いて、書きつくす
ステップ3 ステップ2で書き出した質問を2タイプ(「クローズド」「オープン」)に振り分ける
ステップ4 「クローズド」は「オープン」に、「オープン」は「クローズド」に、それぞれ変える
ステップ5 それぞれの質問をすれば何がわかるのか、考える
ステップ6 それぞれの質問をした場合の最悪のシナリオを考える
ステップ7 何のために質問するのか、目的を考える
ステップ8 ステップ7の目的に合った質問を選ぶ

(詳細は本書を)


■5.根拠を考える上で、「なぜそう考えるのか」を想像する
問題 「外国語を知らない者は自国語も知らない」
ドイツの文豪・ゲーテの言葉として知られるこの名言の根拠を考えてください。(中略)
 さて、先ほどのゲーテ問題ですが、根拠は「なぜそう考えるの?」という質問への答えでしたね。であれば、ゲーテの格言の根拠を考える1つの方法としては、ゲーテに向かって「なぜそう考えるの?」と聞いたらどんな答えが返ってくるかを想像する、というやり方があります。
 ゲーテが偉大すぎて想像できない、という人は、「同じことを、もしもゲーテではなく、身近な人が言ったとしたら……」と考えてみてください。偉い人の発言を、「偉い人」が言ったからすんなり受け入れて思考停止になるのであれば、「偉くない人」が言ったとしたら……と想定すればいいのです。
 想定する「偉くない人」は、好きでも嫌いでもない同僚やお隣りさんなど、特別な感情のない相手がいいと思います。


【感想】

◆自分で買っておいてアレですが、レビューするのに結構難しい作品でした。

そもそも、クイズ形式ですから、答えは基本的に載せられません(ネタバレ自重ゆえ)。

……もっとも収録されたクイズのほぼすべてが「正解がない(答えが1つではない)」ものなので、本当は気にしなくてもいいのかもしれませんが。

その問題も本の表紙に3問だけあって、しかも字がえらく小さくて読めないくらいなので、引用しようかどうしようか迷っていたら、Kindle版の内容紹介に意外と詳しく載っていたというw

ただし、そこに載っている問題は、あくまでメイン部分であって、実際にはもっと細かく問われています。

たとえば、上記ポイントの3番目に、問題の1つを引用していますが、これが上記のアマゾンの内容紹介だと「ルールを見つける問題──なわとび、お弁当、パート募集の背景にあるものを探す」としか載っていませんから、正直、ここだけではよく分からないのではないか、と。


◆さらには本書の場合、問題やその答えが重要なのではなく、問題に対するアプローチが問われるタイプの作品です。

引き続き上記ポイントの3番目で言うなら、問題にある3つの事象の中から、まずは共通項が見つけられそうなモノ2つをセレクト。

この例だと、「お弁当」と「パート」が、「なわとび」よりは関係ありそうです。

そこでこの2つが同時に起こりうる状況を、いくつかピックアップするのですが、何もないとピンと来ないと思いますので、本書の中から1つだけご紹介しておくと、
「地域に勤め人がいなくなり、かわりに主婦が増えた(お弁当を買う人が減り、自発的にパートしたいと言う人が増えた)」
辺りは、確かにそうですよね。

そして最後に、これらの状況の中に、「なわとび」が結び付けられるものがないか考えるワケです(上で挙げた例だと、「なわとび」と結び付けにくいので、これは×)。

……と、この調子で問題を補足していったら、どう考えてもボリュームオーバーします罠。

しかもこの問題の場合、本書にはもう1つのアプローチ法まで載っていますから、そちらは本書にて直接ご確認ください。


◆一方、上記ポイントの4番目は、第3章の「究極の質問を見つける」からのもの。

いわゆる「問い」を考えるためのアプローチになります。

この章でもいくつか問題が収録されているのですが、この「8つのステップ」を使って、もっとも深掘りされているのが
『グローバル化の一環として、来年度から我が社が公用語を英語にする』という前提で質問リストを作成する
というもの。

これも、各ステップごとに具体例を挙げつつ解説されているものを読まないと、なかなか理解しにくいと思います。

というのも、ステップ2で出てきた「質問」群に対して、ステップ3以降を行うワケですから、具体的な「質問」がない状態ではピンと来なくて当然かと。

かといって、ここで1つ「質問」例を挙げて、ステップ3以降を行うとそれだけでかなりの量になるので、結局こちらも本書を読んでいただくしかないという……。


◆また、第4章から抜き出した、上記ポイントの5番目に登場する問題も一筋縄ではいきません。

お恥ずかしながら、私はこのゲーテの「名言」を知らなかったのですが、本人が真意を明かしていないようなので、おそらく「こうだろう」と想像するしかなく。

注意しなくてはならないのが、ここで「外国語を知らないと、自国語の特殊性もわからないということだから」を根拠にしてしまうこと。

一見、良さげに感じますけど、これは単に「外国語を知らない者は自国語も知らない」を言い換えたに過ぎません。
根拠とは、「なぜそう考えるの?」という質問への答えであり、「どういうことかを説明する」ものではありません。
「言い換え」と「根拠」が違うものであることは、よく理解しておかなくては。

さらにこの第4章では、マンガ『スラムダンク』でもっとも有名なセリフの1つ(安西先生のアレですw)の「根拠」を考えるのですが、これが超難問!?

著者の狩野さんのクラスでも、皆ことごとく「根拠」として挙げたものが「言い換え」に過ぎなかったのだそうです。


◆本書は他にもユニークな問題が多々。

上記のアマゾンの内容紹介から抜き出しても(完全ではないですが)
・「そして、今日も、ガリガリ君を食べた」で終わるお話を400字以内で書いてください
・5色の輪ゴムで最大の価値を生み出す方法を考えてください
・軍資金500円、制限時間1週間。この条件で最高にハッピーになる方法を考えてください
・「寝るのが仕事」と言える職業を思いつくだけ挙げてください
・─「炭酸飲料が必ず振られた状態で出てくる、自動販売機」「赤ちゃん用のクレジットカード」を素晴らしいプランに
等々、かなり自由な発想が求められるものが結構ありました。

おそらくこれからの時代、こうした「正解がない問題」に、どこまで立ち向かえるかが重要になってくる可能性は高いです。

そしてそのような問題に対して、「ロジカル」にアプローチする手順を指南してくれるのが本書ということ。


創造性を高めたい方なら、要チェックな1冊!

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ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題
序章 ウォーミングアップ
第1章 自分で「答え」を見つけ出す考え方の基本
第2章 ルールを見つける力
第3章 究極の質問を見つける
第4章 常識に負けない「根拠力」を持つ
第5章 言語化の力を養う
第6章 常識・自分の理解を疑う


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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脳の個性を才能にかえる 子どもの発達障害との向き合い方

少々読む人を選びそうですが、お子さんやご本人が該当するようなら一読の価値はあるかと。

中古は値崩れ気味なものの、送料を加算すればKindle版がお買い得です。


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