2019年05月21日
【物理学?】『文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る』松原隆彦
文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の山と溪谷社の「春の実用書フェア」で人気でしたが、セール終了後も「ポイント還元」に移行して、未だセール価格である1冊。どうもBookLive!で始まった「山と溪谷社 春の実用書セール」の対象となったようで、おそらく5月30日までは、この金額でお求めになれるハズです。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
最先端の物理学が、金融の世界を制している。
輪廻転生は物理学では正しい。
AIが人間を不死にする。
日本の宇宙論、物理学の第1人者が解き明かす、新しい世界の見方。
最先端の物理学を誰でも分かるように解き明かします。量子論によって、我々の人生が変わる!
文系でも物理学に興味のある人や、新しいものの見方を模索している人へ向けた新しい物理学の解釈。
中古があまり値下がりしていませんから、Kindle版が実質800円弱、お得な計算です!
Relativity theory in front of Old Museum, Berlin / anders.rasmussen
【ポイント】
■1.物理学者がウォール街で活躍している?では、「物理学を使って株価の動きを予測できる」と聞いたら、どうだろうか。
これまで物理に関心のなかった人も、興味をそそられるのではないだろうか。「本当にそんなことができるのか」と思うかもしれないが、実際に実践して大きな成功を収めている集団がある。
その代表が、1982年にジェームズ・シモンズが創設した投資会社ルネッサンス・テクノロジーズ(以下、ルネッサンス)だ。(中略)
ルネッサンスが金融や経済の専門家を雇用しないのは、人の主観や経験に基づく判断は正しいこともあれば間違うこともあるからだという。その代わり、優秀な物理学者や数学者、統計学者を集め、あらゆるデータから予測モデルを作り、モデルの改善を繰り返しながら、短期間に高頻度の取り引きを行うことで、驚異的なパフォーマンスを保っている。ルネッサンスは、主力ファンドの「メダリオン」の年平均リターンが40%近くあり(100万円投資したら140万円になるということ)、立ち上げから10年間で2478.6%もの収益率を上げたという。
■2.アインシュタインはアマチュア学者だった
それこそ、世紀の天才といわれるアインシュタインも、最初に相対性理論(特殊相対性理論)を発表したときには、アマチュアの物理学者だった。彼は、大学卒業後も助手として残りたかったものの希望は叶わず、やむを得ず働きながら独自で研究を続けていたという。そして26歳のときに特殊相対性理論を発表しているのだが、そのとき、彼はスイスの特許局で働いていた。
公務員生活をしながら、プライベートな時間を使って、物理学の歴史を変える理論を作り上げたのだ。しかも、この年に彼は特殊相対性理論も含め3本の論文を発表しているのだが、そのどれもが素晴らしく、そのうちのひとつ(光電効果に関する理論)によって、のちにノーベル物理学賞を受賞している。
今でも、アマチュアの理論家が世紀の発見をする可能性は十分にあり得る。理論であれば、大がかりな実験装置はいらない。パソコンさえあれば、どこにいてもいくらでも考えられるのだから、現代のアインシュタインが登場する可能性はゼロではないのだ。
■3.空はなぜ青く、夕焼けはなぜ赤いのか?
波長の短い光は大気中のさまざまな粒子にぶつかりやすいため、進路を曲げられ、散乱しやすい一方、波長の長い光はぶつかりにくく、粒子と粒子の間をすり抜けながら、まっすぐ届く。
つまり、太陽光のうち、波長の長い赤い光はまっすぐに進みやすいのに対し、波長の短い紫、藍、青といった青っぽい光は、進路を曲げられ、散乱しやすいのだ。だから、空の上では青い光があちこちに散らばっていて、太陽とは違う方向から目に入ってきた光というのは、青い光が多く、空は青く見えるというわけだ。(中略)
上空の大気の厚さは、およそ8キロメートルだ。この程度の距離であれば、波長の短い青い光が進路をあちこちに曲げられながら進んでも、失われない。だから、太陽が頭上にいる昼間には、青い光が目に入ってくる。
ところが、日が昇る頃、日が暮れる頃というのは、太陽は横のほうにいる。そうすると、太陽からの光が大気のなかを通る距離が数百キロにも長くなるため、散乱しやすい青い光は途中で失われてしまうのだ。そして、ほかの邪魔をすり抜けてまっすぐに進みやすい赤い光だけが届くので、太陽の光に照らされたまわりの雲はじんわりと赤く染まる。
■4.地球の軸が傾いているのはなぜ?
これは、以前に物理学専攻ではない学生を対象に教養科目として物理学を教えていたときに、学生から聞かれた質問だ。結論から言えば「傾かない理由はない」からだ。公転面に対して垂直になる理由がない、と言ってもいいだろう。つまりは偶然だ。
23.4度という角度にしても、この角度でなければならない理由はない。偶然、この角度に傾いたにすぎない。ただ、ちょっと傾いたから、太陽と地球の位置関係によって太陽光の当たる角度と日照時間が変わり、四季が生まれた。私たちの人生がちょっとした偶然の出来事によって変わるのと同じだ。(中略)
では、地球の地軸の傾きは、未来永劫変わることはないのだろうか。傾きが変わり、天王星のようになったら四季どころではないが、幸いにも地軸は安定している。それは、月が地球のまわりを回ってくれているおかげだ。月の重力によって、地軸は安定して同じ角度に保たれている。万が一、月がなくなれば、地軸は、何万年、何十万年という年月をかけていろいろな方向に向いてしまう。
■5.ビルの高層階では時間がゆっくり進む?
相対性理論の正しさは証明されているとはいっても受け入れがたいのは、ひとつには時空間のゆがみを想像することが難しいからだろう。私たちは三次元までは思い浮かべられるが、四次元目の方向は思い浮かべられない。イメージができないうえに、ゆがみを実感することもないため、時間も空間もまっすぐに広がっているはずだと思い込んでしまう。(中略)
しかし、日常生活のなかで感じることがないからといって、私たちのまわりに時間や空間のゆがみが存在しないわけではない。精緻に測定すると、地球上でも相対性理論の効果を測定することができる。
たとえば、ビルの1階と屋上では、ごくごくわずかながら異なる時間と空間が広がっている。そのため、ビルの1階に置いた時計は、屋上に置いた時計よりもごくごくわずかにゆっくり進む。
【感想】
◆タイトルには「文系でもよくわかる」とありましたが、ところどころ、「超文系」の私にはハードルが高い1冊でした。上記ポイントの3番目や4番目辺りを読むと、以前ご紹介したこの本を彷彿とさせるのですが。
いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します
参考記事:【全米がワロタ?】『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』ミッチェル・モフィット,グレッグ・ブラウン(2018年04月16日)
こちらはあくまで「科学」全般であるのに対して、本書は「物理学」というその1つのジャンルに限られます。
ゆえに、テーマによっては、「チョ、マテヨ!!」と置いてかれることもちらほらと……。
◆とはいえ、最初くらいは、ということで、第1章では身の周りの出来事と、物理学の関係について言及。
上記ポイントの1番目の投資会社の件は、私も話には聞いたことがありましたが、そこまで「非金融系人材」に徹しているとは知りませんでした。
ちなみにこうした「高性能なコンピュータ」と「数理モデル」をベースに投資戦略を考える手法や、その専門家のことを「クオンツ」というのだそう。
クオンツとは|金融経済用語集
サブプライムやリーマンショックで、多くの投資会社やヘッジファンドがダメージを受けた中、このルネッサンスの「メダリオン」は、70〜80%のパフォーマンスを上げたのだとか。
◆続く第2章では、その物理学を扱う、物理学者についてフォーカス。
カミオカンデでおなじみの物理学者、小柴昌俊先生や、そのお弟子さんでやはりノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生も登場しています。
とはいえ、やはり物理学者といえば、アルベルト・アインシュタインを思い浮かべる方が多いでしょう。
このアインシュタイン、私も今まで意識したことはなかったのですが、大学等で研究していたわけではなくて、卒業後は本業のかたわら研究していたに過ぎません。
実際、上記ポイントの2番目にあるように、特殊相対性理論を発表したときは、スイスの特許局で働いていたという……。
こういうケースがあるということは、確かに市井の研究者が、大発見をする可能性も否定はできませんよね。
◆一方、第3章は一転して「空の上の物理学」がテーマ。
「空」と言っても上記ポイントの3番目のような「本当の空」から、その先の「地球」「惑星」へと話も大きくなっていきます。
ポイントの4番目の「地軸」の話も、言われてみたらごもっとも。
とはいえ、月の存在が、地軸の角度の安定性に関わっていた、という話は知りませんでした。
ほかにもこの第3章では、「気球はなぜ自転をはじめたのか」とか「地球外生命体は存在するのか」あたりが、「文系」の方にも楽しんでいただけると思います。
さらには「光」がテーマの第4章も、「液晶ディスプレイ」や「3D映画」、私も好きな「錯視」が登場するのですが、こちらは図解があってのお話なので、残念ながら割愛せざるを得ず。
◆……と、この辺までは私も楽しめたものの、「置いてけぼり」をくらったのが、次の第5章です。
ここはテーマが「素粒子、原子、分子の世界」ということで、いわば物理学の王道なのですが、「分子」「原子」「素粒子」「クォーク」「陽子」「中性子」といった単語が登場しても「お、おぅ」と言った感じでワケワカメ。
ひょっとしたら、身近なものと結び付けられないから、私にはピンとこないのかもしれません。
さらに第6章では、「相対性理論」がテーマということで、こちらもハードルはやや高め。
ただし、GPSが成り立つには、相対性理論が必要だったり、ブラックホールを予言されたのも、相対性理論があってこそ……と言われると意外と親しみ深く感じられました。
ちなみに上記ポイントの5番目の「時間のずれ」は、個人的に非常に興味があったのですが、具体的にどのくらい違うのかと言うと、
634メートルの東京スカイツリーのてっぺんと地上では1日に100億分の1秒ほど時間の進み方が異なるという程度だ。つまりは100億日でようやく1秒ほど。と言われてガックリの巻w
物理学に関心のある方なら、買って損はない1冊です!
文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る
1章 物理学で世界の見方が変わる
2章 物理学者の正体
3章 空の上の物理学
4章 私たちは何を見ているのか―光の話
5章 すべては粒子でできている―素粒子、原子、分子の世界
6章 時間はいつでも一定か―相対性理論を考える
7章 意識が現実を変える?―量子論の世界
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。好かれる技術 仕事に効く見た目・しぐさのポイント59 (スマートブックス)
装丁を見ると「モテ本」のようですが、サブタイトルを読む限りでは「ビジネスシーン」で活用できる模様。
「199円」という送料以下のお値段ですから、気になる方はこの機会にぜひ!
ご声援ありがとうございました!
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