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2019年05月17日

【人生論?】『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』山本一郎


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ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、注目を浴びていた1冊。

おなじみ「切込隊長」こと山本一郎さんが、さまざまな「ズレ」をテーマに語り尽くした作品です。

アマゾンの内容紹介から。
うまくいかない、おかしい、腹が立つ。仕事、会社、人生、社会でズレているのは自分?それとも…?文春オンラインの人気著者発。時代と自分のズレを認識し希望に変えるための必読書!

ちなみにKindle版は、「24%OFF」とセール並みにお買い得となっています!





Boys / therichbrooks


【ポイント】

■1.炎上案件を鎮火させるための「5つの必要なこと」
 もともとコンテンツ制作をしていたときは、やはりゲーム開発などで炎上案件に数多く携わってきたため、私はその点「どうやったら鎮火させられるのか」には一家言あるわけですが、どのようなリーダーでも、どんなメンバーのスキル構成でも、いかなるプロジェクトでも、鎮火させるために必要なことはだいたい一緒で、次のような感じです。
(1)「そもそも自分たちは何をしたかったのか?」というテーマの確認
(2)「燃えているけど、このプロジェクトはどうしても完成させなければならないのか?」の意志決定
(3)「そのうえで、追加のリソースはどのくらい確保できるのか」という見積もり
(4)「このリソースで求められているテーマを実現させるには何が必要なのか?」という優先順位の決定
(5)「今回はとりあえずこれを作るけれど、将来この先に何かやるべきことはあるのか?」という拡張性の有無の合意


■2.悪い努力信仰とは何か?
 悪い努力信仰というのは、度の過ぎる「とりあえずやってみよう」から「結果が出ないのは頑張りが足りないからだ」という、努力すること自体が目的になってしまうことで、努力の方向が目標からずれてしまい、まったく無駄な努力を重ねてただただ疲れるということです。正しくない努力をしても結果が出ない、結果が出ないからもっと頑張れという話になって、100メートルダッシュを100本走らされる高校球児が可哀想だなという話になるわけです。
 企業組織の話でいうと、そういう間違った努力を強いる組織は、やり方に疑問を覚えるまともな人から去っていき、努力することが目的になる人たちだけの集団になってしまうため、東芝みたいな「チャレンジ」という名の粉飾まがいが平然と起きてしまうことになります。間違った努力は高校野球にも一部上場企業にも霞が関や官邸にもあるものであって、一度やると決まってしまうとどうにもとまらない状態になります。東芝だって優秀な社員はいっぱいいたのでしょうが、努力のさせ方、努力の向かう先の設定が間違っていて、しかもそれが粉飾だったとなれば、企業ぐるみの不祥事になってしまうのは当たり前のことです。


■3.「右肩上がりの思想からの脱却」と「下り坂を見据えた秩序ある撤退戦」
 いまでこそ、アベノミクスでは働き方改革とか地域経済の復興などなどいろんなスローガンが立ち上がっては迷走している印象ですが、もっとも考えるべき大きいテーマ群は「右肩上がりの思想からの脱却」と「下り坂を見据えた秩序ある撤退戦」といったあたりじゃないでしょうか。これから景気が良くなろうというところで成人し社会に出た高齢者と、そういう高齢者が歳とって動けなくなったところで彼らの年金分も稼がなければならないいまの若者とでは、置かれている現実も社会の方向性もまったく違う。もちろん、戦後の高度成長を支えたのは、いまの高齢者が頑張って働いたからであることは間違いありません。でも、そのころ培われた経験に基づく日本の常識は、状況が変わってしまったこれからの日本で生きていく若者にマッチしなくなっていることに気づいてもらわないと困ります。
 いまどきの労働組合が、ともすれば正規雇用の中高年の立場しか代弁しておらず、フリーターや非正規雇用の若者のような、本来は本当に守られなければならない人たちに傘を差しだしていないと批判されるのも仕方がないと思うのです。


■4.正しい努力をしても「札束」扱い
 ただ、パートナーに恵まれないことについて「いまのまま、俺を受け入れてくれる若い女がこの世のどこかにいるはずだ」と信じたまま結果を出せず中年まで差し掛かる婚活者を見ていると、どんなにスペックが高くても、また正しい努力をしていても、その若い女性から見れば「若作りしているおっさん」とか「頑張ってアプローチしてくる札束」ぐらいにしか見えていないのではないかと思います。60歳近くになると後妻業の皆さんがやってくることもあるようですが、それだってある程度金持ちでなければやってきません。所得が低く貯金もない、病気持ちだ、親の介護をしているなどなど、女性からすれば「こんな男と一緒になりたくない」というハードルは沢山あるでしょう。あくまで結婚するという面において、スーパーで30%引き、半額というシールを貼られても売れない商品に自分はなっている、という理解をどこまでしているのか、売れるための正しい努力をしているのか、というのは、いい歳して結婚願望を平気で口に出す同年代以上の人たちに共通して現れる問題じゃないかと感じます。


■5.「社会的に許されること」の許容量が減っている
 三男を幼稚園に送っていった帰り、園児の手を引くクラスメートのお母さんと娘さんとすれ違ったので挨拶をします。
「おはようございます」
 声高らかな挨拶というのは気持ちがいいですね。私が。挨拶は大事ですし、人間の基本です。(中略)
 ところが、その夕刻、不当なことに私は警察官に職務質問を受けてしまうのです。何ということでしょう。聞くと、早朝にアロハシャツを着て短パンを穿いた見ず知らずの中年が、母娘の登園時に声をかけたという、声かけ事案があったので調べているというじゃありませんか。
 しかし、それは本質ではありません。問題の論点がずれています。善良な千代田区民が住民と挨拶を交わすという美しい行為が「幼女への声かけ事案」と疑われ、あろうことか不審者が街中をうろついているかの如く通報されたという、この私に対する重大な人権侵害行為であります。挨拶しただけなのに。誰だ、通報したのは。人を見た目で判断してはいけません。私のような品行方正で穏やかで豊かな人間性に溢れた人物に対して、疑いの目を向ける監視社会に対して、私は断固抗議したいのであります。


【感想】

◆本書が出ることは、結構前の山本さんご自身のブログで知っていました。

やまもといちろう 公式ブログ - 【告知】山本一郎の本が出ます! 『ズレずに生き抜く』(文藝春秋)5月15日あたりオンストア! - Powered by LINE

そのベースとなっているのは、はてブのホッテントリにも時おり顔を出すことがある、こちらの文春オンラインなのですが。

山本 一郎 プロフィール | 文春オンライン

ただ、日頃から山本さんの文体に慣れ親しんだ者からすると、その変わり身(?)にビックリの巻。

実際、上記ブログの告知記事では、こんな一節があります。
今回ご一緒した書籍の担当編集である斉藤さんは、初めてお会いしたときから「あっ、この人は冗談の通じない人だな」と感じ、また、書籍のゲラが最初に上がってきて一読、私のある意味書き方の手癖である悪口や冗談、悪態のような邪悪な装飾がすべて削ぎ落されたことを知り「これは大変なことになった」と思いました。文春オンラインの原稿でも、文章のリズムをつけたり読者の共感を引き出すために私は文中に短い文章で「バーカ」という表現を多用するわけなんですが、それが綺麗さっぱり全部なくなっているのです。
確かにKindleで単語検索しても、「ばーか」「バーカ」のいずれも1件もヒットしません。

何ということでしょう。←上記ポイントの5番目の真似w

ただし、上記引用に続いてこんな風にも言われています。
スギ花粉をもうもうと出していたはずの山からスギが全部切り落とされてハゲ山になっているかのような心象風景でしたが、著者として思うのは「そういう悪態も悪ノリも全部落としたほうが、読者として読みやすいと編集者が判断したのであれば、信頼してその方針に乗っかろう」ってことであります。
他にも「『余所行き』の表現」というか、山本さんらしくない言い回しが多いのですが、これが商業出版というものなのではないか、と。


◆内容的にも、文春オンラインがベースとなっている以上、初めから書籍化を意図して書かれたものではなく、その時その時の時流や、山本さんの身の周りで起きたことをきっかけにした考察が中心です。

このような、いわゆる「エッセイ」と言いますか、とりとめもなく(悪い意味ではなく)書き連ねたものが1冊になった作品は、当ブログではあまり記憶にありませぬ(結果、関連記事がほとんどないという)。

ちなみに、文春オンラインで話題になったエントリーでも、「特定の人物や会社をディスるもの」は、選ばれていない感じです。

記憶に新しいところでは、ブクマ300超だったこちらが収録されていません。

はあちゅう、女銭湯絵師炎上に見る「美人だから何をしてもいい」わけじゃないだろう問題 | 文春オンライン

媒体としてのPVの多さからいったら、結構上位に来ていそうなのですが、華麗にスルー。

もっとも、タイトルにある「ズレ」というテーマから、まさに「ズレ」ているからかもしれませんが。


◆その「ズレ」ですが、下記目次にあるように、本書は各章題のテーマごとに「ズレ」を検証。

サブタイトルにある「仕事」「結婚」「人生」だけでなく、「企業」「世代」「時代」といったあたりにも言及されています。

特に目につくのが、男女の違いや、貧富の差、生まれ育った時代の相違等をベースにしたもので、それを山本さんらしく「あえて回りくどい表現」によって訴えてらっしゃるという……。

こういう書き方ができるというのは、おそらく頭がいいからなんだと思います。

「その書き出しで、その結論になるのか」という鮮やかさ。

私なんぞは、たまに書き出していて、途中から話が変わってしまう事もあるのですが、山本さんは最初からゴールを目指して書いてらっしゃるハズです。


◆本来ならそこに、「キッツイ皮肉」や「丁寧な表現による罵倒」が加わるところ、それらの部分は上記のように「なかったこと」に。

昔からのファンにしてみたら、残念かもしれませんが、その辺は割り切ってください。

代わりに味わいたいのは、「視点」や「視座」の鋭さ、高さ。

もちろん、「結婚」を扱っている以上、山本家のご家族もちょこちょこ登場されていますし、ご本人がおっしゃるように、まさかあの「切込隊長」が結婚した上に、子育てや介護に奮闘するなんて、当時の私たちには想像もできませんでしたよ。

というわけで、山本さんのファンの方にも、あまりご存じでない方にも、本書はお楽しみいただけると思う次第。


山本一郎流「自己啓発書」に括目すべし!

4163910247
ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革
第1章 仕事観のズレ―組織のありようが変わる中何を道しるべに生きていくのか
第2章 人生観のズレ―上手くいこうが失敗しようが納得できる人生にする
第3章 企業観のズレ―いまある組織が未来永劫青天井に成長していくことはない
第4章 世代観のズレ―現役世代が未来のために受け入れなければならないこと
第5章 結婚観のズレ―この時代の結婚にまつわる男の問題、女の問題
第6章 時代観のズレ―不寛容社会で生きていくために


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【編集後記】

◆当ブログでは単独では扱いにくいのですが、現在こんなセールが始まっています。



Amazon.co.jp: アルク キクタンフェア2019(5/30まで): Kindleストア

これが「60%OFF以上」と、値引率も高め!

リンクにもあるように、5月30日までとのことなので、気になる方はチェックしてみて下さい!


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