2019年04月08日
【知的生産術】『調べる技術 書く技術 誰でも本物の教養が身につく知的アウトプットの極意』佐藤優
調べる技術 書く技術 誰でも本物の教養が身につく知的アウトプットの極意 (SB新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気を集めていた知的生産術本。佐藤優さんも多作なだけに、基本的にはスルーせざるを得ないのですが、このテーマならば当ブログ的にはレビューせざるを得ませぬ!
アマゾンの内容紹介から。
「月に500冊の本を読み、1200ページの原稿を書き、130人と面会、1日4時間をインプットに充てている」と語る作家・佐藤優氏。
そんな佐藤氏が毎日実践している、知的生産(「読む・書く・考える」の実践法)を、初公開。
なお、定価と変わらないお値段でしたが、私はKindle版で読みました!
diary writing / freddie boy
【ポイント】
■1.仕事に関する知識をしっかり身につける世の中には、基礎的な知識・教養がなくては理解できない情報がたくさんある。新聞1つをとってみても、高校の教科書レベルの知識・教養があるのとないのとでは、理解のレベルもスピードも大きく異なる。
そして、具体的なアウトプットのためにインプットする際には、自分の仕事に関する基礎知識とアップデートされた知識が欠かせない。
たとえば、マーケティングに従事しているのなら日経流通新聞、産業界にいるのなら日刊工業新聞、農業に就いているのなら日本農業新聞を理解できるくらいの知識を身につけるということである。裏を返せば、これらを読んでスムーズに理解できるかどうかが、自分の知識レベルのバロメーターになる。
仕事に関する知識をしっかり身につければ、新たにインプットする情報の理解度が底上げされる。当然、そのインプットをもとに行うアウトプットの質も高まるのだ。
■2.ネットでの情報収集源は3つに限定する
情報収集において、ネットは、使い方によっては鬼門となる。
いたずらに時間を費やし、誤情報やフェイクニュースに惑わされる危険を高めてしまうか、それとも効率的に有益な情報を引き出すツールとするか。後者をとるには、いくつか心得ておくべきことがある。
まず基本として、ネットでの情報収集は、「NHK NEWS WEB」、新聞のウェブ版、オンライン辞典・辞書サイトである「ジャパンナレッジ」などたしかな辞書・事典検索サイト、この3種類に絞ることだ。
「ジャパンナレッジ」では、小学館の『日本大百科全書(ニッポニカ)』や平凡社の『改訂新版 世界大百科事典』をはじめ、約50種類もの百科事典や辞典、 叢書、雑誌を横断検索できる。PC版とスマホ版があるので、ビジネスパーソンにとっては使いやすいだろう。
私にも経験があるが、先ほど述べたテレビと同様、ネットも、制限時間を設けないと、どんどん時間を浪費してしまう「時食い虫」だ。ネットを使った情報収集は先に挙げた3つに限定しておけば、ネットサーフィンの誘惑にも負けないし、事実誤認に基づく解説やフェイクニュースに引っかかる心配もなくなる。
■3.メッセージツールは使ってはいけない
SNSと並んで、あまり使わないようにしたいのは、フェイスブックのメッセンジャーや、ラインなどのメッセージツールだ。
一番いいのは、仕事用のPCメールを使うことだが、最近は、仕事上の連絡までメッセンジャーやラインで行う人が多い。相手あってのことだから、あくまで「仕事用」と割り切って使うのは仕方ない。
しかし、注意したいのは、メッセンジャーやラインといった手軽なメッセージツールだと、重要度の低いやりとりをする機会が増えてしまうことと、使う言語が話し言葉になってしまうことだ。
仕事上の人間関係であっても、メッセージツールでやりとりしているうちに、仕事と無関係のことまで送り合うようになりやすい。仕事相手と親睦が深まっている証だからいいことだと思えるかもしれないが、それはまったく話が別だ。
問題は、やはり時間の浪費である。たとえば、仕事中、思考中に、メッセンジャーやラインで、次々と仕事とは関係のないことが送られてくる。そのたびに自分の仕事や思考が中断される。さらには、読んだら即レスするのが、こうしたメッセージツールの掟と見なされているので、たびたび返信の手間も割かねばならない。
■4.日誌の2つのメリット
1つめは、一日を振り返ることが、日々の仕事の効率アップにつながる点だ。
試しに、今日あったことを書き出してみてほしい。すると、今日やらなくてもいいことに時間を費やしていたり、非効率に時間を使っていたりと、今後の改善点が見つかるものである。
日々、仕事に追われていると、気になるのは明日のことばかりだろう。たしかに明日の計画も大事だが、一方で、実際にどう時間を使ったのかについて意識的に「振り返り」もしないと、仕事の時間効率は上がりにくい。
頭で思い出すだけでは不十分だ。どんな無駄があるか、どこを改善できるかは、可視化することで見えてくることが多々ある。やはりノートに、今日あったことを記すのが一番だ。
また、行動の記録が「記憶のトリガー」になることも多い。これが2つめのメリットである。
たとえば、今やっている仕事に役立てるために、過去に聞いた情報をもっと深く知りたいが、誰から聞いたか忘れてしまったとする。そこで日誌を繰ってみれば「そうだ、この人に聞いたんだった」という具合に情報源にたどり着ける。さっそくアポを入れて、望む情報を得ることもできる。
■5.歩留まりを意識する
歩留まりの意識とは、たとえば、ある人に仕事を発注する際に、仕上がりは自分が求めているものの「6割」程度と想定しておくということだ。営業職の人が顧客に商品を売り込むときも同様だ。最終的に商談が成立し、受注できるのは、当初の見込みの「6割」程度と見積もっておく。
要するに、仕事を発注する側であれ、受注する側であれ、仕事相手に期待しすぎないことだ。
相手が自分の期待にフルに応えてくれると思っていると、それ以下だったときに窮地に陥る。しかし6割程度と見込んでおけば、7割の達成率でもラッキーと思えるだろう。残り3〜4割を埋めるための策を、前もって考えておくこともできる。
発注した仕事が、最初から完璧に仕上がってはこないだろうと踏むなら、やり直しも見込んだ上で時間的に余裕をもって発注すればいい。穴を埋めるヘルプ要員を準備しておいてもいいだろう。
1つの顧客から受注できるのは期待の6割程度と見積もっておけば、ほかに有力な営業先を確保すべく、動いておくこともできる。
【感想】
◆本書はそのタイトルにある「書く技術」というフレーズや、表紙に掲載されている「1200ページ書く」という部分から、てっきり文章術本ないしは、文章術が柱になっている作品なのだと思っていました。実際、今年2月に佐藤さんは読書術本を出されたばかりですし、同じ「知的生産術」路線からいったら、次は「文章術」ではないか、と思ったワケです。
人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)
参考記事:【知的生産】『人をつくる読書術』佐藤 優:マインドマップ的読書感想文(2019年02月07日)
ところがどっこい、本書で扱っている「書く」とは、基本的には仕事におけるアウトプットのよう。
と言っても、「議事録」とか「報告書」「企画書」等の書き方ではなく、むしろその前段階に趣きを置いています。
◆具体的には、まず「インプット」。
といっても、読書に限らず、その対象は新聞や、ネット、はたまた教科書と広範囲に及んでいます。
新聞については、類書でもよく2紙以上を購読するよう言われていますが、時間的に難しい場合は、『新聞ダイジェスト』を利用せよ、とのこと。
月刊新聞ダイジェスト19年4月号
また、上記ポイントの1番目にもある「基礎的な知識・教養」を身につけるために有効なのが教科書です。
本書では、社会人が読んでも良い、日本史、世界史、政治・経済、数学I、といった科目のオススメ教科書をコラムで紹介していますから、ご参考まで。
◆逆に注意しなくてはならないのが、ネットでの情報収集です。
上記ポイントの2番目では、いきなり結論部分が挙げられていますけど、佐藤さんはこの3つ以外の情報源は信用していない模様。
この中の「ジャパンナレッジ」というのは、初耳だったのですが、「日本最大の辞書・事典検索サイト」らしいです。
ジャパンナレッジとは?|ジャパンナレッジのご紹介
有料である分、情報としての正確性は確かなよう。
もちろん職業作家である佐藤さんと、私たちとでは立場が違うものの、Wikipediaをこわごわ使うくらいなら、導入しても良いと思います。
◆またネットと言う意味では、上記ポイントの3番目で主張されているように、佐藤さんはメッセージツールにもネガティブなお考え。
このうち、仕事や思考が中断される、というのはメールでも同じでしょうけど、注目すべきは「使う言語が話し言葉になってしまう」という指摘です。
送られてきた文面を読むにせよ、自分が文面を送信するにせよ、書き言葉が話し言葉に取って代わられるにつれて、実は本や新聞を読み解く力が低下していく。また引用の最初で「SNSと並んで、あまり使わないようにしたい」と言われているように、SNSについても佐藤さんはかなり批判的。
「知的かつ充実した人生を送りたいのなら、すぐにでもやめたほうがいい」とか「SNSを使うか、使わないかで、生涯所得と出世が左右される」などと、かなり強く言われていますけど、皆さん、そう簡単にやめられないんじゃないでしょうか……。
また、やりたいのを我慢すると、限りのある資源である「自制心」を消費してしまいますから、個人的にはそこまでタイトにしなくてもいいんじゃないか、と思います。
◆なお、本書の第3章ではやっと(?)「アウトプット」に関する言及が。
上記ポイントの4番目では「日誌」について述べられていますが、スケジューリングに関するノートと手帳の使い方も参考になりましたので、詳しくは本書にてご確認ください。
一方最後の第4章は、「インフラ整備」のお話なのですが、知的活動に先立つのが「衣・食・住」だ、という考えから、金銭管理や消費管理の話が出てきたのには、少々ビックリの巻!?
ちなみに上記ポイントの5番目の「歩留り」のお話も、この第4章からであり、こうした社会人としてのコミュニケーションスキルがあってこそ、持続的な知的生産が可能になるのだそうです。
……と多方面に及んだ本書ですが、タイトルの前半である「調べる技術」に興味があるなら一読の価値アリ。
「知的生産の巨人」のTIPSを学んでください!
調べる技術 書く技術 誰でも本物の教養が身につく知的アウトプットの極意 (SB新書)
第1章 情報過多な時代の調べる技術、書く技術
第2章 【インプット】情報を「読む力」を高める
第3章 【アウトプット】読んだ知識を表現につなげるスキル
第4章 調べる技術、書く技術の「インフラ整備」のすすめ
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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