2019年02月25日
【実践的会計本】『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』三戸政和
サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編 (講談社+α新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「講談社キャンペーン」の中でも人気の1冊。しかもこの作品、なんとつい先日の未読本記事にて取り上げたばかりの、バリバリの新刊になります。
アマゾンの内容紹介から。
新書+電子書籍で13万部超のヒットとなった『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の続編が登場。今度は「会計編」。ひと口に会社を買うといっても、危ない会社を避けて、成長可能性の高い会社を見抜くにはどうすれば? 実は、そんなに難しいことはありません。たとえるならそれは、資産価値の上がるマンションや車を買うのと同じ。斬新な視点で、サラリーマンが資本家になるための一歩進んだ情報提供をします!
中古が定価の倍以上しますから、このKindle版が400円以上、お買い得となります!
Accounting Binder Cover / sopsal
【ポイント】
■1.会社の価値を算定するための計算式この「純資産」と「利益」の両方を見て、会社の価値が算定されます。
そのための基準となる計算式があります。それこそが、株式価値=純資産+営業利益3年から5年分という計算式です。
中規模以下のM&Aで価格設定を行う際、ひとつの目安とされる数字です。みなさんが将来、個人M&Aで企業を買収する際にも、おおよその目安になる計算式だと思ってください(ひとつの目安であって、これが絶対ではありません)。
この計算式には2つのキーワードが登場しています。今述べた「純資産」、そしてもう1つ、「営業利益」です。
これらを理解すれば、「小さな会社を買う」のは、さほど難しいことではないと気づくのではないかと思います。はっきり言えば、小さな会社を買うことに必要な知識は、マンションを買うのとさほど変わらないものなのです。
■2.減価償却累計額が大きいと、新たな資産を買う時期が近い
減価償却累計額が大きければ、資産の購入時期はかなり前になることがわかります。そのため、次なる設備投資が近いことが想像できます。
今度は実際に、「会社を買う」ことをイメージしながら考えてみてください。
中小企業は、大企業ほど定期的な設備投資をしていませんから、工場を建てた時に買った機械設備をそのまま使っていることが普通です。減価償却累計額が大きいということは、それら資産の使える期間が終わる「耐用年数」が目前に迫っているということを意味します。つまり、会社を買った直後に大規模な設備投資を一気に行わなければいけない可能性があるのです。
■3.支払手形が多い会社は要注意!
会社が倒産するのは、唯一、手形の不渡りを出した時です。仕入れに対する支払いの期日が先になれば、売上金回収までの期間が短くなり、必要なキャッシュが減りますので、会社の資金繰りとしては有利になります。しかし万が一、手形が落とせない(期日に返済資金が足りなかった)ということになれば倒産してしまいます。現金先食いの事例にも通じますが、何かのトラブルで現金を使ってしまい、手形決済のタイミングで現金を準備できなければ会社が終わってしまうわけです。
一方、買掛金であれば、前述の通り取引先に頭を下げれば、いきなりの倒産は回避できます。
現金をマネジメントしていなければ、どちらも同じように迷惑をかけるのですが、かけた迷惑に対してのインパクトが断然違います。
■4.会社を買うのに個人保証はいらない
実際、今も、中小企業が銀行から融資を受けるためには、社長が連帯保証人とならねばならず、また、会社が倒産したら社長に返済義務があると、みなさん思っているのではないでしょうか。たしかに、これまでの日本はそうでした。中小企業の経営者の多くが融資に対して個人保証をしています。(中略)
でも、もう、その考えを改めてください。今では、会社は個人保証なしで買えます。
近年、国の要請のもと、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会によって、「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、「法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと」と示されました。
■5.簿外負債「退職給付引当金」
従業員への支払いが生まれる項目とは、賞与引当金や退職給付引当金、 未払い残業代や社会保険未加入などです。「引当金」とは、積立金のことと考えてもらえば問題ありません。これらは、賞与や退職金を支払うための積立金です。(中略)
上場企業では、2001年の証券市場の会計基準の変更から、このような退職金の積み立てを、退職するであろう従業員が勤務している間、毎年の費用として認識し、負債として記録し、現金を残しておかなければいけないことになりました。(中略)
一方で、中小企業など上場していない会社は、税務署が所管するルールで会計処理をしており、税務上の会計ルールでは、この引当金の計上が不要とされています。つまり、中小企業の場合は、悪意なくこのような引当金を積んでいないケースがあるのです。
【感想】
◆「会計編」と銘打っただけあって、その内容のほとんどが会計ネタな1冊でした。ただし、一般的な会計本と違うのは、「会社を買う」という目的があること。
「デューデリ」なんて言うと、何やら難し気に感じますけど、要は買おうとする会社の決算書を見て、その会社の「価値」がいくらか判断できなくてはならないワケです。
そこでまずは、一般的な考え方というのが、上記ポイントの1番目の計算式。
他の考え方も本書にはあるのですが、まずはこの考え方に沿って、会社を評価していきます。
◆とはいえ、会社の決算書の「利益」や「純資産」の数字だけでなく、さらに深読みできなくては、正しい価値は評価できません。
たとえば上記ポイントの2番目にある「減価償却累計額」の大きさ。
減価償却資産の額に比べて、この累計額が大きいと、資産の買換えが近いことが分かります。
また、本書では指摘されていましたが、賞味期限切れの食品や、陳腐化した衣料品なども、たとえ帳簿価額はあっても、実質的な価値はゼロでしょう。
まずはこうした、貸借対象表の「実態」を把握することが、非常に重要なのが分かります。
◆さらには「危ない会社」を見抜くのも大事なこと。
上記ポイントの3番目にあるように「支払手形」が多い会社もリスキーです。
もちろん、上記にもあるように、「即、倒産」の危険性があることはもちろん、そもそも「買掛金よりも支払期日が長い」支払手形を使っている時点で、資金繰りに余裕がないということ。
一応、仕入れ業者(手形の振り出し先)に、期日を伸ばしてもらう(ジャンプ)ことはできなくもないですが、それが前提となって資金繰りを計算していると、ジャンプが認められなくなったら、不渡りになってしまいます。
同じく割愛した中では、流動資産と流動負債の比も見逃せないところ。
すぐ返さねばならない短期借入金や買掛金の額(流動負債)が、預貯金や買掛金(流動資産)に比べて多いと、これまた倒産の危機が出てきます。
一般的には、流動資産が流動負債の1.5倍から、できれば2倍欲しいそうなので、この辺も欠かさずチェックしなくては。
◆一方、私の本業とも関係してくるのが、上記ポイントの5番目の「退職給付引当金」です。
上記では「税務上の会計ルールでは、この引当金の計上が不要とされています」とあって、これだけ見ると「積まなくてもいいから積まない」という風に読めなくもないかと。
ところが実際には、「税務上の会計ルールでは、この引当金は損金と認められない」ため、決算書で計上しても、申告の際には自ら否認して所得を計算する必要があります。
するとどうなるかというと、ほとんどの中小企業では「退職給付引当金」を計上していないのが現状ということ。
これを「簿外負債」と言ったら、多くの中小企業の経営者は驚くと思いますけど、会社を買うのであれば、その辺も踏まえて考えなくてはなりません。
◆ただし、本書を読んで、即、会社が買えるか、というとそれはまた話は別であって、もうちょっとステップが必要かな、と。
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、著者の運営しているサロン等に入った方が、スムーズにできると思います。
ひょっとしたら、前作に手順等が、詳しく書かれているのかもしれないのですが、私は未読でして。
サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)
……今回のセールでKindle版が300円以上お得なので、こちらも良かったらご一緒に(アサマシ)。
いずれにせよ、たとえ会社を買わないにしても、会社の価値を見抜く目があれば、株式投資をする際にもプラスとなることは多いハズ。
従来の会計本を読んでも、イマイチ知識が身に付かなかったなら、読んでみる価値はあると思います。
「生きた会計の知識」が手に入る1冊!
サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編 (講談社+α新書)
序 章 だまされない数字の見方
第1章 最低限これだけは知っておきたい会計知識
第2章 「危ない会社」を見抜くには?
第3章 「儲かる会社」を見つけるには?
第5章 賢い会社の買い方
【関連記事】
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【投資】『せめて25歳で知りたかった投資の授業』三田紀房,ファイナンシャルアカデミー(2017年01月27日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか――中国インバウンド54のヒント
中国関係の著作が多い、中島 恵さんの作品。
やや中古は値下がりしていますが、送料を考えるとKindle版が400円弱お得です。
【編集後記2】
◆昨日の「講談社キャンペーン」の追加分の記事で人気だったのは、この辺でした(順不同)。あなたの生産性を上げる8つのアイディア
参考記事:【生産性?】『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』チャールズ・デュヒッグ(2018年02月05日)
あなたの人生が変わる対話術 (講談社+α文庫)
参考記事:【オススメ!】『あなたの人生が変わる対話術』泉谷閑示(2018年02月08日)
合本版 経済数学の直観的方法 マクロ経済学編/確率・統計編 (ブルーバックス)
ストレスの脳科学 予防のヒントが見えてくる
宜しければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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