【モテ?】『女の取扱説明書』姫野友美:マインドマップ的読書感想文

2019年02月18日

【モテ?】『女の取扱説明書』姫野友美

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも、注目を集めていたコミュニケーション本。

特に「男女の性差」に関する作品は、当ブログでは積極的に扱っていますので、こちらも読ませてもらいました。

アマゾンの内容紹介から。

女はなぜ男を困らせるような行動に出るのか?その原因がわかれば頭が冷静になれますし、対策も立てられます。余裕が出てくれば、彼女たちに寄り添うこともできます。心療内科医であり医学博士でもある、男女の違いを知り尽くした著者が、医学、行動学、心理学、脳科学、さらには栄養学などあらゆるツールから分析しつつ、女の困るような行動の原因と対応策を提示します。さらには、女性が周囲を困らせないためにすべきことも盛り込んだので、女性が読んでも大いに役立ちます。

現時点で中古が定価を上回っていますから、Kindle版がお買い得です！

30s couple fight / Adair733

【ポイント】

■1.女性にはアドバイスしない

　解決策は、家で奥さんの話を聞く時は、聞き役に徹すること。話を聞いてほしい、大変な思いをしたという気持ちに共感してあげることを第一に考えればいいのです。
　それなのに、奥さんの悩み事に対して「それなら、○○の詳しい人に相談してきちんと対処すればいい」とか、「そんなこと、いちいち気にかけていたら時間の無駄になる」など、決してアドバイスや説教をしてはいけません。
　男性というのは、会話に結論や結果を求めたがる仕事モードの部分が強いのですが、女性にとってはただの上から目線と受け取ってしまい、ケンカの種になってしまうからです。男性の「こうしたらいいだろう」という問題解決型の考え方は、この場合は逆効果になってしまいます。

■2.意見を求められても本当のことは言わない

　ただ、女性が服であれ靴であれ、どっちを買うか悩んでいるような状況で男性に「どっちがいいかな？」と聞く時は、女性の中ではほぼ結論は出ています。それまでに、さんざん考え尽くして、自分の中で答えが出ているからです。(中略)
　女性は自分の意見で大丈夫か安心したいだけなので、男性は意見を求められたとしても言わないでおきましょう。
　これはただの確認作業なのですから、この会話に付き合うだけでいいのです。つい真面目な人ほど、「こっちのほうがこういう理由で使えるから買うならこれ」とか「これは生地が安っぽいからお金の無駄だ」と、何か言わないといけないと思ってしまう場合が多いのですが、余計なお世話になるだけ。
　ましてや、「そんな色のスカート、家にもうあるんじゃない？」などと、買うことを否定してはいけません。
　女性のおしゃべりを聞き流すように、意見は言わないことが鉄則なのです。

■3.女性が昔の事を蒸し返して怒るワケ

女性の感情は、短期記憶をする扁桃体から、中期記憶を担当する海馬を通って、最終的には大脳皮質に蓄えられて長期記憶されます。このような流れでしっかりと記憶されるのは、女性ホルモンであるエストロゲンの働きによるといえます（エストロゲンは長期・短期の両方の記憶を高める）。
　そのため女性は、一度蓄えた感情、特に悲しみや怒りは長期間記憶されて、くだんのバケツの中へ少しずつ、でも確実にたまっていきます。そして何かをきっかけにして、一気に溢れ出すのです。
　しかも必要があれば、その記憶をよみがえらせることもできますから、かなりやっかいです。男性からすれば、こんな些細なことであんな昔のことを持ち出して怒るのはなぜ？と理解に苦しむ場面かと思いますが、女性からすれば今いきなり、爆発したわけではありません。目の前で起きたことをきっかけに、これまでたまりにたまった記憶の蓋がドーン！と開き、「同じことをまた繰り返してしまうあなた」に、怒っていたのです。

■4.装いは他人のため、おしゃれは自分のため

「家の近所のスーパーへ買い物に行くだけだから、メイクしなくてもいいのでは？　お前の顔なんか誰も見ちゃいないよ…」と夫は、妻のメイクを待ちながら思うそうです。でもそれ、男性が女性のことを思いっきり誤解しています。
　というのは、女性はおしゃれのためだけに、メイクをしているわけではないから。「装いは他人のため、おしゃれは自分のため」という言葉もあるくらいです。
　自分のために着飾るのが、おしゃれ。周りの女性陣よりも優位に立ちたい、気になる男性の目を引きたいなど、おしゃれの目的はさまざまですが、自分のためなのが根底にあります。
　一方で「他人のための装い」とは、相手に「あなたのファッションって素敵ね！」というよりも「なにそのみすぼらしい格好は…」と思われないためのもの。近所のスーパーに行くくらいでしたら、おしゃれではなく装いだけを考えています。たとえ近所のスーパーでも、髪が寝癖などでボサボサではおしゃれじゃないというよりもみっともないですし、部屋着のままでは出かけられません。

■5.夫婦の間には、医学的にも適度な距離感が必要

　また、夫婦の間に適度な距離感が必要なのは、医学的にも理にかなっています。
　人間の体には「解糖系」と「ミトコンドリア系」の2つのエネルギー産生回路があります。「解糖系」は酸素を使わずに糖を分解してエネルギーを作り出す、いわば100メートルダッシュのような無酸素運動で、主に男性が利用しています。「ミトコンドリア系」は糖、脂肪、たんぱく質を原料に、酸素を使ってエネルギーを生み出す有酸素運動の長距離型で、主に女性が利用しています。ちなみに子どもは、男女ともに「解糖系」です。
　しかし年齢とともに男性の「解糖系」の利用効率が少なくなり、中高年以降になると、酸素を用いてエネルギーを作り出す「ミトコンドリア系」へとシフトしていきます。これまではエネルギーを生み出すのに女性が酸素を利用していたのですが、夫が中高年になる頃にはあちらにも酸素が必要になるため、リビングで長い時間一緒に過ごしていると、細胞が酸欠状態になって気分だけでなく体も息苦しくなってしまうのです。だからこそ、部屋の酸素を奪い合わないためにも、3メートルの距離感が必要になってきます。

【感想】

◆男女の性差本を何冊かでも読んだことのある方にとっては、ある程度、既知の情報もあったと思います。

特に上記ポイントの1番目の「女性にアドバイスしない」というのは、かなり有名なTIPSであり、私はこの本を読んで初めて知った際には、目からウロコが落ちまくったもの。

ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール男は火星から、女は金星からやってきた (知的生きかた文庫)

参考記事:【モテ】「ベストパートナーになるために」ジョン・グレイ（2007年08月09日）

それこそ、それまで生きてきた人生において、何度過ちをおかしてきたか考えると、気が遠くなるほどでした。

また、似たような「トラップ」が上記ポイントの2番目。

「どっちがいいか」と聞かれた時くらい、フツウに答えて良さそうなものですが、それもしたらアカン、とｗ

なぜならば、「女性の中ではほぼ結論が出ている」から。

ではどうしたらいいかと言うと、ぶっちゃけ相手に訊いちゃえばいいのですが、その際ちょっとした工夫があるのが本書のミソかな、と（ネタバレ自重）。

◆この2つは本書の第1章の「コミュニケーション」からのものでしたが、上記ポイントの3番目は第2章の「感情」から。

確かに類書でも、「女性が昔のことを蒸し返す」という指摘はあったものの、このような医学的なアプローチをしている作品は、当ブログでは珍しいかもしれません。

さすが本書の著者である姫野さんは、医学博士でいらっしゃるだけにひと味違いますね。

……そう言えば、上記の本の著者であるジョン・グレイは心理学者ですし、当ブログにおける男女の性差本の著者として、レビュー回数が最も多い黒川伊保子さんは、AIや人工知能の研究者であって、お医者さんではないわけで。

また「医学的」という意味では、第5章から抜き出した上記ポイントの5番目も同様です。

このお話自体は、私自身、初めて知りましたが、難しい理屈はさておき、夫婦も年を取ったら、ある程度の距離感があった方がうまくいくのかもしれません。

◆なお、本書は各項目ごとのおしまいに、「女の正体」と題して、そのテーマのまとめが箇条書きにされています（しかも太字の拡大文字で）。

さらには、それに続き、男女別のアドバイスも掲載されており、特に男性の方におかれましては、ここの「男がすべき正しい行動」を肝に銘じていただければ、と。

また、女性の方に向けた「男を困らせないために、女がしたい行動」では、それぞれの問題点を踏まえて、女性の歩み寄り方をもアドバイスしてくれています。

奥さんはもちろん、職場の女性陣の「不可解な行動」に悩まれる方なら、一読の価値はあるはず。

男女の性差問題に、積極的にアプローチした1冊です！