2019年02月07日
【知的生産】『人をつくる読書術』佐藤 優
人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番人気だった読書術本。おなじみ佐藤 優さんが、読書をテーマに語り尽くしてくださっています。
アマゾンの内容紹介から。
読書は人生においてどのような役割を果たすのか。本を血肉にするにはどのような読み方をすればいいのか。なぜ読書は人生を豊かにしてくれるのか――。
作家、元外交官、教育者、神学者などさまざまな面をもつ著者がはじめて明かす、「読書の哲学」。
若干とはいえKindle版がお得ですから、私はそちらで読了しました!
reading / kelly bell photography
【ポイント】
■1.「三つの読み方」を使い分ける●精読・熟読「精読・熟読」は一字一句、意味をしっかり追いながらじっくり読みます。私の場合は自分の基礎知識や専門知識をつけるための専門書や学術書、書評をするための本、あるいは半年から1年後の仕事に直結する本は精読します。●速読「精読・熟読」を体得すると本の読み方の基礎ができるので、「速読」もできるようになります。この場合の速読は30分くらいで1冊の本を読むやり方です。その後30分ほどかけて読書ノートを作成します。●超速読これに対して、「超速読」は 1 冊を 5 分くらいで読むやり方です。普通の速読は 1 行ずつ目で追いますが、こちらはページ全体をざっと眺めて大事なポイントだけ押さえます。(詳細は本書を)
■2.聖書は西洋の歴史や文化への入り口
先生はさらに聖書の大切さを強調しました。
「結局のところ、ニーチェのようなニヒリズムが誕生したのは、西欧社会の歴史にとって原点といえる思想や宗教があったからこそ。キリスト教が何かを知らなければ、ニーチェの本質も本当の価値もわからないのです」
さらにいえば、西洋哲学も絵画や音楽、文学といった西洋芸術全般も、その基礎にはキリスト教がある。近代の知性や感性を身につけるには、キリスト教を知り、学ぶことが大前提だと先生はいいました。(中略)
本には読む順番があるし、触れるべき知性には順番がある。一番いいのは人類の歴史の流れにそって、それぞれの時代に生まれた思想や哲学、芸術に触れること。ギリシャの古典から始まって、ローマやビザンチンの帝国時代を抜け、三十年戦争を経て1648年、ウェストファリア条約で現在の国民国家が誕生し、近代が始まる。そこからイギリスやフランスの革命や産業革命により、現代社会へと移行する。
その流れにそって各時代の知性に触れていけば間違いはないでしょう。
■3.高校までは丸暗記でOK
結論から先にいうと、私の教育の基本姿勢は戦前の旧制中学・高校の教養主義的なスタンスに近いといえます。具体的なポイントは2つ。1つは幅広い領域での基礎的な知識と教養を身につけること。2つ目は中学、高校までは暗記を中心に徹底的に知識量を増やすことです。(中略)
戦前の教育は、高校まではとにかく幅広い知識を暗記し吸収すること(受動的知識) に力点を置きました。その後、大学に入ってからは蓄積された豊富な知識を下敷きに、それぞれの専門分野で論文作成や演習といった応用(能動的知識) を訓練するのです。
残念ながら、いまの教育現場を見ると、受動的知識、能動的知識の2つとも中途半端になってしまっています。(中略)
自分自身の体験から、高校生までは丸暗記を基本にして受動的知識を最大化し、徹底的に知識を吸収することが一番だと考えています。ある一定の量を超えると、知識は量から質への転換が行われます。受動的知識の積み重ねのないところに創造的知性は生まれないというのが私の考えです。
■4.哲学とは思考の「鋳型」である
思考にはそれぞれ「鋳型」があり、哲学史を学ぶことで、その鋳型にどんなものがあるのかを知ることができる。誰かと議論したとき、何か世界で問題が起きているとき、いったいどういう考え方とどういう考え方の違いがぶつかり合って問題が起きているのか、思考の鋳型を知っていればその本質が見えてくるのです。
たとえば、中国と米国がぶつかり合う根源的な差異はどこにあるか? ISがどんな思想をもち、何を意図しているのか? 北朝鮮の強硬姿勢と突然の融和政策はなぜそのような展開になったのか?
国際情勢の動きも、思考の鋳型を通して見ればそのカラクリや原因が見えてくるようになります。また個人的な人間関係においても、相手の考え方の基礎にどんな思想的な背景があるのか、価値基準はどこから由来しているのかがわかれば、相手をより理解し判断できるようになります。
■5.「通俗本」は専門書に挑む前の重要なステップ
まず、間違った読書の1つとして、いきなり専門的で難しい本を読み、理解できないままに時間を浪費してしまうことがあります。物事には順序があります。読書でも、まずその分野の入門書に当たることです。
入門書としておすすめするのが通俗本です。通俗本というと何か言葉は悪いのですが、実際は非常に重要なジャンルだと考えています。通俗本とは専門家が一般の人たちにその知識を広めるべく、やさしく平易な言葉で解説したもの。通俗本の古典というと、イギリスの科学者で物理学者でもあったマイケル・ファラデーの『ロウソクの科学』が有名です。(中略)
難しいことを平易に、かつ面白く読ませるには大変な労力が必要です。本当に専門分野について理解していて、なおかつ幅広い知識と教養がなければ、やさしく人に教えたり伝えたりすることはできません。そういう意味で、私は通俗本こそ知識と知恵の結晶化されたものだと考えています。
【感想】
◆本書は一応、タイトルに「読書『術』」とありますが、一般的な「読書術本」とは異なった内容でした。ザックリ言うと「どうやって」という「ハウツー」よりも、「何を」「何のために」という「対象」や「目的」が中心と言いますか。
実際、下記目次にもあるように、各章ごとに、「人」としての「テーマ」が掲げられ、そのテーマごとの「本」との関わり合いが中心となっています。
そして各章末には、その章で登場した書籍の一覧が掲載という仕様。
また、「読む」だけでなく「書く」事に関しても結構なページが割かれており、「知的生産術本」と呼んでもいいくらいでした。
◆特に第1章は「テーマ」が「作家」ですから、それも当然の事かと。
外交官の文章の書き方から、表現力の鍛え方、表現すべきことを見つける方法等、作家に憧れる方にとっては、付箋をつけまくること必至でしょう(私はKindleなのでハイライトですが)。
特に、表現するというのは「対象化」すること、というクダリは目からウロコ。
対象化するとは、物事に対して一定の距離を置いて客観視することと同じです。書きたいことがないとか、何をどう書けばいいかわからないという人は、この対象化ができていないことが多いです。上記では割愛してしまいましたが、この部分はぜひ本書でご確認いただきたいところ。
一方上記ポイントの1番目も、この第1章からなのですが、ここだけ読むと、読書術本らしさ満開です。
ただし、この内容は、以前佐藤さんが書かれたこの本に詳しいのだとか。
読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門
たまたま私はこの本を読んでいなかったので、思いっきり引用してしまいましたが、読了済みの方はご留意ください。
◆また、佐藤さんを語る上で、避けては通れないのが聖書の存在です。
本書の第3章「人間をつくる本の読み方」では、上記ポイントの2番目にあるように、熟の先生によってその重要性を再認識された模様。
もちろん類書でも、西洋の人と接するのであれば、「聖書」は半ば「常識」である旨、言われていますから、ここは腑に落ちる方も多いと思います。
さらに本書の第4章「教育者をつくる本の読み方」では、教育論も展開。
上記ポイントの3番目で指摘しているように、佐藤さんは「知識は量から質への転換が行われる」とお考えです。
それがゆえ、幼少期から本に接するのも大事ということから、子どもに対する読み聞かせも大事、とのこと。
ただし「読書の押しつけ」は効果がない、と言われているのですが、私もそう思って、私もムスコに読書を強いなかったところ、今頃になって読解力のなさに悩まされているという(涙目)。
……やはり、本を読まない子は本当に読まないので、ある程度は押しつけた方がいいんじゃないでしょうかね?
◆そして佐藤さんといえば、忘れてはならないのが「哲学」に関する造詣の深さ。
上記ポイントの4番目にあるように、思考する上でも「哲学」の素養は重要なようです。
当ブログでは、私自身が理解しきれないものはレビューできませんし、レビューできない本はどうしても後回しになる以上、私にとって「哲学」は鬼門なのですが、機会があれば本書で推奨されている哲学本を読んでみなくては。
また、上記ポイントの5番目の「通俗本」という位置づけの本は、私自身知りませんでした。
ここで紹介されている『ロウソクの科学』のほか、これらの本も「通俗本」なのだそうです。
科学と仮説 (岩波文庫)
ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)
……下の『ソロモンの指輪』は、以前のセールで買って積読状態だったので、今度読む!!
佐藤 優さんの「人となり」が理解できる1冊でした!
人をつくる読書術 (青春新書インテリジェンス)
第1章 作家をつくる本の読み方
第2章 外交官をつくる本の読み方
第3章 人間をつくる本の読み方
第4章 教育者をつくる本の読み方
第5章 教養人をつくる本の読み方
第6章 キリスト教者をつくる本の読み方
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【読書術】『「読む」技術〜速読・精読・味読の力をつける〜』石黒 圭(2017年04月14日)
【編集後記】
◆日数が足りなくてランキング記事は書けなかったのですが、本日で終了となる「SB新書フェア」のランキングをここでご紹介しておきます。第10位
人はなぜ不倫をするのか (SB新書)
第9位
アンジャッシュ渡部の 大人のための「いい店」選び方の極意 (SB新書)
参考記事:【食事ハック】『アンジャッシュ渡部の 大人のための「いい店」選び方の極意』渡部 建(2018年08月27日)
第8位
「やわらかい血管」で病気にならない 血管博士が教える体の中からよみがえる方法 (SB新書)
第7位
一気に同時読み!世界史までわかる日本史 (SB新書)
第6位
日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)
参考記事:【行動遺伝学】『日本人の9割が知らない遺伝の真実』安藤寿康(2018年02月10日)
第5位
「3時間切り請負人」が教える! マラソン<目標タイム必達>の極意 (SB新書)
第4位
普通の会社員が一生安心して過ごすためのお金の増やし方 (SB新書)
参考記事:【5選】『普通の会社員が一生安心して過ごすためのお金の増やし方』に学ぶ、避けるべき投資5選(2017年12月21日)
第3位
驚くほど耳がよくなる!たった10秒の「耳トレ」 (SB新書)
参考記事:【難聴?】『驚くほど耳がよくなる! たった10秒の「耳トレ」』今野清志(2018年05月17日)
第2位
実はおもしろい経営戦略の話 (SB新書)
参考記事:【経営戦略】『実はおもしろい経営戦略の話』野田 稔(2017年06月09日)
第1位
集中力はいらない (SB新書)
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