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2019年01月18日

【思考術】『右脳思考』内田和成


右脳思考
右脳思考


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先月末の「未読本・気になる本」の記事にて注目していた1冊。

すでに土井英司さんがメルマガで推奨されていたので、ご存じの方も多いと思いますが、私もやっと読了した次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書で伝えたいのは、ロジカルシンキングの否定ではない。ロジックに加え、感情や勘、すなわち右脳を働かせることで仕事をより効率的に進める、あるいは、成果をあげられるということだ。
「勘や感覚よりもロジックが大事」というのはビジネスの常識。
勘・感覚は右脳的、ロジックは左脳的。ビジネスは左脳重視の世界だ。
本書はこの常識に挑戦する。ロジックの権化と言われる戦略コンサルティングファームのトップを務めた著者は「右脳も大事」と説く。コンサルタント時代から右脳重視派だった著者が右脳・左脳の使い分け方、使うタイミングを解説する。 生産性と創造性が劇的に上がる1冊。

なお、滅多にセールをやらない東洋経済さんの作品が、多少なりとも単行本より値引されていたので、当然私はKindle版を読みました!




20190119追記

◆今回の作品の発売を記念してか、内田先生の思考術本三部作のうち、過去2冊のKindle本が「50%OFF」のセール価格で登場しています。

どちらも中古がそれなりに高いため、Kindle版の方がお得なのですが。

仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法
仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法

論点思考
論点思考

さらにはその合本版も。

内田和成 思考力大全【合本版】
内田和成 思考力大全【合本版】

未読の方はこの機会にぜひ!



Exercise Plays Vital Role Maintaining Brain Health / A Health Blog


【ポイント】

■1.感情と理屈を因数分解する
 相手を説得し動いてもらうためには、相手が何を考え、どう感じているのかをきちんと理解することがカギとなる。ここではそれを感情と理屈の因数分解と呼んでおく。
 大事なことは相手がこちらの言っていることや提案に対して、感情ではどう思っているのか、さらに理屈、すなわちロジックではどうなのかを両面で理解することである。感情でも反対であり、理屈でも反対の場合、逆に感情では反対だが理屈では賛成の場合、感情では賛成だが理屈がついていっていない場合など、さまざま考えられる。
 たとえば、先に紹介した「どうしてこんな重要な会議に内田がいないのだ」と発言して、営業改革に反対した営業責任者を因数分解してみよう。自分を外したところで決めて「気に入らない」という感情、そして、いままでとまるで違う営業スタイルはうまくいかないという理屈、つまり、反対するために思いついたようなロジックをもっていたはずだ。感情の部分が反対の理由の大きな部分を占め、理屈の部分は小さい。理屈は感情から生まれたものでもあろうから複合している部分もある。こうした場合は、まず感情の部分にアプローチするのが、解決への第一歩になる。


■2.会議・議論のマネジメントの4つのステップ
ステップ(1) 左脳で(論理的に) 文字通りに何を言っているか理解する
ステップ (2) 右脳(直感) で発言の「真の意図」をつかむ
ステップ (3) 右脳(直感) で何をどのように答えればよいか理解する
ステップ (4) 左脳で(論理的に) どのように伝えればよいかを考える
 ただし、それぞれのステップに時間をかけてはダメだ。相手の発言が終わる頃までにステップ(3)まで進んでいるのが理想だ。そのためには、日頃からこうした思考法を実践してみて、引き出しを増やしておくことが大切となる。
 もうおわかりだと思うが、先に出した、酒を飲み歩いて遅く帰ってきた場合の奥さんの「いま何時だと思っているの?」に対する対応はこのプロセスで考えないと、痛い目に遭う。
 私であれば、(2)のステップで相当怒っているな、したがって、(3)のステップで理屈を述べてはいけない、とにかくひたすら謝ろうと決める。そして(4)で、「ごめんなさい。もう二度としません」、あるいは「ごめんなさい。今度遅くなるときは必ず前もって連絡します」と答える。


■3.右脳の考えを左脳で理論武装する
 簡単に言えば、アイデアを事業化するとは、右脳で考えた思いつきを、左脳を使って理論武装するプロセスと言っても差し支えない。
 もちろん、発想段階から理論的に見ても、間違いのない事業計画や商品開発のアイデアが生まれれば言うことはない。ところが、すでにこれだけモノやサービスがあふれかえっている中で、アイデアがそのまま事業化できるケースは稀である。一方で、市場のすき間やこれまでに世の中にまったくない市場を分析や理屈から探し出すのも不可能に近い。
 そこで、実際にはひらめきや思いつきから出発したアイデアやイメージを、どうやってロジカルシンキングの観点からも通用するものに変身させていくかがカギとなる。逆に言えば、どんなに優れたアイデアやイメージでも、理論的に検証できなければ通用しない、あるいは、成功しないと言うことができる。


■4.不確実なロジックを補うストーリーをつくる
 たとえば、「10億円を捨てたつもりで投資して、ネットベンチャーの人材を教育すればいい。これからはネットに精通した人材が必要だ。元々ネットのことがわかっている人材を育てれば必ず会社に貢献してくれるはずだ」というストーリーを語り、10億円を教育費と捉えることでうまくいくケースもあるだろう。
 あるいは「ネットビジネスはどういうものがヒットするかわからない。ベンチャーは10社買って1、2社当たればよいほうなのだから、たとえば100億円と投資総額を決め、その中でやりくりしてさまざまなタイプのベンチャーを買ったらどうか」と説得を試みれば、「ネット事業なんてそんなものなのか」と納得してもらえたかもしれない。
 そうしたストーリーをつくらず、「このベンチャー企業は10億円出して買うに値するのに、どうして買わないのか」という理屈だけで攻めても、経営陣のほうは「いくら買い得だと言われても、そのベンチャーをわざわざ買う理由が見当たらない」という姿勢を崩さないだろう。その結果、経営陣の説得は失敗に終わる。


■5.人を動かす4つの要素
 人がアイデアや戦略を理解し「腹落ち」した上で実行に移す、あるいは上司が提案・企画を十分に理解・納得した上で「会議」で通すためには、次の4つの要素が必要となる。論理性、ストーリー、ワクワク・どきどき、自信・安心を与えるの4点である。論理性を除く3つは相手の右脳に訴えるものだ。
(1)論理性
 聞いている者が、なるほど正しい、あるいは間違いがないと思うこと。
(2)ストーリー 
 単に論理的な整合性があるだけでなく、全体がひとつのストーリーになっていること。(中略)
(3)ワクワク・どきどき
 加えて、楽しそうだからやってみたいとか、よくわからないけれど面白そうという印象を与えられればなおよい。
(4)自信・安心を与える
 いままでと異なることをやるのであれば、それは難しい話ではないとか、御社あるいは自社にもできると思わせる。


【感想】

◆タイトルから考えていた内容とは、少々異なっていた1冊でした。

と言いますか、当初私が予想していたのは、「ロジカルシンキング」と対になる概念である「ラテラルシンキング」。

いわゆる「水平思考」と言われるジャンルの、たとえばこの本に近い内容ではないか、思っていたわけでして。

決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば (P-Vine Books)
決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば (P-Vine Books)

参考記事:【アイデア】『ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か?』横井軍平

……今久しぶりにアマゾンのページを見たら、絶版のせいか、中古に6000円以上のお値段が付いていてビックリの巻。

ところが本書はこうした「アイデア」の要素を包括した、さらに広範囲なものとなっています。


◆まず本書の冒頭にある「はじめに」にて、「右脳思考」の「右脳」とそれと対になる「左脳」について、このような定義が。
 本書では、感覚・感情、直感、勘など、論理(ロジック) では説明できないひらめき・思いつき・考えを総称して右脳とする。
 それに対して、左脳とはロジック(論理) そのもの、あるいはロジックで説明できるものを指すことにする。
実際今までの仕事術系の本では、そのほとんどが「左脳」的な内容でした。

しかし内田さんいわく、「ロジックだけでなく感情や勘、すなわち右脳を働かせることで仕事をより効率的に進めたり、成果をあげることができる」とのこと。

たとえば上記ポイントの1番目にあるように、相手を説得し動いてもらうためには、相手の「感情」と「理屈」の双方を理解する必要があります。

これをしないで、単に理詰めで「何でこんなことも分からないのか」と憤慨してしまっては、まとまる話もまとまりません。


◆これを具体的なTIPSに落とし込んでいるのが、上記ポイントの2番目。

ここのステップの中身を見ていただければお分かりのように、左脳と右脳を交代して活用しており、相手の「理」と「情」を理解し、働きかけるわけです。

上記ポイントでは、深夜帰宅で奥さんに怒られた例が挙げられていますが、本書では会議等において、上司や反対する人に対するアプローチの仕方を指南していますのでご安心を。

結局、簡単に言ってしまえば、「右脳」でインプットし、「左脳」で検討・分析。

その結果を再度「右脳」でアウトプットする、といったところでしょうか。


◆また、新規事業やアイデアを考える場合でも、「右脳」と「左脳」のコンビネーションは重要です。

それについて触れたのが、上記ポイントの3番目。

「思いつき」(「右脳」)のアイデアを実際にビジネスとするには、「左脳」の理屈付けが必要となってきます。

そして、完成したロジックを関係者に納得させるには、上記ポイントの4番目にあるように、再度「右脳」の働きを用いるわけで。

このポイントの4番目の「10億円の投資」の話は、土井さんのメルマガでも紹介されていましたが、当時の内田さんたちは、クライアントに「10億円の投資」を行うよう説得できませんでした。

しかし、その時この「右脳思考」を用いていたら、結果は違ったのではないか、と。

ちなみに土井さんも触れていたように、このネットベンチャーはその後3000億円のIT企業に成長したそうで、逃した魚はあまりにも大きかったようです。


◆なお、上記ポイントでは、ボリュームの関係で抜き出せませんでしたが、本書には理解を深めるべく、かなりの量の事例が収録されています。

もちろん内田さんがBCGで手掛けたものは、守秘義務の関係で具体的な社名は出てこない(上記のネットベンチャー含めて)ものの、一般的なお話(おむつ事業に進出したユニ・チャームや、ハウステンボスのHIS等)なら大丈夫。

そもそも「ロジカルシンキング」自体が完璧とは言えない私ですが、より高い成果を挙げるためには、「左脳」だけでは十分ではないことも分かりました。

仕事柄、さすがに新規事業を考えることはないものの、クライアントを説得するのに、「右脳思考」を用いてみたいと思います。


「左脳」&「右脳」のコンビネーションを鍛えるために読むべし!

右脳思考
右脳思考
第1章 右脳を使うことが重要な理由
第2章右脳の使い方
第3章右脳で考え、左脳でロジカルチェック
第4章左脳で考えたロジックフローを右脳で肉づけ
第5章右脳「力」を鍛える
第6章ロジカルシンキングより直感を信じてみよう


【関連記事】

【コンサル的知的生産術】「スパークする思考 右脳発想の独創力」内田和成(2008年11月19日)

【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)

【アイデア】『ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か?』横井軍平(2012年10月09日)

【ラテラル?】『ずるさで勝る水平思考トレーニング』木村尚義(2014年03月16日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

心と体の不調を解消するアレクサンダー・テクニーク入門
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「アレクサンダー・テクニーク」については、今までも書籍を見かけていたのですが、演劇や音楽をされる方向けの作品ばかりだったので、取り上げにかった記憶が。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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