2018年12月30日
【オススメ】『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』田中修治
破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (幻冬舎文庫)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「冬の幻冬舎セール」からの人気本。土井英司さんが、メルマガで「これは傑作」と評した、企業再生ネタのアツい1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
2008年2月。小さなデザイン会社を経営している田中修治(30歳)は、ひとつの賭けに打って出る。それは、誰もが倒産すると言い切ったメガネチェーン店「オンデーズ」の買収―。新社長として会社を生まれ変わらせ、世界進出を目指すという壮大な野望に燃えていたが、社長就任からわずか3か月目にして銀行から「死刑宣告」を突き付けられる。しかしこれは、この先降りかかる試練の序章に過ぎなかった…。
Kindle版が元々定価の「33%OFF」ですから、それに「49%OFF」もプラスされた結果、Kindle版が1000円弱、お得な計算です!
My glasses / Imagaday
【ポイント】
■1.「あと1本多く売る」ことで解決する「そう。簡単に言うと今のオンデーズの一店舗あたりの1日の売上は平均9万円。そして客単価が約1万円だから、客数にすると9人だな。営業時間はどこのお店もだいたい12時間だから、平均すると1時間に1人も売っていない計算になる。だから、昨年の今日と比べて1時間あたり、スタッフの皆んなが『あと1本売ろう!』って頑張って、実際にその通りになればオンデーズの年商は約2倍の40億円になる」(中略)
「そう。それに、今よりもあと1本多く売るだけなら特別に人員を増やしたり、何か大掛かりな設備投資なんかをしなくても十分に対応できるはずだ。そしてそれを全部の店舗で、全員のスタッフが本当に実行に移してくれれば、1年が終わる頃にはオンデーズの売上は倍の40億円になっている。そうすれば借り入れ金の返済、新しい商品の開発、お店の改装、給与のアップが、簡単に全部 賄える。いっちょ上がりだ。だからとにかく今は、1人でも多くの社員と直接話をして、お客様にあともう1本、多く買ってもらえるように一生懸命セールスすることで、どれだけ自分たちにとって多くのメリットがもたらされるかを理解してもらう必要があるというわけだ」
■2.絶対にコケられなかった新店舗の敗因
「うーーん、なんか、お洒落過ぎて気後れしたんですよね」
僕は後頭部をバットで殴られたような思いだった。僕自身が最もこだわった「お洒落さ」が、逆にハードルを高くしてしまっていたというのか。
「それに、狭いから気まずい感じもするよね。入ったら最後、何か買わないと出られないような圧迫感が凄いある」
この言葉も、僕を激しく打ちのめした。そう言われてみれば、出入り口が1ヶ所しかないため、店の中は袋小路状態だ。(中略)
「あと、だいたい今日は特に何も買うつもりはなかったんで」
最大の勘違いはここだった。大事なのは、店前の通行量よりも、店の前を歩く人たちの「ショッピングモチベーション」なのだ。つまりどれだけ沢山の人が店の前を歩いていようが、買い物をするつもりで歩いていない人たちに財布を開いてもらい、お金を出してもらうには、とてつもなく高いハードルがあったのだ。
■3.「薄型レンズの追加料金0円」の衝撃
「オンデーズは経営再建中の身で銀行借り入れもできなければ内部留保だって一切ない。とてもじゃないけど、ジェイムズと同じ土俵に上がって戦うような体力は、ハッキリ言って今のオンデーズには一ミリもないですよ」
奥野さんもまた、観念したように腕を組みながら、天井を見上げた。
「そういう意味ではこのジェイムズの戦略は、敵ながら見事としか言いようがありませんね。目の前で『OWNDAYS』がオープンして半額セールで行列を作っていても、彼らは安売りで被せてくることは一切しなかった。そのあまりの静けさに私は不気味さを感じていたほどでした。そして満を持して打ち出してきたのが、この薄型レンズの追加料金0円。これができるのは売上規模と、優れた財務内容、そして過去の成功体験を全て捨てることのできる決断力、この全てを兼ね備えた企業のみです。さすがはジェイムズですね……他のメガネチェーンとはひと味もふた味も違う、群を抜いていると認めざるを得ません」
■4.安売りではない本当に価値のある商売を目指す
「良いものだから原価が高い。だから高いものを高い金額で買ってもらえば良いって、そんなの当たり前じゃないですか? そんなレベルの低い仕事でいいのなら子供だって誰だってできますよ。そうじゃなくて『なんでこんな良い商品が、こんな金額で買えるんだ?』そうやって、消費者を驚かすことができて、初めてプロの仕事と言えるんだと思うんです。僕らがやりたいのは、そういう『単なる安売り』じゃなくて『本当に価値のある商売』がやりたいんです!」
僕のこの一言が癇に障ったのか、プライドに火を付けられたのか、中畑社長は語気を荒らげて言った。
「わかりましたよ! 作りますよ! やりますよ! こっちだってプロだ、私はアナタが子供の頃からメガネを作ってきてるんだ。そんな言われ方までされたら頭にくる。いいですよ。田中さんの言う通り1500円で作ってみましょう! もう一度製造工程を全て見直して、限界まで無駄を省けば、できる余地はまだあるかもしれない」
■5.窮地に登場した有名上場企業の社長の言葉
「わかった。とりあえず3億すぐに用意してやる。それを当座の資金繰りに使い、お前はさっさとウチの人間に引き継ぎをしてオンデーズから出て行け。あとは全部こっちでやってやるから。それでオンデーズは助かるし、お前個人につけられている融資の連帯保証も全部とってやる。社員の生活も全員守られるし、それで何も文句はないだろう。ウチの資金でバランスシートを綺麗にして、ここから先の再生はやってやる。それに万が一上手くいかないようなら、同業他社に売却しても投資した金額くらいは簡単に回収できるだろう。ハハハ。お互いにとって良い話じゃないか」
この社長は、さも上から「助けてやるんだから有難く思え」と言わんばかりの傲慢な態度と不遜な顔つきで、僕を見下すように言った。
更に、こちらの窮状を見透かしきったような、高飛車な物言いをした挙句に「上手く再生できなければ、どこか他へ転売して儲ける」とまで言い放った。
僕は悔しさと腹立たしさで血が滲むほど奥歯を嚙み締めた。
【感想】
◆引用部分が長くなってすいません。物語形式だと、どうしても普通のビジネス書よりも、引用多めなのがデフォルトといいますか。
ビジネス書のように「まとめ」的なパートは当然ないですから、すべて本書の中で私個人がハイライトを引いた部分を抜き出しています。
もっとも、私のハイライトとは別に、本書で一番登場するのは、資金繰りに苦心するシーン。
「資金ショート」の意味で使われている「ショート」をKindleで検索かけたところ、58か所(!?)もありました。
モノが売れなかったり、ライバルに叩きのめされたり、妨害されたりする「ピンチ」に遭遇するならまだしも、作品における「ピンチ」のほとんどが「資金ショート」というのは、ヒットしている作品としてはかなり異質な気が。
◆それというのも、そもそも主人公である著者の田中さんが、「年間売上が20億円なのに、短期借入金が14億円」もある会社、オンデーズを個人で買収して、社長となったから。
しかも、この時点で毎月の営業赤字が2000万円近く出ていたのだそうです。
要は、既に資金ショートの危険が十二分にあったワケで、これがビジネス書だったら、「手を出さない」というのが正解になるハズ。
ところが田中さんは、「火中の栗」であるオンデーズを拾うことを決心し、「金融のプロ」である奥野さんとともに、会社の改革に乗り出していきます。
◆そして、この奥野さんが繰り出す「資金繰りのワザ」が本書の読みどころの1つ。
おそらく、資金繰りに苦労した方なら、「あるある」とか「その手があったか!」と思われることウケアイです。
……一応奥野さんご自身はこのように言われてらっしゃいますが。
「絶対に復活する❗」の強い決意が無いなら、税金や社会保険料を安易に繰延べすることは積極的に肯定しない。不特定多数の人に迷惑かけなさんな👉「ゾンビ企業の延命」にはネガティブ。#OWNDAYS は「ゾンビみたいな」だけで、死んではいなかった。そこんとこヨロシクです(゜o゜) #破天荒フェニックス
— ヨシオクノ🌤️奥野良孝 (@YoshitakaOkuno) 2018年12月21日
また、こういった資金繰りの知識がない方でも、とにかく「●月●日までに、●円用意できないと会社倒産」というピンチの連続が立て続けに襲ってくるので、休まる暇もないかと。
「一難去ってまた一難」を地で行く展開に、読者の多くが引きこまれたのは、容易に理解できます。
とうとう上記ポイントの5番目では、資金繰りに窮した田中さんが、すべてを手放して会社を去るよう促されるのですが(詳細は本書を)。
◆もちろん資金繰り以外にも、さまざまなピンチがオンデーズを襲います。
上記ポイントの2番目では、田中さんが自分の理想を追求した会心の新店舗が大失敗。
同じくポイントの3番目では、ライバル会社である「ジェイムズ」に、オプションであり、かつ利益の源泉でもある「薄型レンズの追加料金」をゼロという手を打たれてしまいます。
……この「ジェイムズ」というのは、おそらく「JINS」のことであり、この「薄型レンズの追加料金0円」というのは、すっかり忘れてましたがこの本でも触れられていましたね。
振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦
参考記事:【フルスイング!?】『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』田中 仁(2014年05月18日)
この「ジェイムズ」の施策に対して、オンデーズはどう対抗したのか……については本書にてご確認を。
◆一方「資金繰り」という「守り」の話だけでなく、「攻め」の話も見逃せません。
上記ポイントの4番目に登場する「中畑社長」の作るフレームは、デザイン性に富み、チェーン店には向かない尖ったものでした。
しかし田中さんは、そのデザイン性に惚れ込み、オンデーズで新商品として全面展開することを決意。
確かに今のオンデーズにも、この時の商品がちらほらありますね。
メガネのオンデーズ (眼鏡・めがね)
さらには、資金繰りがままならない状態で、オンデーズの海外展開を試みるのですが、ここからの展開は本書の数少ない(?)爽快な部分なので、お見逃しなく!
◆とにかく本書は、ビジネス小説とは思えないくらい(?)、さまざまなエンターテインメント要素が盛り込まれています。
涙あり、笑いあり、怒りあり。
「裏切り」もあれば、死別という「別れ」もあります(ネタバレ自重)。
Twitterで検索をかけると、アツい感想が多いのも、「脳ミソ」というより「ココロ」に響く内容だからではないか、と。
#破天荒フェニックス - Twitter検索
「どこ」とは言えませんが、私も読んで、一か所涙してしまいました(恥)。
特定の銀行だけ正式名称だったり、あとがきで「1つのフィクション、パラレルワールドの物語」と建前上言われているように、多少盛ったり加工してはいるのでしょうけど、これはもう「ビジネスエンタメ小説」として完成度が高いと言わざるをえません。
年末年始に、この感動をぜひ!
破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)
第1話 トラックのハンドルを握るのは誰だ!?
第2話 新社長は救世主なるか?
第3話 目指すはメガネ界の「ZARA」
第4話 突きつけられた「死刑宣告」
第5話 全国店舗視察ツアー
第6話 スローガンに不満爆発
第7話 「利益は百難隠す」を信じて
第8話 絶対にコケられない新店舗
第9話 血みどろの買収劇
第10話 悪意は悪意をよぶ
第11話 裏切り者はアイツだ!
第12話 遅過ぎた決断の果てに
他
【関連記事】
【フルスイング!?】『振り切る勇気 メガネを変えるJINSの挑戦』田中 仁(2014年05月18日)【働き方】『無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える!』加藤 崇(2016年03月18日)
【実践的!】『つぶれない会社に変わる! 社長のお金の残し方』吉澤 大(2012年04月15日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。英語なんて これだけ聴けて これだけ言えれば 世界はどこでも旅できる
何度かセール対象となった事のあるこの本は、送料を考えるとギリギリでKindle版がお得。
交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史
当ブログ初登場となるこの本は、中古が定価以上のお値段のため、Kindle版が1500円弱お買い得です。
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「企業経営」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
10月10日まで
9月26日までのところ一部値引に移行して延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです