2018年12月27日
【読書術】『精神科医が教える 良質読書』名越康文
精神科医が教える 良質読書
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番人気だった読書術本。多読派の自分としては、バッサリ否定されたり、ハイライトしたい部分がなかったらどうしようかと思ったのですが、なかなかどうして興味深い内容でした。
アマゾンの内容紹介から。
読み方を少し変えるだけで、聞く力、伝える力、考える力、教養が同時に手に入る!30歳まで読書をしなかった精神科医が教える、本当に成長できる読書術。
若干お得なKindle版のご用意もありますから、ご検討くださいませ!
Reading / PlusLexia.com
【ポイント】
■1.集中力がなくてもできる「三角読み」読書術散漫力を生かした読書を、さらに進化させた読書術が「三角読み読書術」です。
食事では、「ごはん・おかず・味噌汁」の三角食べが理想的だと、幼い頃よく言われたものです。私の読書は、「読む・考える・書く(ツイート)」の三角読み です。(中略)
本を読んでいても原稿を書いていても、けっこう途中でツイートをします。本を読んでいて思いついたことは、ある程度の深度以上のことは覚えておけません。だからツイートとして書き込むという、私にとってツイッターはメモ帳です。
ツイッターに考えを書くことで、いったん頭を真っ白な状態、ニュートラルな状態にしてから、もう一度本を読んだり、原稿を書いたりしています。(中略)
このように、「読む・考える・書く(ツイート)」を繰り返すことで、読書を長続きさせているのです。集中力ゼロでも続けられる読書術、というわけです。
■2.読書は本能でする
どうも人間は、窮地になると自分が求めている、自分の体に必要なものが本能的にわかることがあるようです。
疲れ切った時にはちみつをなめたいと思ったり、肉が食べたくなったり、逆に無性に野菜が食べたくなったり。あるいは温かいものが食べたいなど、今の自分に足りていない栄養を補おうという、頭ではなく体から湧き上がってくる本能的な欲求があるのです。
読書も同じだと私は思っています。
たとえば、仕事に悩んでいる、人間関係に悩んでいる、親子関係に悩んでいる。誰かからアドバイスがほしい。けど、誰も教えてくれない。このように、自分が「飢えている」ポイントがあるとします。飢えのある状態で読書をすると、その「飢え」を満たす言葉を、脳(心)が感覚や直観を研ぎ澄ませて勝手に探し始めるのです。(中略)
今の自分に必要なことが読書で解決できた、という経験がある方も多いと思います。それは偶然でもなんでもなく、体が足りない「栄養」を自覚しているので、それを補おうといういわば自然の現象なのです。
■3.言葉の意外な使われ方を見逃さない
たとえば、「ヒエラルキー」という言葉が、本来は使われないような文脈で現れたとき、「ヒエラルキーってこんな使い方もあるんだ」とハッとさせられる。
「自分の考えている問題も、この『ヒエラルキー』を当てはめて考えたら解けるんじゃないか」というように、意外な言葉の使われ方によって、発想がポーンと飛ぶ。
私の場合、ひらめきの9割は長い文脈からではなく、ある言葉が従来とは異なる使われ方をされているのを見つけたときにやってきます。ある言葉が思ってもみなかった使われ方をされていると想像力が刺激され、ひらめきが生まれるのです。
「この言葉をこういう文脈で使うんだ! 普通、この文脈でこの言葉を使うか!?」
というように、常に関心を払いながら読む。
このようなとき、著者は一般の人よりずっと広い知識を元にして、通俗的な意味とは違う意味でそのフレーズや言葉を使っているのです。私はそこに着目します。
■4.「読めない本」を読むことを人生の目標にする
「はじめに」でも述べましたが、あなたは「読みやすい本」ばかり読んでいないでしょうか?
俳句や詩、小説や哲学書でもジャンルは問いませんので、「好きなんだけど難しくて前に進めない本・理解するのに時間がかかる本」を1冊は絶対にもっているべきです。(中略)
そのような「読めない本」が、私にはある。この「読めない本」を1冊ないし何冊かは置き、一方で読みやすい読書、あるいは情報を入れるための読書をするのが理想ではないでしょうか。
「読みたいけど今は読めない本」を1冊もっておくと、そこから出る不全感や焦りで、読書にいっそうターボがかかるでしょう。
というのは、私の『大日経』『ベルゼバブの孫への話』のように、読んでから死にたい本があると、それが10年後になろうが20年後になろうが、そのための時間を空けておく必要があるからです。
■5.電子書籍は「掘り下げ」に最適なツール
また、私は「日本人の心理学」が必要だと考えています。私たちが学んでいる心理学の大本は、西洋の心理学だからです。
「日本」を心理学的に理解するためには空海を理解しなければならない
↓
空海を理解するためには古代史の理解が必要
↓
同時に、空海の思想は量子論とも重なっている
↓
そのため、さまざまなジャンルの本が必要
というのが、私の中の流れということになります。
日本人の心理学の形成のため、空海、古代史、量子論というテーマを柱に、縦横に読書する必要性を感じているのです。
タブレットによる電子書籍は、何冊も並行して読み散らかしている私のようなタイプに最適なツールといえるでしょう。
このようなツールが発明されて初めて、本は物理的な重量制限から解放されました。
【感想】
◆「反速読系」の読書術本としては、かなりクオリティの高い作品でした。言うまでもなく、これまで当ブログでご紹介した読書術本は、やはり圧倒的に速読系がメインです。
それも当然のことで、読書が「インプット作業」であると考えると、速読することで少なくとも「量」は確保できるから。
また、選書の点でも、大量に読んだ方が、「アタリ」の本にあたる可能性も高まるでしょう。
もちろん、「量」「質」ともに優れていてば一番良いのですが、「質」というのは数値化しにくいですし、「こうすれば質が高い読書ができる」と言われても、どうしても属人性の問題が出てきます。
それに、いざ本を売る段階でも「量」はアピールできます(「年間500冊」等)が、「質」はアピールしにくいもの。
そう考えると、本書の表紙にある「『量』だけの読書は、もうやめよう」というフレーズは、私たち速読派に「ドッキリ」させることで、本書を手に取らせようとしているのではないか、と。
◆そこで今回、上記ポイントでは類書(「読書術本」というくくりで)、あまりお目にかかったことのないモノを中心にしてみました。
たとえば上記ポイントの1番目の「三角読み」は、本書の第1章からのもの。
本を読んでる途中で、メモ代わりにツイートしてしまう、というのは「目からウロコ」でした。
特にTwitterは、後から修正できませんから、とんでもない勘違いをしても、削除しない限りはそのまま残されてしまいます。
……私だったら、怖くてできない気が。
ただ、その時点その時点で、フィードバックが得られる(フォロワー数にもよりますが)というのは大きなメリットではあります。
とはいえ、ある意味「脱線」ですから、「その本に集中して読む」タイプの方には、真似したくてもできないかもしれません。
◆続く第2章の「感覚的読書法のすすめ」からは、まずは章題にふさわしい(?)上記ポイントの2番目を選んでみました。
実際、自分に必要な本を求めて書店に行くと、その状況に適した本が目に入ってくる、というのは潜在意識絡みのなせるワザだと、何かの本で以前読んだ記憶があります(どの本かは失念しました)。
私自身も、かつてはそういうことが結構あったものの、読書がKindleメインになってしまうと、書店に行かなくなり、そんな機会も失われつつあるのですが。
また、上記ポイントの3番目も、あまりお目にかかったことがないTIPSです。
ただし、これは著者の名越さんが、「言葉の意外な使われ方」に遭遇すると「考えを巡らす」タイプだからであり、読書中に脱線できない方だと、活用しようがないかも。
ですから逆に、今まで「何も考えずに」読書してきた方が、どういうタイミングで読書中に思考を深めるかを考えた場合に、「目印」として使うのが良いのかもしれません。
◆その流れで言うと、「何も考えずに」読書できるということは、「読みやすい本」ばかり読んでいる可能性大!
第3章から抜き出した上記ポイントの4番目は、まさにそれをいさめており、私自身、思い当たるフシありまくりです(反省)。
確かに「速く」読もうとすると、「読みやすい本」を選びがちであり、そういう意味でも「読めない本」を読むことで、「考える」習慣が身に付きそうな。
また、その「考える」という意味で、上記ポイントの5番目にあるように、ある本を読みながら、関連したテーマを扱う他の本に「縦横に」飛ぶには、確かに電子書籍が適しています。
この電子書籍のメリットというのは、速読派の読書術本では、ついぞやお目にかかったことがありませんでしたし、なるほど、こういう読書法もあるのだな、と感心した次第。
読書の「質」を高めたいなら、要チェックな1冊!
精神科医が教える 良質読書
はじめに
第1章 読書嫌いによる読書嫌いのための読書術
第2章 感覚的読書法のすすめ
第3章 “頂にある本"をめざす
第4章 本との出会いはタイミングがすべて
第5章 良質読書歴
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。アジアでMBA ― もっと気軽に、もっと成長できる場所へ
MBAの選択肢として、「アジア」というのもこれからはアリだと思われ。
送料を加算した中古より、Kindle版が500円弱お得です!
ご声援ありがとうございました!
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