2018年12月22日
【ガンの真実】『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』近藤慎太郎
医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「日経BP社キャンペーン」の対象作品である健康本。ちょうど来週、健康診断でがん検診を予定していたので、思わず買ってしまったのですが、装丁(想定?)に反して、かなり「ガチ」な内容でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
肺がんや胃がん、大腸がんなど、日本人にとってメジャーな「がん」を見つける方法から、男性ならば誰もが気になる前立腺がんや前立腺肥大、ED(勃起不全)について、若い女性にも広がっている乳がんや子宮頚がんについて――。
日本人に多い10のがんについて、正しいがん検診の受け方、使い方を紹介すると同時に、最近、取り沙汰されることの多い「PET検診」や少量の血液や尿などからがんを見つけるとうたう「血液がん検診」など、「がん検診」をめぐる最新のテーマも、マンガを用いながら、分かりやすく解説しています。
一冊読めば、あなたが「がん」や「がん検診」の怪しい情報に惑わされることは、もうありません。
中古が1000円以上しますから、今回のセールですとこのKindle版が600円弱、お得となります!
The Endoscopy Suite / Sam Blackman
【ポイント】
■1.バリウム検査よりで胃カメラが有効なワケ食道は口と胃をつなぐ管状の臓器です。「胃がんの話なのに食道?」と不思議に思うかもしれません。しかし実は、ここが重要なポイントなのです。
食道は胃の手前にあるので、バリウム検査であっても胃カメラであっても、胃を観察する前には必ず食道を観察することになります。
バリウム検査の場合、食道にバリウムがサーッと流れる数秒の間に、パシャパシャッと数枚レントゲンを撮るのが一般的でしょう。これでは早期の食道がんを発見することはほとんど期待できません。
一方、胃カメラの場合は違います。泡やカスがあれば洗い流せますし、送気したり脱気したりして食道を動かし、カメラを行きつ戻りつさせながら、じっくりと食道や胃の状態を観察できます。特殊な光を当てて、がんを鮮明に浮かび上がらせることもできます。
その結果、早期の食道がんの 85%が胃カメラで見つかっており、バリウム検査で見つかっているのは 11.2%にすぎません。それほどまでに大きな差があるのです。
■2.EDになったら心臓疾患に注意を
心臓に血液を送る冠動脈は3〜4ミリメートル、頚部の動脈は5〜6ミリメートルと言われている中で、海綿体に血液を流入させる陰茎動脈は、1〜2ミリメートルと極めて細い動脈です。細い動脈ほど詰まりやすいため、陰茎動脈は動脈硬化の影響を最も早い段階で受けてしまいます。
そのためもしEDになったら、その背後には非常に広範囲にわたる動脈硬化の影響が潜んでいる可能性があるのです。陰茎動脈が詰まることもあれば、心臓の冠動脈が詰まりつつあって、狭心症や心筋梗塞になる一歩手前なのかもしれません。
実際に、「ED以外は無症状」というグループに負荷心電図を施行したら、その 15%に心疾患を疑う所見があったという報告もあります。
もしEDになったら、心臓などに異常がないか検査することをオススメします。
■3.大腸がん検査で検便を2回するワケ
現在の健康診断や人間ドックで、大腸がん検診としてまず行われるのは「便潜血検査」です。これは便の一部を容器に入れて提出し、便の中に血液が混ざっていないかどうかを調べる検査です。
大腸がんやポリープなどの病変があれば、便が通過する時に擦れて出血する可能性があります。それが起こっていないかをチェックするのが基本的な考え方です。(中略)
では、実際の診断能力はどのくらいの精度なのでしょうか。
報告によってばらつきがありますが、大腸がんを1回の便潜血検査で指摘できる可能性は30〜56%、2〜3回繰り返してやっと84%と言われています。
1回の検査だと不十分なのは明らかなので、便潜血検査は通常2回。これは、病変があっても陰性になってしまうケースをできる限り減らすための工夫です。2回中1回でも陽性になれば「便潜血陽性」と診断され、精密検査が必要になります。
■4.乳がん検診では結果を受けて質問する
しかし国の乳がん検診の指針では、マンモグラフィーの結果を「異常なし」か「要精密検査」のどちらかで通知するよう定めています。つまり、受けた本人の乳腺濃度がどのグループに属していたかは、原則的に通知されません。たとえ「高濃度で見えづらかった」としても、明らかな問題が指摘できなければ「異常なし」に分類されるのです。(中略)
もし乳がん検診を受けたら、現行の通知結果だけで満足せず、「私の乳腺濃度は4グループのどこに入るのですか」と質問してください。
自分の健康管理に必ず役に立ちますし、その積み重ねが、乳がん検診の成熟を促すことになるはずです。
繰り返しますが、若い女性が乳がんで命を落とすことは、本人はもとより、家族、さらには社会にとっても、悪夢以外の何ものでもありません。
■5.HPVワクチンの副反応と子宮頸がんの罹患率
私は「HPVワクチンは安全ですよ」と 喧伝 するつもりは一切ありません。重い副反応が起きる可能性を否定することもできません。
ただ1つ言えるのは、「起きるかもしれないけど、その確率は著しく低い」ということです。現実的に一番問題になり得るのはアナフィラキシーだと私は思いますが、それでも96万接種に1回と、極めてまれです。
一方で、子宮頸がんは、年間約1万人が新たに発症し、2016年は2710人が亡くなっています。「がん情報サービス」によれば、1人の女性が生涯で子宮頸がんに罹患するリスクは約1%、死亡するリスクは約0.3%と報告されています。決して少ない数字ではありません。
このリスクを、ワクチンによってグッと下げることができるのです。
つまり私が強調したいのは、HPVのワクチン問題は、2つのリスクを天秤にかけて、どちらを取るか決める問題なのではないかということです。
【感想】
◆若い方はピンと来ないでしょうが、ある程度の年になると、毎年のように市町村のがん検診を受けるワケでして。今回私は、胃がん、大腸がん、前立腺がんが対象となっていました。
このうち胃がんのバリウム検査は、以前検査してピロリ菌がいなかったので、本書を読む前から割愛を決定。
また胃カメラも数年前にやってツラかったので、なかなか踏ん切りがつかなかったのですが、上記ポイントの1番目を読む限りではやった方が良さそうな。
なお胃カメラには
・オーソドックスな口からの胃カメラの3パターンあるので、自分が楽なのを探すべく、順繰りに試してみるといいのだそうです。
・麻酔の注射を使う胃カメラ
・鼻からの胃カメラ
◆大腸がんは、上記ポイントの3番目にあるように検便(便潜血検査)がお約束。
1回だけだと確度が低いため、2回やる、というのは、本書を読んで初めて知りました(考えてみたら当たり前ですが)。
ただ、やはり胃カメラ同様、大腸がんをより確実に捉えるためには、内視鏡検査(大腸カメラ)が必須のよう。
私も昨年やりましたが、検査前の下剤もツライし、検査自体も短時間とはいえツラかったです……。
ちなみに本書では、この大腸カメラによる検査の一連の流れをマンガで解説しており、これが結構分かりやすくてGood!
ところどころに写真も盛り込まれており、未体験の方でもイメージしやすいと思います。
◆また、上記ポイントの4番目の乳がんの問題点も、私は初耳だったもの。
ここで触れられている「乳腺濃度」が「高濃度」だと、マンモグラフィーで診ても真っ白になっていて、乳がんが判別しにくいのだそうです。
Are you dense? | NPO法人 乳がん画像診断ネットワーク:BCIN
検査の結果「異状なし」で安心していたのに、実は徐々に乳がんが育っていた、ということも充分起こりうる次第。
同じく女性絡みのお話でいうと、上記ポイントの5番目の子宮頸がんのワクチンの件は、最近も話題になりましたから、ご存じの方も多いと思います。
ホントこれなどは、単にリスクを考えて判断するだけだと思うのですが、この手の話は一筋縄でいかないと言いますか……。
たとえば、下記の記事を読んで「中世の話かYO!」と思ったら、なんと今年9月のものなんですよね。
反ワクチン派の政党が政権をとったイタリアで今、起きていること | ハフポスト
◆なお、肺がんの章ではタバコの、肝臓がんの章ではアルコールの害について、とくとくと述べられていましたが、これはまぁ当然かと。
ただ、どちらもそれぞれのがんだけでなく、その他のがん(タバコは計15種類、アルコールは計7種類)のリスク因子となるそうですから、もし、がんが心配なら、この本を読む以前に、どちらも自重してください。
ちなみにがんは関係ないですけど、急性アルコール中毒等の際、吐かせるのは間違いなのだとか。
アルコールはおよそ1時間で 80%以上が体内に吸収されてしまいます。よほど短時間に飲んだのでなければ、既にアルコールの大部分は体内に吸収されており、嘔吐することに意味はないのです。これからの忘年会シーズンでは、ぜひご留意を!
そればかりか、嘔吐物を 誤嚥(気道に入ること) して、窒息死するリスクが高まります。
◆ところで言い忘れていましたが、本書に収録されているマンガは、著者である近藤先生ご自身が描かれたもの。
……現役のお医者さんが、マンガまで描いてるというのも、非常に斬新なんですがw
そういう意味でスタイル的には、文章とマンガのどちらもこなしている、西原理恵子さんのコミックエッセイに近いのかな、と。
ただし、各章の終わりには参考文献が列挙されていますし、内容自体もかなりガチ。
若い方ならさておき、がんが気になるお年頃以降の方なら、必読だと思います。
これはオススメせざるを得ません!
医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方
1章 肺がん:がんの中でも死亡数は第1位! 喫煙者は要注意
2章 胃がん:罹患数は減少傾向。だがピロリ菌の除菌は"万能"ではない
3章 前立腺がん:男性なら誰もが気になるがん、前立腺肥大やEDとの関係は?
4章 肝臓がん:お酒好きは要注意。肝臓だけではない、アルコールの破壊力
5章 食道がん:急増中の逆流性食道炎と食道がんの悩ましい関係性
6章 大腸がん:死亡数はがんの中で2位! 大腸カメラは辛い? 辛くない?
7章 小腸がん:消化管の「暗黒大陸」、カプセル内視鏡が検査で活躍
8章 膵がん:進行が速く、悪性度も高い! とにかく「避ける」しかない
9章 乳がん:若い女性は要注意、検査で見逃さないために
10章 子宮頸がん:「HPVワクチン」問題、結局受けるべきなのか
11章 PET検査、血液がん検診:最先端のがん検査技術、果たしてどう使えばいい?
12章 がん検診懐疑派への反論:制度は満点ではないけれど、受ける価値はある
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。一揆の原理 (ちくま学芸文庫)
ちょうどムスコの塾の社会の授業が、江戸時代を終えたところなので、気になってセレクト。
定価のほぼ倍値の中古価格となっていますから、Kindle版が600円以上お得な計算です。
ご声援ありがとうございました!
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