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2018年12月17日

【人事戦略】『NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜』パティ・マッコード


NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜
NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「光文社キャンペーン」の中でも人気の1冊。

すでに土井英司さんがメルマガで「ひさびさに清々しい、良い本に出合いました」と推奨されていたので、ご存知の方も多いと思います。

アマゾンの内容紹介から。
DVDの郵送レンタルから、映画のストリーミング配信、独自コンテンツ製作へと業態を進化させながら驚異的な成長を続けるNETFLIX。その成功の秘密は、型破りな人事制度に支えられたカルチャーにある。「業界最高水準の給料」「将来の業務にふさわしくない人は解雇」「有給休暇は廃止」等、同社の元最高人事責任者が刺激的な戦略の精髄を示す。「シリコンバレー史上、最も重要な文書」と呼ばれたNETFLIX CULTURE DECKを元に書籍化!

中古がまだあまり値下がりしていませんから、送料を考慮するとKindle版が900円以上お買い得です!





Netflix / Artiee


【ポイント】

■1.ハイパフォーマーだけを採用する
 それは苦痛に満ちた大量解雇を経験したときのことだった。2001年に全従業員の約3分の1を解雇する必要が生じた。(中略)
 だがそんな状況なのに、みんなが前よりずっとハッピーだったのだ。ある日リードと〔経費節減のため〕車を相乗りして会社に向かっていたとき、聞いてみた。 「どうしてこんなに楽しいの? 毎朝職場に行くのが待ちきれないほどよ。夜になっても家に帰りたくない。みんなあんなに大変なのに楽しそう。いったい何が起こっているのかしら?」
「よし考えてみよう」彼は答えた。
 このとき私たちは最初の重要な気づきを得る。それは、最高の結果を出せる人だけが会社に残っていたということだ。したがって経営陣が従業員のためにできる最善のことは、一緒に働く同僚にハイパフォーマーだけを採用することだと学んだ。これはテーブルサッカーの台を設置したり、無料で寿司を提供したり、莫大な契約ボーナスやストックオプションを与えたりするよりずっと優れた従業員特典だ。優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底──この組み合わせが、パワフルな組織の秘訣である。


■2.行動に関するフィードバックを与える
 フィードバックで最も重要なのは、「あなたはぼんやりしている」のような、相手の性格描写ではなく、行動に関するフィードバックを与えることだ。またそれは相手が改善できることでなくてはならない。フィードバックを受ける人が、「自分の行動の何を変えることを求められているのか」を具体的に理解できるようにする。「頑張っているのはわかるが、成果が挙がっていない」では何も伝わらない。行動に焦点をあてていい直すとこうなる。
「あなたが努力しているのはわかるし、それは評価している。でも些末なことに時間をかけすぎて、ほかのもっと重要なことがおろそかになることがある」
 それから一緒に優先順位を見直すのだ。私自身、身近な人から率直で、解決策を示すお手本ともいうべきフィードバックを受け、とてもためになった。「あなたはいつもしゃべりすぎて、ほかの人が口をはさめない」。なるほど。それからは注意して、黙って耳を傾ける時間を増やすよう努めた。


■3.チームづくりと人材管理の方針をはっきり打ち出す
 私はサン・マイクロシステムズでエリック・シュミットの下で働いていたから、グーグルが、最盛期のサンにどこか似ているのに気がついた。あの頃のサンは、優秀な人材をかき集めるのに必死だったが、グーグルはそれをやるのがさらにうまい。なぜなら「世界中の情報を整理する」という、とんでもなく大きな使命をもっているからだ。(中略)
 これに対して、ネットフリックスでは基本的に1つのことしかやっていないから、その1つのことのなかの職務を果たすための適正なスキルと経験をもつ、適正な人材が必要なのだ。採用プロセスでは候補者にこう伝えた。「もしあなたが精神を解き放って、実現するかどうかもわからない革新的なことを考えるのが好きなら、グーグルが向いていますよ。うちでは1つのことしかやりません。そして1つのプロダクトで顧客を楽しませることに全身全霊を傾けています。だからそれに情熱がかけられないのなら、ぜひグーグルへどうぞ。すばらしい会社ですよ、うちとはまったくちがうだけで」


■4.事業のカギを握る職務に、スター人材を重点的に配置する
 ハーバード・ビジネス・レビューで紹介された、コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーによる興味深い研究が、この戦略の有効性を強力に裏づけている。この研究では25社のグローバル企業の人材分布を分析したところ、「スター人材」は平均すると全従業員の 15%に過ぎなかった。だが最も成功している企業とそれ以外の企業の大きなちがいは、スター人材が与えられた職務の性質にあった。著者たちはこう書いている。「パフォーマンスの高い企業は意図的に不平等主義をとっている」、つまり「会社の業績に最大のインパクトを与えられる分野に、スター人材を重点的に配置している。その結果、事業のカギを握る職務の大半──最大で95%──が、A級の人材によって占められている」。それ以外の企業では、スター人材は全部門に均等に配置されていた。


■5.「10試合」ごとに人事考課を行う
 司会者はスコッティに尋ねた。「ボウマンさん、コーチとして多くの有名選手を成功に導かれました。秘訣は何でしょう? どうやって選手にフィードバックを与えたのですか?」  
 彼は答えた。「そうですね、1シーズンは80試合ですが、10試合終わるごとに1人ひとりと膝をつき合わせて話し合いました。選手のデータをそろえ、ほかのコーチやチームメイトに意見を聞き、選手自身にも自己評価を記入してもらいました。そして次の10試合をどうするかを2人で話し合ったのです」
 司会者は「ありがとうございます、ボウマンさん!」といって、私の方を向いた。「パティ、あなたは人事考課というものを認めないそうですね。その代わりに何をするようアドバイスされるんですか」
 私はスコッティを指していった、「まさにいま彼がいったことですよ!」


【感想】

◆冒頭の内容紹介にある「NETFLIX CULTURE DECK」。

私はこれをチェックせずに本書を読み始めたのですが、本来順番としては、こちらを確認してから、本書を読むのがスジだとは思います。

ググったところ、翻訳して下さった方がいらしたので、そちらを(ブクマ1800超です!)。

【翻訳】「シリコンバレーから生まれた最高の文書」と絶賛されたNetflixのカルチャーガイド全文 - BppLOG

結構長いので、一番最後の「まとめ」抜き出すと、こんな感じです。
1.従業員による独立した意思決定を奨励している
2.率直に、広範囲に、かつ慎重に情報を共有している
3.お互いが並外れて公平である
4.非常に効果的な人員のみを雇用し続けている
5.規則を避ける
そして本書は、この「NETFLIX CULTURE DECK」の詳細版というか、実践編というのが正しい位置づけかと。


◆となると、「NETFLIX CULTURE DECK」では一般化されたり、ひと言でまとめられていた事柄が、実際のエピソードとして登場してくるワケで、これがなかなかにディープです。

たとえば金額は明記されていないものの、必要な人材を高額な報酬で引きぬいてきたり。

逆に、能力が足りない、とみなされた人については、「解雇」という形で別れを告げています。

それも、採用時点で「結果的に足りなかった」というのではなく、「NETFLIXの変化にそぐわなくなった(ついていけなかった)」と思われるケースも多々。

何せこのNETFLIX、当初はDVDの郵送によるレンタルで、その延滞料が収益源だったのが、それをチャラにして定額制に移行し、さらにはストリーミング配信へとビジネスモデルが大きく変化しています。

一応、将来の変化を見越して採用しているものの、さすがにこのレベルで変わられてしまっては、会社に合わない技術者が生まれてしまっても致し方なく。


◆さらにNETFLIXの大きな特徴の1つが「率直に批判し合う」ことです。

上記ポイントの2番目では「フィードバック」と表現されていますが、良くも悪くも「批判」なワケで。

たとえばYahoo!から来てデータサイエンスおよびエンジニアリング担当副社長に就いたエリック・コルソンの発言から。
「傷ついたよ。『コルソン、君はコミュニケーションが下手だ。本題に入るまでが長すぎるうえ明確さに欠けるから、メッセージが広く伝わらない』なんて、いきなりいわれたんだからね」
NETFLIXでは、多くの人がこうしたネガティブなフィードバックの衝撃を受けるものの、そこから立ち直り、他人にも思いやりを持ってフィードバックを与えているそうです。

……米国人でさえ傷ついたくらいですから、なかなかにハードルは高そうですが。

また、今回は割愛したものの、NETFLIXで良く行われていたのが、「スタート・ストップ・コンティニュー」と呼ばれるエクササイズです。

これは「各人が誰か1人の同僚に対して、始めてほしいことを1つ、やめてほしいことを1つ、とてもうまくやっていて続けてほしいことを1つ伝える」というものなのですが、経営会議でこれを行い、内容を公開したところ、「オープンな姿勢が大切だ」という認識が社内に広まったのだそう。

結局のところ、陰でこそこそ言うよりも、オープンにフィードバックするのがミソなんでしょうね。


◆ところで最近ではわが国でもGAFAへ転職する個人エントリーを目にするようになりましたが、このNETFLIXも米国ではGoogleと同じ人材をめぐって争うのだそう。

ただし、上記ポイントの3番目にもあるように、相手の考え次第によっては、Googleを推すことさえしています。

……そもそも上記ポイントの1番目で、Googleチックな福利厚生について批判していますし、かなり文化が違うのかと。

また、これは同時に、いったん採用した人材に対しても、場合によっては他社を推奨することでもあるようで、「解雇」した人材についても、推薦状を書いているのだとか。

結果、著者のパティ・マッコード氏は解雇した多くの人材とも、今でも仲が良いらしく、たまたま打ち合わせ先で出くわしたそうした人との交流状況も、本書では描かれています。

本人が望んで転職したならまだしも、会社の都合で「解雇」した人とでもそうなる、というのはにわかには信じにくいのですが……。


◆もっとも、こうした会社のポリシーゆえ、マッコード氏もNETFLIXを去ることになります。

本書では第8章の「円満な解雇の方法」にて
私自身も、リードのもとで働くためにピュアに飛び込んだときのように、率先して次へ進むべき時が来たことを知るプロセスを経験した。
とぼかして(?)書かれていますが、「訳者あとがき」によると「現にマッコード氏も自分たちが定めた方針に則ってネットフリックスを解雇され」とありますから、結局は解雇されたということ。

もちろん、こうして本書を出している一方で、人事コンサルタントとして活躍されているようですから、別に恨み節でもなんでもないのでしょうが、ちょっと皮肉だな、と。

いずれにせよ、採用はまだしも、解雇に関しては、日本ではそのまま取り入れる事すら難しいでしょうし、解雇が自由にできないと、この人事スタイル自体が成り立たないと思います。

そういう意味で、私たちは本書を読んで、「こういう人事の考え方もあるのだな」程度に留めて、フィードバック方法等を参考にするのが正解かと。


恐ろしいほどの成長を支える人事の秘密がここに!

NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜
NETFLIXの最強人事戦略〜自由と責任の文化を築く〜
序章 新しい働き方―自由と責任の文化を育む
第1章 成功に貢献することが最大のモチベーション
第2章 従業員一人ひとりが事業を理解する
第3章 人はうそやごまかしを嫌う
第4章 議論を活発にする
第5章 未来の理想の会社を今からつくり始める
第6章 どの仕事にも優秀な人材を配置する
第7章 会社にもたらす価値をもとに報酬を決める
第8章 円満な解雇の方法
結論


【関連記事】

【キャリアデザイン】『出世する人は人事評価を気にしない』平康慶浩(2014年10月13日)

【仕事術】『最強「出世」マニュアル』浅野泰生(2013年09月26日)

【出世の秘策?】『なぜか評価される人の仕事の習慣』濱田秀彦(2013年07月20日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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投資系の作品なので見落としていましたが、今年5月に出ていた模様。

送料を加味した中古よりは、Kindle版が500円弱、お得な計算です。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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