2018年11月30日
【知的生産】『知的生活の設計―――「10年後の自分」を支える83の戦略』堀 正岳
知的生活の設計―――「10年後の自分」を支える83の戦略
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも1番人気だった1冊。ほぼ1年前に出た『ライフハック大全』(Kindle版は現在セールで半額です)の続編とも言うべき、堀 正岳さんの最新作が、いいよ登場です!
アマゾンの内容紹介から。
ハイブリッドな書斎情報が「勝手に整理」「量が質に転化する」瞬間「好きなこと」が価値を生む…etc.豊かな人生は「設計」できる。
なお、中古価格が定価を上回っている以上、お得なKindle版がオススメです!
weekly goals setting / cloudplanner
【ポイント】
■1.二度出会ったらメモをする、三度出会ったら記録しはじめるたとえば「王は死んだ! 王様万歳!」の例で言うならば、一度目にその表現を目にして気になって辞書で引いたくらいでは、まだそれが自分にとって特別な情報だということには気づかないでしょう。「初めて出会う情報」はいくらでもあるからです。
しかし二度目に出会って、一度目と同じような違和感をもったり興味を搔き立てられたならば、その情報や違和感との出会いをメモしはじめましょう。やがてそれが三度目になれば、それはもう立派な知的積み上げの始まりです。
二度目と三度目の出会いはすぐであることもあれば、何年も間隔が開いていることもあります。しかし、私たちの好奇心の記憶は信頼がおけます。
何年経っていても「あ、これはあのときの」と興味を搔き立てられたならば、そこには知的積み上げのチャンスがあるのです。
■2.様々な場所の人の手を借りる
世界中の人間がスマートフォンをすでにもっていることを利用して、地図上に広がった情報を一挙に手に入れる方法もあります。(中略)
これを、実際の研究に応用した例が、気象研究所の荒木健太郎研究官が実施している「関東雪結晶プロジェクト」です。
雪の結晶は、毛の手袋などのような細い繊維の上で捉えて、スマートフォンを利用してマクロ撮影することが可能です。荒木氏はそのコツをシェアしたうえで、撮影した結晶を位置情報とともに「関東雪結晶」のハッシュタグでつぶやいてほしいと呼びかけました。
雪の結晶の美しさと、それがスマートフォンで撮影できるという珍しさもあってこのハッシュタグは大きな人気を博して、様々な場所から膨大な写真が投稿されるようになりました。結果的に、研究者が束になっても不可能なほどの膨大な撮影例が関東平野一面から集まり、広域の雪結晶の研究の基礎資料になったのです。
■3.サマリーポケットとminikuraで部屋の一部を倉庫に追い出す
寺田倉庫が運営しているサービスminikuraは、箱に入れて送った品物を30点まで写真撮影してウェブサービス上で閲覧可能にする「モノのクラウドサービス」といってもよいサービスです。(中略)
minikuraと同じ寺田倉庫の仕組みを使ったサービスがサマリーポケットです。箱のサイズはminikura同様の38cm平方のものに加え、2倍のサイズのラージボックスが存在します。(中略)
minikuraやサマリーポケットを使うメリットは、 所有するか捨てるかという二者択一の状況に、保管しておくという第三の選択肢を設けることができる 点です。特に書籍については、書斎で保管するか、電子書籍で購入するか、自分で断裁して電子化するかという選択肢に、「まだ惜しいので保管しておく」という選択肢が加わることになります。 ランニングコストとしてどこまで許せるかを考慮しつつ、実際の書斎、クラウドの書斎に加えて、本が長期保管されている書庫を簡単に実現できるのです。
■4.ブログの最大のメリットはフロー情報がストック情報に変わること
あなたが週に2回、飲んだワインを写真や詳細とともにブログの記事として発信したとします。最初のうちは他との比較はできませんし、ただ日々の楽しみとして書いているだけかもしれません。
しかし方針をもって続けるうちに、ブログにはフランスワイン、カリフォルニアワインといった地名カテゴリや、メルロー、ピノ・ノワール、シラーといった品種のタグが増えていき、ワイナリーやテロワールの比較、年ごとの比較といった情報もしだいに蓄積してゆくことでしょう。
年に104本の記事が、3年続ければ312本、10年続ければ1040本というデータベースに匹敵する情報の網目になります。こうなれば、ブログは価値の高いストック情報に変貌します。しかも、日々に追加しているのは、その日の1本のワインについてであって、作業は今日も10年先も変わりません。
同じことは、書評ブログであれ、旅ブログであれ、写真や動画やマルチメディアを埋め込んだブログでもいえます。日々の小さい発信がやがて知的生活の大伽藍に成長するのが、ブログが知的生活の発信プラットフォームとしてもっている最大の魅力といっていいでしょう。
■5.音声認識を使った文章の高速プロトタイピング
音声認識のコツは、一段落ずつなにをしゃべりたいのか考えたうえで、ゆっくりと複数回で収録することです。たとえば私の場合、音声認識で収録するのは一度あたりせいぜい140文字、ツイッターのつぶやき一つ分程度です。これを4〜5回繰り返すと、先程の大きな「枝」を埋めることができ、ものの10分ほどで1000字から1500字のプロトタイプができます。
音声でしゃべっていると、思わず面白い比喩や表現が飛び出すこともありますし、言い間違いに戸惑うこともあります。言い間違いについては同じ部分をそのまま二度収録してあとで消し、面白い表現はそのまま最終稿に活かします。
こうしたプロトタイプを骨組みとして、最終的な文章を作ってゆくほうが、最初から完成された文章を作るよりも高速で、しかも面白いものが作れる傾向にあります。
【感想】
◆相変わらずの「ネタ満載」な作品でした。サブタイトルにもあるように「戦略」は全部で83あり、前作の250の約1/3となったものの、そもそも250もある方がヘンなだけで(いい意味で)、83でも十二分にお腹一杯です。
冒頭でKindle版を推奨しておいてアレですが、具体的な戦略が9つほどピックアップされて、アマゾンの単行本ページのに「出版社より」の欄に掲載されていますので、そちらもご覧いただければ、と。
もちろん上記ポイントも、各戦略ないしはその一部分を引用したものであり、まず上記ポイントの1番目は、SECTION1の「知的生活とはなにか」内の、「戦略02 あなたの毎日を変える『知的積み上げ』の法則」から抜き出したものです。
いきなり出てくる「『王は死んだ! 王様万歳!』の例」というのは、たまたま堀さんが学生時代に出会った、とある有名サッカー選手の引退の記事の副題に使われていたフレーズ。
興味を持って調べた堀さんは、これが「中世フランスでの王権の移行に際して慣例的に叫ばれた言葉」であり、「内戦を避けるために王が埋葬されるやいなや次の国王の長寿を祈ることで王権の連続性を保つ意味がある」ことを知ります。
以降15年、このフレーズに出会うたびに記録し続けた堀さんにとっては、このネタだけで、本は無理でもエッセイか小論の1つなら書けるくらいという。
このように1回の読書や1回の体験を、そのままで終わらせないことが、「知的積み上げ」につながるワケです。
◆続く第2章では、その「知的積み上げ」の実際のケースを紹介。
上記ポイントの2番目もその1つで、「スマートフォンを利用した新しいフィールドワーク」の具体例になります。
私もTwitterで「#関東雪結晶」で検索をかけたところ、キレイな雪結晶がいくつも……。
#関東雪結晶 - Twitter検索
今日の雪結晶。午後1時頃。#関東雪結晶 #雪結晶 pic.twitter.com/lH3sYEY3zo
— maki (@bluewindmaki) 2018年3月21日
そういえば先日ヨメとムスコが「カービィカフェ」に行ってきたのですが、この予約をネットで取る際になかなかつながらなくて。
1時間以上試み続けて、途中で何度も心が折れかけていたのに、何とか持ちこたえられたのは、ひとえにハッシュタグで検索をかけて出てきた、すでに当選した方々の「まだ席に残りがあります」というツイートのおかげでした。
……ちょっと「知的積み上げ」とは違いますがw
◆一方第3章では、「パーソナルスペースとしての『書斎』設計」と題して、「オトコの夢」である書斎に関する言及が。
これがまた結構具体的で、部屋の広さに対する、本棚の大きさや数、さらには写真付きで、IKEAや無印、ニトリ等の商品まで紹介されています。
BILLY 書棚, ホワイト 103.515.68
IKEA KALLAX シェルフユニット ホワイト 77×147cm 10275895
そして、かつては知的生産系ではお約束だった、「自炊」に関する製品も登場。
富士通 PFU ドキュメントスキャナー ScanSnap iX1500 (両面読取/ADF/4.3インチタッチパネル/Wi-Fi対応)
このスキャナーは堀さんいわく、「現時点でこれ以外の選択肢はない」というほどの激プッシュぶりです。
ただ、本を紙ベースで読んでいた頃は、私も自炊するかどうか迷ったこともあったのですが、その後Kindleで読むようになってからは、よほどのことが無い限り、「本は最初からKindleで買う」ようになりました。
そうなると、本棚も基本的には要らなくなるわけで、結構私のような人も多い気がしないでもなく……。
むしろ、今まで紙で買ってきた本に対して、上記ポイントの3番目のような「倉庫サービス」を検討する方が良いのかもしれません。
◆また第4章では、情報整理や情報発信について言及。
今回は割愛しましたが、この章では情報カードやEvernoteの活用法について指南されています。
なお、私は初耳だった「scrapbox」なるサービスも面白そうな。
Scrapbox - チームのための新しい共有ノート
もっとも、この章からは、未だ私が固執し続けている「ブログ」に関するお話を紹介させてもらいました。
とはいえ、昨今はSNSのような「フロー情報」を上手く活用することが重要ですし、本書でもそれに関しては指摘されています。
ただし、気を付けなければいけないのが「炎上」で、堀さんも以前体験なさったことがあったのだとか(詳細は本書を)。
またSNS活動の1つとして、堀さんが「その1週間のテクノロジーニュースを紹介する」、生放送の動画番組を配信されていたとは存じませんでした。
ライフハックLiveShow | Lifehacking.jp
すでに300回配信されてらっしゃるそうですから、「ストック情報」としても、かなりのものかと。
◆なお、上記ポイントの5番目にある音声認識の件は、最近勝間和代さんも取り組んでらっしゃいますし、これからの入力方式として広まっていく可能性は高いです。
当ブログでは過去にこの本をご紹介しておりますが、この手の分野は技術の進歩が著しいため、情報としてはちょっと古いかもしれません。
話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる
参考記事:【音声入力】『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!』野口悠紀雄(2016年05月22日)
……と、ここまででまだ第4章なのですが、律儀にご紹介していたら、ボリューム的に一杯になってしまいました。
第5章以降もハイライト引きまくっておりますので、当ブログの読者さんなら、お楽しみいただけることウケアイだと思います。
知的生活を送るために読むべし!
知的生活の設計―――「10年後の自分」を支える83の戦略
SECTION1:知的生活とはなにか
SECTION2:人生を変える「知的積み上げ」の習慣
SECTION3:パーソナルスペースとしての「書斎」設計
SECTION4:情報整理と情報発信の戦略
SECTION5:習慣とツールによる知的生活ハック
SECTION6:知的投資と収入のための「知的ファイナンス」
SECTION7:10年後の人生を設計する
【関連記事】
【TIPS満載!】『ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250』堀 正岳(2017年12月03日)【MOLESKINE】『モレスキン 「伝説のノート」活用術』堀 正岳,中牟田 洋子(2010年09月09日)
【読書ネタ?】『あたらしい書斎』いしたにまさき(2012年09月22日)
【習慣】『天才たちの日課』メイソン・カリー(2017年06月28日)
【音声入力】『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!』野口悠紀雄(2016年05月22日)
【編集後記】
◆昨日の「冬のKindle本セール」で人気だったのは、この辺りでした(順不同)。Excelピボットテーブル データ集計・分析の「引き出し」が増える本
武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50
外資系コンサルが実践する 図解作成の基本
東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法
儲かる会社に変わっていく社長の全テクニック
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宜しければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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