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2018年11月28日

【理念?】『負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法』田村 潤,勝見 明


負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法
負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「役に立つ・ためになる本セール」の記事の中でも意外な人気となっている1冊。

『キリンビール高知支店の奇跡』の著者である田村潤さんが、私たち自身がその「奇跡」を再現できるよう、一連の経緯を改めて「ビジネス書仕様」に仕上げてくださっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「現場の社員の士気が上がらず、社内で営業職を辞めたい人が増えている」「一所懸命やっているが業績は下降するばかりで、突破口が見出せない」「やることが増え、仕事がどんどんやりづらくなっている」……。日本企業全体がこのような共通の問題意識を抱えている、と経営学者の野中郁次郎氏は指摘する。では、どうすれば日本企業が抱える病を払拭できるか。そのヒントは、筆者自身の経験に基づいて書かれた『キリンビール高知支店の奇跡』にあった。

なお、中古に送料を足した金額よりは、このKindle版が800円以上お買い得です!





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【ポイント】

■1.高知支店で行ったこと
 高知支店が行なったことは、じつにシンプルです。
 何のためにこの仕事をするかという「理念」を明確にし、その理念を実現するための「あるべき姿」を描いた。そのあるべき姿と現実とのギャップを埋める「戦略」を自分たちで考え、決めたことを必ず「実行」した。たったそれだけです。
 高知勤務を終えた後、私は四国4県の地区本部長、東海地区本部長を経て、本社の代表取締役副社長兼営業本部長に就任します。その都度、業績を伸ばし、2009年にはついに全国シェアで8年ぶりに首位奪回を果たします。
 どこにいても、この行動スタイルを変えなかったことで、高知支店と同じように業績は好転し、社員の士気は急速に回復していきました。


■2.自分たちの働く意味をはっきりさせる
 最初にわたしが支店のメンバーに投げかけたのは、次の質問でした。
 わたしたちは誰のために仕事をするのか
 わたしたちが提供する価値は何か

 高知支店は本社のためではなく、上司のためでもなく、高知の人びとのために仕事をすべきだ。そして、高知の人たちにおいしいキリンビールを飲んで楽しい気分になってもらう。今日は会社で嫌なことがあったが、明日は頑張ろうと思ってもらう。これが、提供すべき価値です。
 よって、「わたしたちの成果」とはひとりでも多くの高知のお客さまに喜んでもらうことであり、それを追求することが「わたしたちの使命」であるというように、自分たちの働く意味をはっきりさせました。


■3.既存の常識に縛られずに戦略を発想する
 一例を挙げると、営業活動において、一般的にABC分析的なクラス分けの方法が用いられます。営業で回る先を売上高や利益の大きさでA、B、Cの3ランクに分け、Aランクの売り先を優先して回るやり方です。
 Aランクの店舗を重点的に回るのは、営業効率優先の考え方です。キリンの本社から下りてくる施策も基本的には効率優先でした。
 これに対し、高知支店では、営業マンが店舗を回るとき、売上の大きなAランクの店舗だけでなく、個人経営の街の店舗のように、さほど大きな売上は見込めないCランクの店舗まで、すべてを回っていました。(中略)
 Aランクの店舗を重点的に回るのは、売上や利益などの数字に目を向ける、売り手を起点とした発想です。これに対し、Cランクの店舗を回らないのは顧客に対する差別であり、お客さまに申しわけない、と考えるのは顧客を起点とした発想です。
 顧客を起点にすれば、これまでの常識に縛られずに戦略・戦術を発想できるようになります。


■4.やると決めたことは必ずやり切る風土をつくる
 わたしが営業マンたちを全員集めてこう述べたのは、1997年5月のことでした。
「みんなは、年頭に訪問の目標数を部長と合意したはずだ。『お得意さまを○件回る』と自分で言った以上、目標数に達していなかったら、家に帰ってはいけないんだ」
 どの業界内でも、同業他社と似たような競争をしていますが、競争力の差は、方針の徹底度の差、すなわち実行度の差によるものが大部分です。当時、戦略も何もないときでしたが、決めたことは必ずやり切る文化が必要だと考えていました。そこで、たったひとつの指示がこれでした。(中略)  
 もちろんメンバーは普通に帰宅していましたが、明らかに目の色が変わりました。
「この支店長は本気だと初めてわかった」
「あのときから、自分は変わった」
 のちに元部下たちが当時を振り返って、そう語ってくれたように、この日を境に、営業マンたちの意識と行動が変わり、「目標とは必ずやり切るもの」「仕事とは責任が伴うもの」という風土形成の第一歩となりました。
 

■5.本社や上司への報告を怠らない
 本社が現場を知らないのは当然です。わたしは本社との情報ギャップを埋めるため、本社やひとつ上の上司(高知支店であれば四国地区本部長) に対しては、ときどきA4で1枚のレポートを書いて送っていました。
 内容は、現場の事実とそれを踏まえた考えとその理由を簡潔にまとめたもの。ほかにも「現場が抱えるこの課題に対し、こんな挑戦をさせてもらいたい」「それは全社にとってこのような意味がある」といった要望を書いて送る習慣を続けていました。
 組織のなかには、どうしても意見が合わない上司もいるでしょう。そういう相手にこそ、しつこいほど細かく報告をしたほうがよいようです。私利私欲ではなく、本気でお客さまのことを考えてやっていれば、熱意が伝わりやすくなります。 「上司はわかっていない」とどうしても愚痴をこぼしたくなります。しかし、上司より大切なのはお客さまですから。
 上司にわかってもらうのが仕事となります。


【感想】

◆当ブログの読者さんで、田村さんの『キリンビール高知支店の奇跡』を読まれた方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! (講談社+α新書)
キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! (講談社+α新書)

……あれ? 知らぬ間にセールが始まったのか、このKindle版が「50%OFF」となっているのですが(謎)。

この本、20万部を超えているそうで、日頃ビジネス書を読まない同業の女性にも「面白いわよ」と勧められたくらいの浸透ぶり。

ところがお恥ずかしいことに、私は読んでおらず、今般ご紹介した田村さんのこの第2作によって、その奇跡の舞台裏を知ったという。

確かに、シェア奪回等、数字の上では「奇跡」ですけど、なさったことは決して「奇跡」ではない、愚直な営業努力等々なんですけどね。

そしてそれを簡潔に表したのが、上記ポイントの1番目であり、最後まで読了してから改めて読むと、深く納得するという。


◆そこでそれを個々に見ていくと、まずは「理念」を明確にすること。

上記ポイントの2番目は、本書の第1章「理念があるから飯が食える」から抜き出したものなのですが、まさに章題のとおりです。

そして実はこの「高知の人たちにおいしいキリンビールを飲んでもらう」という理念は、本書では繰り返し登場するフレーズに他なりません。

要は、すべての判断基準となっているワケで、迷ったらここに立ち返っています。

たとえば就業時間後のお客様対応も、就業時間後は留守電対応だったところ、高知支店では最後の1人が帰るまで留守電に切り替えず、料飲店からのビールサーバー不調等の電話に対応したのだそう。

なぜなら、お客さんがお店に入って生ビールが飲めなかったら、「高知の人びとにおいしいキリンビールを提供して幸せになってもらう」という、高知支店の理念に反するから。

こうした行動も、「理念」が浸透しているからこそできたのですね。


◆さらには第2章における「戦略」も顧客本位のもの。

この章からは上記ポイントの3番目を抜き出したのですが、正直言って、効率性とかあまり考えていないようにも思えます。

ところがこれも上記の「理念」に照らし合わせると、「Cランクの店舗を回らないのは顧客に対する差別であり、お客さまに申しわけない」と考える次第。

ただし、実際問題それができるのか、というと、フツウに働いていたら、時間も足りなくなるでしょう。

そこで続く第3章のタイトルのように、「部下の行動スタイルを変え、現場力を高める」必要があります。

上記ポイントの4番目は、この第3章からなのですが、「家に帰ってはいけない」なんて指示したら、ブラックすれすれです(「普通に帰宅していた」のでセーフ!)。

ただし、「やると決めたことは必ずやり切る風土」を作り上げることが、目標達成には必要なのだな、と……。


◆この理念を貫くことは、部下に対してだけはでなく、上司に対しても言えることで、それに触れられているのが上記ポイントの5番目です。

場合によっては上からの指示に従わないことも必要で、田村さんも本社からの指示とは違う行動をとったこともあったのだとか。

ただし、その場合でも「上に逆らう」のではなく、「上にわかってもらう」努力をする必要があるわけで、田村さんも「A41枚のレポート」を上司に提出していました。

……自分の意志を通すために、上に逆らう傾向のある方は、ぜひ見習っていただきたいところです(かつての自分含む)。

ただし、それもこれも「理念」あってのことではありますが。


◆なお各章の終わりでは、冒頭の内容紹介でも登場されている野中郁次郎先生の「知識創造理論」と照らし合わせた解説を、ジャーナリストの勝見明さんがなさっています。

また、その野中先生は本書の第II部にて、田村さんと対談されており、どちらもハイライトは引いたものの、ボリュームの関係で割愛させていただきました(すいません)。

おそらく本書は、『キリンビール高知支店の奇跡』を読まれている方にとっては、レイヤーが上がって、自分の仕事に応用しやすくなっていると思います。

一方、未読の方にとっては、より理解を深めるために、具体的な詳細を『キリンビール高知支店の奇跡』で確認したくなることうけあい。

もちろん登場する具体例は、営業に特化しているものの、私も自分の仕事に当てはめて考えたくなりました。


「理念」に基づいた働き方をするために読むべし!

負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法
負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法
第I部 100戦100勝の「戦う集団」に変える方法
序章 弱体化する現場の原因は「本社」にある――ブレイクスルーできるのは自立する「現場」
第1章 理念があるから飯が食える――「指示の奴隷」からいかに脱するか
第2章 戦略は顧客視点で考える――考え抜くリーダーになるためにデータに囚われるな、
第3章 部下の行動スタイルを変え、現場力を高める――「やる気」を引き出す環境整備
第4章 本社を味方につけ、活用する――上司と「うまくやっていく」ための秘訣
終章 根本が確立されるとうまくいく――ひたすら本質へ向かえ!

第II部 対談 野中郁次郎氏 × 田村潤


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【編集後記】

◆昨日の「役に立つ・ためになる本セール」の追加分で人気のあったのはこの辺でした(順不同)。

B00T7FIFC4
ハーバード・ビジネススクール“クリステンセン”教授の 「イノベーションのジレンマ」入門

B00NPUYN4Q
東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない (PHP新書)

B00OISJ2FO
「バカな」と「なるほど」 経営成功の決め手!

B01547KGKC
ハーバード流 幸せになる技術 PHPビジネス新書

参考記事:【"科学的"幸せ?】『ハーバード流 幸せになる技術』悠木そのま(2015年06月24日)

宜しければご参考まで。


【編集後記2】

◆今気が付いたのですが、上記の『キリンビール高知支店の奇跡』が「50%OFF」なのは、こちらのセールの関係のようですね。



Amazon.co.jp: 【最大70%OFF】冬のKindle本セール: Kindleストア

明日以降、ご紹介できるとは思うのですが、一足先にご確認くださいませ!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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