2018年11月20日
【文章術】『才能に頼らない文章術』上野郁江
才能に頼らない文章術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも大人気だった文章術本。著者の上野さんは、「システムズエンジニアリングの手法をもとに編集スキルを『編集の文法』として体系化」された方で、本書はその手法を指南してくれるものです。
アマゾンの内容紹介から。
編集者のもつスキルを31の編集の文法として体系化。これをまとめたのが、「編集の文法チェックシート」です。これを活用することで、相手の価値観にそって文章を組み立てられるようになり、共感や信頼を得られる文章が、誰でも短期間で書けるようになります。
なお、中古に定価以上のお値段が付いている以上、「20%OFF」のKindle版がお得です!
Revision / mrsdkrebs
【ポイント】
■1.「形容詞+です」はNG表現(NG)<解説>
介護の問題は私たちが知っているようで知らないことが多く、実際に介護してから気がつくことが多いです。
(OK)
介護の問題は私たちが知っているようで知らないことが多く、実際に介護してから気がつくことが多くあります。
話し言葉であれば、「多いです」「難しいです」「嬉しいです」となっていても、あまり違和感はありません。しかし、文章にしたときには幼い印象を与えるので、編集の現場では「形容詞+です」という使い方はさけるようにしています。(中略)
<ポイント>
「形容詞+です」は、語尾に「よ」「ね」などの終助詞を用いる、あるいは、「多いのです」と「の」をいれるなどで違和感を和らげる。
■2.興味を引くタイトルの切り口5選
1.数字を使って具体性を出す
⇒モテる男性になるための7つの方程式
2.疑問形や理由を効果的に使う
⇒なぜ、イノべーションが起きたのか? さびれた商店街がV字回復したワケ
3.常識に対する逆説を唱える
⇒デキる人が実践する"遊びを学びにする"方法
4.「これまでにない」を出すキーワードを使う
⇒お金に困らなくなるための"新常識"
5.不安感を盛り込む
⇒いざという時のために! 南海トラフ地震に備えてなすべき防災対策
(詳細は本書を)
■3.飽きずに読み進められる見出しをつける
(NG)NG例文とOK例文をよく見比べてみてください。何かに気づきませんか? できれば、このあとは、答えを考えてから読み進めてみてください。
糖質制限ダイエットの仕組み
ダイエットとストレスの関係
(OK)
糖質制限にはエネルギー不足、栄養失調、中毒性などの危険性がある
食べすぎの元凶はストレスにあり!
見出しの「抽象度」が異なっている、が正解です。NG例文が「糖質制限ダイエットの仕組み」「ダイエットとストレスの関係」という幅広い事象を表す見出しになっているのに対して、OK例文はもっと抽象度を下げて、「糖質制限にはエネルギー不足、栄養失調、中毒性などの危険性がある」など、具体的なことがらをまとめて見出しにしているのです。
■4.論理×感性の文章=文章ロジックとは
論理と感性をかけ合わせたものが文章ロジックでした。文章ロジックは、ロジカルシンキングに縛られる必要はないのです。
ただし、論理構造があまりにも崩れると信頼感がなくなってしまうため、ある程度は論理(理屈の組み立て)を保つ必要があります。では、文章ロジックに必要な論理として、どこまでしてもよいものなのでしようか? それは、読者に疑問が生じず、順序立って説明されていると感じられる範囲内というのが目安になります。この範囲内で論理をゆるめることで、論理と感性がかけ合わされてゆるロジな文章になっていきます。
崩し方には、大きく次の3つがあります。1. MECEではなくてもMECE感があればよい(詳細は本書を)
2. 根拠は主観でもかまわない
3. Why So? はすべての人が納得できなくてもよい
■5.上達のコツは、要素と構成をまねること
しかし、上手な文章のまねをすることは、間違いなく上達につながります。あのときうまくいかなかったのは、写すときのポイントがわからなかったからです。ポイントは、「要素」と「構成」です。要素は「書かれている内容」、構成は「要素の流れ」ととらえてください。
文章の中にどういった「要素」が盛り込まれていて、どのように「構成」されているかを確認しながら書き写していくことで、文章力は向上していきます。
書き写す時間がない場合も、要素と構成を見抜く目を養うように読んでいけば、文章の書き方がわかってきます。(中略)
なお、念のためお伝えしますが、「まねる」のは要素と構成のみです。お手本の文章をそっくりそのまま写して自分の文章として発表するのは著作権に抵触するNG行為です。絶対にしないようにしましょう(書き写して練習すること自体は私的利用になるため、問題ありません)。
【感想】
◆冒頭の内容紹介にあるように、本書は「編集者のもつスキル」を「31の編集の文法」として解説しているのですが、その前に触れておかねばならないのが、そのベースとなる「編集執筆力」です。これは「編集者の視点を持って文章を執筆する力」のことであり、著者の上野さんいわく、「才能」に頼らずとも後天的に身につけられる「スキル」である、と。
そして編集執筆力を構成するのが、以下の4つのスキルになります。
・文章基礎力この4つのスキルの具体的なノウハウこそが「編集の文法」であり、本書の第3章以降で解説される仕様。
・文章表現力
・文章構成力
・メディアマインド
◆その第3章の「文章基礎力」については、「基礎」というだけあって、当ブログの読者さんにとってはおなじみのものがほとんどかと。
「てにをは」の注意点や、「主語と述語は近くに置く」といった定番のTIPSの中、私自身は意識していなかったのが、上記ポイントの1番目にある「形容詞+です」という表現です。
これ、ぶっちゃけ当ブログでは普通にやってましたし、「多いです」でブログ内検索をかけたら、大量にあって涙目の巻。
本書ではわざわざコラム欄で、過去に色々とあった「形容詞+です」の論点を紹介しているのですが、話し言葉ではまだしも、「文章」として表記される場合は「NG」というスタンスです。
ただ、昭和27年に国語審機会により「平明簡素な形として認めてよい」という答申が出されており、必ずしもダメというわけではない模様(詳細は本書を)。
◆続く第4章では「文章表現力」がテーマであり、やや高度なお話が展開されています。
ただし、NG例とOK例に加えて、解説やポイントを1つのTIPSで書けるものがなくて、この章からは割愛させてもらいました(すいません)。
一応気になる部分を抜き出しかけたものの、たとえば「段落の中で論理構造が破たんしないようにする」なんてお話は、途中でカットできませんし、致し方なく……。
なお、コラム欄であった「『迷文』ではなく「明文」をめざそう」というアドバイスは、心にとめておきたいところ。
そして上野さんにとっての「明文」とは、「読んでいるときに読み返すことがなく、疑問を抱くことなく読み進められる文章」なのだそうです。
……なるほど納得。
◆さて第5章の「文章構成力」になると、一文だけの問題ではありませんから、さらに引用しなければならないボリュームが増えるという。
そこで抜き出しやすかったのが「見出し」関係のお話です。
たとえば上記ポイントの3番目の「タイトル」については、いわゆるキャッチコピー本なら色々なTIPSが溢れていますが、本書では上記の5つに厳選。
確かにどれも効果はありそうですし、ヘンに煽ったタイトルをつけるくらいなら、この5つでも十分だと思います。
さらに上記ポイントの4番目の「抽象度」のお話に関連して、上野さんは「見出しをつける際に抑えておくべきポイントとして、以下の2点を指摘。
・具体的な言葉で説明されているこれも意識しておきたいところです。
・見出しだけ読んでも内容が想像できる
◆なお、最後の「メディアマインド」に関しては、ちょっと飛んで第9章にて言及が。
ただし、正直この部分は、基本的に職業として文章を書く方や、ウェブメディアを運営される方が持つべき「心のあり方」になってくると思います。
もちろん「コピペした文章を、出典を記さずに書く」なんてのは、個人のブログでもやってはいけないことなのですが、意見としての「正しさ」と、事実としての「正しさ」が異なってきたり、テーマとしては大きくならざるを得ず……。
そこで本書では、ハフポスト日本版の竹下編集長と、BuzzFeedJapanの古田編集長にインタビューを敢行。
これが結構濃厚で、色々と考えさせられました。
……ただ、私たち市井の情報発信者にとっては、第8章にある文章の添削例の方が、お役立ちだとは思いますが。
文章術本が好きな方なら要チェックな1冊!
才能に頼らない文章術
第1章 編集者はどのように文章を直すのか?
第2章 チェックシートを使って編集執筆力を身につけよう
第3章 文章基礎力を磨く「編集の文法」
第4章 文章表現力を上げる「編集の文法」
第5章 文章構成力を鍛える「編集の文法」
第6章 文章に求められるロジックとは
第7章 共感を得られる文章を書くには
第8章 書いてみる、添削してみる!
第9章 書き手に求められるメディアマインドとは?
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。ローソン1万3000店の結論! 元気スタッフの育て方
版元がプレジデント社さんだけに、内容的にはお墨付きであろう作品。
中古がほとんど定価と変わりませんから、Kindle版が800円弱、お買い得です!
ご声援ありがとうございました!
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