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2018年11月09日

【中高大受験】『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』おおたとしまさ


受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実 (新潮新書)
受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実 (新潮新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先月半ばの「未読本・気になる本」の記事にて取り上げていた「子育て本」。

時間差でKindle版が出ていたことを失念していて、慌てて読んだ次第です。

アマゾンの内容紹介から。
激変を続ける受験の世界。国公私立に海外進学、幾多の塾・予備校…親子の目の前に広がる選択肢は多様化の一方だ。いま勢いのある学校や塾は?東大生の3人に1人が小学生でやっていたこととは?受験に勝つ子の「3条件」とは?東大医学部合格者の6割超が通った秘密結社のような塾がある…?子供の受験・進学を考えるようになったら真っ先に読むべき入門書、誰も教えてくれない“新常識”が明かされる。

なお、中古が定価を上回っていますから、Kindle版がオススメです!






20175_students_studying_finals_022 / University of Minnesota Duluth


【ポイント】

■1.中学受験か高校受験か
 東京に住むBさんには、中学3年生と小学3年生の2人の子供がいる。お兄ちゃんはサッカー部で活躍していたが、どちらかといえばシャイで、人前に出てリーダーシップをとるタイプではない。決して不真面目ではないのだが、テストの点数の割には通信簿の成績がふるわず内申点が取れない。しかたがないので都立高校はあきらめ、私立高校に進学することにした。人気進学校に合格したが、Bさんはこう振り返る。
「こんな思いをするのなら、中学受験をしておけば良かった」(中略)
 小学校でも先生からの受けが良く、クラスでもリーダーシップがとれるような子供なら、公立の中学に進んで良い内申点をとり、高校への選択肢も広がるだろう。しかしそうでない子はつらい。そんなことも、中学受験をすべきか否かの判断基準になるはずだ。


■2.「偏差値バブル」のカラクリ
 入試日を変えることでも偏差値は変動する。特に首都圏で、2月1日の午前中の入試を、2月2日以降に変更すると、偏差値は跳ね上がる。(中略)
 さらに昨今では午後入試も盛んだ。午前中に1校受け、急いで移動し、午後にもう1校受験する。中学入試のダブルヘッダーだ。  たとえば2月1日の午後の入試には、同じ日の午前中に難関校を受験し終えた受験生が集まるため、ここでも結果偏差値が高めに出る。2月1日の午前と午後の両方に入試を行う学校で、総じて午後入試の結果偏差値のほうが高くなるのはそのためだ。ただしそういう学校では入学辞退者が多くなる。だからその分定員の何倍もの合格を出している場合が多い。実際には合格者の上位層が抜け、下位層が入学する。実際の入学者の偏差値は、見た目上の結果偏差値よりも低くなりやすい。


■3.拡がる「思考力型入試」
 同じく首都圏中学模試センターによれば、2014年にはたった38校しか実施していなかった思考力型入試が、2018年には136校にも増えた。国立お茶の水女子大学附属中学校も、2021年以降、4教科入試をやめ、総合型の入試を実施すると発表している。
 思考力型入試が増えた背景には、2つの理由がある。1つは前述の公立中高一貫校人気。公立中高一貫校との併願をしやすくする戦略だ。もう1つは大学入試改革。大学入試改革の方向性を先取りして、「新しい学力観」に基づく入試を行おうというわけだ。
 首都圏には約300の私立中高一貫校がある。そのうち3割以上が英語入試を実施し、4割以上が思考力型入試を実施している計算となる。
 英語入試には、中学での英語の試験の先取りのようなものがあったり、英検のようなものがあったり、面接を含むインタラクティブなものがあったりと、学校によってさまざまな形式があるが、試される力が英語力であることに変わりはない。しかし、思考力型入試については想像が付きにくい。親世代が子供のころにはそのようなものはなかったからだ。


■4.授業の進め方は男女で違えるべき?
小児科医でもあるレナード・サックスは、「女子は励まして自信をもたせる。一方、男子には現実を見せて、自分が思っているほどに自分が賢くないことを自覚させ、もっと上手にできるようにけしかけると良い」と主張する。そうであるなら、授業の進め方も男女で違えなければならない。
 また、サックスは、脳の構造や機能の違いから考えても、男女それぞれに応じた教え方があると訴える。たとえば、女子は言葉を音の連続として覚える音韻メモリーを使うのが得意なのに対し、男子は視覚的に画像で覚える視空間メモリーを使うほうが得意だ、という違いがあるそうだ。ゆえに、男子には図解形式の板書が記憶に残りやすく、女子には、話し言葉で説明を加えながら板書するほうが効果的だというのだ。
 サックスの主張に反論する科学者もいる。神経科学者のリーズ・エリオットである。ただし反論のポイントは、性差があることは認めたうえで、それが脳の構造によって先天的にもたらされるわけではないという点だ。


■5.進学校の最難関合格者数を比較するときは、東大だけでなく京大と国公立大医学部合格者数を見る
 さらに医学部人気も目覚ましい。「東大」というブランドをあてにするよりも、医師免許という実利を取ったほうが将来食いっぱぐれる心配がないという現実的な価値観だ。十分に東大を狙える学力がありながら、あえて医学部を目指す高校生が増えている。(中略)
 ゆえに、進学校の最難関大学合格者数を比較するときは、東大合格者数だけでなく、少なくとも京大合格者数と国公立大医学部合格者数も見たほうがいい。 しかも、単年での大学合格実績はブレ幅が大きいので、複数年にわたる傾向を見たほうがいい。(中略)
 東大合格者ランキングでは、例年トップ10のうち9校は首都圏の学校が占めてしまう。残りの1校は兵庫県の私立・灘である。しかし、東大・京大・国公立大医学部のランキングとなると、トップ10に占める首都圏の学校はたったの3校となる。首都圏の教育レベルは高いというのが思い込みでしかないことがわかる。


【感想】

◆現在高校生以下のお子さんがいらっしゃるご家庭の方にとっては、ためになるであろう情報が満載の1冊でした。

我が家も小5と中3の子どもがいるだけに、ハイライトを引きまくり!

ただし中3のムスメは私立の中高一貫校なため、とりあえずは併設の高校にそのまま進むから今はいいとして、問題はムスコです。

私は自分自身が中学受験で失敗し、公立中から高校受験で大学付属校に進んだため、ムスコには「中学受験がダメでも高校受験で頑張ればいいよ」と言っているのですが、上記ポイントの1番目を読むと、そんな単純なものではない模様。

特に私は芸術科目や体育が得意だったため、内申点には苦労しませんでしたが、ムスコは算数以外はビミョウなので、ここで頑張っておいた方が良さげです。

またこれは、滑り止めで受かった中学に進むべきか否かも考えるポイントでもあるでしょう(私は滑り止め受けずに全滅したので、選択肢はありませんでしたが)。


◆上記ポイントの1番目は本書の序章からで、続く第1章では有力高校のうちのどこを選ぶか、というお話が。

多くの有力高校が中高一貫であるため、結局は中学入試に帰結してしまうのですが、東京で問題なのが、試験日が2月1日からの3日間に集中していること。

これはある程度中学受験を意識しているご家庭では常識的なこととはいえ、上記ポイントの2番目にあるように、「3日連続ダブルヘッダー」なんてことも起こりえます。

そして学校側からしたら、試験日を増やしたり、ずらしたりすることで、偏差値もコロコロ変わるという。

また、最近ではネットによる合否の即日発表も行われるようになってきたので、即日発表してくれる学校の人気が当然高くなっているのだそうです。


◆一方、最近の中学受験で増えてきたのが、上記ポイントの3番目にある「思考力型入試」。

具体的な問題で説明しないとピンと来ないので、ググったところ、まさに本書と同じ「フランシスコ・ザビエルの例」が挙がっているエントリーがありました

子供の学力の新観点「思考コード」を知っていますか?|コラム|首都圏模試センター

……って、よく見たら、執筆者が本書の著者のおおたさんではないですかw

上記エントリーでは、図表形式ゆえ今回割愛せざるを得なかったマトリクス表によって、難関校や一般校、さらには公立中高一貫校の出題傾向を明らかにしています。

ウチのムスコは、どちらかというと思考力型は苦手なので、早めに公立中高一貫校を切って正解だった模様。


◆ところで、今までの子育て本でも、私自身あまり意識をしてこなかったのが、男女共学か否か、というお話です。

ただ、実は東大合格者数ランキングトップ20では、男女別学校が3/4以上を占めているという……。

これは結局、授業は男女ごとに、それぞれ特化させた方がいいのでは、ということであり、上記ポイントの4番目のようなお話が真実味を帯びてくるワケです。

ここでは割愛しましたが、「日本男女別学教育研究会」(そんな団体があるのか!?)が主催する男女別学シンポジウム」に寄せられた知見として、「男女の授業の進め方の違い」なるものが本書では紹介されているのですが、これがなかなか興味深いものでした。

たとえばその中の「数学」に関してはこんな感じ。
女子は1番の問題から順番に説明する必要があり、途中でわからなくなったらまた1番からやり直さなければならない。男子の場合は、概論だけを説明し、あとは実際に問題を解かせてみるほうが早い。
親として教える場合でも、意識すると良いかもしれません。


◆とにかく本書は14もの章があるので、飛ばしまくりでしたが、それだけ扱うテーマの範囲が広いということ。

それと、当ブログでご紹介済みのおおたさんの著作と一部内容がかぶっているので割愛したものの、SAPIX&鉄緑会を扱った第3章と、公文式を取り上げた第4章については、この2冊が詳しいです。

ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体 (幻冬舎新書)
ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体 (幻冬舎新書)

参考記事:【エリート?】『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』おおた としまさ(2016年02月16日)

なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか? (祥伝社新書)
なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか? (祥伝社新書)

参考記事:【子育て】『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』おおたとしまさ(2017年06月15日)

ただし、この2冊が出てから時間が経っている分、本書の方がアップデートされていて、より新しいものかと。

さらに、海外の医学部を受験するお話や、大学入試改革のお話も触れておきたかったのですが、ボリューム的にムリでした(すいません)。


高校生以下のお子さんがいらっしゃるご家庭なら、必読の1冊!

受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実 (新潮新書)
受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実 (新潮新書)
はじめに
序章 小・中・高のどこで受験すべきか
第1章 勢いがあるのはどんな高校か?
第2章 大学受験の塾・予備校選びの注意点
第3章 最難関大学への"王道"あり
第4章 9歳までの"最強"学習法
第5章 難関化する公立中高一貫校
第6章 中学入試が多様化している
第7章 私立大学付属校が人気になる理由
第8章 いま見直される男子校・女子校の教育
第9章 地方では公立高校が強い
第10章 受験エリートでなくても医師になる方法
第11章 海外大学受験の実際
第12章 インターナショナルスクールにご用心
終章 大学入試改革の行方
おわりに


【関連記事】

【子育て】『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』おおたとしまさ(2017年06月15日)

【エリート?】『ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体』おおた としまさ(2016年02月16日)

【教育】『名門校の「人生を学ぶ」授業』おおたとしまさ(2018年08月31日)

【子育て】『合格する親子のすごい勉強』松本亘正(2018年05月03日)

【76の習慣】『中学受験で成功する子が 10歳までに身につけていること』村上綾一(2016年05月21日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

[新形式問題対応/音声DL付]TOEIC(R) L&Rテスト 至高の模試600問
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たまに「月替わりセール」等で見かけるTOEIC勉強本。

今回は「64%OFF」ということで、Kindle版が実質1700円弱、お得な計算です!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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