2018年10月31日
【名曲満載!!!】『A面に恋をして 名曲誕生ストーリー』谷口由記
A面に恋をして 名曲誕生ストーリー
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、明日で終了となる「インプレスグループセール2018」の中でも、個人的にどうしても読みたかった1冊。ヒット曲やそれを歌っているアーチストは知っていても、その曲の裏側を当事者に明かしてもらうことは歌番組でも滅多にないため、非常に興味深い内容の作品でした。
アマゾンの内容紹介から。
誰もが知るあの曲は、なぜ多くの人の心をつかむことができたのか―本書は、シングルの表題曲が“A面”と呼ばれた時代に生まれ、いまやスタンダード・ナンバーになった名曲の数々について、歌い手自らが振り返るインタビュー集。曲が作られ、ヒットを目指してスタジオやレコード会社で繰り広げられたドラマ、さらにその“ヒット曲”の存在によって歌い手の人生に訪れた転機、それらが貴重な証言と赤裸々な告白によって綴られていきます。
中古に送料を加算するとほぼ定価並みとなりますから、Kindle版が600円以上、お買い得となります。
16 chart hits volume 13,. / badgreeb RECORDS - art -photos
【ポイント】
■1.阿久悠氏に歌詞を指摘された「青葉城恋唄」──阿久悠先生に、最初に歌詞を指摘されたタイミングはいつだったんですか?
火がついたころですね。推測ですけど、10万枚とか、その辺だと思うんだけど。こっちのジャケット(初回盤)は、あっという間に消えましたから。そのころ「青葉城恋唄」が売れてきて、赤間さんが阿久悠さんに言われたそうなんです。「赤間ちゃん、これ、暮れになったら問題になるからね」って。赤間さんと阿久悠さんは、けっこう知己で。
──歌詞に「時はめぐり」とあるけど、「時はめぐるものではない」と。
タイムですよね。タイムは過ぎていくだけで、めぐってくるものじゃないと。だから、タイムからシーズンにして、「季節」と書いて「とき」と読ませればいいと。
──暮れに問題になるというのは、賞レースという意味。
あのころ、20、30と音楽祭がありましたから。そういう音楽祭の審査のときに問題になると。赤間さんもピンときたんでしょうね。あ、そうだなと。で、それから「季節」に変えて。結果論だけど、これ、タイム(時)のままだったら、日本作詩大賞は、絶対、獲れなかったね。(さとう宗幸)
■2.封印していた「たそがれマイ・ラブ」
──ヒット曲を歌わなかった時期があったとはいえ、また、「たそがれマイ・ラブ」「シルエット・ロマンス」を歌い出すタイミングがありますよね。
ありました。40代になってからですね。あるときポール・マッカートニーの日本公演を観に行ったんです。てっきりビートルズ時代の曲は歌わないと思っていたら、バンド・メンバーがはけて、アコースティック・ギター1本で突然「イエスタデイ」を歌い出したんです。
「え? 歌うの?」って驚いたのと同時に、わかったんですね。ヒット曲の偉大さが。そこまでポールのファンでもなく、「イエスタデイ」がとくに好きなわけでもない私が、これほど感動する。それくらい人の心に沁みついている歌、これがヒット曲なんだって。それからです。また歌ってみようと思ったのは。
そして、久しぶりに歌ったらわかったんです。最初に「たそがれマイ・ラブ」を聴いたときにヒットの予感があったのは、単純にこの歌が良い曲だからだって。メロディと歌詞のハマり具合。フレーズが歌い方を自然に引き出してくれるような、本当によくできている曲なんです。(大橋純子)
■3.渡辺徹に取られそうになった「初恋」
会社の会議にかけたときのことは、忘れもしませんよ。酒井さんが会議で「これを渡辺徹に歌わせたらいいよ」と言ったんです(笑)。渡辺さんは「約束」という曲でエラい売れたあとで、「これを渡辺徹が歌ったら、間違いなく大ヒットする」って言ったんです。
──たしかに、渡辺徹さんのイメージに合いますね。
これは酒井さんのアンテナに触れたんだな、と思ってヒットを確信したんですけど、僕は酒井さんのひと言を冗談にしちゃったんですね。そこで冗談にしておかないと、本当に渡辺徹さんに持っていかれてしまうので。こっちは、当時まだ一介のディレクターで、向こうは大プロデューサーですから。こんな話も今だから時効でいいんだろうけど。
レコード会社の会議というのは、誰の曲をかけても、みんなほとんど「良い」も「悪い」も言わないんですね。でも、この曲のときは、みんながザワついたんです。(須藤晃:プロデューサー)
■4.半分が英語詞だった「恋に落ちて」
──デビューが決まり、重実さんが湯川(れい子)さんに詞を依頼されたのですか?
はい。ドラマの制作会社からの要望で「英語が入っていないとまずい、半分は英語にしてくれ」と。英語と日本語の両方で詞を書ける人ということで、やっぱり湯川先生しかいないでしょうと。全部英語にしてほしいという要望もあったらしいですけど、ファンハウスとしては、それではさすがに日本のマーケットでは売れないということで、半分に妥協してもらって、ドラマが始まったときには、英語の部分しか流していなかったんです。
──だから半々なんですか。
英語の部分しか使われていなかったのに、最初のオンエアの日からすでに「あの曲はなんですか?」という問い合わせがあったみたいです。それで、ドラマの3週目で日本語の部分を流したら、「日本語じゃないか」と。そこで皆さん興味を持ってくれたみたいで、ヒットにつながったんですね。(小林明子)
■5.感性で書かれた「シャイニン・オン〜」
──初めて「シャイニン・オン〜」を聴いたのは、どのタイミングだったのですか?
LOOKは僕と千沢(仁)の2人で始まったんです。で、僕がときどき千沢の家に行って、「どんな曲があるの?」って聴かせてもらっていた時期があるんですよ。そのときに「自分が初めて作った曲なんだけど、これ聴いて」って、千沢がピアノを弾いて歌ったのが「シャイニン・オン〜」。(中略)
──初めて作った曲とは思えないですね。コード進行も符割りも。
千沢はね、コード・ネームを知らないで弾いているから。ほかの曲も全部そう。ドラムをやってきたからドラム譜は読めるけど、普通の五線譜は読めない。そういう人だったから。
──緻密に計算された曲だとばかり思っていました。
だから、余計に僕もびっくりしちゃうわけじゃん。なんで何も知らないヤツがこんなことできるの? って(笑)。千沢はギターを弾いていたから、AとかCとかFとか普通のコードは知っていた。でもさ、ここにSUS4が入ったり、マイナー・セブンの6(9)が入ってきたりとかさ。そういうことまでは知らないはずだもん。でも、この曲には出てくるからね。ヤツは知らないのにやっていた。本当に感性だけで。
選ばれた人間というのは、本当にいるんだよね。天才というのは、最初からハードルを越える。そのなかの1人として、千沢がいる。そこにいる人間には、どんなに僕らががんばっても届くわけがない。(鈴木トオル:LOOK)
【感想】
◆ボリューム的に、ちょっとオーバー気味になってしまいましたが、エピソードが分かるためにはこれ以上削れなかったのでお許しを。とにかく対象となっている曲を知っている方なら、非常に楽しめる1冊だと思います。
ここでは5曲を選んでいますが、本書に収録されているのは、下記目次にあるように全13曲。
また、本書の元となっているのは、写真雑誌『FLASH』の連載「運命の一曲」(2016年7月〜2017年10月)であり、そちらでは全部で59曲を取り扱ったのだそう。
つまり、本書に選ばれている時点でふるいにかかっているワケで、なるほど中身も濃いハズだな、と。
◆さて、本書で著者の谷口さんのインタビューに答えているのは、その曲を歌ったアーチストたち(亡くなられた村下孝蔵さんだけは、プロデューサーの須藤晃さんが対応)。
曲誕生のエピソードが中心のため、ご自分で曲を書かれている方が多いのですが、上記ポイントの2番目の大橋純子さんのように、「プロの歌手」もいらっしゃれば、割愛した「まちぶせ」の石川ひとみさんのように、アイドル的なポジションの方もいます。
その大橋さんですが、目次にあるように本当は「シルエット・ロマンス」がテーマなところ、同じくらい語られていた、最初のヒット曲である「たそがれマイ・ラブ」を選んでしまいました。
……ちなみに私が高校時代に、学園祭に出たイントロ当てクイズでこの曲がかかったところ、下記動画のCarly Simonの「You Belong To Me」と答えて失格になった黒歴史がありましてw
うん、作曲の筒美京平サンがアレンジもされてるようなので、確信犯だな、とw
◆また、この曲の作詞は故・阿久 悠さんであり、その阿久さんは、ポイントの1番目の「青葉城恋唄」でも、重要な役割を果たしてらっしゃいます。
この曲、もちろん私も耳にしていましたけど、「時はめぐるものではない」なんて、言われるまで考えもしませんでしたよ……。
ただ、この阿久 悠さんの忠告によって歌詞を変更し、結果的に「青葉城恋唄」は、1978年の「日本作詩大賞」において大賞を受賞(受賞者は作詞家の星間船一さん)。
とはいえ、この年の大賞候補には、その阿久 悠さん作詞の曲が3曲もノミネートされていました。
実際、審査室では、阿久 悠さんで決まりかけていたところ、とある「出来事」があって、逆転で「青葉城恋唄」になったという(詳細は本書を)。
しかもその阿久さんは、プロデューサーの赤間さんのところにきて「今年はこれで良かったんだよ」と言われたのだとか(カッコエェ!)。
◆さらに村下孝蔵さんの「初恋」が、危うく(?)渡辺 徹さんの持ち歌になりかけていた、というのも、初めて知りました。
確かにテイスト的に、渡辺さんの「約束」とテイスト的に似ていますから、当時の渡辺さんが歌われていたら、同じようにヒットしたことかと。
ルックス的に村下さんが地味目なだけに、渡辺徹さんを押そうとした、ソニーの酒井プロデューサーのお考えもわかります。
ただ、村下さんは圧倒的に魅力的な「声」がありました。
インタビューを受けた須藤さんいわく「お金を出しても買いたい声」。
歌も上手くて、レコーディングで何テイクも必要な歌手もいる中、仮歌でOKしたこともあったのだそうです。
◆というわけで、1曲1曲見ていくと本当にキリがないですし、さらに割愛した中でもハイライトを引いた部分が多々あった本書。
ただし、今さらなんですが、このラインナップだと、若い人は下手したら1曲も知らない可能性もあると思います。
そもそも著者の本田さん(名前の「由記」は「なおき」と呼び、男性ですw)は、1966年生まれですから、今年52歳。
登場する曲も、平成どころか昭和の曲が全部であり、自動的に30歳以下の人にとっては、ヒットしたのは生まれる前という……。
とはいえ、その当時を知らない方でも、それぞれの曲の持つ魅力は、今聴いてもご理解いただけると思いますし、そのためにYouTubeの動画も貼った次第です(後で削除されるかもしれませんが)。
あのヒット曲の裏側にあった物語を今ここに!
A面に恋をして 名曲誕生ストーリー
原田真二「キャンディ」
さとう宗幸「青葉城恋唄」
渡辺真知子「かもめが翔んだ日」
五十嵐浩晃「ペガサスの朝」
石川ひとみ「まちぶせ」
大橋純子「シルエット・ロマンス」
稲垣潤一「ドラマティック・レイン」
H₂O「想い出がいっぱい」
村下孝蔵「初恋」(語り:須藤晃)
EPO「う、ふ、ふ、ふ、」
小林明子「恋におちて -Fall in love-」
LOOK「シャイニン・オン 君が哀しい」
ZIGGY「GLORIA」
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。人生が整う 家事の習慣
西東社さんお得意の「99円本」は、送料を加算した中古が1000円近くするというお買い得ぶり。
寝ながら学べる構造主義 (文春新書)
内田樹さんの新書は、中古が値崩れしていますが、送料を加えればKindle版がお得となります。
ご声援ありがとうございました!
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