2018年10月17日
【はい、論破!?】『論破力』ひろゆき(西村博之)
論破力 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日ではなく今月初旬の「未読本・気になる本」の記事にて一番人気だった作品。あの「論客」ひろゆき氏の「論破本」ゆえ、前々から読みたかったのですが、セール記事等を優先していて、出遅れてしまいました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「ああ言えばよかった」と日々モヤモヤしているあなたへ敵を作らず、かつ理路整然と言い返し、他人を思い通りに動かす方法を伝授します。
「論破力」とは、説得力のある話し方のこと。
論理的な話し方の基本や、便利なキラーフレーズなど、ビジネスから日常のイライラにまで役立つスキルが満載!
なお、上記記事の時点ではなかったKindle版は、「25%OFF」と大変お得になっています!
Debate / Security & Defence Agenda
【ポイント】
■1.意見を言わずに事実を言うおいらの場合、自分の感情ベースで話すことがほとんどないのですよ。「こういう事実がありますよね」という事実ベースの話をしていることが圧倒的に多い。結局、事実に対抗するのはものすごく難しいということなのですね。
たとえば、「イヌはサカナ食いますよね」という事実を言ったときに「いや、食わねえよ」という反論を成立させるのは、とてつもなく難しい。だって、イヌはサカナを食いますから。「じゃあ、動画出しましょうか」で〈終了〉になってしまうわけです。
スポーツでもゲームでも仕事でも何でもそうですが、すごく難しいことをやろうとする人は自分で勝手に失敗しますね。事実を覆そうとするのはそれと同じことでしょう。
■2.ジャッジがいない状況では議論しない
テレビやネットの討論番組には、必ずそれを見ている人がいて「誰が勝ったか、負けたか」を常に判断しています。じつはビジネスシーンでも同じで、議論の場にはそれを見てジャッジする人がいるわけです。つまり、大事なことは目の前の相手と討論することよりも「見ている人に自分をどうプレゼンするか」だと思うのですよ。
要は、そういうジャッジをする人たちがどういう基準で判断するのか、その人たちに何を見せるのかということを考えて、何個かある「勝ちパターン」の中から順番に試して、議論というゲームで勝とうとするわけです。
裏返して言うと、「ジャッジがいない状況では議論しない」が鉄則ということです。
■3.人に謝るときには心から謝る必要はない
おいらの謝り方は、ひたすら「ごめんなさい、ごめんなさい」「すいません、すいません」と連呼するパターンですね。相手に二の句を継がせないように……。
人に謝るときには心から謝る必要はないとも思いますね。そもそも100%自分が悪いと感じて謝っている人なんて、あまりいないのではないでしょうか。
「誰にでも土下座できる」とさっき言いましたが、それができるのは、じつは自分が悪いと思っていないからなのですよ。
そのときに有効だと思ったカードが「ごめんなさい、すいません」という言葉だから、単純に謝るだけです。
つまり、相手や状況に応じて、こういう効果を生むというのが明らかにわかっているカードを切るだけであって、その意味では、おいらにとって謝ることも怒ることも笑うことも、あんまり差がない。まあ、簡単に言えば「そんなことは、どうでもいい」と思っているわけです。
もちろん、「すげえ申し訳ねえ」と思っていたら、ちゃんと謝ります。ただ結局は、自分がどう思っているかよりも、「相手がどう受け取るか」のほうが重要なのですね。
■4.「絶対」は禁句
裏返して言うと、討論では「絶対」とか「必ず」とか「明らかに」とか、いわゆる強調法が口癖になっているような人は、だいぶ不利だということです。つまり、足をすくわれやすい。自分からハシゴをかけてあまりにも高く登っていくと、ハシゴの下のほうを外すのが簡単になってしまうのですね。
「多くの場合、人を殺すのはよくないですよね」という言い方なら、もう反論のしようがない。「まあ、たしかにそうですね」で終了です。けれども「絶対によくない」とか言った瞬間に、自分で弱点をつくってしまうというか、逃げ道をふさいでしまうわけです。
「多くの場合」と「絶対」は似ているようでいて、ぜんぜん言葉の定義が違います。だからおいらは「絶対」のような断定的な言葉はほとんど使わないですね。
それはビジネスのときも同じで、たとえばウェブ制作の企画会議とかでも、「絶対うまくいきますよ」とは言いません。「けっこうな確率で成功すると思いますよ」みたいな言い方をして、逃げ道を残しておくわけです。
■5.主観の議論には加わらない
ちなみにおいらの場合、思い入れが強くなるのは「このゲームが面白い」とか「この映画が面白い」といったテーマですが、それは完全に主観の話になるので、そもそも議論が成立しないと思っています。(中略)
要は、主観には答えがないので本質的には説得が不可能ということ。なので、主観が交じる議論というのは「やるだけ無駄」度が高いわけです。
「私が傷ついた」「これがおいしい」「この曲が好きだ」「これがおしゃれである」とか、誰かの主観の要素が必ず入るものは、絶対に事実になりません。つまり、「そう思わない」という人に有効な反論はないということです。
そういう類いの議論では、どちらに 与しても負ける可能性があります。なので、議論に参加してもいいことがない。だからおいらは、なるべく主観の議論には加わらないようにしているのですよ。
【感想】
◆この本、新書なのですが、恐ろしいほどの部分をハイライトしてしまいました。必ずしも「実際に役に立つ」とか「真似したい」というのとは違うのですが、倫理的な部分(?)をスルーしていいなら、極めてロジカル。
方向的にはディベートに近いイメージです(私はディベート未経験ですが)。
それが顕著なのが、上記ポイントの2番目であり、ひろゆき氏は常時「第三者の視点からの評価」を意識している模様。
さすが討論会等で、多くの人々を論破しまくってきただけのことはあります。
◆その論破テクのベースとなるのは、上記ポイントの1番目にある「意見を言わずに事実を言う」。
これは実は理系の人にとっては、実は当たり前のことのようです。
理系の論文には、実験の手順や材料、証拠がはっきり書いてあります。「同じ実験を誰がしても同じ結果になりますよ、だから、事実はこうですよ」という書き方ですね。そういう「事実で説得する」、裏返すと「事実でしか説得されない」ことに慣れているのが理系の人なのです。ゆえにひろゆき氏いわく「事実ベースで話すことを意識するだけで、誰でも論破力を高めることができる」とのこと。
ただ逆に、こういう人ばかり集めて討論会をやっても、テレビ番組としては成立しないのですけどねw
◆また、「文系」(というくくりがいいか分かりませんが)の人がカチンとくるであろうお話が上記ポイントの3番目。
ひたすら謝り続けたり、土下座することを「へとも思わない」ひろゆき氏にとってそれらは、単に「有効だと思ったカード」に過ぎません。
しかもそれ以前に土下座に関して述べた部分では、
単に謝り続けるだけで周りの人に「あんなに謝っているのに、しつこく責める嫌なやつ」という印象を与えることができるなんて言っています。
……ひろゆき氏恐るべし。
◆さらに、ビジネスでも活かせるのが、上記ポイントの4番目。
「絶対」のような断定口調で言ってしまうと、「あのとき『絶対』と言ったではないか」と責任追及されてしまいます。
そこで「けっこうな確率」といっておけば、あとで失敗したときにも「五分五分の意味で使った」と言える次第(これが「80%うまくいきます」だと、そうはなりません)。
ちなみにひろゆき氏がこうした「逃げ道をつくる習慣」を持つようになったのは、2ちゃんねるの管理人時代に、しばらく裁判所通い(法廷トリプルヘッダーのこともあったそう)をしていたかららしいです。
なんでも、法廷で前言をひるがえすと裁判官の印象が悪くなるため、「じつは何も言ってない言葉」を多用するようになったとのこと。
そりゃ、リアル裁判で毎日のようにしごかれていたら、討論会なんて余裕なんでしょうね。
◆なお、こうした論破テクニックに加えて、本書の第5章では「お悩み相談室」を設けて、読者(?)からの相談に回答しています。
小見出しだけ列挙すると
「本題からはずれて、過去の話で攻撃してきた」等々。
「異常に細かい人に詰められて疲れる」
「相手が怒鳴ってきて反論の隙がない」
「自分のやり方を押しつけてくる人がむかつく」
さらに最終章では、「論破」に役立つものの考え方や、ひろゆき流の思考術について触れられている本書。
正直、「ナニワ節」が好きな方や、「意気に感じる」タイプの方にはビミョウですけど、逆に「ロジカルシンキング」が好きな方には、気に入っていただけるかと。
他人に言い負かされたくない人なら、必読の1冊です!
論破力 (朝日新書)
第1章 議論とはゲームである
第2章 観客の心を揺さぶる論破テクニック
第3章 手ごわい相手に「YES」と言わせる説得術
第4章 厄介な人を転がす技術
第5章「ああ論破したい!!」こんなときどうする?! ひろゆきのお悩み相談室
第6章 議論に強くなる頭の鍛え方
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【裏ワザ?】『弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール』奥山倫行(2013年01月13日)
【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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