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2018年10月11日

【マーケティング】『90秒にかけた男』高田明,木ノ内敏久


90秒にかけた男
90秒にかけた男


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日最終日となる「日本経済新聞出版 50%ポイント還元セール」からの1冊。

昨日の前日ランキング記事で「時間切れで間に合わず」と申し上げましたが、何とかレビューしてみました。

アマゾンの内容紹介から。
長崎の一介のカメラ店主だった高田明氏。わずか10年ほどで、「TV通販王」として一世を風靡するようになる。なぜ通販の常識をくつがえし、拡大し続けてこられたのか。なぜ最短90秒という枠の中で、自らメッセージを発信し続けてきたのか。その経営の神髄がここにある!

新書だけに中古が値崩れていますが、送料を考えるとギリギリでKindle版がお得となります!





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【ポイント】

■1.アマゾンとは異なる戦略
 アマゾンさんは1000万点以上の商品アイテムがあるそうですね。置いていない商品がまずないという世界です。ネットの世界というのは、そうした特殊なニーズ、個の要求にまで対応できる分野がある。でもなかなかそれだけでは消費者が膨大な品ぞろえを前にして逆に困ったり、迷ったりしてしまいかねない。そこですみ分けが起こるのでしょうね。
 ジャパネットのように「厳選して商品を置いています。気に入って安いと思ったら選んでください」という商法が一方にあり、もう片方の極には「いやそうじゃない。ネットの海で消費者に独力で探してもらえばいい」という売り方もあるのだと思います。その中間も含め、どこにアクセント(強勢)を置くかに応じて売り方も自然に変わってくるのでしょう。
 いずれも異なる価値をお客さんに提供しているのです。どっちが優れている、どっちが素晴らしいということは一概に言えないでしょうね。


■2.「本物」は「つもり」を絶対に許さない
 次に番組の中身について、お話ししましょう。いつも新商品を初めて手に取る時に思うのですが、商品ってどう伝えるかが大事なんですね。私は商品をどう伝えていけば、買っていただけるかにかけてきました。それが私の30年間の戦いでした。そこで分かったのは、売れなかった時は「伝えたつもり」になっていたという事実です。
 例えば、番組で「伝えた」と手応えを感じた時でも、実際は売れないということがたびたびあるのです。世の中は「つもり」になっていてその「つもり」で自己満足しているケースが少なくないのではないでしょうか。
「本物」というのは「つもり」を絶対に許さないのだと私は思っています。俳優さんでも能の舞い手でも歌舞伎役者でも同じで、常に自分との戦いだろうと思うのです。「うまく舞った」と思った瞬間にその人の成長は止まるのではないでしょうか。


■3.一生懸命やらない失敗は100回やってもうまくいかない
 以上のようにお話しすると、全てがうまく回ったと思われるかもしれませんが、違うのです。必死にやってきただけなのです。私は自慢で言うのではないですが、「失敗」がないんです。
 自分がやってきたことに「失敗がない」というのは失敗しなかったということではありません。失敗を試練という言葉に置き換えてみてください。一生懸命、瞬間を生きていると、うまくいかなくても「失敗」と感じないのです。自分の成長の糧になるからまた努力する、工夫する。それを繰り返すうちに次のハードルを超えていくのです。だから人間は試練が大切なのです。一生懸命やらなかったことが「失敗」なのです。
 一生懸命やらない失敗は10回やっても100回やってもうまくいきません。そうした人は年だけ取って成長しません。


■4.格差を口にしたら「負け」を認めたこと
 東京進出の話の時に触れませんでしたが、誤解していただきたくないのは、私は東京がいいと考えているわけではないということです。東京と地方はよく対比されて「東京一極集中」の問題点が語られますが、私は中央、地方といった感覚は全くありません。「格差社会」というのは実際に世の中に存在するのでしょうけど、私の意識の中にはないのです。格差という言葉を口にした時点で、自分が「負け」を認めたに等しいと思うからです。
 そうした前向きな思考ができるのはグローバル化時代でビジネスの環境が劇的に変わってきたからです。交流サイト(SNS)の普及や通信技術の発達により、地理的なハードルは急速に下がっています。例えばスマートフォン(スマホ)があれば、ヨーロッパでもブラジルでも今、そこにいるかのように現地の人と動画でコミュニケーションできる時代です。情報伝達が速く、国境を超えた人の往来も激しくなってきた。ビジネスに必要なインフラは世界中どこにいても手に入れられるようになっている。この場所でやらなければならないといった制約を感じることは少なくなっています。


■5.明氏と息子の旭人氏との商品選びの違い
「商品の選び方一つをとっても父と私はかなり違います。この10年ぐらい、商品周りなどで、父とは多くの場面でぶつかりました。父は『100%の自信がないモノは売らない』というスタイル。常に勝ちに行こうという考えで、他のMCにも自信を持って売れるのかと問いただしました。自信を持って宣伝できない商品は、お客様にも伝わらないからです。つまり、勝率10割でないといけない」
「これに対して、私は再現性があれば(経験則で一定の売り上げが見込めるのであれば)、勝率が5割でもやるべきだという考えです。それを2回やって1回勝ったら、それをコツコツと再現していけばいい。私は商品によっては勝率3割でも成功したらすごいことになるからやろうというタイプですが、父は3割の勝負ならやるべきではないという考え方で、商品選びではよくぶつかりました」(現社長・高田旭人氏)


【感想】

◆高田さんの書かれた作品としては、当ブログでも以前この本をご紹介しておりまして。

伝えることから始めよう
伝えることから始めよう

参考記事:【濃厚!】『伝えることから始めよう』高田 明(2017年01月24日)

どちらも「伝える」ことがテーマだったり、高田さんがご自身の足跡を振り返る記述が多いことから、ネタ的にはかぶりが発生するのは致し方ないところ。

ただし、『伝えることから始めよう』が昨年1月の発売に対して、本書は昨年11月と、時期的には1年弱新しいものとなっています。

それがゆえ、本書で新たに言及されているのが、高田さんが社長に就任された、J1チームのV・ファーレン長崎のこと。

V・ファーレン長崎

私もよく分かっていなかったのですが、ジャパネットたかたと同様に、ジャパネットホールディングスの完全子会社の1つなんですね。

本書内では「これからJ1に上がって、いずれは優勝を」と夢に溢れていたのですが、現在残留争いの真っただ中というのが、ちとセツナイですが……。


◆もう1点の大きな違いが、高田さんの息子さんである旭人さんに話を聞いていること。

旭人さんは、高田さんがジャパネットの経営から一切身を引いてから、新たな社長として、ジャパネットグループを率いている方です。

本書では「カリスマ去りし後」と題した第6章にて、もう1人の著者である木ノ内さんが、話を聞く形でインタビューを掲載。

上記ポイントの5番目もその第6章からのものなのですが、お2人の違いをよく表していると思います。

ちなみに私は旭人さんの考え方に同意できるのですが、「100%自信がある」ワケでない商品を売ることは、「従来の」ジャパネットらしさを失うことに繋がる気がしないでもなく……。

また、高田さんが社長時には、「カリスマ」高田さんが1人で何でも決めていたところ、現在は社員が「自発的」に考えるよう促してらっしゃるのだとか。

旭人さんは「頭の汗をかく」と表現しているのですが、ただ言われたとおりに働くのがよかった社員は辞めていったりしているのだそうです。


◆こうした違いの部分以外については、いつもの「高田節」が満喫できる仕様。

とりわけ第2章の「伝える力」においては、高田さんのマーケティング理論が炸裂しています。

高田さんいわく、「対象者が誰であるかということを考えなければ、モノは売ってはいけません」とのこと。

たとえば強力な吸引力が特徴の掃除機、トルネオは現在、年間230万台売れる人気商品ですが、重さが3キロと比較的軽いため、シニアの奥さま方に支持されているのだそうです(下記画像の型番かは不明です)。

東芝 スティック&ハンディクリーナー(自走パワーブラシ) ホワイト【掃除機】 TOSHIBA TORNEO V cordless(トルネオ ブイ コードレス) VC-CL400-W
東芝 スティック&ハンディクリーナー(自走パワーブラシ) ホワイト【掃除機】 TOSHIBA TORNEO V cordless(トルネオ ブイ コードレス) VC-CL400-W

また、ジャパネットではタブレット端末の売上の8割が、50歳以上なのだとか。
なぜジャパネットでは50歳代以上が8割以上を占めるのか。それは当社がそこにターゲットを絞っているからです。シニアの方にこそ老後の楽しさ、生きがいのために使ってほしいというメッセージを出し続けたのです。誰に伝えたいかということ、相手は何をその商品に求めているかを判断するのが「伝える」際には一番大事じゃないかと思います。
なるほど、確かに。


◆こうした高田さんの考え方は、まだ写真屋さんを夫婦で営んでいる頃から育まれたものですから、本書ではその当時のエピソードも紹介されていますし、「過去最高益を達成できなかったら辞めます」と宣言して、実際に達成したいきさつ等々についても、本書では登場しています。

上記でも触れたように、こうした『伝えることから始めよう』とのかぶりが気になる方にとっては、本書は少々微妙かも。

ただ逆に、それらが気にならない方や、高田さん引退後のジャパネットのこと、特に新社長の旭人さんの考え方に興味のある方なら、本書は「買い」です。

……私自身はサッカークラスタに属しているため、V・ファーレン長崎に関する今の高田さんのお考えや、J2にもし落ちた場合の今後の展望についてお伺いしたいところですが、それはまた次以降の作品で明かされるのかもしれませんね。


新書で高田節が楽しめる1冊!

90秒にかけた男
90秒にかけた男
1章 バトンタッチ
2章 伝える力
3章 「TV通販王」の経営道
4章 譲れぬ企業理念
5章 新たなる世界へ
6章 カリスマ去りし後
エピローグ 経営者 高田明


【関連記事】

【濃厚!】『伝えることから始めよう』高田 明(2017年01月24日)

【セブン-イレブン流】『売る力 心をつかむ仕事術』鈴木敏文(2013年10月18日)

【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫(2015年12月10日)

【オススメ!】『たくさん売りたきゃお願いするな! 「この人から買いたい」と思われる27の鉄則 』佐藤勝人(2013年09月22日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

あがっても大丈夫! 3秒であがり症を克服する技術
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こちらはオンデマンド版で中古がないため、「81%OFF」のKindle版が実質1300円以上お得ではあるのですが、ページ数から考えるとちょっと定価が高いかな、と。

図解・ベイズ統計「超」入門 (サイエンス・アイ新書)
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一方こちらは、中古が底値なものの、送料を加味するとKindle版がお得な1冊です!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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