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2018年10月09日

【コミュニケーション】『伝わるしくみ』山本高史


伝わるしくみ
伝わるしくみ


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは先日の「未読本・気になる本」の記事にて人気の高かったコミュニケーション本。

著者の山本高史さんは電通出身のクリエーティブティレクター&コピーライターであり、最近では関西大学社会学部教授も務めている、という方です。

アマゾンの内容紹介から。
気の弱いクライアントにどういうプレゼンをすればいい?―「相手の言ってほしいことは何か」「経験を駆使して発想する」「共有エリアに立つ」「伝える」―「しくみ」がわかれば、簡単に言葉にできる!

Kindle版なら、「21%OFF」と大変お得になっています!





Interpersonal Communication / Bovee and Thill


【ポイント】

■1.送り手は弱者である
 送り手の言葉が「提案である以上、同意以外を求めてはいない」のは送り手の勝手な思惑だが、その提案に頷くか頷かないか、それを受け入れるか受け入れないかのすべては受け手に委ねられている。
 その送り手の言葉がどれほどの正論であり真実であっても、そこにどれほどの真摯な姿勢や事情や思いが注ぎ込まれていても、である。
 伝えていることは欲望なのだ。拒まれることも珍しくないし、文句を言う方が筋違いだとも言える。
 しかも、そこには受け手の誤解もあるかもしれない。しかし、「誤解される方も悪い」のだ。
 こう考える限り、送り手は意外なくらい弱者である。
 送り手には「提案する(それによって受け手を送り手の望む方向へ動かす)」という態度しかとりえない。しかしそれに対して受け手は「無視・拒絶・同意」という3つの態度を選択することができる。  送り手の状況は不利だ。しかしうまく伝わらない原因も、問題の論点も明らかになった。
 要は「ベネフィット」があればよい。


■2.脳内データベースを豊かに拡充する
ある店でラーメンを食べた。→「まあまあおいしいな」と思った。
→「まあまあ」の割に客は入っているな。
→きっと場所がいいからだ。駅前の一等地。
→家賃が高そうだ。
→その分価格にはね返っているのかもしれない。
→確かにこの店の味玉は高い。150円。相場は100円。(中略)
 このように「経験」をきっかけに、あれこれあちこちに考えを巡らせる。(まあまあおいしいな)でやめていれば、「いいものを使って高く売るのがまっとうなのか、原価を抑えて安く売るのが良心的なのかわからん」という認識まで行き着くことはなかった。
 考えることで「経験」は強くなる。
 さらにそこに何らかの発見(いいものを使って高く売るのがまっとうなのか、原価を抑えて安く売るのが良心的なのかわからん、とか)があれば、驚きや喜びとともにさらに記憶され、「脳内データベース」に蓄積されることとなる。


■3.「アングル」×「ツリー」でアイデアを発見する
ここまで述べた「発想」を時系列で整理すると、次のようになる。
(1)「アングル」を用意する。
(2)そこから「ツリー」を伸ばす。
(3)「アングル」×「ツリー」の全体像を俯瞰しながら、思いついたことを言葉や文章にしてみる。
「脳の白紙のノート」に、「そこからさらに考える」ように、想像力を駆使して書き込むのである。書くのが面倒ならば、思ったことを口にして録音してみるのもいい。書くよりもスピード感もある。 (人に見られると、ちょっと恥ずかしい)
(4)その文章の中に「アイディア」を発見する。


■4.「共有エリア」から受け手にメッセージを送る
「受け手」の考えていることを「発想」のフローを通して明らかにして、それを「共有」するのである。そうすることによって、「受け手」の喜びは自分の喜び、「受け手」の不満は自分の不満とすることになる。(中略)
 共有エリアから受け手に向けてメッセージを送ることは=自分に向けてメッセージを送ることだ。
「受け手の言って欲しいことを(受け手に)言ってあげる」ことは=「自分の言って欲しいことを(自分に)言ってあげる」ことだ。
 自分の言って欲しいことがそのまま「受け手がベネフィットと感じること」なのだから、「送り手の想定する受け手のベネフィットと、受け手が認めるベネフィットが違う」の事態は避けられる。


■5.曖昧な言葉を使わない
「ちゃんと」も「きちんと」も「しっかりと」も、それこそちゃんとした日本語である。ぼくはもちろんその言葉を糾弾しているわけではない。しかし少なくとも仕事には使わない方がいい。
 それらの言葉の意味内容の理解は、主観によるものだからだ。
 お互いの主観の理解であるがゆえに、送り手の「ちゃんと」と受け手の「ちゃんと」はあらゆる場合で、程度差はあろうが必ず異なる。
 もし何かの仕事でその発注者が「ちゃんとしたもの」をお願いしたとすると、もちろん受注者は「ちゃんとしたもの」はお任せくださいと請け負うはずだ。その段階での「ちゃんと」は一見共有され、その場では期待も意気込みも完成図も共有したかのような盛り上がりを見せるかもしれないが、結果は必ずしもハッピーなものになるとは限らない。


【感想】

◆2日連続して、コピーライターさんのコミュニケーション本をご紹介しましたが、内容はある意味真逆に近い印象を受けました。

昨日の梅田悟司さんが、どこまでも「自分」を掘り下げていくのに対して、本書の著者である山本高史さんは、まず「相手」ありき、という感じ。

……もちろん、梅田さんだって相手を意識してますし、山本さんだって自分の考えを深めてはいるのですが、あくまで「印象」ということで。

驚いたことに、この山本さん、電通の新人研修の打ち上げで、名も知らぬ同期数人から「袋叩き」にあったのだそうです(詳細は本書を)。

結局その原因は、山本さんが「ありえない噂」を立てられたことにあったそうなのですが、その際、電通の先輩いわく「誤解される方も悪い」とのこと。

新人にして、この「受け手至上主義」の洗礼を受けた山本さんは、上記ポイントの1番目の悟りを開いたようです。


◆さて、電通でコピーライターとしてのキャリアをスタートした山本さんは、自分自身の「中身のなさ」を痛感したそう。

そこで日々の生活における、さまざまな経験を「脳内データベース」に蓄積する「脳内経験」を始めます。

具体例は上記ポイントの2番目の、さらに引用している部分になるのですが、実際にはこの3倍ほど色々考えているという。

本書ではこの「ラーメン」以外にも、実際の具体例が本書の第2章にていくつも紹介されているのですが、それぞれボリュームがある上に、キリがないので割愛しました。


◆続く第3章では、これらの「脳内経験」から、「発想」するまでの方法について指南。

あるテーマに対して、まずは複数の視点(「アングル」)を用意します。

その「アングル」から、「そこからさらに考えて」みる(山本さんは「ツリー」を伸ばす、と呼んでいます)ことで、全体像はかなり膨大なものに。

そこからディテールを拾ったり、言葉(概念)同士をつなげてみたり……といった作業をすることで、「アイデア」が見いだせるそうです(上記ポイントの3番目参照のこと)。

ただ、こうして「脳内経験」を豊かにしても、結局「受け手」が望むものを提案しなければ意味がないのは、上記ポイントの1番目にあるとおり。

そこで必要なのが、「送り手」が「受け手」と同じ立場に立って発信することです。

この「場」を山本さんは、上記ポイントの4番目にあるように「共有エリア」と命名。

ただし、山本さんは「女性に特に関わること」「女性にしかわからないこと」は、あらかじめ省いているそうです。


◆一方本書の第4章では、「『言葉』の使い方」と題して、細かなアドバイスについて言及。

上記ポイントの5番目の「曖昧な言葉を使わない」というのは、まぁ類書でも見られるかな、と。

ただ、上記では割愛しましたが、実は「一般的に使われている意味が間違っている言葉」も避けよ、と言われています。

たとえば「姑息な手段」の「姑息」は、普通は「卑怯な」という意味で使われていますが、正しくは「一時しのぎの」という意味だそう(知らなんだ)。

姑息(こそく)の意味 - goo国語辞書

こうした言葉は、受け手がどちらの意味で捉えているかで、意味が全然変わってしまいます。

結果、一番良いのは、「その言葉自体使わないようにする」ことという……。


コミュニケーションは「受け手ありき」ですから!

伝わるしくみ
伝わるしくみ
第1章 「言葉のメカニズム」を知る
第2章 「脳内経験」と「脳内データベース」
第3章 「共有エリア」への道
第4章 「言葉」の使い方


【関連記事】

【言葉】『「言葉にできる」は武器になる。』梅田悟司(2018年10月08日)

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【思考術?】『一番伝わる説明の順番』田中耕比古(2018年06月20日)


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