2018年10月05日
【快・不快?】『「やる気が出ない」が一瞬で消える方法』大嶋信頼
「やる気が出ない」が一瞬で消える方法 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは先日の「未読本・気になる本」の記事にて人気だった1冊。タイトルを見て、モチベーションの本かと思いきや、後半部分がコミュニケーション絡みの内容で、少々意表を突かれました。
アマゾンの内容紹介から。
やる気がないときに、努力や根性のような精神論で解決しようとすると、効果があるどころか悪化する。原因はあなたの中にあるのではなく、思わぬところにある。例えば、誰かに遠慮して好きなことを我慢している、母親と仲が良い、SNSで批判ばかりしている、知らないうちに人から嫉妬されていた、など。それらが身体を蝕み、無気力状態になっているのだ。7万件の臨床結果をもとに本当の原因を見つけだし、心理学的療法を行なうことで、日々の活力を取り戻す方法を解明。
なお、私は若干お得なKindle版で読んでおります!
Jealousy / Ktoine
【ポイント】
■1.「外在化」という心理療法外在化とは、クライエントさんに対して、「あなたが苦しんでいる原因は、あなた自身の問題とは別のところにある」と示すことです。そして、外在化とは正反対の考え方が「直面化」です。「あなたがだらしないからこういう問題を起こすんですよ」とか「あなたに根性がないから、〇〇をやめられないのです」とか「どうして、注意されたのに〇〇しちゃうんですか」というように、問題はクライエントさん自身にある、と責めるやり方で、アルコール依存症患者にこの「直面化」の対処法が行なわれていた時代もあります。
対して、あなたを苦しめている問題は、あなたの「外」に「在」ることを示す外在化という方法を採用することで、実際にクライエントさんが自分を責めなくなり、無気力状態になりにくくなります。これを、私のクリニックでは「発作を起こしにくくなる」と呼んでいます。
■2.「快か不快か」を基準に生活する
「快」とは自分にとって心地いい、気持ちいい感覚のこと、「不快」とは自分にとって心地悪い、気持ち悪い感覚のことを示します。本能的・直感的に感じる心地よさと心地悪さ、と言ってもいいでしょう。つまり、ヒトは本来、コンピュータのバイナリコードと同じように、心地いいか/悪いかの判断の連続で生きています。その最たる例が野生動物です。野生動物は心地いいと感じたことを行ない、心地悪いと感じたことは行ないません。ヒトも基本的には他の動物と同じ脳構造のため、「快か不快か」を基準に生活するべきなのですが、「快と感じるのに、周りを気にして我慢する」「不快と感じるのに、責任があるからやめられない」など、本来の「快・不快」を 捻じ曲げた行為を続けていると、バグが生じるのです。
そうした本来のコードに狂いを生じさせるバグが起こることで、その人が起動しなくなる状態が、「無気力になる」あるいは「動けなくなる」状態である、と捉えてみましょう。
■3.「万能感」を働かせてないか?
無気力の原因となっている「快・不快」を狂わせる正体(バグ)として、まず自身に問いかけていただきたいのが「万能感」を働かせていないか、ということです。「万能感」とは、端的に言ってしまうと、自分主体の考え方になっていて、すべてを自分の思い通りにさせようとする感覚のことです。万能感を持っている人は物事を自分基準で「ジャッジ」する癖がついています。前章でも述べましたが、「快か不快か」という基準で物事を捉えるのではなく、「快だけど周囲から反感を買うと判断して諦める」「不快だけどいまやめたら努力が無駄になると思って我慢して続ける」など、自分のジャッジで「快・不快」を捻じ曲げてしまい、バグが起きているのです。
しかも自分が「万能感」を持っていることにはなかなか気づけないケースが多いため、余計に事態をややこしくしてしまいます。気づいたときには「無気力」状態に陥っていた、ということになりやすいのです。
■4.上司の「嫉妬」で動けなくなったAさん
Aさんがケージの中の犬だとすると、スネ夫による嫉妬がケージを流れる電流です。
嫉妬というのは、自分よりも低いと思っている存在が自分より優れたものを持っていると感じるときに起こる感情です。「Aさんは自分より下だ」と思い込んでいるスネ夫は、そのAさんに自分より優れた能力があるのを察知したことで、嫉妬の発作を起こしたわけです。その結果、電流を放出してしまう(Aさんに嫌味を言ったり、無視したり、Aさんの企画をボツにしたりする)わけです。
Aさんは知らず知らずのうちにスネ夫からの電流を受け止め、それをみずから再現し、スネ夫になりかわって自分を責め、動けなくなっていたのです。この「自分はダメだ」「自分が嫌いだ」と思うこと自体が、スネ夫の嫉妬発作に巻き込まれていることを示しています。Aさんは、「スネ夫は嫌な奴だ」ということと「自分はダメな人間だ」ということが、別の問題だと思い、延々と悩み続け、ついには動けなくなっていました。ところが、前者と後者は別々に起きているのではなく、根っこでつながっているのです。
■5.親の嫉妬で子供が勉強しない!?
ポイントは、自分が嫉妬していると気づくことにありますが、なかなか気づけないこんなケースもあります。
遊んでいた子どもが、親に「宿題をしなさい」と言われ、「いまやろうと思ってたのに」と言い返して宿題をやらなくなり、親が頭を悩ませるケースです。
この場合、気づきにくいことではありますが、嫉妬しているのは親です。「自分は家事などいろいろとしなければいけないことがあるのに、どうしてこの子だけ自由に遊んでいるのよ、ずるい」という形で、子どもに対して親の嫉妬の発作、電気ショックが与えられます。子どもが自由に遊んでいることに対して親が嫉妬してしまうわけです(自分よりも下である子どもが、優れたもの=自由を手に入れていることに嫉妬するのです)。
子どもは親の電気ショックを与えられることで無気力になり、動けなくなるわけです。それでいっそう、勉強をしなくなっていきます。
【感想】
◆冒頭でも触れように、本書のタイトルの初っ端にある「やる気が出ない」という部分を見て、私はてっきりモチベーションアップのお話かと思って本書を読み始めました。具体的には、当ブログでも今までご紹介している「目標設定」とか、「側坐核刺激」とかのネタが出てくるのかと思っていたのですが、あにはからんや。
そもそも本書に登場するクライエントさんは、心理カウンセラーである、著者の大嶋さんのところに来ている時点で、多少なりとも生活に支障が出ている方がほとんどでしょうから、程度としてはそんなに軽くはありません。
実際本書で扱っている症状は、「学習性無力症(学習性無力感)」と呼ばれているものであり、かなり「うつ」に近いものです。
学習性無力感 - Wikipedia
◆こうした症状の場合、最も大事なのは、上記ポイントの1番目にあるように「問題は外に在る」ということを理解すること。
こうすることで、クライエントさんは自分を責めなくなり、無気力状態になりにくくなるそうです。
さらには上記ポイントの2番目にあるように、「快」か「不快」かを基準にすべし!
本書では具体的な対処法の1つとして、「1日1回必ず自分の好きなことをする」というTIPSを挙げています。
事例としては、漫画を読むことを選んだクライエントさんが登場しているのですが、「時間を決めない」とか「ルーティンにしない」等々、いくつか注意点がある模様。
◆また、驚いたのが、本書の第3章では無気力の原因に「嫉妬」がある、と指摘していたこと。
上記ポイントの4番目の例では、前提が割愛されていて分かりにくいのですが、スネ夫のような上司を嫌っているAさんが、動けなくなっているというものです。
Aさん自身は、「無気力になるのは自分がダメだから」と思っていたのですが、その原因がスネ夫上司にあると知って目からウロコ。
本書では具体的な対処法が4つほど挙げられていますので、詳しくはそちらでご確認ください。
個人的には、「相手の物理的な弱点を見つける」というのが効果がありそうな気が。
◆同じく「嫉妬」が原因でやる気が失われている、と指摘しているのが上記ポイントの5番目です。
まさか子どもに「勉強しろ」と言っている親が、実は子どもに「嫉妬」していたとは……。
さらには「やる気」とは少々違いますが、不倫している女性が関係を切れないのも、「嫉妬」が関係しているとのこと。
何でも「脳のネットワークレベル」では、不倫女性、不倫男性、その妻の3人がつながっているのだそうです。
当ブログの読者さんに、不倫をなさっている方はまずいないと思いますが、心当たりのある方は、本書の第3章を熟読してください。
◆なお、上記ポイントでは抜き出せなかったものの、本書の第4章では「母親との関係」についても触れられています。
実際、著者の大嶋さんご自身も、母親の影響下からは逃れられず、アメリカに留学して、やっと勉強に集中できたのだとか。
これはもちろん、父親のケースもあるのですが、父親が原因で起こるバグとしては、権威を受け入れられなくなる……つまり、上司に従えなくなる等なので、ビジネスシーンでは、より問題かも。
いずれにせよ、「やる気が出ない」ことのみならず、夫婦や親子といった「人間関係」についても、学びが多い作品でした。
「嫉妬」おそるべし!!
「やる気が出ない」が一瞬で消える方法 (幻冬舎新書)
第1章 「無気力」状態はこんなにマズイ!
第2章 万能感が生む「無気力」
第3章 嫉妬攻撃による「無気力」
第4章 恐るべし!脳のネットワーク―母親との関係性が作る「無気力」とその他の無気力
【関連記事】
【メシウマ?】『正しい恨みの晴らし方』中野信子,澤田匡人(2015年02月08日)【自己啓発】『人に強くなる極意』佐藤 優(2013年10月16日)
【ビジネス心理学?】『できる人は感情の整理がうまい!: ラクに成果が出るビジネス心理学』佐々木正悟(2014年02月21日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。十五の夏 上 (幻冬舎単行本)
先日のセールで出たばかりですから、その際買い損ねた方がいらっしゃれば。
「64%OFF」の「699円」ということで、Kindle版が800円以上、お求めやすくなっています。
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「コミュニケーション」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
12月16日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです