2018年09月06日
【科学的自己啓発書?】『When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク
When 完璧なタイミングを科学する
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事では1番人気だった、ダニエル・ピンクの最新作。監訳並びに巻末の監訳者あとがきを、ご存知勝間和代さんが務めるという豪華コンビでお送りします。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
『モチベーション3.0』で21世紀型の動機づけ論を提示したダニエル・ピンクが次に注目したのは、「時間生物学」。
“HOW TO”ではない、新感覚の“WHEN TO”タイムハック!
なお、定価が高めなので、「18%OFF」のKindle版がオススメです!
Time / zoxcleb
【ポイント】
■1.集中力が落ちる午後は「ひらめき」の時間この現象は「インスピレーションのパラドックス」と呼ばれることもある――つまり、「イノべーションとクリエイティビティは、少なくとも概日リズムに関しては、わたしたちが最高の状態でない場合に最大の力を発揮する」という考えのことだ。生徒たちは数学のような分析的課題に午前中のほうが健闘したという、デンマークとロサンジェルスの学校を対象にした研究結果が示すように、ヴィースとザックスは、自分たちの研究は、「学校の時間割を定めるときに、芸術関連科目や作文などの授業を、1日の最適時間に設定するよりも、それ以外の時間に設定したほうが、生徒は力を最大に発揮できるという可能性を示す」ものだと主張する。
■2.「初日」で仕切り直す
2014年、ぺンシルべニア大学ウォートン校の3人の研究者が、タイミングの科学の分野で画期的な論文を発表した。それは、時間的なランドマークがどう機能するのか、より良いスタートを切るためにそれをいかに利用すべきかについての理解を広げる内容だった。フンチェン・ダイ、キャサリン・ミルクマン、ジェイソン・リースの3人は、まず8年半分のグーグル検索を分析した。すると、「ダイエット」という単語が、元日に必ず急増することが判明した。普段より約80パーセントも検索数が増えていたのだ。驚くには値しないかもしれない。ただしこの語は、毎月1日、毎週の週明けなど、暦の周期の各初日にやはり急増していた。祝日の次の日にも検索数は10パーセント増えた。「初日」に関わる日付が。人々のモチベーションのスイッチを入れていたのだ。
■3.不況時に就職すると生涯賃金が下がる
彼女は大きな発見をした。この男性たちのキャリアが始まった時期が、彼らの就職先やその後の経済状況を容赦なく決定したことがわかったのだ。不景気のときに労働市場に加わった者は、好景気のときに加わった者よりも、キャリアをスタートさせた当初、収入が少なかった。これはさほど驚くようなことではない。だが、スター卜当初の不利な立場はその後も変わらず、それから20年間も続いたのである。(中略)
とくに活況を呈していた時期に卒業した場合と、とくに低迷をきわめていた時期に卒業した場合では、給与の差が20パーセント開くこともあった――これは卒業直後ではなく、彼らが30代後半になったときの格差である。好況時ではなく不況時の卒業により生じる総損失額は、インフレ率を調整すると、平均でおよそ10万ドルだった。タイミングがすべてではなかったが、総収入で6ケタの差を生み出していた。
■4.人は区切りの最後の年に奮起する
たとえば、マラソン大会に参加するためには、年齢等を申告して、大会事務局に申し込む必要がある。オルターとハーシュフィールドは、マラソン初参加者のなかで、9エンダーは実に48パーセントも占めていることを発見した。全年代を通じて、マラソン初参加者の割合が1番多かった年齢は、29歳だった。29歳の人がマラソンで走る傾向は、28歳、または30歳の人と比べておよそ2倍にのぼった。
また、マラソン初参加者は40代初めで減少するが、49歳で著しく急増する。49歳の初参加者は、1歳しか違わない50歳の初参加者の約3倍にのぼる。
さらに言えば、次の10年に近づくほど、走るスピードも上がるようだ。マラソン大会に何度か参加経験のある人は、29歳と39歳のときに、その前後の年齢で出したタイムよりもいいタイムを出していた。
■5.未来と現在が結びついている方が現在の重要性が高まる
英語やイタリア語、韓国語のように未来形をはっきり示す言語では、現在と未来を厳格に区別して話す必要がある。中国語や日本語、フィンランド語、エストニア語などのようにはっきり未来形を示さない言語では、その2つをあまり区別しないか、まったく区別しない。
チェンは次に、未来形を区別する人々と、あまり区別しない人々の行動に違いがあるのか――収入や教育、年齢その他要因を調整して――検証した。その結果、少々驚くような違いがあることがわかった。未来形をはっきり示さない人々――つまり現在形と未来形を明確に区別しない人々――は、はっきり区別する人々と比べて、定年後に備えた貯蓄をする人が30パーセント多く、喫煙者は24パーセント少なかった。また、前者は後者よりも、安全な性行為をし、定期的に運動し、定年後も健康で経済的に恵まれていた。この傾向は同じ国でも、たとえば未来形をはっきり示さない言語(ドイツ語)を話す国民と、はっきり示す言語(フランス語)を話す国民が共存するスイスなどでも見られた。
【感想】
◆かなり久しぶりとなるダニエル・ピンクの新作でしたが、過去の著作と比べると、かなり読みやすかった印象を受けました。というのも、今までの著作は「大きな1つのテーマ」があって、それを述べるのにさまざまなアプローチをする、というスタイルだったかと。
たとえばこの本辺りは、そうなのですが。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)
参考記事:【はてブ3000超!】ダニエル・ピンクの新作『モチベーション3.0』がついに登場!:マインドマップ的読書感想文(2010年07月06日)
それに対して本書は、いくつかのテーマがあって、それぞれについて言及する、といった感じ。
誤解を恐れずに言うなら、「マルコム・グラッドウェルの新作」と言って渡されたら、何の疑いもなく読み切っていたと思います。
……まぁ、本書も「いつやるか」という大きなテーマがある、と言われたらそうなのですが。
◆まず第1章は人の「クロノタイプ」(体内時計の個人差)について。
詳細に関しては、アマゾンの内容紹介で触れられているので、まずはそちらをご覧ください。
もちろん人に「朝型」と「夜型」がいることは広く知られています(それ以外の「第三の鳥型」が一番多いとは知りませんでしたが)し、頭の冴えている午前中に大事な仕事をしましょう(「夜型」でない限りは)、というTIPSは類書でもおなじみです。
しかし上記ポイントの1番目にあるように、「イノべーションとクリエイティビティ」を必要とするのなら、むしろ「頭が冴えていない時間帯にすべし」というのは初耳でした。
この理論でいくと、朝っぱらからアイデア出しのような作業をするのは、効率的ではないことになるわけで。
なお、続く第2章は「休憩・ランチ・昼寝とパフォーマンスの関係」ということで、実は当ブログでご紹介した「睡眠本」や「健康本」ともかぶる内容なので割愛しております。
ただし、他の章同様、エビデンスはしっかりあがっていますので、興味のある方はご確認を。
◆一方第3章からの3つの章は、ものごとの「開始」「中間」「終了」のタイミングについて。
上記ポイントの2番目は、「開始」に関するお話で、「元旦」をスタートとする人が多いのは、非常に納得のいくところです。
また上記ポイントの3番目の「生涯賃金」のお話も、同じ第3章からのものなのですが、こちらは自分で選択できない問題が。
なお、初任給の問題だけではなく、キャリアの最初では、本来適職を見つけるために転職すべきところ、景気が悪いと転職もできません。
結果、自分のスキルに適していない職に留まらざるを得ず、高収入を得られなくなるという……。
日本においては、「就職氷河期」という、そのまま該当する層が存在するので、本当に他人ごとではありません。
◆さらに1つ飛んで、第5章は「終了」がテーマ。
上記ポイントの4番目のマラソンの年齢の話は、今まで考えてもみませんでした。
でもたとえば結婚を意識する人が、「20代のうちに」「30代のうちに」と焦る気持ちは理解できます。
また、本書によるとあの不倫サイトの「アシュレイ・マディソン」では、会員男性の8人に1人が29歳、39歳、49歳、59歳で、この割合は他の年齢よりも約18%高いのだそう。
……ただこれって、単に男性が上の代になったのを、年ごまかししているだけな気もするのですがw
なお、割愛した中では、孤立したわけではないのに、「高齢者は友人を選択する」というお話が、非常に興味深かったです(詳細は本書を)。
◆ちなみに上記ポイントの5番目の「時制」のお話は、第7章からのもの。
用いる言語によって、その行動が異なる可能性があることは、私もイギリスでのホームステイ時に感じていました。
実際、スイス人の友人も多数いて、ドイツ語系とフランス語系とで行動パターンが全然違うのは、思考に用いる言語のせいかも、とは思っていました(帰国後、比較言語学の本を読み漁った)が、まさか時制に関係していたとは(可能性レベルですが)!?
以上のように、興味深いテーマを立て続けに繰り出してくる本書は、科学的自己啓発書好きの方なら、ハマることウケアイかと。
さらに各章の最後には、「タイムハッカーのハンドブック」と題して、ライフハックが多数収録されているのも見逃せません!
「科学的自己啓発書」好きなら読むべき1冊!
When 完璧なタイミングを科学する
第1章 日常生活―朝・昼・晩と完璧なタイミング
第2章 休む力―休憩・ランチ・昼寝とパフォーマンスの関係
第3章 開始―正しいスタート・再スタート・同時スタートの科学
第4章 中間地点―中だるみと中年の危機の科学
第5章 終了―ラストスパートとハッピーエンドの科学
第6章 ファスト&スロー―息の合ったグループの秘密
第7章 時制で考えることについて
監訳者あとがき 勝間和代
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。したたかな寄生 脳と体を乗っ取り巧みに操る生物たち (幻冬舎新書)
ウチのムスコが好きそうなテーマなのですが、まだちょっと早いかも。
送料を加算した中古よりは、Kindle版が200円ほどお得です。
【編集後記2】
◆先日の「『行動経済学』がわかるフェア」では、この辺が人気でした(順不同)。予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)
ファスト&スロー (下)
ファスト&スロー (上)
いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (早川書房)
参考記事:【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)
明日の幸せを科学する
どれも非常に多くの方にお買い上げいただいておりますので、未読の作品がありましたら、この機会にぜひ!
ご声援ありがとうございました!
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