2018年08月22日
【哲学?】『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』小林昌平
その悩み、哲学者がすでに答えを出しています
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、明日で終了となる「文響社 全品50%OFFセール」からの1冊。当ブログでは珍しい「哲学本」に挑戦してみました!
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「将来が不安」「お金がほしい」「死ぬのが怖い」
これらの現代人の悩みははるか昔から私たちを苦しめていた人類共通の悩みです。
であるならば、哲学者たちはこれらの悩みに答えを出しているはずです。
平易な言葉で哲学を学べて、あなたの悩みが解決する1冊です。
なお、Kindle版が中古よりも実質600円以上お得ですから、お求めは明日までに!
LEGOR philosophers / kosmolaut
【ポイント】
■1.困難は分割するそんなとき、デカルトの「困難の分割」からいえることはこうです。途方もない大きなことに思える「人生でどうしてもやりたいこと」を、 10年レベル、数年レベル、1年レベル、月レベル、毎日の生活(日課) というふうに小さくして、自分の手に負えるサイズに落としこむこと。
さらに1日の中の数時間、数分の単位、電車を待っているわずかな時間にまで落としこんで、自分がこの数分でもこれならやれる、腰をすえて取り組めるという小さなパーツへと分割するのです。(中略)
壮大な夢を描くことは志が高くて、すばらしいことのようですが、大口をたたいただけに終わってしまう可能性もあります。しかし、本気で取り組める小さなゴールに刻んでいったら、夢は夢でなくなります。
1つ1つは大きくはないけれど、確実な結果が待っている、成果の手ごたえのある作業になります。そうしたら、人生が楽しくなる予感がたしかなものとして得られるのです。夢のような手に負えないサイズ感を、このサイズなら身の丈で取り組めると思えるところまで小さくするのが、デカルト的アプローチです。
■2.すべてのものは、いつか消えてなくなる
後先をむやみに思い悩み、本番が近づくと不安と緊張でいてもたってもいられなくなる。このことからもわかるのは、私たちは「渇愛」や「煩悩」 から「執着」へと感情をのめりこませ、エスカレートさせてしまう(カントであれば「傾向性」というであろう)心の「癖」をもっているということです。
私たちはその「癖」を客観視したり、俯瞰してみることなく、ただ無自覚に、日々とらわれるがままになっている。日ごろ無数に受ける雑多な刺激から、習慣的・盲目的に煩悩を育て、ふくらませつづけている状態で生きてしまっているのです。
そういうとき、仏教の教えはつねに明快です。「およそ集起する性質のものは、すべて滅尽する性質のものである」。(パーリ仏典『大品』)「原因によって生じたものごとは、すべていつか消えてなくなる」ということです。
私たちが経験するすべての現象は、原因が寄り集まって起こるものであり、その原因がなくなれば、すっかり消滅してしまうものなのです。
■3.他人と比べず、集中して課題に取り組む
たとえば純粋に実力が支配するものづくりのプロセスでは、他人との比較で優越感や劣等感を感じることなど無意味で、来た依頼に自分の持てるかぎりの力を出しきれるかがすべてになります。
その状態こそが心理学者チクセントミハイの提唱する「フロー体験」です。
「人生をどうしたら幸せなものにできるか」というテーマに生涯かけて挑んだチクセントミハイは、人が生きていることを実感し、自己肯定感を感じられるのは「チャレンジとスキルのバランスがとれている時」であるという結論に至りました。(中略)「集中して取り組むべき何かをやりとげている時は、同時に自分の存在を感じるほどの注意力は残っていない」とチクセントミハイはいいます。「フロー体験」をしている間は、他人の存在はもちろん、自分の存在さえも忘れられている。没我、つまり、エクスタシーの状態にあるのです。
■4.他人の課題と自分の課題を切り分ける
では、「なぜ、この私が人からバカにされ、下に見られるのか」。
このような悩みに「課題の分離」を適用すると、どうなるでしょうか?
結論からいえば、「下に見られたくない」と願うのは自分の課題かもしれませんが、「わたしのことを下に見てくるかどうか」は他者の課題だ、ということです。
自分を下に見てくる人がいたとしても、自分はそこに介入することはできないし、止めさせることもできない。だとすれば「下に見てるヤツは勝手に下に見させておけばいいじゃないか」というように、他人の課題と自分の課題を切り分けられれば、問題は起こらないのです。
つまり、下に見られること自体が問題なのではなく、 下に見られることを自分の課題であるかのように気にしてしまうこと、他人の課題が自分の課題であるかのように錯覚してしまうことが問題なのです。「他人の課題を勝手に背負いこむから苦しくなるのだ」とアドラーは言っています。
■5.なんでもない日常から、人生の「悟り」を得る
面倒くさいと思ってつい後回しにしていた作業を、雑務だからと焦って片づけるのではなく、「この仕事、意味あるんだろうか?」と意味を考えるのでもなく、ただもう無心に、徹底的に、丁寧にやってみるのはいかがでしょうか。
ふだん掃除をしていなかったところを掃き清める。久しく洗っていなかったものを洗ってみる。いつか捨てようと思っていたものを 断捨離 してみる。一からだしをとってごはんをつくってみる。会社でも日程調整や 稟議 手続き、そのひとつひとつを、細部までクリアにしながら、丹念に、ていねいにやってみる。
会社や家の中の「雑事」も「動く坐禅」ととらえ、目的をもたず、無心に、一意専心に打ちこむこと。そうすればあなたの心の中に仏が住まうことを知るはずです。ささやかなことと思うかもしれませんが、そんなことで人は生きることのよろこびを実感できたりするのです。
【感想】
◆なかなか興味深い「お悩み相談室」でした。実は、その「悩み」自体は、すべてアマゾンの詳細な内容紹介にて掲載済み。
ただしその「悩み」は、実際の「誰か」の「悩み」ではなくて、きわめて一般的なものとなっています。
つまり、普通「お悩み相談室」と言ったら
「会社を辞めたいが辞められない」とあっても(実際にアマゾンから引用)、それは単なる小見出しであって、それに続いて具体的な詳細(「48歳の会社員です……」的な)があるものですが、本書はあくまでその小見出しのみで、詳細はありません。
そしてそれぞれの悩みに対して、「哲学者」の言葉を引用して解決するスタイルとなっています。
◆もっともその「哲学者」というのも、かなり広範囲なもの。
アリストテレスやデカルト、ニーチェあたりは分かるのですが、行動経済学のダニエル・カーネマンや、心理学者であるアルフレッド・アドラー、「フロー体験」でおなじみのミハイ・チクセントミハイも含まれています。
……まぁ、でも彼らの考え方なり発言内容は、哲学的と言ったら哲学的ですから、あまり違和感はナシ。
実際、読んでいただくとお分かりのように、上記ポイントの3番目はチクセントミハイですし、4番目はアドラーなんですけどねw
なお、念のため残りについても触れておきますと、上記ポイントの1番目はデカルト、2番目はブッダ、5番目は道元……って、結局哲学者以外のところばかり抜き出してしまったのですが!?
◆というのも、本書はその構成上、すべての「悩み」1つずつに対して、「哲学者」の教えを1つ対応させている結果、まったくなじみのない哲学者の理論を、ほんの数ページでまとめあげて結論を出さなくてはなりません。
そこである程度難しいものや補足が必要なものについては、それぞれの「悩み」の巻末に注釈がつけられているのですが、これが結構なボリュームになっているという。
実はこの注釈部分は、フォントサイズが本文より一回り小さいんで、もし同じサイズだったら、「悩み」によっては本文の1/3近くを占めるものもありました。
そもそもガチな哲学的な理論を、私のようにまったく知らない人間相手に説明しようと思ったら、それくらいの文字数は必要になるのも致し方ないでしょう。
それでもイマイチ理解できない部分があった自分、涙目の巻……。
◆あとは、それぞれの理論なり考え方が、各「悩み」を解決しているのか否か。
スコーンとハマっているものもあるのですが、「それ、無理やりでしょう」というのも無きにしも非ずです(あくまで個人の印象です)。
そこでむしろ「なるほど、そういう考え方もありか!」と新たな視点を得た、と考えればそれもまたアリかと。
たとえば上記ポイントの3番目は、上記で触れたようにチクセントミハイの「フロー体験」のお話なのですが、実はこれが解決している「悩み」が「自分を他人と比べて落ち込んでしまう」というもの。
確かにフロー状態になると、周りのことなど気にならなくなるようですから、それを他人との比較の悩みに用いるというのは、理屈としてはつながってます。
……もっともフローに入れるほど没頭している人が、そんな悩みを抱えるのか、という話もありますがw
手軽に哲学のエッセンスを得られる1冊!
その悩み、哲学者がすでに答えを出しています
仕事編
劣等感・自意識編
人間関係編
恋愛・結婚編
人生編
死・病気編
【関連記事】
【コミュニケーション】『人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学』岸見一郎(2016年07月08日)【行動経済学の誕生】『かくて行動経済学は生まれり』マイケル・ルイス(2017年07月30日)
【名言集】『ショーペンハウアー 大切な教え』(2010年10月07日)
【ネガティ部?】『心がラクになる後ろ向き名言100選』(2010年11月05日)
【オススメ】『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』岡田斗司夫 FREEex(2012年10月01日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった
テーマが「生産性」ということで、当ブログの読者さんにとっても興味深いものかと。
なお、めったにセールをしない東洋経済さんの本が「51%OFF」となって、送料を加算した中古よりも500円弱お得です!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「自己啓発・気づき」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
12月16日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです