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2018年08月08日

【オススメ!】『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』涌井良幸,涌井貞美


雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科
雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、明日でセール終了となる「学び直し本フェア」からの1冊。

当ブログでは以前、文房具本や速算術本をレビューしたことのある涌井良幸さん&涌井貞美さんご兄弟による、「図解系技術本」とでも言うべき作品なのですが、これが結構「アタリ」でした!

アマゾンの内容紹介から。
私たちは今、“すごい技術”とともに生きている!身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説!身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで。あれもこれも、「科学技術」の結晶だった!身近なモノのしくみが図解で丸わかり。

なお、中古がそれほど値下がりしていませんから、このKindle版が500円強、お得な計算です!





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【ポイント】

■1.タワークレーンは誰がどうやって持ち上げる?
 タワークレーンは高層ビルの建築に欠かせない。低層のビル建築ならクレーン車で資材を最上階まで届けられるが、高層ビルの建設ではそうはいかないからだ。資材を最上部に持ち上げるには、どうしてもタワークレーンの力が必要なのだ。
 ところで、このタワークレーン。見ていると不思議なことが起こる。ビルの成長に合わせて、自分も高い位置にどんどん移動しているのだ。
 タワークレーンの一連の工事の流れは、(1)組み立て(2)クライミング(3)解体の順で行なわれる。
 (1)の「組み立て」は足場を固める作業である。次の(2)では、ビルの成長に合わせて、クレーンを尺取虫のように 這い上がらせていく。(3)の「解体」では、親亀・子亀・孫亀方式で屋上から分解していく。すなわち、ひと回り小さい子クレーンを元の親クレーンの隣に設置し、それで親クレーンを解体する。次に、その子クレーンはさらに小さい孫クレーンを隣に設置して解体するのである。これらを繰り返すことで、御用済みのタワークレーンは地上に下ろされるのだ。最後に残った解体用クレーンは、人力で解体してエレベーターで階下に下ろすことになる。


■2.エアコンが消費電力以上に冷暖房能力が大きい秘密
 では、実際に冷やすしくみを見てみよう。エアコンは圧縮器(すなわちポンプ)と2つの熱交換器からできている。一方を凝縮器、他を蒸発器というが、しくみは同一である。冷房の際、室内機の中の「蒸発器」で冷媒は蒸発して気化熱を奪い室内を冷やす。気体となった冷媒はポンプの力で「凝縮器」に運ばれ、室内で奪った熱を放出して液体になる。この繰り返しが「冷房」である。
 注目すべきは、ポンプは室内の熱を室外に運ぶだけ、ということだ。運ぶだけなら大きな電力は不要である。こうして、消費電力以上に、部屋の空気は冷やされることになる。
 次は暖房のしくみを考えてみよう。先ほどの冷房時のエアコンを逆に回してみる。すると、冷房時とは逆に、ポンプは室外の熱を室内に運ぶことになる。これが暖房のしくみである。電熱器など不要なのだ。冷房時と同様、熱を運ぶだけなので、消費電力以上に暖房効果が得られることになる。


■3.曇らない鏡はなぜ曇らない?
 鏡が曇るのは、鏡に無数の小さな水滴がつき、光が乱反射するからである。したがって、この水滴をなくしてしまえば、鏡は曇らないはずだ。曇りを解消するには、鏡に水滴をなじませてしまえばいい。つまり、鏡の表面を親水化すればいいのだ。そうすれば、表面は平らになり、鏡は曇らない。その親水化の物質でできた製品が曇り止めスプレーなのである。
 曇り止めスプレーには親水性ポリマーが利用される。親水性ポリマーはイオン性の有機化合樹脂で、鏡にとりついて親水性の膜を作る。こうして水滴は鏡の表面で平らになり、曇らなくなる。
 ただし、スプレーによる「曇り止め」には限界がある。時間とともに親水性ポリマーが剝がれ落ち、効果が消えてしまうからだ。そこで、最初から鏡に親水性の物質をコーティングしておく方法が開発されている。それが酸化チタンを利用する方法である。
 近年知られるようになったことだが、酸化チタンには超親水と呼ばれる性質がある。酸化チタンに光を当てると、その周辺が高い親水性を帯びる、というありがたい性質だ。そのため、酸化チタンを鏡のガラス表面にまぶしておけば、鏡表面は親水状態を保ち、曇ることがないのだ。


■4.最近の新幹線がアヒル顔のワケ
 アヒルのようなマスクを採用した理由には、もちろんスピード対策もある。しかし、それ以上に重要なのがトンネル対策だ。「団子鼻」をした昔の新幹線「ひかり」が時速300キロでトンネルに突入すると、トンネルの出口で「ドーン」という爆発音がしてしまう。逃げ場を失った空気が車両の前で圧縮され、衝撃波となって出口側に伝わり吹き出すからだ。これをトンネル微気圧波というが、車両が通過するたびに爆発音がしては、沿線住民に迷惑である。この騒音問題を解決したのがアヒル顔なのである。
 トンネル微気圧波をなくすには、列車の先頭形状を 鋭くし、空気の逃げ場を作ればいい。そこで登場したのがジェット機のようなスマートな先端を持つ、500系と名づけられた「のぞみ」。しかし、これはスマートであるがゆえに車幅が 狭いという欠点があり、鉄道ファンには人気があったが事業者には不評だった。そこで登場したのが700系「のぞみ」である。サイドを削ってアヒルのくちばしのように平べったいデザインにすることで、トンネルに入ったときに空気がくちばしの脇から逃げる。こうして、トンネル微気圧波の発生を抑えることができるのだ。先頭が平べったくなったおかげで、列車の幅を広くとれ、狭さも解消した。


■5.静電気防止グッズの2つの戦略
 静電気の被害を受けないためには、2つの戦略がある。1つは静電気を溜めないこと、もう1つはゆっくり流すことである。
 静電気をためないようにするグッズとしては、静電気防止スプレーが代表的である。これは洗剤の素である界面活性剤がおもな成分だ。吹きかけると、界面活性剤が表面を覆い、湿度を吸収したり保持しやすくしたりする。その水分から電気が流れるため、静電気がたまらないのである。柔軟剤を用いて洗った衣類を着るのも有効だ。洗濯の仕上げをシットリさせるために、洗濯後の布の表面には界面活性剤の成分が残るようになっている。これが水分を留め、電気を流しやすくしてくれる。
 静電気をゆっくり流すグッズとしては静電気除去キーホルダーが挙げられる。先端部には導電性のゴムが付けられていて、ほどよい電気抵抗を生むように設計されている。ドアのノブに触れる前にこの先端部を 介して触ると、体にたまった静電気はゆっくり流れ去り、痛さを感じないことになる。


【感想】

◆予想以上に充実した内容で、図解もなんのそので、ハイライトを引きまくりました。

それもそのはず、本書は下記の3冊を合本再編集したものだから。

雑学科学読本 身のまわりのモノの技術 雑学科学読本シリーズ (中経の文庫)
雑学科学読本 身のまわりのモノの技術 雑学科学読本シリーズ (中経の文庫)

雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2 雑学科学読本シリーズ (中経の文庫)
雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2 雑学科学読本シリーズ (中経の文庫)

雑学科学読本 文房具のスゴい技術 雑学科学読本シリーズ (中経の文庫)
雑学科学読本 文房具のスゴい技術 雑学科学読本シリーズ (中経の文庫)

文庫書き下ろし3冊を合本にして、単行本として出された作品というワケです。

ちなみに、最後の文房具バージョンは、当ブログでもレビュー済み。

参考記事:【文房具】『雑学科学読本 文房具のスゴい技術』涌井良幸,涌井貞美(2014年05月02日)

文房具は最後の第7章だったので、おわりまで来てから「何となく見覚えがある」と気が付いたという。

ですから、この3冊のいずれかをお持ちの方は、一応ご留意ください。


◆とはいえ、元ネタ本をお持ちでない方にとっては、本書はお買い得本であることは間違いなし!

私は確認のために無料サンプルをダウンロードしたのですが、初っぱなのタワークレーンのお話だけで、購入を決定しました。

これ、上記ポイントの1番目ですと、文章だけで今ひとつ分かりにくいところ、本文の方ですと解説イラスト有り。

そのイラストも、たまにKindle版だと拡大しても読めない図解が結構ある中、本書のイラストはそんなこともなく、老眼気味の私でも読むことができました。

というか、むしろこの解説イラストあってこその本書とも言えるわけで、そういう意味では本エントリーは、本書の魅力を半分も伝えられてないかもしれません。

実際、「イラストありき」の事例は避けている部分もありますしね。


◆項目的には、下記目次のように全部で7つの章から成り立っています。

第1章の「外で見かけるすごい技術」では、上記のタワークレーンのほか、エレベーター、消火器、ゴルフボール等々。

特にゴルフボールは、ディンプルと呼ばれるくぼみのおかげで飛距離が伸びるのですが、「ベルヌーイの法則」ですとか「カルマン渦」といった物理用語が飛び交う興味深い仕組みでした。

続く第2章は家電がテーマで、そこからは上記ポイントの2番目のエアコンをセレクト。

私自身、エアコンは電気代が無駄にかかるものかと思っていたのですが、そうでもないのが意外でした。

ちなみにこの第2章は、さすが家電だけあって、イラストあってこそのお話が多く、これはやはり本書にてご確認いただきたいところです。


◆そしてこの「イラストありき」は第4章の乗り物も同様でした。

その中で比較的分かりやすかったのが、上記ポイントの4番目の新幹線。

てっきりあのアヒル顔は、スピードを追求したからかと思っていたのですが、騒音対策だったとは!?

また、第5章のハイテクは、ビットコインや生体認証といった「イラストがあっても分かりにくい」ものが多く、泣く泣く割愛……。

そんな中、ドローンはスマホの技術の転用が多いため、昨今こんなに安く、操縦しやすくなったのだそうです(詳細は本書を)。


◆なお、飛ばしてしまいましたが、第3章の生活用品は、無洗米やカップ麺といった、我が家でも見かけるものが多く、ムスコにもその「ヒミツ」を教えて、父親の威厳を保とうかと。

ステンレスがさびない秘密ですとか、テフロン加工のフライパンの仕組みも興味深いものでしたが、圧力鍋の仕組みは、実際に理科の試験でも問われそうですし。

もちろん、最後の第7章の文房具は、文房具ヲタの皆さんにとっては安定の面白さですから、こちらもお忘れなく。

固定レイアウト式かと思って、出た当時にスルーしてましたが、これはお役立ちの知識が詰まった良書だと思います。


これはオススメせざるを得ません!

雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科
雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科
第1章 外で見かけるすごい技術
第2章 身近な家電のすごい技術
第3章 生活用品のすごい技術
第4章 乗り物に見るすごい技術
第5章 ハイテクなすごい技術
第6章 便利グッズのすごい技術
第7章 文房具のすごい技術


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

東京ノスタルジック百景 失われつつある昭和の風景を探しに
東京ノスタルジック百景 失われつつある昭和の風景を探しに

ちゃんとしたレビュアーが星5つ付けているので、好きな方ならご検討アレ。

なお、送料を加算した中古よりも、Kindle版が700円弱、お求めやすくなっています。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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