2018年06月24日
【未来予想図?】『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』河合雅司
未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「講談社キャンペーン」でも注目を集めていた1冊。前作『未来の年表』が46万部超となった河合雅司さんの、待望の続編です。
アマゾンの内容紹介から。
少子高齢社会のリアルな脅威は、何気ない日常にこそ潜んでいます。10年後、20年後、あなたの身に迫る事態を一覧にしました。今からあなたにできる「メニュー」8つも提案。
なお、中古が相変わらず定価以上のお値段ですから、Kindle版が500円弱、お得な計算です!
Old couple / kayugee
【ポイント】
■1.出生率は上がっても出生数は減るこうした数字のマジックは、前著『未来の年表』でも解き明かしたように、母親となり得る出産可能な年齢の女性数が、過去の少子化の影響で激減し始めたことで起きる。この点を理解せず、「少子化にストップをかけます」などと恥ずかし気もなく語る議員や首長は実に多い
現在出産している女性の8割は25〜39歳である。2017年時点で40歳(1977年生まれ)となってこの年齢層を脱した女性と、新たに25歳(1992年生まれ)となって加わった女性の人口を、彼女たちの生まれた年の年間出生数で比較してみよう。前者が85万1720人に対し、後者は58万6853人で、なんと3割も減っている。
ちなみに、2018年に3歳になる2015年生まれの女児数は49万225人である。今後、大規模なベビーブームが長期にわたって続かない限り、出生数の回復が望めないことがお分かりいただけるだろう。
■2.人口減で野菜が高くなる
ところで、野菜の高騰に人口問題が深く関わっていることをご存じだろうか? 少子高齢化こそ、高騰の"主犯格"と言っても過言ではないのである。
農水省の「食料・農業・農村白書」(2017年版)を見よう。国内の経営耕地面積が30a以上、または年間の農産物販売金額が50万円以上の農家数は、2015年は133万戸と10年前(2005年)の196万戸と比べて、32%の減少となった。(中略)
実は、野菜は農産物の中でも特に栽培の手間が掛かる。田植えから収穫まで一貫して機械化が進んでいるコメとは異なり、農機具の機械化はかなり遅れており、いまでも人手に頼って一個一個収穫するのが主流だ。こうした負担が、生産量の伸び悩む大きな原因となっているのである。機械化が進まなければ、高齢者にとっては体力的にきつい。人口が減って収穫作業などに応援を求めるのも困難となってきた地域では、機械化が進む稲作に専念する方向へ向かうだろう。
■3.過密ダイヤは不可能に
「はじめに」でも触れたが、高齢者の外出が増えれば、電車のダイヤ乱れも懸念される。現在、東京や大阪といった大都市では、多い時間帯ならば、数分に1本の間隔で電車を走らせている。そんな芸当が可能なのは、乗客の大多数がテキパキと動ける世代だからである。最近、電車内には高齢者が増えてきた印象を持つが、その高齢者はまだ、こうした「人の流れ」についていける年代である。
だが、乗降に駅員の手助けを要する「高齢化した高齢者」が増えればこうはいかない。過密ダイヤでの運行はできず、もっと余裕のある運行本数へと変えざるを得なくなる。
公共路線バスはなおさらだ。バス停ごとに杖を手にした高齢者が待っているとすれば、いくら低床バスであっても乗り降りに時間がかかる。スタッフは運転手一人。運転席を離れてサポートに回らなければならないとしたら、バス停ごとの停車時間は長引く。
■4.売り場やATMに長蛇の列が
若い世代の顧客ならば、自分の欲しい商品を求めて売り場に出向き、色や柄、サイズ、さわり心地といったところの確認だけをして購入する。買い物の目的が明確なお客さんが大多数で、商品説明をスムーズに行えるとなれば、経営者は、最少人数の店員を配置することで総人件費を抑制しようとするだろう。
だが、判断力が衰えた「高齢化した高齢者」の買い物客はそうはいかない。店員から商品説明を受けても1回ではなかなか理解できない。支払いに戸惑い、さらに時間がかかったりもする。それどころか、「私は何を買いに来たのかしら?」と買うべき品物を忘れてしまい、予定していなかった物だけ買って帰ってしまう人さえいる。
自治体の窓口業務も、金融機関のATMなどもそうだ。市役所の窓口に各種手続きのために訪れた高齢者が、身分証明書の提示を求められ、慌てて鞄をひっくり返すように探すとか、駅前に1台しか設置されていないATMを長時間にわたり"占拠"しているといった光景を時折、見かけるようになった。
■5.ネット通販も運ぶ人を確保できない
たしかに、この幹部官僚が予測する通り、映画や銀行決済はインターネットの発達で、もっと便利にサービスを享受できる社会が到来するだろう。
だが、日用品などの購入はこうはいかない。いま困っているのは、ネット通販の品揃えやインターネット環境の整備の遅れではなく、運ぶ人を確保できないことだ。今後、「買い物弱者」の需要が増せば増すほど、ドライバー不足がさらに深刻化し、商品が一向に届かない事態が頻発することは想像に難くない。結果として、少子高齢社会の「切り札」として期待するネット通販が行き詰まるという皮肉を生むことになる。(中略)
仮に、近い将来、普及まで漕ぎ着けたとして、無人運転のトラック自体が荷台から個別の商品を選別して降ろし、エレベーターのない共同住宅の階段を持って上がり、玄関先まで運んでインターフォンを押してくれるわけではないだろう。そうした技術を待つ間にも日本の高齢化はどんどん進み、「買い物弱者」は増えてしまう。
【感想】
◆上記のようにポイントを抜き出しただけだと分かりにくいのですが、本書は下記の前作とその作りが大きく違います。未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
参考記事:【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)
具体的に言うと、前作は「時系列」で「何が起きるのか」を列挙。
一方本書は、下記目次にもあるように、「住まい」「家族」「仕事」等のシーンにおいて、「何が起きるのか」を述べていく仕様です。
何でもこれは、著者の河合さんが、講演先やお便りで、前作を読んだ読者の方々から「自分の日常生活で何が起こるのかを教えてほしい」というリクエストを多々受けたことに由来しているのだそう。
つまり、前作が「マクロ」なお話だったのが、本書では「ミクロ」になっているというわけです。
◆そして本書は、この「ミクロ」なお話を「ギフトカタログ」のように提示。
小見出しとなったそれらをいくつか挙げていくと
・伴侶に先立たれると、自宅が凶器と化すといった感じです。
・東京や大阪の繁華街に、「幽霊屋敷」が出現する
・80 代が街を闊歩し、窓口・売り場は大混乱する
中には「親が亡くなると、地方銀行がなくなる」のように、一見「何でそうなるの?」と思わざるを得ないものもあるのですが、どうも「風が吹けば桶屋が〜」的に、あえて「間に入る要素」を割愛している気が……。
実際、上記の地方銀行の件は、「親が亡くなる」→「相続財産は親が預けていた地方銀行からメガバンク等に流れる」→「地方銀行の経営が傾く」というロジックです。
ただ「亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる」というのは、ちと飛躍しすぎではないか、と(実際あるみたいですが)。
◆個人的に上記ポイントの3番目は、指摘されて「確かに」と激しく納得。
地方はまだしも、都内のダイヤは乗客が速やかに乗降する前提で成り立っていますから、今後は見直す必要があるでしょう。
また、電車以上にシビアなのがバスで、電車と違ってギリギリまでバス停に寄せられるとは限りませんし、たとえノンステップバスであっても、急いで乗り降りしたら、怪我の危険があります。
同様にポイントの4番目も、時間に余裕のある高齢者が増えたら、店員と無駄話したり、ATMでもたつく(悪気はなくても)方が増えることは十分ありえるかと。
もっとも、今までの日本があくせくし過ぎていた、という話もあるのですが……。
◆なお、本書の第2部では「今からあなたにできること」と題して、具体的なメニュー(アクション)が8つ挙げられています。
アクションの主体が「個人」「女性」「企業」「地域」とあるうち、「家の中をコンパクト化する」というのは、一人暮らしの私の母にも言えること。
また、「年金受給開始年齢を繰り下げる」ことで、受給額が最大4割増える、というのは知りませんでした(詳細は本書を)。
正直、本としての完成度は、前作の方が上だと思うのですが、こういうTIPS的な内容は前作にはありませんでしたから、当ブログの読者さんにとっては、本書も捨てがたいかも。
まーでも、少子高齢化は避けられない以上、根本的な解決には、なかなかならないんですけどね……。
これからの日本で生きていく以上、読むべし!?
未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)
第1部 人口減少カタログ
1 あなたの住まいで起きること
2 あなたの家族に起きること
3 あなたの仕事で起きること
4 あなたの暮らしに起きること
5 女性に起きること
第2部 今からあなたにできること
個人ができること
女性ができること
企業ができること
地域ができること
【関連記事】
【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)「猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?」猪口 邦子、勝間 和代(2007年04月28日)
【都民必読?】『23区格差』池田利道(2015年11月17日)
【大変革?】『日本3.0 2020年の人生戦略』佐々木紀彦(2017年02月14日)
【編集後記】
◆昨日の「講談社キャンペーン」で人気だったのは、この辺りでした(順不同)。サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)
習慣の力 The Power of Habit (講談社+α文庫)
参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ(2013年04月26日)
最新 ウイスキーの科学 熟成の香味を生む驚きのプロセス (ブルーバックス)
未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法 No.1ストラテジストが教える
私は相変わらず株式投資には手を出していないのですが、興味のある方はご検討を。
送料を加算した中古よりも、Kindle版が800円以上お買い得です!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「社会」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
10月10日まで
9月26日までのところ一部値引に移行して延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです