2018年06月14日
【幸福?】『成功ではなく、幸福について語ろう』岸見一郎
成功ではなく、幸福について語ろう (幻冬舎単行本)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「幻冬舎キャンペーン」からの自己啓発書。アドラー心理学でおなじみである岸見一郎が、講演に人生相談に、と大活躍される1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
アドラー心理学・大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者による、“思い通りにならない毎日”を進んでいくための羅針盤。高校生へ語った伝説の講義、「これからの人生をどう生きるか」完全収録。仕事・恋愛・子育て・介護…あらゆる悩みに答えた、目から鱗の人生相談。
なお、中古が未だ高いため、送料を考えるとKindle版が600円弱お得な計算です!
happiness / Virginia L.
【ポイント】
■1.幸福は存在に関わり、成功は過程に関わる三木によれば、成功は進歩と同じく直線的な向上として考えられます。他方、幸福には本来、進歩というものがないということを指摘しています。幸福は存在だというのです。過程ではありません。今をこうしてここで生きていることが、そのままで幸福であるという意味です。どういうことかというと、幸福であるために何かを達成しなくてもいいということです。
しかし、成功はそうではありません。よい学校に入らないといけない。そして、よい会社に入らないといけない。そういうことを達成しなければ成功したとはいえないと考え、成功と幸福を同一視している人にとっては、成功していない今は幸福ではないことになるわけです。
■2.自分の課題は自分で決める
私は自分で決めることを「課題」という言葉でいつも説明しています。定義するとこうなります。あることの最終的な結末が誰にふりかかるか、あるいは、あることの最終的な責任を誰が引き受けなければならないか考えた時に、そのあることが誰の課題であるかがわかります。
一番簡単な例として、勉強する、しないは一体誰の課題なのか。勉強は親の課題だと勘違いをしている人は多く、そういう親は子どもが勉強しなければ「勉強しなさい」といいます。これは本来的にはいってはいけませんし、いえないのです。なぜかというと、勉強する、しないは子どもの課題であって、親の課題ではないからです。こんなことを説明しなければならないくらい、親は子どもの課題に口出しをしています。
■3.生きているだけでも貢献できる
私は50歳、今から11年前に心筋梗塞で倒れました。病院のベッドでまったく身動きが取れなくなりました。身体を片側に向いて寝かせられると、2時間くらいはそちらを向いたままです。(中略)
仕方なく、そんな状態で何日も過ごした後、思い当たりました。もしも親しい友人や家族が病気で入院したことを知れば、取るものも取りあえず見舞いに行くだろう。その時、友人や家族が どんなに重体であっても、生きていてよかった と思う。自分のこともそんなふうに考えていいと思ったのです。生還できただけで幸いです。それだけで喜んでくれる人がいるに違いない。あるいは、自分が生還できたことで他者に貢献できると思えるようになってから、精神的には安定しました。
それまでは、身動きの取れない自分は、人に貢献できない、生きていく価値がないのではないかと絶望していたのですが、ただ生きているというだけでもきっと自分は貢献できると私は思えるようになりました。
■4.過去と未来を棚上げする
私たちは過去のことを思って後悔しますが、その過去はもうないと考えるのです。今生きづらいのは過去の経験が原因だという人がいますが、もしもそうなら今の生きづらさから脱却するためには過去に戻ってその原因を取り除かなければならないことになります。しかし、タイムマシーンがない限り過去に戻れないのですから、これからもずっと生きづらさを感じ続けないといけないことになります。
過去の話をしたら、未来の話になります。それでは、未来はどうなのかというと、未来もありません。だから、まだ起こってないことについて不安になる必要はないのです。
明日考えればいいことは多々あります。まだ起きていないことを今考えなくてよいのです。今日考えても仕方ないことは今日考えない、今日という日を今日という日のためだけに生きるのです。
■5.自分に価値があると信じる
対人関係の中に入っていく勇気を持つためには、自分に価値があると思えないといけません。自分に価値があると思えなければ、対人関係の中に入っていけないからです。でも逆の人が多いのではないでしょうか。
対人関係の中に入っていかないために、自分に価値があると思わないようにしている。私なんかたいした人間ではないと思っている間は、対人関係の中に入っていかなくていいからです。自分でもこの自分のことが好きになれないのに、どうして他の人が自分のことを好きになってくれるだろうかと恐れているのです。しかし、自信を持ってしまったら対人関係の中に入っていかないといけなくなる。好きな彼や彼女に告白しないといけなくなる。しかし、そうしてしまうと、振られるなどしてつらい目にあうかもしれない。そう思って無意識に対人関係に入るのを避けているのです。
【感想】
◆冒頭で触れたように、本書はいくつかのコンテンツが合わさってできています。まず1つが、三木清の代表作である『人生論ノート』を、岸見先生がNHK・Eテレで紹介されたこの本の内容。
三木 清『人生論ノート』 2017年4月 (100分 de 名著)
ちなみに上記ポイントの1番目の初っ端に「三木によれば」とある三木とは、この三木清のこと。
岸見先生によると、『人生論ノート』を読み返すと、三木清は幸福について真正面から論じているのだそうです。
そして「幸福」こそが、本書に通底するテーマに他なりません。
さらに言うなら「幸福」と「成功」が異なるものであることは、上記ポイントの1番目にあるとおりです。
◆もう1つのコンテンツが、2017年9月に洛南高校・同付属中学校で実施された講演「これからの人生をどう生きるか〜才能を人のために活かすということ」。
これは書籍化されてはいないようなので、本邦初登場であり、本書の第2章に丸々収録。
実はここがかなり濃厚でして、もっともハイライトを引きまくってしまいました。
その中の1つが上記ポイントの2番目。
これはどこで誰に対して話したものなのかを知らないと、「子供に『勉強しろ』と言ってはいけない」と取られかねませんが、そうではなくて、「親や先生に言われるまでもなく、自分で自分の課題として取り組むべき」という話であることが分かります。
ちなみに洛南高校の偏差値がこちら……。
洛南高校の偏差値 | みんなの高校情報
同じく上記ポイントの3番目も、この第2章からであり、わざわざ中高生を前にこの話をしたということは、エリート校ゆえに、自己肯定できない子たちを励ましたのかと思った次第です。
◆ちなみに、全体のバランスを考えた上で、この第2章からは割愛した部分が多いのですが、他の章で似たようなことが言われていたので、そちらを抜き出したのが上記ポイントの4番目。
実は「過去」と「未来」を思い悩まずに、「今日という日を今日という日のためだけに生きる」という主張は、本書で何度か繰り返されています。
とはいえ、第2章ではそれに絡めて「人生設計はできない」と断言されており、中高生にそういうことを言っていいのかと小一時間(ry
もっとも、「今日という日を今日という日のためだけに生きる」「過去や未来を思い悩まない」という考え方自体は大事なことので、私たちも意識しておきたいところです。
◆そして本書の各章の後半で展開されているのが、岸見先生おなじみの(?)人生相談。
これは「幻冬舎Plus」の連載、「かけこみ人生相談」「岸見一郎の幸福論〜幸せとは表現するもの〜」の内容を再編集したものなのだとか。
このうち前者については、色々な回答者が登場してお答えしており、たとえば岸見先生の最新回はこのようになっています。
「息子がテレビの下請け会社を辞め、フリーの映像プロデューサーになると言い出し、食べていけるか心配です」回答「率直に言って、親にできることは何もありません」<かけこみ人生相談>岸見一郎 - 幻冬舎plus
一方、後者はこのようにまとめられているという。
岸見一郎<岸見一郎の幸福論 〜幸せとは表現するもの〜> - 幻冬舎plus
ちなみに、当ブログでは以前、岸見先生のこの人生相談本をご紹介しているのですが。
人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
参考記事:【コミュニケーション】『人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学』岸見一郎(2016年07月08日)
この本に比べると、本書の人生相談は、ネットで公開しているからか、ややマイルドな感じ。
それでも相変わらず「身も蓋もない」回答があるのも、また岸見先生らしくてよいと思います(いい意味で)。
「幸福」について考えさせられる1冊!
成功ではなく、幸福について語ろう (幻冬舎単行本)
第1章 成功と幸福
第2章 自分の課題・他人の課題
第3章 喧嘩に勝たない・人の期待にこたえない
第4章 今日という日を今日のためにだけ生きる
第5章 ただそこに、いるだけでいい
【関連記事】
【アドラー流?】『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』岸見一郎(2017年02月22日)【コミュニケーション】『人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学』岸見一郎(2016年07月08日)
【コミュニケーション】『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』戸田久実(著),岩井俊憲(監修)(2015年03月06日)
【地位財?】『幸せとお金の経済学』ロバート・H・フランク (著), 金森重樹 (翻訳)(2017年12月28日)
【編集後記】
◆本書で論じられた「幸福」と「成功」の関係については、こちらの本も見逃せないかな、と。幸せとお金の経済学
未読の方は、あわせてお読みいただければ、と。
なお、レビューは上記関連記事をご覧ください。
ご声援ありがとうございました!
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