2018年05月29日
【思考術】『深く考える力』田坂広志

深く考える力 (PHP新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「PHP研究所キャンペーン」からの1冊。おなじみ田坂広志先生が、タイトルどおり「深く考える力」を指南してくださっています。
アマゾンの内容紹介から。
緻密に論理を積み上げていく「論理思考」は、思考の初歩的な段階にすぎない。「深く考える力」とは、論理思考とは全く異なる思考のこと。それは、心の奥深くに眠る「賢明なもう一人の自分」の叡智を引き出す力。“論理思考を超えた叡智”が湧き上がる5つの技法と38のエッセイ。
セール期限である5月31日までなら、「50%ポイント還元」となりますから、このKindle版が実質500円強、お買い得となります!

Thinks a lot / D.Boyarrin
【ポイント】
■1.対極の言葉を結びつけるでは、どのようにして異質のアイデアを結びつけるのか。
その1つの技法が、「対極の言葉を結びつける」ことである。
例えば、本来、全く対極にある「未来」という言葉と「記憶」という言葉を結びつけ、「未来の記憶」という言葉を心に思い描いてみる。
すると、この言葉が刺激となり、触媒となって、「賢明なもう1人の自分」が動き出し、深い思索が始まる。
これは、「無用の用」「無計画の計画」「逆境という幸運」「病という福音」「偶然が教える人生の意味」「最先端科学と古典的宗教との融合」などの言葉も同様である。
こうした対極の言葉を結びつける技法は、「賢明なもう1人の自分」を刺激し、その働きを促し、新たなアイデアや考えを生み出していく。
■2.イノベーションを目的にしない
はたして、これまで 優れたイノベーションを起こしてきた人材は、 「イノベーションを起こす」ことを 「目的」にしてきただろうか。
そうではない。それも、やはり「結果」にすぎない。
例えば、「こんな商品があれば、世の中の多くの人が、喜ぶのではないか」という思い。
例えば、「こんなサービスがあれば、世の中で困っている人が、助かるのではないか」という思い。
そうした思いが、1人の技術者を、1人の起業家を、新商品の開発に駆り立て、新サービスの開発に没頭させる。(中略)
そうであるならば、我々は、「どうすれば、イノベーションを起こせる人材になれるか」「どうすればイノベーターになれるか」といったことを考えるよりも、「自分は、目の前の仕事に対して、どれほどの情熱を持っているか」をこそ、考えてみるべきであろう。
革新的な商品やサービスは、そして、ビジネスは、そうした情熱からこそ、生まれてくる。
■3.古典から学ぶべきものは?
実は、古典と呼ばれるものには、この2つの種類の言葉、「理想的人間像」を語る言葉と、「具体的修行法」を語る言葉が書かれている。
そして、未熟さと心の弱さを抱えて歩む我々にとって、真に励ましとなり、糧となるのは、実は、後者の言葉であり、こうした言葉をこそ、古典を読むとき、我々は、深く読み取るべきであろう。
そして、優れた古典の中には、著者自身が、1人の人間としての未熟さと心の弱さを抱え、それでも、人間としての成長を求め、悪戦苦闘しながら山道を登っていくなかで書かれたものが少なくない。(中略)
古典を通じて我々が深く学ぶべきは、登るべき「高き山の頂」だけではない。その頂に向かってどのように歩んでいくか、その「山道の登り方」を学ぶべきであり、山道を登るときの「心の置き所」をこそ、学ぶべきであろう。
■4.他者への嫌悪の感情から自分を疑う
たしかに、人間には、自分でも嫌いな「自分の欠点」を指摘されると、それを認めたくないため、感情的に反発したくなる心理があるが、同様に、相手の姿の中に、自分でも嫌いな「自分の欠点」を見ると、それを見たくないため、その相手をますます嫌いになるという心理がある。
特に、相手の姿の中に、自分自身が心の奥深くに抑圧している「自分の嫌な面」を感じると、それが「自己嫌悪の投影」であることさえ気がつかず、相手に対する嫌悪感を抱くことがある。
そうした人間心理の機微を理解するならば、人生で「好きになれない人」や「嫌いな人」に出会ったとき、その人の「欠点」や「嫌な面」が、自分の中にもあるのではないかと考えてみることも1つの叡智であろう。
■5.すべてを、自分自身の責任として、引き受ける
すべてを、自分自身の責任として、引き受けること。
それは決して容易なことではないが、その心の姿勢を大切に歩むならば、我々は、確実に、1人の職業人として、1人の人間として、成長できる。
逆に、我々が成長の壁に突き当たるときは、この「引き受け」ができない。苦労や困難、失敗や敗北、挫折や喪失、病気や事故、何が起こっても、常に、自分以外の誰かに、そして、自分以外の何かに、その原因を求めようとしてしまう。
その背後には、我々の心の中の「小さなエゴ」の動きがある。
その「小さなエゴ」は、常に、我々の心の奥深くで、「俺は、悪くない」「私は、間違っていない」と叫び続けている。
そして、我々の心が強くなければ、自身の心の奥深くで動く、その「小さなエゴ」の姿を見つめることを、避けてしまう。
【感想】
◆冒頭の内容紹介に「5つの技法と38のエッセイ」とあるところから思い抱いていたイメージと、いい意味でかなり異なった内容でした。まず「5つの技法」については、本書の第1部「賢明なもう一人の自分」において詳しく解説されています。
具体的には、「賢明なもう一人の自分」の「叡智」を引き出す為の技法のこと。
たとえば、上記ポイントの1番目は、その第2の技法である「異質のアイデアを、敢えて結び付けてみる」ために行うものです。
一見、ただの言葉遊びのようですが、実は「弁証法」に基づく思索を深める技法なのだそう(詳細は本書を)。
実際、本書の第2部、第3部に収録されたエッセイの多くが、この「弁証法的思考の実例」とのことです。
◆また、上記では割愛しましたが、第3の技法とは「自分自身に『問い』を投げかけること」。
たしかに本書においても、数多く「なぜなら」「それは、なぜか」「では、どうするか」といったフレーズが出てきました。
……実際Kindleでググったら「なぜなら」で19件ヒットしていますねw
これに関して田坂さんいわく、
読者への問いかけであるとともに、「自問自答」の形を通じて、筆者自身が、心の奥深くの「もう一人の自分」に呼びかけ、その叡智を借りながら、思考を深め、文章を展開しているからとのこと。
ただし、必ずしも「賢明なもう一人の自分」が、すぐに答えをくれるわけではありません。
そういう場合に用いるのが、第4の技法である「一度、その『問い』を忘れる」。
具体的には本書を読んで頂くとして、なるほど、こういうプロセスを経て、田坂さんは思考を深めてらっしゃるのだな、と。
◆続く本書の第2部、第3部では、上記にあるように「38のエッセイ」が登場します。
これは田坂さんが毎週何万人かの読者に配信しているエッセイ・メール『風の便り』と、毎月某雑誌に寄稿している連載エッセイ『深き思索、静かな気づき』からのものらしく(明記されていないのですが)。
上記ポイントの2番目以降をお読みいただければお分かりのように、普段私たちが抱いている「エッセイ」のイメージとは、かなり趣きが違ったものとなっています。
……思わず「エッセイ」とはなんぞや、とググってみたのですが。
エッセイ(えっせい)とは - コトバンク
私は勝手に「気ままに書いた散文」みたいなものを「エッセイ」と呼ぶのかと思っていたのですが、何かしらのテーマに沿って思考する文章が本来の「エッセイ」のよう。
そういう意味でも、本書に収録された個々のエッセイが、田坂さんの「思考の結晶」と言えそうです。
◆たとえば上記ポイントの2番目のイノベーションのお話は、まさに本質を突いていますし、イノベーションを望むなら意識しておきたいところ。
ただ、あまりに「そもそも論」過ぎて、「目の前の仕事に対して、情熱を持て」とイノベーションの本で言われたら、ちと辛いな、と。
また、上記ポイントの4番目のお話も「同族嫌悪」としてよく聞く話ではあるのですが、そこから自分の「欠点」「嫌な面」を探るところまでは、自分自身考えておりませんでした。
本書ではそこからさらに展開して、どうすればそんな相手を受け入れるかについてにも言及しています(詳細は本書を)。
結局、「表層的に何かを考える」という次元で終わらせないで、どんどん「それは、なぜか」と縦にも横にも深掘りできるのが、田坂さんの魅力なのだな、と思った次第。
深く考えたい方なら、要チェックな1冊です!

深く考える力 (PHP新書)
第1部 賢明なもう一人の自分―深く考える力とは、心の奥深くの自分と対話する力
第2部 深き思索、静かな気づき―文章を書くこと、読むことは、思索の階段を降りていくこと
第3部 言葉との邂逅―心に触れる言葉に巡り会ったとき、深い思索が始まる
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【編集後記】
◆5月31日で終了となるKindleセールが多すぎて、ご紹介しきれないのですが、こういうものもありました。Amazon.co.jp: 50%OFF以上 高額書籍フェア: Kindleストア
この中でも特に、「ビジネス・経済」ジャンルは、チェックしておいても良さげです……。

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