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2018年05月20日

【決定版!】『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー


睡眠こそ最強の解決策である
睡眠こそ最強の解決策である


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で一番人気だった作品。

当ブログでは過去たくさんの睡眠本をレビューしてきましたが、その中でもピカイチだと思います。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
ガーデン紙やタイム誌も絶賛! アメリカの公共ラジオNPRの2017年ベストブックスに選出! サンデータイムズ、ノンフィクションベストセラー2位! 世界各国からオファー殺到の睡眠本、ついに日本初上陸! 睡眠7時間以内だと早死にする?学習前に仮眠をとると、学習能力が飛躍的に高まる? ――NBA、NFL、ピクサー…最強の睡眠コンサルタントが教える最強の睡眠法

なお、上記の未読本の記事投稿時点ではまだなかったKindle版も、いよいよ配信されております!





Sleepy / Mark Morgan Trinidad B


【ポイント】

■1.中年以降の睡眠は質が低下する
 思春期が終わり、20代の初めになると深いノンレム睡眠が安定するが、この安定もそれほど長くは続かない。睡眠の大規模な後退期は、あなたが思っている(または、望んでいる)よりも早くやって来る。とくに大きな打撃を受けるのが深い睡眠だ。レム睡眠は中年期になってもずっと安定しているが、深いノンレム睡眠の減少は、20代の終わりから30代の初めですでに始まっている。  
 そして40代になると、ノンレム睡眠中に発生する電気の量も質も低下する。深い眠りの時間が短くなり、深いノンレム睡眠の脳波も小さくなる。パワーを失い、回数も少ない。40代の半ばから終わりになると、10代のころに比べて、深い眠りが60〜70%も減少する。そして70歳になるころには、80〜90%の減少だ。
 当然ながら、当の本人は寝ているときも、または朝起きたときでさえ、睡眠中の電気信号の質まではわからない。それはつまり、年をとって深い睡眠の質が低下したことに、本人は気づいていないということになる。


■2.深いノンレム睡眠が長いと記憶が定着する
 第3章でも見たように、どの段階の睡眠が現れるかは時間によってだいたい決まっている。深いノンレム睡眠は夜の前半で、レム睡眠(と浅いノンレム睡眠)は夜の後半に現れる。
 そこで実験の参加者には、まず新しい情報を覚えてもらい、それから2つのグループに分け、1つには夜の前半だけ寝てもらい、もう1つは後半だけ寝てもらった。こうすることで、どちらのグループも睡眠時間は同じで(いつもより短いが)、前半のグループは深いノンレム睡眠が多くなり、後半のグループはレム睡眠が多くなる。
 これで、ノンレム睡眠とレム睡眠の戦いの舞台は整った。より多くの情報を脳に定着させたほうが勝ちとなる。事実に基づいた、教科書のような情報の場合、勝敗ははっきりしていた。深いノンレム睡眠の前半グループのほうが、覚えていた量が圧倒的に多いという結果になったのだ。


■3.睡眠は運動スキルを高める
 練習の結果、被験者のスキルは向上した。これはとくに驚くようなことではないだろう。次に、練習を終えて12時間たってから、打ち込む技能のテストを行った。被験者の半分は、午前中に練習し、その日の夜にテストを受ける。練習からテストまではずっと起きたままだ。そしてもう半分は夜に練習し、8時間寝てから翌朝にテストを受ける。
 日中起きていてテストを受けたグループは、スキルに目立った向上はなかった。しかし、一晩寝てからテストを受けたグループは、数字を打ち込むスピードが20%上昇し、正確性は35%も上昇したのだ。練習とテストの間隔は、どちらも12時間で同じだ。
 ここでもっとも興味深いのは、朝にスキルを習って夜にテストを受けたグループ(スキルの向上がなかったグループ)も、8時間睡眠を挟んださらに12時間後に再びテストを受けると、同じようなスキルの向上を見せたということだ。
 つまりスキルの練習をやめてからも、脳は独自に練習を続けているということだ。


■4.睡眠不足でダイエットをすると筋肉から落ちる
 ダイエットについて、最後にもう1つコメントしておきたい。全身の余分な肉を落としてすっきりするために、2週間だけ厳格なカロリー制限をするダイエットに挑戦するとしよう。これは肥満の男女を対象に、実際に行われた実験だ。参加者は病院に2週間にわたって入院し、厳格な食事制限のもとで生活をする。ただし、参加者の半分は1日に5時間半しか眠らず、残りの半分は8時間半睡眠だ。
 どちらのグループもたしかに体重は減った。しかし体重の減り方はまったく違った。5時間半睡眠のグループは、落ちた体重の70%が筋肉だった。つまり脂肪ではなく、主に筋肉が減ってしまったということだ。
 一方で8時間半睡眠のグループは、落ちた体重の50%以上が脂肪だった。脂肪を落として筋肉を残すという、理想的な減量に近づくことができた。睡眠不足の状態になると、身体は脂肪を手放さなくなる。そのため筋肉から減っていき、脂肪が残る。睡眠不足のときは、いくらダイエットに励んでも、残念ながらスリムで引き締まった身体は手に入らないのだ。


■5.睡眠によって創造性が増す
 実験の冒頭で、問題を解くルールを与えられる。しかしここには、被験者には教えられないルールも存在する。そのルールに気づけば、すぐに答えにたどり着ける。いってみれば近道のようなものだ。被験者は、ルールを知らずに、まず何百もの問題を地道に解いていく。それが終わると、また12時間後に戻ってきて同じような問題を解く。そして2度目のテストの終わりで、被験者は隠れたルールに気づいたか尋ねられる。
 このとき、被験者は2つのグループに分けられている。1つは朝に1回目のテストを受け、12時間ずっと起きていてその日のうちに2回目のテストを受ける。もう1つは夜に1回目のテストを受け、その後で8時間ぐっすり眠り、そして翌朝に2回目のテストを受ける。
 ずっと起きていたグループで隠されたルールに気づけたのは20%だけだった。しかし睡眠を挟んだグループは、ほぼ60%が気づくことができたのだ。これはつまり、睡眠によって創造性に3倍の開きが出たということだ!


【感想】

◆冒頭で「睡眠本としてピカイチ」と申し上げましたが、実際、本書はハイライトを引きまくりました。

もちろん、本の厚さにもよるので、一概には比較できないものの、引いた箇所的には過去最多レベル。

一応、当ブログではこれだけ睡眠関係本をレビューしてはいるのですが、まだこんなに知らない話があったのかと、驚かされたという。

タグ「睡眠」:マインドマップ的読書感想文

メインテーマが「睡眠」なのはいいとしても、それに関係した「健康」「記憶」「創造性」「昼寝」「寿命」といったサブテーマが豊富なため、いつもの基準でポイントを選んでいたら、最初の1/3も行かない時点で終わっていたと思います。


◆実際、今回あえて「健康」関係をバッサリ割愛して書きたかったくらい、「スキルアップ」系のお話は、目からウロコの連続。

たとえば、上記ポイントの2番目にあるように、同じ睡眠時間ならば、夜更かしして記憶するよりも、早く寝た方が良いようです。

もっともこれは、厳密には「深いノンレム睡眠」の量が問題となるので、上記ポイントの1番目で指摘されているように、「20代の終わりから30代の初め」から「深いノンレム睡眠」が徐々に減っていく以上、記憶もしにくくなっていく模様。

また、割愛した中では、睡眠中に電気刺激を与えることで、覚えた情報量が2倍になったり、特定の音を睡眠中に聞かせて記憶力が40%向上したお話もありましたから、気になる方は本書にてご確認を。

……ただし、現実的に一般家庭で再現するのは不可能とのことなので、まだ単に可能性としてのお話なのですが。


◆一方、同じく興味深かったのが、ポイントの最後の創造性。

よく「睡眠中にひらめいた」発明や発見等の逸話がありますが、そこまで突出したケースでなくとも、ちょっとしたひらめきなら、寝ることによって得られる可能性が高いことがよく分かりました。

要は、夜遅くまで思い悩むくらいなら、とっとと寝てしまった方が良いわけですね。

私は知らなかったのですが、ビートルズの『イエスタディ』と『レット・イット・ビー』、ローリング・ストーンズの『サティスファクション』も、寝ている間に思いついた曲なのだとか。

なんでも、「問題を寝かせる」というような表現は、世界のほとんどの言語に存在するそうなので、古くから皆、そうして問題が解決できることを理解していたようです。


◆そして、今までの作品同様、本書でも強調されていたのが、「健康」における睡眠の重要性。

本書でも睡眠不足が、ガンや心臓発作、糖尿病の原因となることを、声を大にして主張しています。

また、睡眠不足になるとジャンクなものが食べたくなるそうで、肥満につながることも立証。

これに関連して、個人的にグサっと来たのが、上記ポイントの4番目です。

実はここ数年で私の筋肉がげっそり落ちたのは、糖質制限によるダイエットのせいだと思っていたのですが、むしろ睡眠不足が良くなかったような。

実際「5時間半睡眠」って、私のいつもの睡眠時間ですし、これはホントにありえそうです。


◆他にも割愛したお話で触れておきたかったのが、過度な「朝型生活」における生産性の低下でしょうか。

アメリカでは、始業時間を前倒しにする流れに逆行し、むしろ始業時間を遅らせる学校がだんだんと増えてきているそうで、ミネソタ州の学校では、7時25分だった始業時間を8時30分にしたところ、SATと呼ばれる標準テストの平均点が劇的に上がったのだそう。

これは1つに、思春期の子どもたちが、大人と違って生活リズムが遅い(詳細は本書にて)ことにもよるのですが、やはり十分な睡眠と学習とは密接に関係しているわけです。

やはり昨今流行の「生産性」を向上させるには、睡眠を取るのが一番大事ですね!

……と、この記事を書くために、分厚い本書を夜遅くまで読んで、睡眠時間を削って記事を書いている私が言っても、あまり説得力がないのですが(涙目)。


「睡眠本」の大本命がここに!

睡眠こそ最強の解決策である
睡眠こそ最強の解決策である
Part1 眠りとは何か?
 第1章 「眠り」という謎
 第2章 睡眠リズムをとり戻す
 第3章 レム睡眠とノンレム睡眠
 第4章 ヒトは眠りで進化した
 第5章 年齢と睡眠

Part2 なぜ眠りが重要なのか?
 第6章 記憶力と睡眠
 第7章 睡眠不足と脳
 第8章 睡眠不足が寿命を縮める

Part3 なぜ夢を見るのか?
 第9章 レム睡眠の異常な世界
 第10章 夢は傷ついた心を癒す
 第11章 夢と創造と問題解決

Part4 睡眠とどう向き合うべきか?
 第12章 睡眠障害と眠らないことによる死
 第13章 あなたを眠らせない犯人は誰か
 第14章 眠りを妨げるもの、眠りを助けるもの
 第15章 睡眠のために社会は何をすべきか?
 第16章 21世紀の新しい睡眠

おわりに――眠るべきか、眠らざるべきか
付録――健やかな眠りのための12のアドバイス


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【睡眠HACKS!】『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』ショーン・スティーブンソン(2017年03月03日)

【睡眠】『脳にいい24時間の使い方』に学ぶ「眠りのコツ」5選(2016年09月27日)


【編集後記】

◆昨日の「語学・資格検定フェア」の記事では、この辺りが人気でした(順不同)。

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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