2018年04月15日
【睡眠】『睡眠負債 『ちょっと寝不足』が命を縮める』NHKスペシャル取材班
睡眠負債 『ちょっと寝不足』が命を縮める (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昔から睡眠時間を削ってこのブログを書いている私にとっては、他人事ではない1冊。2017年6月に放送された「NHKスペシャル・睡眠負債が危ない〜"ちょっと寝不足"が命を縮める〜」の内容をもとに、番組では紹介できなかった取材を加えて書籍化したものが本書になります。
アマゾンの内容紹介から。
毎日1、2時間というわずかな睡眠不足が、借金のように積み重なっていく「睡眠負債」。仕事や家事など日々の生活の質を下げるだけでなく、重大事故の原因となったり、がんや認知症といった命にかかわる病気のリスクを高めたりすることも。この現代社会の新たな脅威をどう予防、対策すればよいのか?25万人大調査の結果と最新研究の取材をもとに迫る。
まだ中古が値下がりしていませんから、私は当然お得なKindle版で読んでおります。
Sleeping / andrewr
【ポイント】
■1.睡眠時間が短い日本人また、先進諸国の中でも日本人は平均睡眠時間が短いことがデータで明らかになっている。15歳から64歳を対象に睡眠時間を調査したところ、日本(2011年調査)は463分(7時間43分)であった。米国(2010年調査)は516分(8時間36分)、OECD加盟国のうちデータのある25カ国の平均499分(8時間19分)と比較すると、その短さは際立つ。睡眠時間は25カ国中、ノルウェー(2010年調査)と並ぶ23位(最下位は韓国=2009年調査)である。
前出・デメント氏はこう言う。
「国民の睡眠時間が確実に不足しているのであれば、社会全体にその証拠が見られると思います。例えば、地下鉄が駅に入ってきたとき、電車の中で寝ている人はどれくらいいますか? 日本ではかなりの人が寝ているのが見受けられると思います。他の場面でもよく寝ていますよね」
本来、寝るべき状況ではないはずの移動時間に眠ってしまうのは、睡眠負債が溜まっていることを示しているかもしれない。
■2.睡眠負債は認知症にも影響する
この白川氏の話の裏付けの1つとなるのが、フィンランドで約2000人を対象に行われた睡眠時間と認知症のリスクの関係性に関する調査(Virta JJ et al.SLEEP 2013)。40〜50代の睡眠時間と、その後の認知症のリスクを調べた結果、睡眠時間7〜8時間の人に比べて7時間未満の人は、認知症のリスクが1.59 倍高くなったという結果が出ている。
もっとも忘れてはならないのは「睡眠負債は認知症の直接原因ではなく、あくまで危険因子である」(西野氏)ということだ。その上で西野氏は、私たちにこう話してくれた。
「睡眠負債があると、健康を害する可能性が高いし、それが長期間に及ぶと、変性疾患などのリスクも上がってくる。また従来から言われているように、睡眠不足があると不安神経症や薬物依存の発症の可能性が高くなる。やはり睡眠というものは大切で、一般の人々が関心を持っていただけるようになったのは、研究者として喜ばしいことだ」
■3.睡眠とがんとの相関関係について
ゴザル教授 睡眠とがんの間に何らかの関係があるという発想自体が、疑いの目で見られていました。「そんな研究に意義があるとは思えない」と言われたものです。しかし私たちの研究と同時期に、疫学的データも出始めました。データによると、がん患者が空港のそば等の騒音のひどい場所に住んでいたり、たびたび眠りを邪魔されるような環境にいたり、睡眠不足だったりすると、患っているがんによる死亡率が高くなったり、がんが悪化したりすることがわかってきたのです。言い換えれば、正常な睡眠をとっている場合に比べ、がんが大きくなったり侵襲性が高くなったりして、体内に広がるということです。そうしたデータと我々の研究とを総合した結果、睡眠と免疫システムとがんとの間に関連性があることが証明されました。
■4.睡眠負債返済の唯一の方法は「もっと眠ること」
私たちにとって恐ろしい結果を引き起こす可能性がある睡眠負債。どのように解消していけばいいのだろうか。
スタンフォード大学睡眠医学研究所の初代所長・デメント氏の回答は極めて単純明快である。
「睡眠負債を返済する唯一の方法は、もっと眠ることです。今よりも、もっと眠ることです」
シカゴ大学教授・ゴザル氏も全く同じ見解である。8時間眠るべきところを6時間しか眠れない場合、2時間の借りができ、それを返済するためには2時間余計に眠るしかない。そのことを「睡眠の質・量を銀行口座と同じように考えるべきです」と端的に表現する。
つまり、仮に質の良い睡眠をとっても十分な長さが確保されなければ負債は返済できないし、逆に長く眠ったとしても質の良い睡眠でなければ返済はできない。
■5.溜まった睡眠負債の返済睡眠時間は?
その人の負債がどれぐらいかによって変わってきます。例えば1日1時間の不足が10日続けば、10時間の負債ということになります。それを一度に返そうとすると、必要な睡眠+返済分で、だいたい17時間以上眠らないといけないことになります。それは非現実的な話です。
ただ、溜まった睡眠負債の量をすべて返済する必要があるかというと、10時間分の睡眠負債でも、日々1〜2時間長めに2、3日かけて返せば充分なようです。
例えば若年者を対象に36時間の断眠(睡眠負債はほぼ14時間)を行った実験でも、回復第1夜には10〜12時間程度しか眠れず、回復第2夜でも9〜10時間しか眠れないという結果になりました。これは、14時間の睡眠負債を、多くても6時間程度で返済できたことになるのです。
【感想】
◆結局この記事を書くために、夜遅くまで起きていた私にとっては「耳イタイ」お話の連続でした。そもそもどのくらいの人が、実際に「睡眠負債」を抱えているのか?
これについては、冒頭で触れたNHKスペシャルの中で、実際に実験が行われています。
簡単に言うと、健康に自信のある男女47人に、翌日仕事のない日にホテルに宿泊してもらい、「普段と同じ時刻」に寝て、何時に起きるかを確認する、というもの。
この実験の結果、2日目の睡眠時間の増加が2時間未満だった被験者は12人(40%)。残る18人(60%)は2時間以上プラスになった(2〜3時間が10人= 33.3%、3時間以上が8人= 26.7%)。つまり、6割の人は日頃の睡眠では足りていないワケです。
また、上記ポイントの1番目にあるように、日本は睡眠時間が「25カ国中23番目」とかなり悪いのですが、それでも「7時間43分」って、そんな長時間、病気でもない限り寝た記憶がない自分。
ただ、この数字は「15歳以上」ということで高校生も含まれていますから、必ずしもビジネスパーソンが鵜呑みにしなくてもいいハズ(お年よりも含まれているので「いってこい」の可能性もあります)。
◆では、睡眠負債によってどういった健康上の問題が起こりうるかについては、上記ポイントの2番目と3番目に説明が。
まず認知症との関係については、スタンフォード大学で睡眠を研究している西野精治博士の実験結果を紹介しています。
何でも、睡眠制限を行ったマウスは、脳の老廃物である物質(「アミロイドβ」)の沈着が、普通のマウスに比べて著しく増大したのだそう。
この「アミロイドβ」は、睡眠中に脳から排出されるものなので、睡眠時間が少ないと、当然脳に残ってしまい、認知症を引き起こす可能性が高まります。
さらに「アミロイドβ」の増加は、急性的な睡眠不足ならば回復できるものの、恒常的なものだとどうも「不可逆的」らしく……(詳細は本書を)。
同様に上記ポイントの3番目にあるように、睡眠負債は、がんとの関連性もあります。
上記引用部分では、シカゴ大学のゴザル教授のお話だけですが、本書では教授のマウスを使った実験も紹介されており、なるほど睡眠負債に陥ったマウスの腫瘍細胞は増大していました(こちらも詳細は本書を)。
◆ではどうやって睡眠負債を返済するか、ということについては、本書の第6章からに詳しいです。
簡単に言ってしまえば、上記ポイントの4番目にあるように、「もっと眠ること」。
身も蓋もないお話ではあるのですが、睡眠の「質」をとやかく言う前に「量」を何とかする必要があるようです。
ちなみによくある「90分サイクル説」も、本書では重視していません(上記西野博士によると「そこまでとらわれる必要はない」とのこと)。
さらに「午後10時から午前2時」という、俗に言う「睡眠のゴールデンタイム」については、触れられもしていないという……。
なお、他の俗説として「眠れなくてもただ横になっているだけでいい」というものもありますが、これについては、睡眠評価研究機構代表・白川氏いわく「起きている限り脳は疲労します」とのことでした。
◆さて、その肝心の必要睡眠時間について。
本書で何度か登場する実験ですと、とにかく音や光を遮断した状態で被験者を生活させると、最初は1日平均16時間眠るそうなのですが、それが徐々に減っていき、最終的には8時間程度に落ち着くのだそうです。
日本でも2016年に研究が行われており、その結果出た必要睡眠時間は「8時間25分」とのこと!?
何だかもう、「最低でも6時間寝ましょう」とか言ってる場合ではないようです。
そこで、溜まった睡眠負債を返すためにどうするかについては、上記ポイントの5番目にある通り。
ただ私の場合、毎日の睡眠不足を2時間貯めていたとして、それがブログスタートからの丸13年分ですから、約9500時間ww
返しきれない分は、上記の「アミロイドβ」が目いっぱい脳内に沈着していそうです……。
◆その他、睡眠に関する疑問が大量に回答されているのが本書の第7章「睡眠の疑問すべて解決!」。
ここでは上記でも登場した睡眠評価研究機構の白川さんが、合計76個もの質問にQ&A方式で答えてくださっています。
上記ポイントの5番目も、ここから抜き出したもの。
ぶっちゃけ、ここから抜き出すだけでも記事1本書けるくらいの充実ぶりなので、ここはぜひご確認ください。
個人的には、毎日欠かさず行う昼寝(仮眠)で睡眠負債をそれなりに返済したつもりでいましたが、
脳のリフレッシュの効果は期待できますが、睡眠負債の返済にはなりません。とバッサリ斬られたの巻(涙目)。
毎日8時間寝ていない人は読むべし!
睡眠負債 『ちょっと寝不足』が命を縮める (朝日新書)
はじめに〜私たちがもっともっと健康になるために
第1章 睡眠負債の脅威――「大調査!」で明らかになった日本人の睡眠負債
第2章 減り続けている日本人の睡眠時間
第3章 睡眠負債と日常生活――寝不足がもたらす重大事故のリスク
第4章 命にかかわる睡眠負債――高まる認知症・がんのリスク
第5章 しっかり眠って生産性UP!――企業で始まった睡眠負債対策
第6章 睡眠負債はこうすれば返せる!――快適な睡眠のための極意
第7章 睡眠の疑問すべて解決!(監修:白川修一郎・睡眠評価研究機構代表)
おわりに
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【編集後記】
◆上記でも登場されている西野博士の作品がこちら。スタンフォード式 最高の睡眠
意外と本書とネタがかぶっていませんので、こちらも併せてお読みください。
なおレビューは、上記関連記事にて。
ご声援ありがとうございました!
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