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2018年04月12日

【読書】『読書の価値』森 博嗣


読書の価値 (NHK出版新書 547)
読書の価値 (NHK出版新書 547)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、3月の終わりの「未読本・気になる本」の記事の中でトップ3に入る人気だった読書術本。

当ブログでも新書を何冊かご紹介している、売れっ子作家の森 博嗣さんが読書について語るのですから、これは読まざるを得ません!

アマゾンの内容紹介から。
何でも検索できる時代にも、本を読む意味がある――。
わからないことは何でも検索できる時代だ。娯楽だって山のように溢れている。それでも読書でしか得られないものがある――。読書が苦手でしかたのなかった少年は、どのように本と向き合い、大学教授・ベストセラー作家となったのか。並外れた発想力と知的生産術を可能にする「読書の効能」がいま明らかに! 著作累計1,600万部超を誇る作家・森博嗣が、「きれいごと」抜きに語る体験的読書論。

現時点で中古には定価の倍値がついていますから、若干でもお得なKindle版がオススメです!








Reading / Wiertz Sebastien


【ポイント】

■1.素直に受け入れて読む
 僕は、本を読むときに、まず、この本を読んで自分の意見や知識が塗り変えられることがあれば、と願っている。影響を受けたいという気持ちで読む。どんなものも素直に受け入れたい、と思って読む。これは、人と話をするときも同じで、まずは、説得されたい、この人の意見に同調したい、という気持ちで聞く。そういった姿勢で受け入れることが、相手への礼儀だと考えている。つまり、話を聞くのは、尊敬できる人だ、と思うことと等しい。本であれば、これは傑作にちがいない、と意識して読む。
 結果的に、新しい知識が得られず、意見にも同調できないことになっても、それは、その人やその本が悪いのではない。そもそも「悪い」とか「良い」の問題でもない。ただ、僕の持っていた知識や意見よりも妥当性が乏しかったというだけのことだ。


■2.本を選ぶところから読書は始まっている
 しかし、何度も書いているように、本を読んだときの体験は、人それぞれで違っている。自分と同じものを他者も見ているわけではない。そして、その自分だけの世界を思い描くことこそが、読書をする価値なのである。それは、世界であなただけが見ることができた世界なのだ。
 したがって、本を選ぶのは、やはりあなたしかいない。自分で自分のために本を手に取る、自分で選んで自分にプレゼントする。読み終わったときに、それが面白かったら自分に感謝する。もし面白くなかったら、次から気をつけてね、と自分に注意をする。そういうことである。これが、読書体験そのものなのだ。本を読んでいる時間だけではなく、本を選ぶところから、既に読書は始まっている。本を一度も開かなくても、本を買っただけで、その本を選んだだけで、あなたは読書体験をしているのである。


■3.ベストセラーを避ける
 もう1点だけ、これは特に僕において顕著なことであり、一般には理解されないと想像するけれど、参考のために書いておこう。
 それは、人が読んでいるものを避ける、ということである。みんなが読んでいるもの、売れていると宣伝されているもの、どこかで紹介されたもの、人からすすめられたものを読まない。書店でも、平積みされ、ポップが立っているような本は無視する。(中略)
 そうすることで、自分が得たものの価値が相対的に高まる。大勢が得たものならば、もう僕が得なくても、社会に満ちているものといえる。いずれ人からそれとなく伝わってくるだろうし、また、知っていることの優位さもなくなっている。
 自分だけが読んだものならば、それだけで人よりも優位に立てる可能性がある。人よりも早く気づくことができ、早く新しい価値へと展開できるだろう。僕がこう考えるのは、研究者も作家も、第一に求められるのがオリジナリティだったからだ。


■4.文章をできるだけ沢山書く
 文章を書く技術を向上させるためには、できるだけ文章を沢山読んだ方が良い、という人がいるが、これは効率が悪すぎる。せめて、良い文章を沢山読め、ならば多少は効果があるかもしれない。しかし、それでも読むことと書くことのギャップは大きすぎる。
 やはり、文章をできるだけ沢山書くことが、文章が上手くなる一番の方法だろうと思う。音楽だって、聴いているばかりでは演奏は上手くならない、歌だって上手くならないだろう。アウトプットすることで初めてわかることが非常に沢山ある。
 そして、アウトプットしたら、なにがしかの反響を自身から得ることである。人に読んでもらうというだけでは不足だ。その場合、読んでもらうという制約で、執筆に気をつけるというくらいの効果しかない。そうではなく、やはり、自分で読み直し、できれば何度も繰り返し手直しをすることだろう。


■5.連想や発想を期待する読書はゆっくりで
 そして、そういった連想や発想を期待する読書において注意が必要なのは、ゆっくりと読むことだと思う。速読しないことである。文字や文章だけを辿るのではなく、そこからイメージされるものを頭の中で充分に「展開」する。それが可能な時間を取りながら読むのが良い。遅い方が良い読書だということ。
 読んでいるうちに別のことを考えてしまい、読書に集中できない、ということがあるけれど、それは願ってもない状況といえる。勉強や仕事で読んでいるのではないし、早く読み切る競争をしているわけでもない。集中しなければならない理由は1つもない。
 たびたび中断して別のことを考えるのも良い。なにか思い出したらじっくりとそれを考える。文章が頭に入らないと気づいたら、少し戻って読み直せば良い。それは損をしたのではなく、文章を2回読めたのだから得をしたと思った方が正解だ。頭に入らなかったのは、なにか理由がある。それを考えてみよう。そちらの方が大事だと思う。


【感想】

◆何と言うか、森先生の独自の世界に引き込まれてしまった1冊でした。

一応上記ポイントでは、当ブログ的にTIPSとして使える部分を中心にしたのですが、むしろ引用していない部分で興味深い内容が多々。

たとえば、冒頭のまえがきでは、森先生が小さいころから極度の遠視だったため、本を手に取って思いっきり腕を伸ばしても、なかなかピントが合わなかった(合わせるのに時間がかかった)ことが明かされています。

おかげでちょっと目をそらせると、もうどこを読んでいたのか分からない、ということに。

つまり1文字ずつしか読めなかったわけで、本を読むのがとても苦手だったのだそうです。

そういえばこの本で、山本一郎さんもご自身の「失読傾向」について語られていましたっけ。

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読書で賢く生きる。 (ベスト新書)

参考記事:【警鐘?】『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』漆原直行(2012年02月25日)

ただ、それならそれで、森先生のご両親が、遠視用のメガネをかけさせればよかったのではないかと思う次第……(私も中学時代まで、勉強の際は遠視用メガネかけていました)。


◆なお、その1文字ずつ読む読書スタイルのせいか、森先生は、これまで読んだ小説のあらすじはすべて説明できるのだそうです。

結果、1度読めばもう読む必要がないため、文庫本や新書は、読んだらそのまま捨ててしまうのだとか。

第1章ではそんな森先生の読書遍歴が明かされており、どの著者がよくて、どの著者がダメだったか等々ざっくばらんに語られています。

さらにジャンルに対する考え方から、漫画に対する憧れまで!?

具体的には本書にてご確認いただくにしても、それこそ人それぞれなので、この辺はむしろ、森先生のファンの方が「森作品のルーツを探る」意味で楽しめそうですが。


◆その一方で、上記ポイントの1番目では「どんな本でも受け入れよ」と言われています。

しかもそれに続いて、上記では割愛していますが「つまらない本であっても、とりあえず最後まで読む努力をせよ」、と。
 それよりも、つまらないものならば、何がつまらないのか、という理由を探した方が良い。また、どこかに、もしかして気づかなかった面白い部分があるかもしれない。ものの見方というものがある。なかには、砂金を取り出すくらい苦労しないと価値が見つからないものもあるにはある。それでも、なにかは得られるし、それを探す技術が身につく。結果的に自分が成長できるのだから、これは明らかに得をしていることになるのだ。
おっしゃることはごもっともなんですが、先生ほど時間がない人がほとんどな気が。

ちなみに先生は以前、100冊の本を選んで紹介したことがあるのだとか。

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森博嗣のミステリィ工作室 (講談社文庫)

もっともこれはレアなことであり、基本的には上記ポイントの2番目にあるように「本は自分で選べ」というのが森先生の主張です。


◆ただし注意すべきが上記ポイントの3番目の「ベストセラー」。

まぁ確かに土井英司さんも、「1万円する本を読む人はほとんどいない分、情報に価値がある」みたいなことを言われていたはず。

またこれに関連して、森先生は「小説家になりたいなら小説を読まないこと」「エッセイストになりたいなら、エッセィを読まないこと」と断言!

実際、森先生は「自分が小説がそれほど好きではなかったから小説家になれた」とお考えのようです。

……逆にビジネス書の著者は、本の内容ではなくて、自分が何をやって来たかのリアルの部分でオリジナリティを求めればいいので、個人的にはビジネス書を読んだ方が良いかと。


◆ところで上記ポイントの4番目で、文章を書くお話が出てきましたが、実はこちらは本書の第3章の「文字を読む生活」からの引用。

タイトルでは「文字を読む」とありますが、実はそのほとんどが文章術に関するお話になります。

このポイントの4番目は類書でも言われているように、とにかく書いて、フィードバックを受けよ、ということ。

続く第4章はさらに話が深くなって、森先生は「言葉で物を考えない」「映像や図形で考える」そうなのですが、ここまでくるともはや思考方法が違うんで、あまり参考になりませぬ。

くわえて、最後の第5章の「読書の未来」に関しては、大変興味深かったのですが、どちらかというと出版業界の方々に熟読していただきたい感じです。


本好き、読書好きなら要チェックな1冊!

読書の価値 (NHK出版新書 547)
読書の価値 (NHK出版新書 547)
第1章 僕の読書生活
第2章 自由な読書、本の選び方
第3章 文字を読む生活
第4章 インプットとアウトプット
第5章 読書の未来


【関連記事】

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【ビジネス書を斬る?】『読書で賢く生きる。』中川淳一郎,漆原直行,山本一郎(2015年04月10日)

【警鐘?】『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』漆原直行(2012年02月25日)

【Amazonキャンペーン有】『ビジネス本作家の値打ち』水野俊哉(2010年06月18日)


【編集後記】

◆ご紹介しておりませんでしたが、本日終了するKindleセールには、こんなのもあります。



Amazon.co.jp: 【30%OFF】新書で学ぶ「武器としての教養」フェア(4/12まで): Kindleストア

値引率が「30%OFF」と微妙なのでパスしていましたが、よかったらご確認ください!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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