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2018年03月22日

【お金の行動経済学】『MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実』クラウディア・ハモンド


MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実
MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実


【本の概要】

◆今日ご紹介するのも、昨日に続いて現在開催中の「Kindle春の大セール」の中からの1冊。

お金に絡んだ心理ネタ、行動経済学ネタがお好きな方なら、たまらない作品となっております。

アマゾンの内容紹介から。
なぜ、人は金額が大きくなると勘定が大雑把になり、貧乏になるとより損をしやすく、お金があるほどケチになるのか?心の不合理を知り、お金に強くなる!英国の人気心理学者が、心理学、神経科学、行動経済学など、あらゆる角度から解き明かす。

中古があまり値崩れしていませんから、セール期間内であれば、Kindle版が実質700円弱お買い得です!





Money / Got Credit


【ポイント】

■1.クレジットカードで買い物をする時は、ATMでお金を引き出すところを想像する
 意外でも何でもないが、買い物の金額が大きい時はカードを使うことが多くなる。そうすれば大金を持ち歩かなくていいし、しかも――クレジットカードの場合は――まだ自分のものでないお金まで使うことができる。だが理由はそれだけではない。  カードを使うと、買う決心をしやすくなるだけでなく、思考が変わる。いくら払ったか覚えていないことが多くなり、チップを弾みやすくなる。(中略)
 例えば英国では、インスタントクレジットの利用の拡大を受けて、1990〜2013年の間に個人債務が3倍以上増加した。ここから学ぶべき教訓はこうだ。クレジットカードでつい何か買いたくなったら、同じ金額をATMからおろして現金で支払うところを想像するといい。


■2.どうせエナジードリンクを飲むなら高いものを
 ある実験で、学生を2つのグループに分け、集中力を高めると宣伝されているエナジードリンクを買ってもらった。どちらのグループも買ったのは同じ成分を含む同じドリンクだ。ただし一方のグループは1缶1.89ドルを請求され、もう一方は大学が大口割引で購入したので1缶0.89ドルでいいと言われた。
 次に双方のグループにアナグラム(綴り替え遊び) の問題のリストを渡して解いてもらった。結果を見ると、高い料金を払ったグループの方が成績が良かった。
 なぜか? 研究者の結論はこうだ。消費者はドリンクに高い料金を払うほど、その効能(この場合、集中力が高まる)が本物だと信じたいと思う。このため約1ドル分の集中力を買ったと思っているグループは、そうでないグループ以上に集中してアナグラムに取り組んだ。


■3.店では比較できても、単独でどう見えるか想像する
 ではどうすれば良かったのか、以下にアドバイスを少々。何かを買おうとする時は、家に持ち帰ってそれ単独で見ればどう見えるか想像してみるといい。あなたのニーズに合う品は店内で一番小さく一番安い品かもしれない、でもだから何だと言うのか? 類似品があっても、とくにそれより大きくて洒落た類似品であっても、見なかったことにする。家を出る時は、そこまで大きくて高価なものを買うつもりはなかったのだから、店に入った今、気持ちを変える理由はない。
 なかには気持ちが変わってもいい場合もあるだろう。でも思い出してもらいたいのは、その衝動買いした品は家に持ち帰れば、周りに比較の対象がないことだ。何の隣に置いても、さほど輝いては見えないだろう。確かにぱっとお金を使えば気分がいいし、これじゃなきゃ駄目だったと後で自分に言い聞かせるだろう。
 でも、もっと安い品でも同じことが言えたはずだ。


■4.割引率は、金額換算する
 割引の表示を見てこちらの判断が狂うもう1つの理由は、すでにお馴染みの相対思考だ。 20ポンドの花瓶が 10ポンド割引なら、 50ポンドの花瓶が10ポンド割引よりずっとお買い得だと思う。先の割引率は50パーセント、後のはたったの20パーセントだからだ。だがお気づきの通り、節約できるお金は同額で、50パーセントの割引に意味があるのは、あなたが20ポンドの花瓶を気に入っている時だけだ。
 そうでない場合、つまり割引の表示を見るまで50ポンドの花瓶を買うつもりだった場合、あなたは判断を間違ったことになる。割引率がいくらでも関係ない。


■5.お金の心配は知能の低下につながる
 4か月にまたがる調査期間中、農夫の食事と生活様式は大体において変わっていない。収穫前と収穫後で大きな違いと言えば、お金の心配があるかないかだ。
 調査の結果、このストレスが農夫の認知能力に驚くほど影響したことが明らかになった。収穫前でお金がなかった時のIQスコアは、サトウキビの代金を受け取った後のスコアに比べて9〜10ポイント低くなっていた。(中略)
 ハーバード大学の心理学者で、貧困が認知機能に及ぼす影響の研究の第一人者であり、サトウキビ農家を対象とする研究論文の執筆者の一人でもあるセンディル・ムッライナタンは、これを次のように表現した。お金の心配がある人は脳内の「帯域幅」が狭くなって他の物事に集中しにくくなる。ムッライナタンの研究によって、帯域幅の縮小が測定可能な知能の低下につながり得ることがはっきりした。誰でも知っている通り、一晩中無理に起きていると、翌日はまともに頭が働かない。ムッライナタンの研究によると、欠乏が思考に及ぼす打撃は、徹夜効果の80パーセントに相当する。


【感想】

◆いかにも「行動経済学」というお話がギッシリ詰まった作品でした。

ただ、タイトルにある「193の心理研究」の193個というのは、本当にそんなにあるのかちょっと分からず。

原著を見ても、特に研究数には触れていませんし……。

Mind over Money: The Psychology of Money and How to Use It Better
Mind over Money: The Psychology of Money and How to Use It Better

とはいえ、巻末の原注の合計が200ちょっとあるので(いちいち足しましたw)、ダブりを除いたらそのくらいはありそうな。

ちなみに、本文中には原注の番号が付されていて、Kindle版だとリンク形式ですぐ飛べるのが便利でした。

……もっともほとんどが英文の文献名なので、飛べても理解が深まる、とかではないのですがw


◆さて、それだけ研究等が収録されているのですから、有名な大ネタもチラホラ。

今回は割愛していますが、この本で初めて知った「保育園の送り迎えに罰金制度を導入したら、かえって遅刻が増えた」というお話も登場します。

ヤバい経済学〔増補改訂版〕―悪ガキ教授が世の裏側を探検する
ヤバい経済学〔増補改訂版〕―悪ガキ教授が世の裏側を探検する

参考記事:「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)

また、この本は参考文献にも登場しており、複数の研究が紹介されているという。

予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

参考記事:【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

本書に登場する、「バスケットボールの大事な試合のチケットをいくらなら買うか/売るか」というお話は、上記レビューでも触れていますね。


◆本書は「お金」についてまとめた作品なので、実は上記ポイントでも、できるかぎり日々の買い物等に活かせるTIPSを選んでみた次第。

上記ポイントの1,3,4番目は、TIPSを知っていると知らないのとでは、結果が大きく変わってくると思います。

逆にポイントの2番目は、行動経済学というより、心理学のお話ですねw(プラシーボ?)

一方、ポイントの5番目は、買い物というより、お金の心配の悪影響を述べたもので、この本にも「車の修理代」が高いか低いかによって、知能の低下具合が違う、というお話が載っていました。

いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (早川書房)
いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (早川書房)

参考記事:【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)


◆逆に今回、結構ページを割いているのにスルーしたのが、寄付等のあまり私たちに馴染みのないお話。

何かの本で「高所得者層と低所得者層が、所得割合に対して寄付していて、中間層はあまりしていない」というのを読んだ記憶があったのですが、どうもそれは間違いで、過去の研究だと「まったく寄付をしていない人を対象に含めていなかった」のだそうです(その人数を含めると、低所得者層が寄付の割合が減るのは当然かと)。

なお、最近の研究によると、所得のうち寄付に充てる割合というのは、どの層もだいたい一定で、約2.3パーセントなのだとか。

……私も昨年、いくつか選んで寄付をしましたが、それよりは少ない気が(恥)。

他にも「慈善活動」「ローン」「貧困」といったテーマで、興味深い研究がいくつも紹介されており、ハイライトを引きまくりました。


行動経済学好きならば、要チェックな1冊です!

MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実
MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実
Prologue 100万ポンドを燃やした夜
Chapter1 人とお金の関係はいつから始まるのか?
Chapter2 お金への愛着について
Chapter3 心の会計と銀行の会計
Chapter4 一度つかんだら離さないワケ
Chapter5 価格に適正はあるか?
Chapter6 お金でやる気は引き出せる?
Chapter7 賞金とお礼
Chapter8 お金はいくらあっても困らない
Chapter9 貧困がもらたすもの
Chapter10 お金のダークサイド
Chapter11 お金と善意と幸福と
Chapter12 お金が貯まる心の持ち方
Chapter13 お金を使う喜び


【関連記事】

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)

【地位財?】『幸せとお金の経済学』ロバート・H・フランク (著),‎ 金森重樹 (翻訳)(2017年12月28日)

【スゴ本】『価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?』リー・コールドウェル(2013年02月17日)

「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)


【編集後記】

◆本日の書籍に関連する作品として、当ブログではこんなご本をご紹介しています。

幸せとお金の経済学
幸せとお金の経済学

この本も今回の「Kindle春の大セール」の対象作品であり、送料を加算した中古よりも700円弱お買い得な模様。

なおレビューは上記関連記事にてご確認ください!


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