2018年03月06日
【ミス防止!?】『JALで学んだミスをふせぐ仕事術』小林宏之
JALで学んだミスをふせぐ仕事術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中の「SBクリエイティブキャンペーン」の中でも、当ブログ一番人気の1冊。今月初めに、土井英司さんがメルマガで取り上げてらっしゃいますから、気になっていた方も多いと思います。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ミスが人命にかかわる仕事、それが航空会社の仕事。そんな航空会社では、どのようにしてミスをふせいでいるのか?JALのパイロットとして、飛行時間18500時間。JALが就航していた海外全路線を無事故で飛び続けた、ベテラン機長が教えるミス回避の仕事術。
なお、先月末に出たばかりの作品ですから、送料を加味するとKindle版が600円弱お買い得です!
"JAL"before a departure.Sheremetyevo B-777 JA706J / Aleksander Markin. Александр Маркин
【ポイント】
■1.「鳥の目」「虫の目」「魚の目」「心の目」を使い分ける一生懸命仕事をしていると、どうしても近視眼的になって、目の前のことばかりに気を取られることが多いものです。そんなときは「鳥の目」で全体を俯瞰するとともに、「魚の目」で流れを読み、「心の目」を使うことで本質を見極める。これを行うことによって大事なことを峻別して仕事をすれば、大きな間違いをすることはまずありません。
私もJALにおいて、これから機長に昇格するという人たちへの教育を行う際は、この目を使って状況認識をするよう指導してきました。これを必要に応じて活用するとともに、バランスよく使うことこそが、最高の危機管理につながると感じています。
近くを見つつ、遠くも見る。
全体を俯瞰しつつ流れを読む。
そして人間にしかない素晴らしい目である「心の目」で大切なことを見極める。
みなさんもぜひ心がけてみてください。
■2.確実なコミュニケーションのための「5つのC」
Clear(明確に)中でももっとも重要なのがConfirm(確認)です。そこでパイロットと管制官は、お互いにConfirmという枕詞を付して確認しながらコミュニケーションを取ることがよくあります。
Correct(正確に)
Complete(完全な)
Concise(簡潔な)
Confirm(確認をする)
ミスやトラブル、事故の多くは、チームのコミュニケーションの不具合が原因で起こることも少なくありません。これを解消するためには、ミスを指摘されたら「ありがとう」と言い、相手が気軽にミスを指摘してくれやすい雰囲気をつくるとともに、相手をおもんぱかった会話をすること。そんなコミュニケーションができれば、組織はよりうまくまわり、コミュニケーションの不具合によるトラブルをふせぐことができるのです。
■3.自律心を持つ
自律心は一言で表せば、「自助努力・自己責任」です。人はうまくいかない理由、失敗した原因を、他人や会社、経済や社会、政治などのせいにすることがあります。しかし自律心がある人は、それらは「原因」ではなく「条件」だととらえます。どのような条件であっても絶対に最悪の事態をふせぐのだという心構えこそが自律心そのものです。
機長を長年務めていると自然とこの自律心が身につきます。飛行中にエンジンが故障しても、天候が急変しても、それは条件であってどんな条件でもどこかの空港に安全に着陸する必要があります。機長はそのような訓練と審査を受けています。実際、私はハイジャック以外のさまざまなトラブルに遭遇してきましたが、厳しい訓練と審査を受け続けたおかげで、悪条件下でも安全をまっとうすることができたような気がします。
■4.決断に迷ったら「人に嫌われる」ほうを選択する
私自身も機長を務めていたとき、悪天候のために着陸を諦めた経験があります。
そのときは、他機がすべて目的地の空港に降り立ったのに、私の機だけが代替空港に行ったため、JALの地上スタッフは乗客のその後の手当てや苦情の対応に苦労したかと思います。しかし機長である私には「お疲れ様です」とねぎらいの言葉までかけてくれました。(中略)
ひとくちに「危機」といっても、いつもわれわれのように人の命がかかった状況ばかりではないかもしれません。それでも、みんなでせっかく苦労して積み上げてきたものを捨てるしかなかったり、自分たちの商品やサービスを傷つけなければならない決断をせざるをえないこともあるでしょう。そんなとき「みんなによく思われたい、好かれたい」という気持ちで決断してしまうと、それがときとして大きな不祥事につながることがあります。こうした不祥事をふせぐには「なにが一番大切か」を常に把握して業務ができる組織風土を構築していくことが大切だと思います。
■5.すべては「起こりうる」という前提に立つ
最近、事故や不祥事が起こったときのテレビ報道を見ていると、「このようなことがあってはならない」「二度と起こしてはならない」などの報道が多いように感じます。たしかにその通りと言わざるをえません。 ただその一方で、欧米の報道は、すべてのことが「ありうる」「起こりうる」という前提に立って行われており、実際にそれが起こったらどう対応すべきかというコメントまでつけられています。(中略)
リスク管理の鉄則は、なにより「悲観的に準備」して、「楽観的に対応」することです。悲観的に最悪の事態まで想定しておけば、いざというとき「大丈夫」という確信を持てるとともに、落ち着いてトラブルに向き合うことができます。
「準備」と「心構え」をしつつ、なにが起こっても冷静に対処すること、そして「あってはならない」ではなく「すべてはありうる」を前提に準備してこそ、堅実な危機管理ができるのです。
【感想】
◆当ブログは今まで何冊か「ミス」に関する本をご紹介してきました。その多くが、事務ミスやちょっとしたミスを無くすためのものであり、それらは当然ビジネスパーソンとして必要でしょう。
一方本書は、やや趣が異なり、どちらかというと「心構え」的な感じです(もちろん、チェックリストについての言及等もありますが)。
もっとも「パイロット」と「ビジネスパーソン」とは、働く場所や業務内容が違う分、ある意味それも当然のこと。
むしろ、ミスを防ぐための「本質」を考える上で、色々と勉強になりました。
◆まず本書の第1章は、ミスをふせぐ「準備」がテーマ。
上記では割愛している「人はミスをするという前提に立つ」という指摘は、類書でも言われていましたが、たしかにその前提で「仕組み作り」や「環境作り」を考える必要があるかと。
また、同じく割愛したのが「チェックリスト」で、これはこの本にもあるように、航空業界必須です。
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
参考記事:マッキンゼーが選んだ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』の10個の原則(2011年06月23日)
ちなみに上記参考記事は、ブクマ540超のホッテントリ入り記事ですから、未読の方はよかったらご確認ください。
なお、上記ポイントの1番目の「4つの目」も、この第1章からなのですが、最後の「心の目」というのは、初耳でした。
◆続く第2章は「チーム」がテーマで、そのキモとなるのは「コミュニケーション」です。
飛行機事故を題材に扱った作品で、よく目にするのは、パイロットの「勘違い」なのですけど、それに続いて起きているのが、コミュニケーションのミス。
以前読んだ本によると、昔は「パイロットの考えは絶対」であり、副操縦士は意見ができない雰囲気があったそうです。
それを踏まえると、上記ポイントの2番目にある「5つのC」は、まさに心がけたいところ。
指摘して「ありがとう」と言われたら、それはコミュニケーションも活発になります罠。
◆そして個人的に本書の「キモ」とも言えるのが、ひとつ飛んだ第4章の「ミスが起きたらどうするか?」。
ここでは章題とおり、「ミス」よりも、それに対する「判断」「決断」に関するお話が展開されています。
特に上記ポイントの4番目の「決断に迷ったら『人に嫌われる』ほうを選択する」というTIPSは、目からウロコ。
とにかくトラブルに陥ったら、完璧を目指さず、「最悪の事態を回避する」ことに絞った対処が必要である、と。
同様に上記ポイントの5番目の「『悲観的に準備』して、『楽観的に対応』する」のも大事でしょうね。
◆なお、本書は購入してから知ったのですが、この本を「大幅に加筆・改筆・再編集のうえ、改題したもの」なのだそう。
JAL最後のサムライ機長
……今確認したら、土井さんのメルマガではそれに触れられていましたね。
確かに最近の事故の話にも触れられていますし、古臭さは感じませんでしたが、一応ご留意を。
もっとも旧版の中古もそれなりのお値段なので、送料を加味すれば、結局今回のセール価格のKindle版が、一番お得なのには変わりありません。
ミスをふせぎ、起きても対処するために読むべし!
JALで学んだミスをふせぐ仕事術
第1章 最大の「準備」でミスをふせぐ
第2章 「チーム」の力でミスをふせぐ
第3章 「心」と「体」を整えてミスをふせぐ
第4章 ミスが起きたらどうするか?
【関連記事】
マッキンゼーが選んだ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』の10個の原則(2011年06月23日)【ミス撲滅】『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』飯野謙次(2017年02月05日)
【ミス防止!】『仕事の「ミス」をなくす99のしかけ』松井順一(2014年06月04日)
【仕事術】『やり直し・間違いゼロ 絶対にミスをしない人の仕事のワザ』鈴木真理子(2014年04月14日)
東大教授は『なぜかミスをしない人の思考法』の夢を見るか(2013年11月30日)
【編集後記】
◆昨日の追加記事では、この辺の作品が人気でした(順不同)。かんたんだけどしっかりわかるExcelマクロ・VBA入門
カラー図解でわかる金融工学「超」入門 投資のプロがやさしく教えるデリバティブ&リスク管理の考え方 (サイエンス・アイ新書)
それちょっと、数字で説明してくれる? と言われて困らない できる人のデータ・統計術
参考記事:【データ分析】『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術』柏木吉基(2015年08月05日)
いずれも同冊ないしは僅差でしたが、よろしければご参考まで。
ご声援ありがとうございました!
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