2018年02月23日
【衝動?】『なぜ「つい」やってしまうのか 衝動と自制の科学』デイビッド・ルイス
なぜ「つい」やってしまうのか 衝動と自制の科学
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月のKindle「月替わりセール」の中でも気になっていた翻訳本。のんびりしていたら、そろそろ2月も終わりになってしまうので、あわてて読んでみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
食べ過ぎ、衝動買い、恋愛、そして暴力…あなたの行動は「衝動」に支配されている!衝動にあらがう「自制心」の鍛え方。
中古は値崩れしていますが、送料を加算すればKindle版に軍配が上がります!
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【ポイント】
■1.香りと衝動買いスーパーの洗濯用品売り場を例に取れば、洗いたてのシーツのにおいにさらされた買い物客は洗剤を多めに買うばかりでなく、白い服の黄ばみをとり、リンネル製品の春の朝のようなにおいを保つと謳う製品などをも衝動買いしてしまう。ある企業は、イギリスの旅行代理店の店舗にココナッツの香りを導入した。日焼けオイルにはココナッツの香りがするものもあり、その香りは昔過ごした休日を思い出させ、新たに予約を取ろうという気を客に起こさせるといわれているからである。
研究によれば、香りは概して連想と記憶を喚起し、店が魅力的であり、刺激的であり、親近感があると客に感じさせることにより、売り場を衝動買いの発生しやすい環境へと変える力をもつ。客が棚を見て回る時間を長くし、プラスの感情を呼び起こすことができる。
■2.ファストフードにさらされただけでせっかちになる
まったく別の例だが同じくらい参考になる研究が、トロント大学ロットマン経営大学院のチェンボー・チョンとサンフォード・デボーによってなされている。彼らは、マクドナルドやケンタッキー、サブウェイ、タコベル、バーガーキング、ウェンディーズなどのファストフード店のロゴを、0.012秒間だけ学生たちに見せた。自分が何を見たのか意識的に気づいていた被験者はいなかったにもかかわらず、彼らはせっかちになり、リンスインシャンプーのように時間の節約となる商品を通常の商品より好むようになった。
「ファストフードは、効率や手っ取り早い欲求の充足といった文化の象徴だ」。チェンボー・チョンはこう述べる。「問題は、時間が重要な要素であるかどうかにかかわらず、ファストフードにさらされることで時間の節約という目的が活性化されてしまう点だ……ただファストフードにさらされるだけで、状況にかかわらず、なんとなくスピードを求めたり、せっかちになってしまうことがわかってきている」
■3.「好き嫌い」の数学的公式
人は、好きな相手と意見が多少食い違ったとしてもそれを受け入れる用意があり、相手の魅力は結果としてまったく低下しないように思われる。しかし、食い違いの数が臨界点を超えるやいなや、好感度は急速に低下していく。この実験結果は常に一貫しているため、好き嫌いの情がどの程度起こりそうかは、以下のような数学的公式を用いて表すことができる。Y=5.44X+6.62この式は、2人の間の好感の情がどの程度であるかを予測するのに最適だ。好意の程度(Y)は、似通った考え方の割合(X)に5.44を掛け、それに6.62を加えればよい。2人が同じ考え方を共有している割合が50パーセントの場合、12点満点中でスコアは9.34点(0.5×5.44+6.62)となる。共通の考え方が80パーセントならば、好感の値は10.97にまで上昇する。
■4.美味しいものを食べる事を我慢できない理由
快楽の(または心理的な)空腹感およびパラタブル・フードを食べたときの満足感の原因は、最初脳の中心部分で発生し、それから前頭皮質に向かって外へと広がっていく一連の事象である。
特に重要なのが、この部位は衝動の原因となっている脳の部位と同じだということである。おいしいご馳走を味わいたいという欲求によって報酬をもたらす化学物質(ドーパミン、セロトニン、オピオイド、カンナビノイドなど)が脳内に大量発生し、我慢する力を凌駕してしまうのだ。快楽を生むエンドルフィンも増加し、それらの間の相互作用も増えるため、脂質と糖分の含まれた味がここまでおいしく感じられるのである。
ポテトチップスやチョコレート、ケーキ、ハンバーガー、ソーセージ、ポークパイなどのパラタブル・フードは、脳幹内にこのようなホルモン、神経伝達物質の大量発生をもたらす。このような怒涛の脳内活動は、おいしい食べ物を口にするはるか前に、それを目にするだけで、もしくは考えただけでも引き起こされうるものである。
■5.衝動性と自制心
では、自制心を発揮するのに困難を覚えることがほとんどだという人もいる一方で、時折大変に感じるくらいだという人もいるのはなぜだろうか? 一部の心理学者らによれば、自制心の発揮を困難にする因子は意志力そのものなのである! 「あらゆる意味で、自制心は筋肉と似通っている」と、フロリダ州立大学の心理学者ロイ・バウマイスターは述べている。「筋肉と同様に、鍛えることで強くなる。そして、使用直後には力が出なくなるという意味で、自制心にも筋肉と同じように疲労が見られるのだ」。言い換えれば、暮らしの中のある部分に必要とされる自制心が増えれば増えるほど、それだけ他の部分において使える自制心は減ってしまうのである。(中略)
食べすぎや買いすぎの衝動、恋に落ちたり自殺したりといった衝動に抗えるかどうかが、単にある特定の資源が十分な量だけ残っているかどうかの問題だとすれば、燃料タンクの空になった自動車がもはや走り続けられないのと同様に、人間も自制心を発揮することができなくなるということになる。
【感想】
◆想像よりも内容が多岐に渡っており、結果的にハイライトしまくった1冊でした。そもそもタイトルからは、自制心が効く、効かない、といったお話だと思っていたのですが、単にそれだけではなく。
たとえば、上記ポイントの1番目にある「五感を利用した販売促進方法」のようなお話も、その守備範囲だったワケです。
……予定以外の物を買うことを「衝動買い」っていいますから、ある意味タイトルどおり当然ですかw
ちなみに「匂い」だけでなく「音」も効果があるそうで、「あるスーパーでは、新鮮なレモンの香りに、洗いたてのシーツを折りたたむ音を加えることで、洗濯用品の売り上げが格段にアップした」のだそう。
この辺のお話がお好きな方には、この本もオススメです。
なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学
参考記事:【スゴ本!】「なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル(2007年10月09日)
なお、この「衝動買い」のお話は、本書の第10章で再度掘り下げていますから、ぜひお読みいただきたく。
◆また、「衝動」といえば避けては通れないのが「性衝動」。
本書の第8章では、上記ポイントの3番目にあるような「公式」から、「男女がそれぞれ異性のどこを凝視するか」まで盛りだくさんな内容です。
さらにはお約束(?)の「吊り橋効果」のお話までアリ。
実際に吊り橋を渡ったり、ジェットコースターに乗る手間よりは、サスペンス映画を一緒に観る方が、同じ効果が手軽に得られて良さそうです。
……と言ったお話は、この本でも詳しかったり。
恋愛の科学 出会いと別れをめぐる心理学
参考記事:【モテ】『恋愛の科学 出会いと別れをめぐる心理学』越智啓太(2015年07月31日)
◆そして、男女年齢を問わず、逃れられないのが「食欲」。
本書の第9章では、「なぜダイエットは失敗するか」について言及されています。
上記ポイントの4番目にあるように、「神経伝達物質の大量発生」をもたらすのですから、もはや麻薬と変わらないということ。
さらに問題なのは、「食事制限しては失敗し、また食事制限する」ような「ヨーヨーダイエット」を繰り返すと、
ドーパミン受容体の数は減り、快楽を感じにくくなってしまうリスクがある。結果として、次にジャンクフードを食べるときには、同程度の快楽を得るために、より一層糖分と脂質を含んだ食べ物を食べずにはいられなくなってしまうのだそうです。
つまり、単純に食べる量を減らすだけだと、かえって控えている食べ物の魅力を増大させ、太る可能性がアップしてしまうという……。
そこで本書では「過食衝動に打ち勝つ10の方法」と題して、「誰でも簡単にできる単純かつ実践的な方法」が紹介されていますので、気になる方は本書にてご確認を。
個人的には「水以外の飲み物を飲む際は、背が低く口の広いグラスではなく、背が高く口のせまいグラスを使う」というのは、「目からウロコ」でした。
◆ところでこうした「衝動」を抑えるには、結局「自制心」が必要ということ。
そこで本書の第12章では、自制心の特徴や、その鍛え方について触れられています。
ただし、類書にもあるように、「自制心」は「限られた資源」であるため、何かを我慢することで消費されてしまうという。
つまりダイエットをしていると、他の事が我慢できなくなる可能性が高まるワケです。
興味深かったのが、「血中グルコース濃度の低下は、自制心の働きの低下との強い関連性がある」という研究なのですが、これについては賛否両論の模様。
アタマが疲れてくると、甘いものが食べたくなるので、私は結構腑に落ちたのですがw
自らの「衝動」に向き合いたい方なら読むべし!
なぜ「つい」やってしまうのか 衝動と自制の科学
第1章 命を救ってくれた衝動
第2章 無意識のゾンビ脳
第3章 衝動性と脳科学
第4章 発達途上の脳―ティーンエイジャーはなぜ衝動的に行動しがちなのか
第5章 様々な感覚と衝動性
第6章 衝動を招く視覚の力
第7章 個人差がある理由―リスクをとるか否かであなたの衝動性がわかる
第8章 愛の衝動―一目惚れから性衝動まで
第9章 食べ過ぎの衝動―なぜダイエットできないか
第10章 衝動買い―買い物客を誘惑する手法
第11章 模倣衝動―突発的な暴動・自殺
第12章 自制心を鍛えるには
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【スゴ本!】「なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル(2007年10月09日)
【モテ】『恋愛の科学 出会いと別れをめぐる心理学』越智啓太(2015年07月31日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。労働者階級の反乱〜地べたから見た英国EU離脱〜 (光文社新書)
テーマの割にはレビューが割れることなく、ほぼ皆高評価な1冊。
中古もまだそれほど値崩れしていませんから、Kindle版が300円強お買い得です!
ご声援ありがとうございました!
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