2018年02月21日
【科学的自己啓発書】『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』吉田尚記,石川善樹
どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、昨日に続いて「春間近!2000タイトル50%OFFフェア」の中でも注目していた「科学的自己啓発書」。この手の本は、やはり米国が本場だけに、その焼き直し的な内容かと思いきや、知らないことだらけで、ハイライト引きまくりました!
アマゾンの内容紹介から。
ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記と、予防医学研究者・石川善樹が「幸せに生きるための技術」を探ってとことん対話。恋愛や結婚、感情の取り扱い方…など誰もが気になるテーマの方法論を科学哲学の観点から提案!
中古はやや値下がり気味ですが、送料を考えればKindle版が400円以上お買い得です!
happy / brianna.lehman
【ポイント】
■1.コミュニティの3つのレベル【人生の3要素】石川 で、これがもっともうまく機能する最大人数が10万人といわれているんです。10万を超えると、アイデアをシェアするのが難しくなってくる。
(1)新しいアイデアを外に取りに行く
(2)コミュニティでシェアする
(3)新しいアイデアを考える
吉田 はああ。
石川 その10万人も、細かく分かれています。部族や家とかのコミュニティは150人がMAX、その中で人が本当に親しく交流できるのは6人といわれています。6、150、10万という数字が今のところの研究結果です。つまり新しいアイデアをシェアするうえで大事なのは、親しい友だち6人をどう持つか。自分がコアとする150人のコミュニティをどう持つか。そのほかの10万人が住む都市をどう選ぶか……みたいに考えると、研究者っぽい人生の見方ですね。この3つをどれくらいのバランスでやると、その個人がもっともサバイブできるかって研究もあります。
■2.すべての感情には意味がある
石川 そもそも人類に最初にあったのは、「これは危ないぞ」といった目先の危機を乗り越えるためのネガティブ感情なんです。その最たるものが「怒り」と「恐怖」。人は恐怖を感じると目先のリスクを過大評価し、めちゃくちゃ厳密に考え始めます。逆に怒りを感じると、楽観的になる。リスクを過小評価して強い敵が現れたとき、恐怖を感じると逃げるけれど、怒りを感じると立ち向かうんです。怒りは楽観的な思考を生んで、恐怖はロジカルな思考を生む。
吉田 はー、なるほど! じゃあプラスの感情は?
石川 「幸せ」は「怒り」とけっこう似ていて、両方とも楽観的な思考法ですね。ただ、時間軸が違っていて、ポジティブ感情のほうがより中長期的にはたらきます。
吉田 ネガティブ感情だと目先で、ポジティブだと中長期的に物事を考えられる?
石川 そう。人間は中長期的に生きのびるためにポジティブ感情を生み出したともいわれているんです。そう考えると、やっぱりすべての感情には意味があるし、特定の感情に偏るのはよくないな、と僕は思ってるんですよ。
■3.習慣化がうまい人は、感情のコントロールがうまい
石川 もう1つ、僕がやっている研究に「習慣化」があります。物事を始めるときの感情は、「希望(hope)」か「恐怖(fear)」のどちらかだと言われています。でも、この2つだけだと続きにくい。継続のための感情はハッピーとかエンジョイとか、また違うものになるんです。そして最終的に習慣になると、もう何も感じない状態になります。
吉田 無? 感情が動かないってこと?
石川 歯磨きしているとき、感情なんて動かないじゃないですか? 習慣化って、あそこまでいかないとダメなんです。そこまでいけば無意識での習慣化になる。だから何かを習慣化するのがうまい人は、感情のコントロールがうまい人なんです。
■4.無駄な意思決定はなるべくしない
吉田 ルーティンから外れたことが意思決定。その意思決定の総量を増やすことはできないんですか?
石川 一応、増やすことができるともいわれてますけど、そもそも意思決定の回数が多い人はムダな意思決定はなるべくしない、って方向になるんですね。
吉田 たとえば企業を経営している人は、普段の生活ではなるべく無駄な意思決定をしないようにしたり?
石川 オバマ前大統領でこんな話があるんです。彼がタバコをやめるって言い出したときに、まわりはやめなくていいと止めた。それはタバコをやめることで「吸いたい、でもやめなきゃ」となる状態が意思決定をすごく使ってしまうから。本当に大事なことのみに意思決定を使えるように、タバコをやめなくてもいい、と。
吉田 大統領の意思決定は国にとって重要なリソースだから、それをムダに使うな、ってことなんだ。
■5.HOWとWHATを考える
吉田 でも、真実に向かうための方法論は科学以外にもありますか?
石川 科学、それから宗教もそうですね。科学はHOWとWHAT、「いかにして」「何がどうなっているのか」を問うけれど、宗教はWHYとWHOの学問なんですよ。「なぜ」「誰」を問うのが宗教。
吉田 もうちょっと具体的にお願いします。
石川 たとえば「なぜ宇宙が誕生したのだろう」っていうのは宗教的な問いの立て方なんです。それはつきつめると「神様です」が答えになる。つまりWHOですよね、それが宗教。でも、「いかにして宇宙は誕生したのか」は科学的な問いです。僕ら研究者はなるべくWHYとかWHOで考えないようにしている、HOWとWHATを考えるんですね。ちなみに「なぜ」という問いは、相手の視野をすごく狭くする問いかけなんですよ。相手を理性的にさせてしまうので。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、この手の本をそれなりに読んでいる私にとっても、本書には知らないことが多々収録されていました。まず上記ポイントの1番目。
「150人」というのは、いわゆる「ダンバー数」として知られている、という話は、以前この本で読んで知っていました。
友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学
参考記事:【オススメ】『友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学』ロビン・ダンバー(2011年08月05日)
ただ、それ以外の「6人」や「10万人」というのは、少なくとも私は初耳であり、いったい誰のどんな研究結果からなのか?
もっとも本書では「150人」という数も、上記ポイントの1番目のような形で、サラッと出てきており、「ダンバー数」の「ダ」の字も出てこないので、出典にはあまりこだわらないのかもしれませぬ。
◆同じく上記ポイントの2番目も「目からウロコ」。
「怒りは楽観的な思考を生んで、恐怖はロジカルな思考を生む」なんて、考えてもみませんでした。
そもそも「怒り」と「恐怖」なんて、どちらも「人間にとって好ましくない」感情なのに、まさか両極端な思考に結びついているとは!?
ただこれを言い換えると、「強い敵には、ロジカルに立ち向かえない」となると思うのですが、それだと「やられ放題」なヨカンw
もしくは、たとえばスポーツをやる場合であれば、殺されはしませんから、強い敵に対しては「恐怖」という感情を持つことが冷静な判断につながるんでしょうか?
私の日常生活では「怒り」も「恐怖」もあまり感じたことがないので、確認しようがないのですが。
◆また、その「恐怖」つながりで言うなら、上記ポイントの3番目にあるように「習慣化」が、感情と結びついている、というのも初耳でした。
ただ、ここを読む限り、あくまで「習慣化されると感情がなくなる」のであって、「感情をなくすと習慣化できる」のではなさげ。
つまり、「習慣化できたかどうか」としてのチェックには使えるけど、そこまで行くには、どうも「ハッピー」や「エンジョイ」といった感情が必要なようです。
一方、上記ポイントの4番目の「意思決定」のお話は、ジョブズがいつも同じ服装だった理由と同じ。
オバマ前大統領の話だと納得できるんですが、これがトランプ(ry
ちなみに我が家でも、ムスコに何かをさせる(学校へ行く準備等)際に、テレビが付いていると「それを見るのを我慢」するのにエネルギーを使ってしまうため、適宜スイッチオフにするようにしています。
◆そして最後のポイントの5番目における、「科学」と「宗教」の対比についても、個人的にはやはり「目からウロコ」。
私はてっきり、科学こそむしろ、「WHY」を追求する学問だと思っていました(「WHO」はさておき)。
その前段階で、著者のお1人である石川さんいわく「科学は人間の直感を覆すための方法論」であるとのこと。
人って自分が直接感じたことを真実と思いやすいんですよ。たとえば、ある食品を食べたらガンが消えたとか。そんなことがあると、それは「真実」として認識しやすい。でも科学は、そのような人間の直感を覆すための方法論なんです。つまり、自分が思ったり感じたりしたことを乗り越えるための手法が科学なんです。……まさにガンの民間療法(やニセ科学)に通じるお話ですね。
◆……とつらつらと書いてきましたが、実はこのポイントの5番目まででも、実は本書の約半分である第3章までをカバーしたにすぎません。
冒頭の内容紹介にある「恋愛や結婚」に関しては、第4章で大々的に取り扱っているのですが、これはかつて「モテ本の大家(自称)」であった私にとっては、なかなか納得できないお話でして……。
石川さんは、客観的に見ても「非モテ」だらけな男子校上がりで東大に入り、理論的に彼女を作ろうとするも在学中にはできず(詳細は本書を)。
最終的には、花見の席であった初対面の女性に、独自の結婚理論を展開し「あなたとすることに決めました」と宣言し、色々あって(こちらも詳細は本書を)本当に結婚してしまうのですが、こんな話、はっきり言って、「再現性のかけらもない」です罠……。
あと、もう1点、「科学的」を掲げるのであれば、巻末にエビデンスは載せといて欲しかった(翻訳書でもない作品が多いのですが)ですけど、内容がすこぶる面白いので、許しますw(←エラそう)
「科学的自己啓発書」が好きな方なら、必読の1冊!
どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた
第1章 人生の問題は、科学でどうにかなりますか?
第2章 「感情」について科学的に考えてみた
第3章 これから生き抜くために、何を勉強したらいい?
第4章 科学的に見ると、恋愛と結婚ってなんですか?
第5章 幸せに生きるには多様性が必要だ
第6章 人生の幸せは科学で分解できる
第7章 「幸せに生きる方法」が見えてきた!
【関連記事】
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【編集後記】
◆今日のご本の関係して、こちらの作品もご紹介。「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室 (中経出版)
やはり「科学的自己啓発書」として秀逸な作品であり、同じく「春間近!2000タイトル50%OFFフェア」の対象でもあります(レビューは上記関連記事にて)。
絶版らしく中古に倍値近い金額が付いていますから、Kindle版が2400円弱お得な計算です!
ご声援ありがとうございました!
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