2018年02月19日
【超マーケティング?】『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』西野亮廣
革命のファンファーレ 現代のお金と広告 (幻冬舎単行本)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、幻冬舎さんの「電本フェス」の中からの1冊。当初は当初スルーする気でいたのですが、fujiponさんの書評で「西野さんを嫌っている人ほど、読んでみたほうがいいですよ」とまで言われていたので、買ってみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
クラウドファンディングで国内歴代最高となる総額1億円を個人で調達し、絵本『えんとつ町のプペル』を作り、30万部突破のメガヒットへと導いた天才クリエイターが語る、"現代のお金の作り方と使い方"と最強の広告戦略、そして、これからの時代の働き方。
相変わらず中古が1000円以上しますから、セール期間内であれば、Kindle版が実質600円以上お買い得です!
kickstarter / ursonate
【ポイント】
■1.「認知」と「人気」は違うお金を払ってくれる人を「ファン」とするのなら、人気タレントにはファンがいるが、認知タレントにはファンがいない。信用がないからだ。
ベッキーとゲスの極み乙女。が例として分かりやすい。
不倫をしても活動を続けることができたゲスの極み乙女。に対して、ベッキーの活動が、たった一度の不倫で全て止まった理由は、彼女が「認知タレント」で、ファンを抱えていなかったからに他ならない。
スポンサーが離れ、広告以外の場所でお金を稼ぐしかなくなったわけだが、ファン(ダイレクト課金者)がいないからお金を生み出すことができない。
テレビタレントとしてリクエストに徹底的に応え続けた結果だ。
現代のテレビ広告ビジネスの、最大の落とし穴だと思う。
■2.アンチを手放してはならない
こういった事柄のイチイチに、「絵本は一人で作るものだ!」「スタッフの手柄を独り占めしようとしている!」「絵本に音楽は必要ない!」と突っかかってくる輩が発生するが、そういった批判コメントは、片っ端からリツイート&シェア。批判する人達に、「同じ声を上げている仲間がいますよー」とお知らせして批判派で徒党を組ませ、勢いに乗らせる。
議論ほどコストパフォーマンスの良い宣伝は無いし、こちらはオセロで言うところの角を押さえているので、たくさん取らせるだけ取らせておいて、最後に一つだけ角に石を置けばいい。
感情に任せた下手なツッコミは僕がわざわざ手をくださなくても自然淘汰される。
後ろめたいことを1ミリもしていなければ、反対派のエネルギーほど使えるものはない。アンチを手放してはいけない。
■3.「体験×おみやげ」で作品を売る
僕らが「買うモノ」と「買わないモノ」を線引きする基準は単純明快、「生活する上で必要であるか否か」だ。
「作品」は、生きていく上では"あまり必要ではない"から、あまり買わない。
しかし、どういうわけか、ついつい買ってしまっている「作品」もある。
「おみやげ」である。(中略)
「おみやげ」が売れるのなら、自分の作品を「おみやげ化」してしまえばいい。
「おみやげ」に必要なのは、シンガポール旅行や観劇といった「体験」だ。「おみやげ」は必ず「体験」の出口にある。
というわけで、僕はある時から、自分の絵本の個展を積極的に開催するようにした。そしてその出口で絵本を売ったら、これが飛ぶように売れた。
絵本としてではなく、個展の「おみやげ」として売れたのだ。
■4.いかに口コミをさせるか
『えんとつ町のプぺル 光る絵本展』は、絵に光を当てるのではなく、絵そのものが光っている。
絵そのものが光っているので、ギャラリーの照明は必要なくなる。それより何より、ギャラリーで開催する必要がなくなる。
ギャラリーを飛び出し、夜の鳥取砂丘や、トンネルの中や、シャッター商店街でも開催可能だ。(中略)
んでもって、この「絵が歩く」を比喩で終わらせず、実際に歩かせてやろうと考えた。
41枚の光る絵を、41人で背負って、街を行進。歩く個展。
「会いに行く個展」ではなく、「会いに来る個展」だ。(中略)
道端で勝手に個展を開催してしまうと警察から怒られるが、歩く個展に警察が寄ってきても、「運んでいます」と切り返すことができる。
そして何より、『えんとつ町のプぺル 光る絵本展』を、「『えんとつ町のプぺル』にまるで興味がない人達」に届けることができる。
■5.本の中に撮影スポットを作る
先日、堀江貴文さんと対談させていただいた時に、面白い話を聞いた。
堀江さんが書かれ、ベストセラーとなった『多動力』の拡散装置も、やはりインスタグラムだったのだ。
各見出しは、1ページ丸々使って、2〜3行程度の格言が書かれている。
「本の中に撮影スポットを作ったんです(笑)」と担当編集者の箕輪さん。ニクイ仕掛けだと思った。素晴らしい。
皆が簡単に通り過ぎてしまう、そんな端っこの方まで気を配り、丁寧にデザインできる人がヒットを生めるのだ。ヒットには必ず理由がある。
ちなみに、「堀江さん。このアイデア、パクっていいっすか?」と訊いて、「いいよ〜」という返事をいただいたので『革命のファンファーレ』の各見出しは御覧のとおりだ。『多動力』よりも、更にインスタグラムにアップしたくなるように、見出しのレイアウトを正方形にしてみた。
【感想】
◆西野さんの本を読むのは、私は本書が初めてなのですが、「モノを売る」ことに対して、ここまで真剣に考え抜いている人だというのは知りませんでした。もちろん、表層的な話として、西野さんが何をしてきたか等々に関しては、一応ネットニュース等では確認済み。
ただ、その「真意」については、こうして「裏話」を明かしてくれないと、なかなか知りえないと思います(ブログを読んでいたらまた別なんでしょうけど)。
特に上記ポイントの2番目にあるように、自分で炎上をしかけていたというのは知りませんでした。
ネットで炎上してしまう人は多々あれど、批判コメントまで「片っ端からリツイート&シェア」する人がどれだけいるか。
もちろんそれは、「こちらはオセロで言うところの角を押さえている」からこそでしょうけど、よほどメンタルが強くないとできないことです。
◆ちなみに、このポイントの2番目にある「絵本は一人で作るものだ!」の「絵本」とは、もちろん西野さんの『えんとつ町のプぺル』のこと。
えんとつ町のプペル
「絵本が1人で作るもの」か否かはさておき、多くの人が勘違いして非難したであろうことが、「西野さんが自身で1万冊買った」という件です。
キングコング西野、自腹で絵本1万冊購入していた - お笑い : 日刊スポーツ
実際、このニュースを見ると、「初版部数を上げる為に、まずは個人で1万冊以上買った」としか書かれていませんから、「金の力にモノを言わせて!」となってしまうのも当然でしょう(アンチならば)。
しかし実際には、アマゾンが予約を受ける前から、自分で予約のサイトを立ち上げてそちらで予約を受け、お金を預かっていたとのこと。
つまり西野さんは自腹はいっさい切っておらず、単に預り金で代理購入したに過ぎません。
……これは炎上を狙って、あえて全部を語っていなかったのではないか、と。
◆さらには、その代理購入をした際に、幻冬舎さんから「2000万円を超える領収書」が発行されており、それもまたインスタグラムにアップしたとか。
キングコング西野、自著の大量購入で「2231万円の領収書」公表にネット騒然 | ニコニコニュース
私はその当時見ていませんでしたが、当然拡散されたでしょうし、実際、アップした週には、各局のワイドショーで取り上げられたそうです。
西野さん本人としては、いちいちテレビ局に出向くよりも、こうして「自分の代わりに」宣伝してくれる「モノ」をいちいち作ることも意識している模様。
また、インスタ絡みで言うなら、上記ポイントの5番目にあるように、本書の各見出しは正方形仕様です。
そして、本書のようなビジネス書では不可能でしたが、そもそも上記の『えんとつ町のプぺル』が正方形なのも、同じくインスタを意識したから、とのこと。
そこまでやるとは、恐るべし……。
◆こうした「口コミで広める」工夫は、上記ポイントの4番目も同様です。
この絵本展は、上記ポイントの3番目にあるように「おみやげ」とすることはもちろん、実は、クラウドファンディングで募集をかけていました。
キングコング西野の個展『えんとつ町のプペル展』を入場無料で開催したい! - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
上記にもあるように、4600万円超集まったのも話題になりましたが、実は本書では、クラウドファンディングで目立つ「商品設計」のテクニックも披露されているという(詳しくは本書を)。
ついでに言うと、本書の発売に関連して『西野亮廣講演会 開催権利』をも、クラウドファンディングで扱っているという。
クラウドファンディングで講演会のオファーを受けつけたい- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
こうして、「参加者」を募ることで、さらに売上自体も伸ばしているワケですね。
◆なお本書には、当初話題となった(炎上した)、『えんとつ町のプぺル』の無料公開についても触れられています。
もっとも、手法としては、大昔に出たクリス・アンダーソンのこの本を踏襲していると思うので割愛(お読みになりたい方は本書にて)。
フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略
ただし、ネットでタダで読めるにしても、あえて「縦スクロール」にした、という理由には、「そこまで考えているのか」と、正直驚きました(ネタバレ自重)。
実際、そこまで意識して設計している人がどこまでいるのやら。
当ブログでは下記関連記事にあるように、過去何冊か「売れる本を作る」ための作品はご紹介してきましたが、本書の場合、本自体の中身ではなく、出来上がった本をいかに売るか、という視点が秀逸ですし、ここまで徹底した本も他にないかと。
そういう意味で、出版関係者はもちろんのこと、マーケティング関係の方にも、ぜひともお読みいただきたいと思う次第です。
「目からウロコ」となること必至の1冊!
革命のファンファーレ 現代のお金と広告 (幻冬舎単行本)
◆他人と競った時点で負け。自分だけの競技を創れ。
◆キミの才能を殺したくなければ、お金の正体を正確に捉えろ。
◆お金を稼ぐな。信用を稼げ。「信用持ち」は現代の錬金術師だ。
◆意思決定の舵は「脳」ではなく、「環境」が握っている。
◆入り口でお金を取るな。マネタイズのタイミングを後ろにズラして、可能性を増やせ。
◆作品の販売を他人に委ねるな。それは作品の「育児放棄」だ。
◆インターネットが破壊したものを正確に捉え、売り方を考えろ
他
【関連記事】
【堀江節炸裂!?】『多動力』堀江貴文(2017年07月12日)【考え方】『ぼくらの仮説が世界をつくる』佐渡島庸平(2015年12月13日)
【ハックルさん激白!?】『『もしドラ』はなぜ売れたのか? 』岩崎夏海(2014年12月12日)
【業界関係者必読!?】『「本が売れない」というけれど』永江 朗(2014年11月06日)
【編集後記】
◆本書で紹介されている本の中で、この2冊は同じ幻冬舎ということで、今回のセール対象です。人生の勝算 (NewsPicks Book)
多動力 (NewsPicks Book)
参考記事:【堀江節炸裂!?】『多動力』堀江貴文(2017年07月12日)
どちらもお買い得ですから、この機会をお見逃しなく!
ご声援ありがとうございました!
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