2018年02月18日
【死生観?】『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』大津秀一
死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33 (幻冬舎単行本)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中の幻冬舎さんの「電本フェス」の中で気になっていた1冊。著者の大津先生は、東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長として、多数の終末期患者の最期に立ち会われた方です。
アマゾンの内容紹介から。
縛られていたものを捨てたとき、悲しみや切なさは消え、執着から解放される。『死ぬときに後悔すること25』の著者がたどりついた、本当に幸せな生き方。
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Oceanside Hospice Society / BC NDP
【ポイント】
■1.仕事に固執しすぎない彼女の仕事は道半ばとなってしまいました。当初の焦燥感はそこからでした。
「でもね、私の代わりはたくさんいる。仕事の、ね」
家族の代わりは誰にもできなかった──彼女は言外にそう言っているような気がしました。
「仕事、仕事と私が繰り返して口にするたびに、仕事に囚われていたのだと思います。仕事は世の中だけではなく、自分を豊かにするためにあるもの。お金を稼ぐことはとても大切です。ただそれで人生や心をぐちゃぐちゃにしてしまってはいけない。私は家庭も……。もう助からないってわかって、ようやく気がつけるようになりました。今はもう、仕事から自由になりました」
■2.別れの悲しみをふり切る
「ごめんね、愛莉。ただね、大切なことだから、これだけは忘れないで。あなたが悪いことをしたから、私が遠くに行っちゃうとか、そんなことでは絶対ないの! これだけは決して忘れないで」
白川さんは愛莉ちゃんの手を握って、真正面から目を見て言いました。
「愛莉、いなくなっても、ママはね、ちゃんといるから」
白川さんは手を愛莉ちゃんの胸に当てました。痩せた手でしたが、私は"大きな手"だと感じました。
「愛莉、私はね、愛莉のここにいる。ずっといるの。わかった? 愛莉がね、大変なときは、いつでもここにいる。だから悲しかったり困ったりしたら、ママって言いなさい。ママはいつでもそばにいるから。愛莉を守るから……」
■3.死の恐怖を消す
「でもお父さん、最近変わったんでしょう。あんなにお母さんが亡くなってから死にたくない、死にたくないって言ってたのが、怖くなくなったんでしょう?」
「うん……。まぁ、まったく怖くないって言ったら噓になるけどな」
何かきっかけがあったのか私が問うと、塚谷さんは天井を見上げました。
「最初に言ったように、馬鹿馬鹿しいって思うようになったんだよ。人は皆、100%死ぬじゃない。一番リーチかけているのは俺だけど、次は先生だろ、その次は尚子が上がりだろ」
尚子さんは私より年上ですが、男女の平均余命を考えれば、確かにそうです。
「これは、考えても仕方ないってわかったのよ。十二支を5回以上回して初めて気がついたの!」
■4.生きる意味から離れる
「1つ、不快を承知で言わせてもらうと、俺は自分が特別って思っていたの。人生が破竹の勢いで、いい方向に動いてゆく経験を繰り返してゆくと、そんな根拠のない自信が湧いてくるんだよね」(中略)
皮肉な笑みを福山さんは浮かべました。「人生には俺しか成し得ない特別なことがあるとか、俺しか成し得ない崇高な目標があるとか、割にそういうふうに信じていたんです。そこに激震が走った。これまでの俺を真っ二つに切り裂いてしまった。今、人生は? って問われたら、昔とはまったく異なる答えが出ると思う」
自分が生まれたのは何も特別なことではない。自分が生きているのもスペシャルではない。自分はたまたまこの世に生まれた──それが今の福山さんの答えでした。
■5.身の回りのことに目くじらを立てない
窓の外を見ていた山下さんが向き直りました。
「先生ね、確かに巨悪や真の悪を倒すためには、闘うことも必要だと思います。でも身の回りのことに、実は目くじらを立てなくてもいい。そんなことになかなか気がつけませんでした。人は違って当たり前。なのに、いつも悪口を言っていると、その言葉自体にさらに腹が立ち、攻撃的な気持ちがかき立てられて、さらに闘いを誘ってしまうんです」
私は黙って頷きました。山下さんが続けます。
「闘わないで、皆が勝つのがもっとも素晴らしい解決。そのためには根底に愛、ささいな違いを赦せる度量、忍耐を持つ。それがもっとも大切だと思うんです」
【感想】
◆著者の大津先生は、冒頭でも触れたように「終末期医療」に携わる医師であり、これまで多くの患者さんの最期を見守ってこられました。本書の「はじめに」によると、
これまで、直接死亡確認をした患者さんの数は千人を超えます。終末期から亡くなるまで濃厚に時間をともにした患者さんの数は二千を超えて、もう数えていません。今も年間三百人の、非常に大変な状況の患者さんを拝見しています。亡くなる方もたくさんおられます。とのこと。
それだけ多くの患者さんとお会いしていれば、さまざまな「別れ」に遭遇するのも当然のことでしょう。
そして中には、自らの死に直面して、初めて何かしらに「気づく」方もいるわけで、それらを集めたのが本書ということ。
つまり、本書はある種の「悟りを開いた」お話が、わんさか収録されているワケです。
◆もちろん、「もう助からない」という病気(ほぼすべて何らかのガン)以外は、皆さん置かれた状況や問題は違いますから、どれもが「すべて読者に当てはまる」というものではありません。
夫婦の不和や、親子・兄弟間のいざこざを抱えた患者さんがいる一方で、上記ポイントの2番目のように、幼子を残していかねばならないお母さんもいらっしゃいました。
……病院に入院している時点で寂しくて、「ママはいつおうちに帰ってくるの?」と聞いてくるまだ3歳の娘さんに、本当のことを告げなくてはならない白川さんは、どんなにつらかったことか。
また、上記ポイントの3番目にあるように、自分自身が死ぬのが怖かった塚谷さんは、その恐怖と向き合い、まさに「悟り」を開きました。
私は正直、ここまで達観できる自信はないのですが。
◆実は私自身、もう15年近く前に、義母をガンで亡くしています。
ある程度早い段階で、「もう助からない」と分かってからは、義母がしたいことをできるだけ叶えられるよう、ヨメ兄姉たちと一緒に、あれこれ手を尽くました。
たとえば、入院している都内の病院から自宅までは、電車で結構時間がかかるので、身体への負担を考え、病院のすぐ近くのホテルに数室借りて、「疑似家族旅行」を楽しんだりとか。
それとはまったく違い、ウチの父は、心筋梗塞でいきなり他界しました。
平穏な日常の日々が、ある日プッツリ終わってしまったワケで、父が「もし自分が死ぬと分かっていたら」したいことは、多々あったと思います。
……おそらく健康を気にして、食べるのを我慢していた料理を、まさに「死ぬほど」食べたことでしょうがw
◆ところで本書と似たようなテーマの作品で、「死の直前に後悔したこと」のようなものがいくつかあります。
私は残念ながら読んでいないのですが、その本に登場する方々は、おそらく「無念」を感じながら他界された可能性が高そうな。
それに比べると本書は、病気になって死ぬことは同じでも、その際に「後悔」するのではなく、「気づく」のが特徴です。
中には「気がついて後悔」した方もいなかったワケではないのですが、多くの方が、亡くなる際に「幸せそう」に描写されており、そういう点では読後感は悪くありませんでした。
今、生きていることに感謝したくなる1冊!
死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33 (幻冬舎単行本)
社会編
思考編
人間関係編
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【名言集】『ショーペンハウアー 大切な教え』(2010年10月07日)
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◆昨日ご紹介した「春間近!2000タイトル50%OFFフェア」で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。大人の語彙力大全 (中経の文庫)
参考記事:【語彙力?】『大人の語彙力大全』齋藤 孝(2018年01月17日)
複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考
参考記事:【2軸?】『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』木部智之(2018年01月19日)
時短術大全
参考記事:【時短】『時短術大全』生産性改善会議(2017年09月08日)
今からレビューしようにも、全部済んでいるというw
ご声援ありがとうございました!
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