スポンサーリンク

       

2018年02月08日

【オススメ!】『あなたの人生が変わる対話術』泉谷閑示


B06W55ZJXT
あなたの人生が変わる対話術 (講談社+α文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日で終了となる「講談社の書籍・雑誌・写真集 50%ポイント還元キャンペーン」の対象であるコミュニケーション本。

昨日のランキングでは、9位に着けているのですが、もっと早くレビューしていれば、さらに高順位になったと思われる1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
昔ながらの「話せばわかる」が成立しない時代。職場でも、地域でも、いま大きな問題になっているのは、背景、考え方、立場が違う「他者」と、どうやってコミュニケーションをとるかいうこと。そこで必要となるのが本書で紹介する「対話」の技術。対話とは、ひと言でいえば、「他者とコミュニケーションを取ること」に他ならない。本書では30のヒントを通じて、対話を学ぶ。

絶版となった単行本の中古が、1500円以上しますから、この文庫本のKindle版がオススメです!





Delta Dialogues Practitioners Breakout / eekim


【ポイント】

■1.相手を「他者」として見る
 往々にして、私たちは「心が通じ合うこと」イコール「相手と自分が同じであること」と思い込んでいる傾向があります。これも、同質性が前提の「ムラ的共同体」の伝統によって、私たちに知らず知らずのうちにすり込まれた幻想です。
 相手を「他者」と思うことは、親しいか親しくないかには、そもそも関係ありませんし、「心が通じ合う」ことに反するものではありません。相手を「他者」と思うということは、相手の独自性や独立性を認めることであって、ほかの誰とも同じではない唯一の存在として、その人の個別性を尊重し、畏敬の念(畏れ敬う気持ち)を抱くということでもあります。その「他者」が、自分と同じことを感じたり気持ちを理解してくれたりしたときに「心が通じた」のであって、だからと言って、何から何まで「同じ」わけではないのです。


■2.「同意」できなくても「対話」はできる
「死にたい」という話は、もう揺るぎなく死を決断している人が、わざわざ人に話すはずのないものです。逆に言えば、「死にたい」という気持ちが湧き上がってくることに本人自身が困っているからこそ、「人に話す」のです。つまり、「死にたい」という気持ちから逃れるための手掛かりがそこにありはしないかと、わずかでも希望を託して話してくれているわけです。
 ここで求められていることは、まずこの話を、聴き手側の価値判断を差しはさまずに聴くことです。
 第7講で述べた「理解する」と「同意する」を分けることが試されるのは、特にこういう局面です。「死にたい」に対しては、もちろん余程の事情があったとしても、通常聴き手は「同意」することはできないでしょう。しかし、それでもその気持ちを「理解」することだけは、十分に可能なのです。


■3.メタ次元で「聴く」
 人の話を「聴く」ということは、個々の話題を理解するだけでなく、それらのさまざまな話題の根底に一貫して流れているテーマをも「聴く」ことなのです。それには、個々の話を「聴く」ときに、その話の具体性に焦点を合わせつつも、同時に、その話の基本構造にも注意を向けた、抽象度を上げた「聴き方」が求められます。
 この、抽象度を上げた「聴き方」を、メタ次元で「聴く」と言います。
 たとえば、「職場の部下が、いちいち自分のところに指示を仰ぎにくるのがうっとうしい」という話と、「年老いた親が、だんだん自分に甘えるようになってきて、面倒を見るのが苦痛になった」という話は、メタ次元では同じ内容だと言えます。つまりどちらの話においても、「人に依存されることの煩わしさ」というテーマが語られているのです。


■4.主語を立てて話す
 たとえば「ムラ的共同体」の内部では、「個」が明確に立つことが忌み嫌われるので、「自他の区別」をなるべくつけたがらない。そのため主語をなるべく立てない傾向があって、「あいつは嫌な奴だと思わない?」というような言い方をよくします。(中略)
 ところが、これを主語を立てた言い方にしてみると「私はあいつを嫌な奴だと思うけれども、君はどう思う?」となって、相手には「僕はそうは思わないな」と言える余地が生まれてきます。つまり、主語を立てるということは、相手の「他者」としての独立性を確保する言い方なのです。
 自分のことをゆるぎなく正しいと思っている人は、往々にして主語を立てない言い方で、偏狭な個人的主観を話すことが多いようですが、これは「対話」を行う準備のできていない状態だと言えるでしょう。


■5.「他者」を自分の一部として捉えない
 これまでも論じてきたように、「二人称関係」を生きていると、相手を自分と同じはずだという前提で見て、自分の一部であるかのように捉えるようになって、ついぞんざいな扱いをしてしまったりします。「メシ! 風呂! 寝る!」で済ませる古風な家長などは、家族のことを自分の手足であるかのように扱っているわけですが、それは一見、無骨で男らしく見えたとしても、その内実は、泣くことで母親をコントロールする乳児とさして変わるものではありません。
 つまり「二人称関係」とは、他人が自分の思い通りになるものだという乳児的幻想の段階に留まっているような、未熟な人間観にもとづいた関係なのです。なぜなら、相手が「他者」であり、別の「孤独」を生きる別の主体だということが想像できていないのですから。


【感想】

◆タイトルから想像していた内容とは違い、かなり奥深い作品でした。

いえ、「対話術」なんてあるものですから、てっきりTIPS列挙のノウハウ本だと思っていたのですが、あにはからんや。

そもそも「対話」とはなんぞや、というところからして、私たちの理解はあやふやだったりします。

そこで本書の第1章では、「『会話』と『対話』の違いは何か?」というところからスタートし、「『対話』は『会話』」の一部であることを指摘。

「対話」が成立するための前提として、以下の4つを挙げています。
前提1 相手を「他者」として見ることから「対話」は始まる
前提2 対話は、「他者」を知りたいと思うことから始まる
前提3 対話は、お互いが変化することを目標とする
前提4 対話において、話し手と聴き手に上下関係はない
このうち、前提の1番目については、上記ポイントの1番目に挙げたとおりです。


◆では、「対話」と「討論」「議論」「討議」らとの違いは何か?

ここで大事なのが、上記の前提の3番目「対話は、お互いが変化することを目標とする」です。

「討論」等は基本的に自分の考えや感じ方を変化させませんし、むしろディベートであれば、変化したら「負け」。

お互いが変化し、そのステージが上がる「対話」とは異なります。
いまだに、自分の意見をきちんと持って表明することを、ディベートやディスカッションで勝利することだと取り違えている風潮がありますが、それらはモノローグ同士の戦いにすぎず、決して進歩的なコミュニケーションではないことを、私たちは知っておく必要があるでしょう。
なるほど確かに!


◆一方、上記ポイントの2番目の「死にたい」というお話は、精神科医である著者の泉谷さんにとっては結構あることなのだそうなのですが、私たちにはレアだと思われ。

そこで本書では、もっと身近な例として、「A君が父親に『バイクが欲しい』と話す」ケースが収録されています。
これに対して父親が、「ダメだ。危ないし、だいたい自転車を持っているんだから、そんなもの必要ないだろう!」と返したとしましょう。よくありがちなやり取りですが、しかし「対話」の観点からすれば、これは遮断が行われたことになってしまいます。
そこで大事なのが、「理解すること」と「同意すること」を切り分けること。

たとえバイクを買うことに父親が「同意」できなくても、「理解」のチャンネルがあれば、「対話」は継続できます。

結局、人が対立してしまうのは、意見が対立するからではなく、「理解」を放棄してしまう態度、つまり「対話」の遮断によって生ずるのだな、と。


◆また本書の第4章では、「『ムラ的』コミュニケーションから『対話』へ」と題して、上記ポイントの4番目にチラッと出てくる「ムラ」について掘り下げています。

要は私たち日本人は、身内の集まりである「ムラ」の中であれば、コミュニケーションを言葉で行わず、「空気」や「呼吸」「暗黙の了解」によって行ってきたワケで。

そこで思い出されるのが、こちらの作品です。

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

参考記事:【結構スゴ本】『「空気」と「世間」』鴻上尚史(2010年09月07日)

この本で言及されている「村八分」は、「ムラ的コミュニケーション」の最たるもの。

また、上記ポイントの4番目にある「あいつは嫌な奴だと思わない?」などという発言も、そういった「悪しきコミュニケーション」に他なりません。

ここでは「主語を立てる」ことを推奨していますが、その他の対処法については、本書にてご確認を。


◆……とあれこれ書いてきましたが、実際には割愛しまくり。

特に本書の「哲学的な側面」については、私自身の理解があやふやなので、丸ごとカットさせていただきました。

本日がセール最終日ということで、急いで読んだものの、正直もっと腰を落ち着けてじっくり読みたい作品であることは間違いなく。

冒頭でも触れたように、絶版となった単行本が1500円超のお値段を付けているのも納得でした。


まさに「人生が変わる」かもしれない1冊!

B06W55ZJXT
あなたの人生が変わる対話術 (講談社+α文庫)
第1章 対話とは何か
第2章 対話の技法
第3章 思考法としての対話
第4章 「ムラ的」コミュニケーションから「対話」へ
第5章 対話するという生き方


【関連記事】

【結構スゴ本】『「空気」と「世間」』鴻上尚史(2010年09月07日)

【対話術】『<特別版>年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの対話術』和仁達也(2015年11月04日)

【コミュニケーション】『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』平田オリザ(2017年04月17日)

【オススメ!】『コミュニケイションのレッスン』鴻上尚史(2013年05月28日)


【編集後記】

◆上記で登場したこちらの作品なのですが。

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

よく見たら版元が同じ講談社さんで、実は今回のセールの対象でした。

実は中古に送料を足すと、ギリギリでKindle版の方がお買い得なので、お求めになるのなら今日中がオススメです!

なお、レビューはすぐ上の関連記事にございますので、よかったらご確認ください。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「コミュニケーション」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ

スポンサーリンク